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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十一章 視察からその先へ
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密書カラス再び

 ここへやって来た鳥達は、たかわしとんびふくろうすずめはと孔雀くじゃく、メジロ、うぐいす文鳥ぶんちょう、インコ、オウム等々。

 てか梟ってこの世界でも夜行性じゃないの?まだ真昼間だけど…。いや、昼間に起きてる梟もいるか。


 周囲の木々にいる鳥達を眺めていると、一羽の鷹が私の方に向かって飛んできた。私が咄嗟にひじを曲げた状態で腕を上げると、鷹はうまく私の腕に止まった。

 こうして目の前で見てもやっぱカッコイイ。前世でも今世でも鷹はクールでカッコイイわよね。


「ピー」


 お、鳴いた。私は鷹を撫でてみたけど、怖がったり抵抗したりはしない。全然嫌がる素振りを見せないし、人馴れしてるのかしら?


「いや~ここまで遠かったわ~ん。疲れた疲れた~」


(…え?)


 どこか近くで男性の声量で女性の口調の声が聞こえた。要するにオネエの声が聞こえた。鷹が喋るわけないし、一体どこから…。


「あら~?もうみんな集まってるのね~ん。ちょっと遅れちゃったわ~ん」


 声の主を模索すると、梟達がいる木の近くに、さっきまでいなかった真っ黒な鳥、カラスがいた。…ん?待てよ?あのカラスってもしや!


「あのカラス…!あの時の密書カラス!」

「ん?あら~!アストラントの貴族屋敷にいたお嬢ちゃんじゃな~い!久しぶり~!」


 やっぱり間違いなかった。あのカラスは、私がアストラントにいた頃に私とセリアを密書で繋ぎ続けてくれた密書カラスだ!

 カラスは手を振るかのように翼を片側だけ広げて振ると、止まっていた木の枝から飛び立って私の足元にやって来た。


「まさか再会出来るなんてね。運命は分からないものね。本当に」

「そうね~。変わってないわね~んって言いたいところだけど、なんだか纏う雰囲気が違うわね~」

「まあね。色々あったから」


 喋りもそうだけど、動きも感情豊かね…。このカラス…。


「もしやグリセリア女王陛下の密書をお嬢様に届け、お嬢様の密書を女王陛下へ運んでいたカラスですか!?」

「密書カラス…。実在するとは言われていましたが、確か伝説級で語られている存在でしたよね…?」


 シャロルはカラスを見て驚いてるけど、右腕でティーカッププードルを抱え、左腕でフーンを抱えて完全に楽しんでる…。

 キリカも同様に驚いてはいるけど、すっかりコアラと仲良くなったみたいで、抱っこしたまま撫でてる。こっちも完全に楽しんでるわね…。

 ちなみに最初に来た小型動物達は、みんな私の足元付近でくつろいでる。私の腕に止まってる鷹は、そのまま今も止まりっぱなし。他の中型と大型の動物達と鳥達は、アテーナ、アルテ、フェニックス、オルトロス、オリジン様、ケルベロス、スレイプニルがそれぞれ各々で相手をしてる。


「アイラ様。私の部下達も来たわ」


 エキドナさんに声をかけられて振り返ると、エキドナさんの背後から大量にいろんな生き物がやって来た。かえる、ミミズ、ムカデ、蝶、蛾等々。そしてやっぱり蜂が来たあぁぁぁ!怖いよ~!あれ毒蜂じゃないよね!?

 あ、ちなみに前世の世界で当たり前に見かけていた蚊やハエやトンボやあり、それから害虫の代表格だったゴキブリや白蟻しろありはこの世界には存在していない。


 かなりの大群でやって来たので私は思わず引きそうになったけど、一応仲間なわけで気合で引かなかった。でもさすがに蜂に群がれたら大変だと思ったんだけど、みんな他の動物達と一定の距離をとって動いている。私へも近寄って来たりしない。エキドナさんが何か指示でもしてるのかしら?


「エキドナさん。みんな一定以上近寄ってきませんけど?」

「他の動物達と喧嘩しちゃったら大変だから、移動範囲を指定してるの。一部は毒も持ってるし」


 予想した通り、エキドナさんが指示を出してたみたい。…そういえばエキドナさん。へびは?


