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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十章 視察の道は逸れて
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巨獣の話と、人魚姿披露

 お土産の事でシャロルと散々揉めた後は、里を襲撃してきた巨獣ガブガの話をした。


「巨獣…ですか…。それが大群で…」

「巨獣は確か、かなりの戦力がないと敵わないと言われているんですよね?父上から聞いた事がありましたが」


 シャロルは真面目な表情で私の話を聞いていて、ジーナもフィクスさんから聞いた話を出してるけど、やっぱりジーナの感情が薄い。


「巨獣でしたら、龍帝国にもたくさんいますよ」

「え!?」


 キリカがサラッと驚くべき発言をした。私が龍帝国にいた時は、そんな話一度も誰からも聞かなかったのに。


「キリカ。そんな話、私は一度も聞いてないけど?」

「龍帝陛下が龍帝に就任されたあの頃は龍帝国内の政治情勢がとても不安定で混乱が発生していたため、お話する機会がありませんでした。次回龍帝国へ行った際にお話しようかと思っていたのですが、せっかくですから今お話しましょう。

 龍帝陛下は、龍帝国の島の中心部に、大きな山がそびえ立っているのを覚えておりますでしょうか?」

「あー、山ね。確かにあったわね」


 まだキリカと出会って間もない頃、初めて龍帝国へ向かった際、飛行するキリカの背から島全体を見渡した時に、まるで島を二分するかのような大きな山が見えていた。木々や植物が生い茂る山ではなく、山肌が剥き出しの急勾配っぽそうな山だった。

 ドラゴ宮殿や街、神龍と出会った洞窟は、山を中心に右側にあった。山を越えて左側に行く事はなかった。


「宮殿や街がある場所の反対側、山を越えた先には、多くの種類の巨獣が住んでおります。奴らが山を越えてやって来る事はありませんが、逆に我々竜族も山の向こう側には行きません」

「そうだったんだ…」


 龍帝国の島半分は巨獣達の住処なのね。…ちょっと行ってみたいかも。


「あの、巨獣の存在は聞いた事がありますが、実際どの程度の大きさなのでしょうか?」


 シャロルは巨獣の大きさが想像付かないようで、私に訊ねてきた。


「シャロルは、キリカが竜になった時の姿を覚えてる?」

「はい。とても大きく気高さのあるお姿でしたね」

「そんな…、気高いなんて…」


 シャロルがキリカの竜の姿を気高いと言ったら、キリカは嬉し恥ずかしそうにモジモジしてた。カワイイ。


「私が見た巨獣ガブガは、竜の姿の時のキリカ二体分かそれ以上はあったわね」

「そんな大きさなのですか!?」

「他に例えるなら本来の姿をしてる時のザッハークなんだけど、シャロルはその姿を見た事ないから例えられないのよねぇ。ね~?ザッハーク」


 シャロルは私が例えたサイズに驚いている。

 ザッハークは私の声に反応してポヨンポヨンしてるんだけど、どこでポヨンポヨンしてるのかと言うと、私の頭の上。実はザッハークはお土産話してる辺りからずっと私の頭の上にいる。別に良いんだけど。


「龍帝国にいる巨獣は大小様々な大きさの巨獣がいますよ。そのガブガという巨獣は、おそらく巨獣の種類の中でも大きな部類だったのではないでしょうか」

「へぇ~、小さい巨獣もいるのね」


 キリカの話に頷く私。巨獣全てがガブガみたいなサイズってわけじゃないのね。


「わたくしめもスキュラさんも、一度の攻撃で何とか一頭に致命傷を与えられるかどうかという状態でございました。大群で来るなど、過去に前例がありませんでしたからな。戸惑っておりました。

 アイラ様の中におられる神龍様のご協力も得られましたが、それでも迎撃に当たった者達は、皆里への被害と犠牲を覚悟しておりました」


 でも神龍は最初の攻撃以外全部外してたけどね。


「しかしそこにアイラ様が猛烈な勢いで突撃してきましてな、怯んだガブガを二分と経たないうちに10頭以上撃破していましたな」

「およそ二分間だけで巨獣を10頭以上も撃破ですか!さすがは龍帝陛下」

「う~ん、私そんなに倒してたっけ?5頭程度だった気がするんだけど…」

「それでも十分すごい事ですよ?」


 爺やの説明でキリカが私を称えてくれたけど、私はあの時怒りで満たされてたからあまりよく覚えてない。5頭でもすごいってキリカは言ってくれてるけど。


「おかげで皆さん戦意を取り戻しましてな。一斉に奮起して形勢を逆転しようと動き出したのですが、直後にアイラ様が放たれた強力な魔法によって、大群でいたガブガが全て木端微塵になりました。結果、里に被害を出す事なく、戦闘に勝利したわけでございます。勝利後は里の者達全員でアイラ様を称えておりました」

「でも死亡者は出てしまったから、完全勝利とは言えないよ」


 高らかに私の活躍を語る爺やだけど、私の記憶にはまだ亡くなった人魚の姿と、その家族が泣く姿が未だに残ってる。

 みんな私に感謝してくれてたし、里に滞在してる間にスキュラさんからもあまり引きずらないよう言われたけど、やっぱりこれだけの力を有しておきながら犠牲を出してしまったのは心残り。


「アイラ様。皆さんあれだけの感謝をしてくれたのですから、十分に誇って良い事ですぞ。亡くなられた方々もまた、里を命がけで守ろうと戦った勇敢なる者達。里を無傷で守ってくださった事は、彼らもきっと感謝していることでしょう」


 爺やはこう言ってるけど、私はまだ心から誇る事は出来なさそう。まだ自分の心の容量はそこまで大きくない。


「思ったのですが、もしかしてお嬢様が頂いてきたムルムル貝は、その感謝によるもの…」

「確かに感謝されて貰った物ではあるけど、地上と違ってゼーユングファーだとしょっちゅう取れる物らしいから、特に価値はないそうよ」

「そ、そうなのですか…」


 シャロルは私がガブガの大群の大半を倒した事で高価な物を貰ったと思ったみたい。私そこまで物欲的な人間じゃないんだけどな~。


「しかし巨獣ですか…。懐かしいですね」

「オリジン様、巨獣と戦った事あるんですか?」

「ありますよ。龍帝時代に。アテーナも見た事はありますよね?」

「ええ。私の場合は周囲が戦っているのを見ていただけにすぎませんが」


 そっか。オリジン様は先代龍帝で、アテーナは生まれ育ちが龍帝国だから、遭遇経験があるんだ。

 でもそうなると、二人はあの山を越えた事があるってこと?


「なるほど。二千年前ならば、まだパンゲアだった頃ですね」

「ええ、そうです」

「天神界から見た現在のパンゲアは、もう遺跡のような状態になってますね」


 なんかキリカとオリジン様とアテーナで話し始めたぞ?何の事やら?

 私がクエスチョンマークを浮かべていると、キリカがこっち向いた。


「龍帝陛下。実は現在のドラゴ宮殿は二代目なんですよ。街も全て宮殿移設と同時に、現在の場所へ移ったんです。元々は巨獣がいる側に宮殿も街や住居もあったんですよ」

「ええ!?そうなの!?」

「はい。とは言っても、移設されたのは五百年前なんですけどね」


 そうだったんだ…。じゃあ大昔の竜族と巨獣は同じ場所で暮らしてたんだ。


「シュバルラング龍帝国の歴史は、『パンゲア』という竜族の祖が造り上げた都市から始まったと伝えられています。巨獣の襲来によって都市が破壊されようと何度も修復し、ご先祖様方は巨獣に対抗し続けたんです。そのためパンゲアは、竜族の強さと誇りの象徴にもなっていました。天神界から確認する限り、現在は遺跡のような状態で残っているようです」

「私が聞いた話によると、度重なる巨獣の襲撃による犠牲者の多発や、建物の修理で財政がひっ迫したことから、移住を余儀なくされたそうです。五百年前の事ですから、私の曽祖父母なら知っているかと」

「龍帝として龍帝国にいる間、私もパンゲアで過ごしましたが、とても美しい場所でした。大陸のどこの文明とも違う独特な雰囲気を持っていまして、私は個人的に気に入ってましたね」

「あの島にそんな場所が…」


 アテーナが龍帝国の歴史の始まりと、現在の旧都市パンