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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十一章 視察からその先へ
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今度は地上の動物達と

視点がアイラに戻ります。

 森を後にした私達は、それからも様々な場所へ移動を重ねた。でもぶっちゃけこれといった所は見つからず、ほとんど森林と草原と岩地だけだった。ていうかいくらなんでも前の領主仕事ヤル気なさ過ぎない?あまりに発展しなさすぎなんだけど。いくら現在は民が住んでいないとはいえ、街や村があった形跡すらないよ?こんなんでよくセリアに反抗したわよねぇ。


 そんでもって結局、魔物と出くわすわけでもなければ、何かイベントが発生したわけでもなく、私達はアッサリ今日の視察範囲を終えてしまった。つまんない。


 洞窟に戻ってジーナの様子を見に行ったら、ジーナはベッドの上ではなく外にいた。「外の空気が吸いたかった」というのがジーナの説明。

 でも動いてたわけではなく、ジーナは伏せ状態で座るグリフォンに寄りかかった姿勢で座っていて、そこでオルトロスやザッハークを撫でまわしてた。

 笑みを見せてはいたんだけど、やっぱり以前程のテンションじゃない。もうジーナは感情云々というより、人格そのものが若干変わってしまったと見るべきなのかもしれない。


 ちなみにジーナの隣ではセイレーンがペガサスを撫でてた。なんで撫でてたのかは知らないけど、翼を持つ者が翼の生えてる馬といるとメッチャ神聖的。あの光景はあのまま壁画にできるわ。


 そんなこんなで夕食の時間。私達は全員集まった。


「この早さでしたら、予定より大幅に視察が終わりそうですね」

「そうねぇ~。飛行してる上に地上でも同等の速さで移動してるから、本来数日かかる距離も数時間で着いてるし、今後何も起きなきゃ簡単に終わるわね」


 シャロルの言葉に返答する私。何事も起きずに視察が完了すれば、それほど平和で楽な事はない。でもこのまま何もイベントがない状態で終わるのは、私としては正直物足りない。

 前世の記憶を思い出してから、特にサブエル学院に入学してからは何かとイベントが続いてたし、今更になって何も起きないというのは逆に落ち着かない。別にやたらイベント事を求めるわけじゃないんだけどね。それで怪我人でも出たら敵わんし。

 人魚族と交流してガブガを倒した事だけでも十分大イベントなんだろうけど、犠牲が出てしまっているので何とも言えない。


(あ~あ~。何か面白いイベントないかな~。いっその事、高台でベヒモスに紐なしバンジーやらせる手もあるけど。…別に面白くないか)


 なんて考えてたら、アテーナが声をかけてきた。


「アイラ様。ちょっと思った事なんですが、スキュラさんと海に潜った際、人魚族以外の海の生物達とも交流したとおっしゃってましたよね?」

「うん、言ったわね」


 魚達とふれあった事やイルカと一緒に泳いだ事は、海から帰って来た後の報告で既に言ってある。


「でしたら今度は、地上にいる動物達とふれあってみてはいかがでしょう?」

「地上の動物達と?確かに今までふれあってないわねぇ」

「視察とはいえこれだけの大自然の中で精霊や神獣の方々と一緒にいるんですよ?だったらふれあわずに視察を終えてしまうのはもったいないかと」

「なるほどね。確かにそうだわ」


 私はアテーナの案に大いに納得した。


「ワンワン!クゥ~ン、ワンワン!」

「ん?どしたの?オルトロス」


 オルトロスは急にテンション上がり気味で尻尾をフリフリさせながら私の足元に寄り付いてきた。そういえばオルトロスは地上生物のほとんどをまとめてる存在なんだっけ。


「アイラ様。オルトロスは自分が案内できると申しております」


 オルトロスの主張を爺やが通訳してくれた。つまりオルトロスもアテーナの案に賛成ってことね。


「なら私も同行させてもらうわ。私の配下達にもご挨拶させなきゃね」


 エキドナさんも名乗り出た。エキドナさんは確か、爬虫類とか昆虫達をまとめてるのよね。……もしかして虫達にまで私に挨拶させるつもり?これで蜂でも来られたら大変じゃない?


「よし!なら明日は野性動物達と交流よ!急遽予定変更で!」

「視察はまた一時中断ですか…」

「何言ってんのよシャロル。視察の中断なんてしないわよ。視察する範囲内にいる動物達とふれあって、どんな動物達がどこに暮らしているのかを知るのも立派な視察の一環よ」

「とか言ってお嬢様、強引に視察期間を延ばしてここでゆっくりする算段で言っておりますね?」

「~♪」

「とぼけた顔で口笛吹かないでください。なんとなく腹が立ちます」


 シャロルの読みは図星だったので、口笛吹いて誤魔化したらイラッとされた。





 ということで翌日。昨日の同行メンバーにエキドナさんとオルトロスが加わって、私の領地の範囲内にある、とある森へ向かった。その森は今日視察予定だった範囲の中にあるらしい。なら丁度良いわね。

 ちなみに昨日のうちに神獣達が野性動物へ交信し、指定場所へ集まるよう命じたそうな。なんだかわざわざ来てくれるのは申し訳ない気持ち。


(少し出発が遅れましたね)

(主にジーナのせい)

(まったく、療養がまだ必要だということをちゃんと解ってほしいわね)

(あんた達言える立場じゃないでしょうが。ジーナが療養しなきゃいけない状況を作り出したのはあんた達でしょうに。あんた達こそちゃんと反省しなさい)


 私達は昨日と同様移動中は念話で話すんだけど、キリカの出発遅延の発言をきっかけにアルテとアテーナが愚痴り始めたので、私が軽く怒った。

 今朝、ジーナは「一緒に行きたい」と言い出した。でもジーナの身体はまだ完全回復とは言えず、療養継続は必須だった。

 ジーナは自分がこの集団の中に入ってから何もできずに世話になりっぱなしになっていると感じているらしく、どうしても何かしたいと主張してきていた。その結果ジーナを説得する事に時間を要し、出発が遅れてしまったというわけ。

 私と爺やならともかく、他の面々にはジーナの行動や行為を批判したり愚痴ったりする権利はない。私が海にいる間に留守番してた全員が、ジーナを療養させないといけない状態に追い込んだんだから。


 ちなみにジーナへの説得は、爺やの意外な言葉で止まった。

 私がジーナに安静にしているよう説得をしていたところに、爺やが笑顔で近づいて来て…。


「ジーナさん。でしたら使用人の仕事を少し学んでみてはいかがですかな?礼儀や丁寧な言葉使いが身に着きますから、今後の役に立つと思いますぞ?」


 と提案。爺やはジーナが長年山奥で育ってきた事を知った時から、ジーナの世間的な常識や礼儀などがなっているかどうか心配してたらしい。フィクスさんとリアンヌさんの事だから、最低限の常識とマナーは教えてるだろうけど。

 教養面であれば実践せずとも座学でできるということで、ジーナも私も爺やの案を受け入れたのだった。


(しかしトンジットさんの指導は座学でもかなり本格的に教えますよ?ジーナさんが付いて行けるでしょうか?)

(それはジーナ次第だし、爺やもその辺は解ってるでしょ。それに上手く行ったら第二のシャロルみたいになるかもよ?隠密と暗殺ができるメイド)

(まさかお嬢様…、その流れができたらジーナさんをメイドとして登用するおつもりではありませんよね…?)

(そのまさかよ)


 ここで突然シャロルからの念話が途切れた。


(あれ?シャロル~?おーい?)


 私が再び繋いでも返事が返って来ない。


(龍帝陛下。シャロルさん、絶望に満ちた表情をされております)


 代わりにキリカから念話が入った。そんな絶望に陥れるような発言したかしら?


(お嬢様~!お願いしますからお考え直しくださいまし~!私の仕事が~!)


 なんか復活したらしいシャロルから絶叫の念話が入った。もしかしてクビにされるとか考えてない?


(なんであんたがそんなに絶望してんのよ。グレイシアに来てからあんたが一人で抱えてる仕事をジーナに分散させて、あんたの負担を軽減しようって考えたのに。

 別にシャロルの仕事を無くそうとしてるわけじゃないのよ?この先私の仕事量が増えるに伴ってあんたの仕事も増えるかもしれないから考えてるの。

 それに前に言ったでしょ?シャロルを専属達の総括にする事も考えてるって。ジーナもいわば、その専属達の一人よ)

(そういうことなら…、まぁ…)


 私が考えを伝えると、シャロルはアッサリ引き下がった。何が不満で何が納得できるのかが全く分からん。


(まぁ、ジーナももうこうやって精霊や神獣と関わってるんだし、他の人間達みたいに一般的領域にはもういられないでしょ。アイラ様の配下になるのが妥当ね。どういう職業でも)


 エキドナさんは淡々と意見を述べてきた。でもホントその通りだと思う。

 ジーナは既に精霊達や神獣達といった伝説と謳われる存在と深く関わってしまっている。深くでなくとも関わった時点で、精霊や神獣の契約者たる私からは決して逃れることはできない。だからエキドナさんの言う通り、私が関わってない環境での仕事や生活は確実に無理だろう。ま、メイドが無理でも他に色々仕事は用意できるけどね。





 こんな感じで会話してたら、フェニックスが高度を下げ始めた。


「アイラ様、目的地周辺です。間もなく着陸致します」

「はいはい、了解」


 なんか今のフェニックスの「目的地周辺です」のセリフがめっちゃカーナビ音声みたいだった。ちょっと面白い。


 目的地の森林へフェニックスが着地した後、地上を移動していた他のみんなも合流した。


 今私達がいるこの森は、昨日環境について話した時にいた森と違って、地面に十分に陽の光が届いてる。きれいな花もたくさん咲いていて、木々を含めて植物達が生き生きしてるように感じる。近くに小さな池が見えてるけど、陽の光の反射で水面が輝いてる。ここの森はかなり良い環境みたい。


「オリジン様。ここの森はとても良い環境ですね。きれいで輝いてるように感じます」

「ここは私を含めた精霊一同が最近まで過ごしていた場所なんですよ。ノーバイン城の裏に移るまではここにいました。元々状態の良い場所だったのですが、一部の神獣に頼んでさらに改良していただきまして」

「今は私ら神獣達が仮住まいしてる場所になってるわ。この場所は人が簡単に立ち入れる所じゃないし、アイラ様がこっちに来るのをみんなでここで過ごしながら待ってたのよ」

「そうだったんですか。だからここまできれいな状態なんですね」


 精霊と神獣が住処に使っていた森となれば、自然界の管理は完璧にするはず。ここの森は精霊と神獣によって改善維持されてたんだ。


「シャロル、キリカ。今見てるこの森の光景が、森林としてあるべき理想の光景なのよ」

「昨日見ていた森と全く違いますね…。とても美しいです」

「この環境なら植物も野性動物も楽しく暮らせますね。改めて自然の大切さが身に染みる気持ちです」


 昨日まで自然界知識がほとんどなかったシャロルとキリカは、ここの森の光景にすっかり見惚れていた。





 ガサガサ…。





「ん?」


 今近くでガサガサって草が動く音が聞こえた。傍で動物が動いた証拠ね。





 ガサガサ!ガサガサ!





 音はどんどん近く大きく、数ヶ所で鳴っている。





 ガサガサッ!


「わっ!」


 最も大きく音が鳴ったと思ったら、いろんな方向から小型の動物達が一斉に現れた。

 ウサギ、リス、ハリネズミ、ハムスター、ティーカッププードル、チワワ、ミニチュアダックス、パグ、そしてフーン。カワイイ癒し系動物達だ~。


「わ~!カワイイ~!みんなおいで~!」


 私がしゃがんで声をかけると、みんな元気良く寄って来た。


 ちなみに『フーン』という動物は、小型犬ほどの胴体のつぶらな瞳で超短足で毛がフワモコの超癒し系動物。

 生息域は世界中に分布していて、前世の世界でいう犬や猫みたいに当たり前に見かける事ができる。ペットとして飼われてるフーンが多いけど、こうして森に棲む野生のフーンもいる。

 性格は基本的に大人しくて、とても人懐っこい。「フゥ~ン」っていう甘くカワイイ鳴き声で鳴く事から、フーンという名が付いたと言われている。


「ワンワン!」


 カワイイ動物達に囲まれてモフモフしてたら、オルトロスが急に泣き始めた。その方向を見ると、中型と大型の動物達が現れた。モフモフしてて全然気づかなかったわ…。

 柴犬、ブタ、馬、虎、豹、狼、ライオン、チーター、ゾウ、ミニチュアホース、ポニー、ナマケモノ等々…。ていうか明らかに生息域が違うはずの動物がいるんだけど…。


「に、肉食獣!?」

「シャロルさん、大丈夫ですよ。アイラ様と神獣達がいる限り、襲い掛かることはありません」


 肉食動物の出現にシャロルが戦闘態勢に入ろうとしたけど、オリジン様が笑顔で止めた。


「あ、あの…、私の脚に何かくっ付いてきたんですけど…」


 キリカの戸惑い気味な声に振り向くと、キリカの脚にコアラがくっ付いてた。

 気温的な点から考えるとここはコアラが生息する環境じゃないはずなんだけど…。やっぱ前世の頃の世界と今の世界とじゃ、生息域に関しても色々違うのかしら?


「腕をこうまわして、手はこの状態で…」

「えっと…、こ、こうですか…?」


 キリカの足元にいたコアラは一旦アルテが引き離して、そのまま再度キリカに抱かせてた。キリカはアルテから抱っこの仕方を学びながら、戸惑い気味にコアラを抱っこしてる。コアラも大人しい。

 アテーナは気が付くと別の場所で豹や狼等の肉食獣達を撫でていた。なんだか様になっててカッコイイ。

 シャロルはハリネズミやハムスターを手に乗せて可愛がってる。楽しそう。


「到着したようですね」

「え?何が?」


 フェニックスが急に呟いたので反応したら、直後周囲の木々に大勢の鳥達が降りてきた。そっか、フェニックスは鳥類の頂点に立ってるんだっけ。

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