「これで招集をかけた動物全員来ましたか。さすがに来れない動物もいたようですね」

「あ、他にもまだいたんですか?」

「ええ。人と同じで野生の世界でも事情がありますから、仕方ありませんね」


 予定だともっと来る予定だったのか…。もう周辺だいぶ動物達で賑やかになってるけど。

 と、カラスが目の前であくびしてたので、再び会話してみることにした。


「そういえばまだ自己紹介してなかったわね。アイラよ。よろしく」

「アタシはカラスの『カラス丸』よ~ん。主に誰かの密書を誰かに運ぶ役割を持っているわ~ん。よろしくね~ん」


 カラスでカラス丸ってそのまんまやん。


「あなたのおかげで私は落ち着いてここに居れることができたわ。感謝するわね。どうもありがとう」

「や~ん、良いのよん。私は手紙を運んだだけなんだから~」


 カラス丸は片方の翼を縦にして横に振ってイヤイヤみたいな動作をした。感情表現上手いな。


「ところであなた喋れたのね。屋敷に密書運んできた時は鳴く以外何も言わなかったのに」

「喋っちゃったら警戒されるか逃げられちゃうじゃな~い。だから鳴き声のみにしてるのよん」


 確かに鳥が突然喋ったらぎゃああああ!ってなるもんね。


「でも神獣じゃないのにどうして言葉を発せるの?」

「アタシ神獣ではないけど、神獣候補ではあったのよ~ん。フェニックスちゃんに取られちゃったけど~。だからその関係で言葉を発する術を持ってるのよん」

「てことは、昔にフェニックスとカラス丸でどっちが鳥類の神獣になるか競ったってこと?」

「そうそう。そういうこと~」


 セイレーンみたいに神獣になった理由もきっかけも分からない存在もいれば、神獣になることを競ってた存在もいる?一体何がどうしてどうなって神獣が生まれるの?全く分からない…。


「カラス丸との神獣決定戦ですか。懐かしいですね」


 フェニックスも話に入って来た。


「それってどうやって勝敗着けたの?」

「私とカラス丸で当時の世界中を飛び回り、各地にいる様々な鳥達のナワバリの中心鳥に声をかけて、どっちが神獣に相応しいか選ばせたのです」


 要は多数決か。各地の代表者ならぬ代表鳥による神獣投票みたいな。しかし世界中とはまた大掛かりな。


「一羽もアタシを選んでくれなかったのはショックだったわ~…」

「競うまでもなく惨敗してんじゃん…」


 当時のカラス丸どんだけ信頼なかったの…?


「そういえばセリアはどうやってあなたを呼んだのかしら?疑問に感じておきながらセリアに聞いてなかったわ」

「セリア?」

「グリセリア。あだ名がセリア。私と密書を交わしてたグレイシアの女王よ」

「あぁ~、グレイシア王国の女王様ねぇ~。あれはね~、本当に偶然な事なのよ~。ある日たまたまあの女王様がいるお城の上を通ったら、とても大きな声で「密書が書きたーい!」って聞こえて、試しに声が聞こえた方へ降りてみたら、あの女王様がいたってわけ。それで密書の依頼を引き受けたのよん」


 ホントになんちゅう偶然…。ていうかセリアはなんでわざわざ声に出したのよ。絶対関係ない人達にまで聞こえてたでしょ。

 でもこれでこの結果が生み出せたんだから、偶然と言うよりも奇跡に等しいかもね。


「ところでせっかく会えたんだしぃ~、アタシも一緒について行って良いかしら~ん?最近くつろいでた場所を若い鳥達に渡しちゃって~、アタシゆっくりできる場所がないのよ~ん」

「とか言って、どうせ若鳥と居場所を争って負けたんでしょう?」

「あ、バレた?」


 カラス丸の説明がとても正統的だったから、若い鳥達を応援する優秀な鳥なんだなって思ってたのに、フェニックスが口実の裏を暴いてくれたおかげで、私の中のカラス丸への評価が一気に落ちた。


「密書の依頼の方は大丈夫なのですか?」

「この子と女王様の密書が終わって以降全く依頼なし~。暇でしょうがないわ~ん」


 居場所を若鳥に取られ、仕事も入らず、行くところもないから同行するつもりなのかな…?


「カラス丸。アイラ様は精霊方と契約し、我々神獣の現在の主であり、神龍殿も宿っている龍帝でもあるのです。ましてや神の眷属。『この子』や『お嬢ちゃん』といった呼び方は控えてください」

「あら~、そうだったわねぇ~。失礼したわ」

「別に良いのよ。私は呼ばれ方や態度に関してはほとんど気にしないから」


 フェニックスはカラス丸の私に対する呼び方を気にしたけど、私は別にどう呼ばれようが気にしない。それこそ馬鹿とかアホとかの暴言でない限り。


「他のみんなから異論が出なければ、私は同行に関しては構わないわよ。セリアもあなたには礼を言いたいだろうし」

「ホント~!?ありがと~!」


 みんなから異論が出る様子はなさそうだし、もしかしたら私が今後誰かへ密書をお願いする可能性もあるから、一緒に居てもらって損はない。

 それこそアストラントにいる誰かに密書を送る可能性も…。一番密書に対応できそうなのはシャルかな。シャル、今何してるかしら?学院会の会長になってくれてるかな…。


「アイラ様。カラス丸を一緒に連れてくのは構わないけど、コイツたまに自由に動き回ったりする時があるから気を付けてね。気が付くといなかったりするから」

「ちょっと。コイツとはなによ。アタシはそんなちょこまか動き回らないわよ」

「コイツはコイツでしょ?それと傍からみれば十分ちょこまかよ。言われたくなかったらちゃんとアイラ様の指示に従いなさいよ?」

「解ってるわよぅ!子供扱いしないでちょうだい!」


 エキドナさんはカラス丸をやたら子供扱いしてて、カラス丸はプンプンしてる。この両者は過去になにかあったのかな?


「カラス丸は昔、自由に動き回ったことが原因でエキドナさんの貴重品を壊したことがあるんです」

「あ~、なるほど…」


 オリジン様がこっそり教えてくれた。エキドナさんは、今度は私の物を壊さないか心配なのね。


「エキドナさん、大丈夫ですよ。カラス丸もその辺は自覚できてるでしょうし」

「ほら、見なさい。アイラ様は解ってるわね~!」


 いつの間にかカラス丸の私に対する呼び方が様付けになってた。


「でもカラス丸。セリアに対してあまり勝手な事やると、場合によっては翼もぎ取られるだろうから気を付けてね」

「ひぃ!そんなに恐ろしいの!?あの女王様!」


 私がセリアを使って脅しをかけたら、カラス丸の体毛が一斉に逆立った。おもろい。


「私に対しては素直だし、根は優しいわよ。でも世間では威圧を放つ独裁女王として恐れられているわ」

「はぁ~、そんな感じに見えなかったけどねぇ~」


 カラス丸はセリアのギャップに驚いてる。セリア表と裏が激しいからな~。


「ピー」

「ん?」


 私の腕に止まりっぱなしだった鷹が、突然一言鳴いて翼を広げてバサバサし始めた。


「どうしたの?」

「アイラ様、彼も共に行きたいと申しております」

「え?」


 フェニックスが言うには、この鷹も私と一緒に居たいらしい。てか『彼』って、この鷹はオスなんだ。


「私と一緒に居たいの?」

「ピー」

「居たいらしいわよ~ん」


 鷹に問いかけると、鷹はまた一声鳴いた。そして今度はカラス丸が訳してくれた。

 まぁ、この鷹は神獣じゃないけど、ペットとして一緒にいるのも悪くない。むしろこんなカッコイイ鳥を飼えるんだから大歓迎だわ。


「じゃあ、これからよろしくね!名前は…」

「アイラさん。申し訳ありませんがそろそろ終了のお時間です」


 名前を考えようとしたら、オリジン様からストップがかかった。


「あ、そうなんですか?私達ここに来てどのくらい経ったのかしら?」

「お嬢様。かれこれ三時間以上は経過しております」


 シャロルは自分で持っていた懐中時計で時間を見て報告してくれた。

 いつの間にかメッチャ時間経ってた…。夢中になると時間って忘れるわよね…。


 私は集まってくれた動物達一頭一匹一羽ずつにお礼を言って、虫達等の超小型生物達には一括でお礼を言ってお別れした。


「はぁ…、ずっと抱いていたから腕が…」

「キリカ、結局最初から最後までずっとコアラ抱っこしてたわね…」


 最初キリカの脚にくっついていたコアラは、最後までずっとキリカに抱っこされっ放しだった。キリカのこと気に入ってたのかな?


「ところで、数羽ほど鳥達が残ってるんだけど?」


 木々に止まったままの鳥達をよく見ると、大半が梟でしかも寝てる。


「心配いりません。しばらくすれば帰りますよ。それにここには天敵となる生物はいませんのでご安心を」


 勝手に帰るのか。まぁ、フェニックスが言うんだから間違いないでしょうね。


「じゃ、洞窟へ戻りますか」


 こうして地上の野生動物達と交流を果たした私は、新たに密書カラスことカラス丸と、伝説とは一切関係ない普通にカッコイイ鷹を新たな仲間に加えて森を後にした。

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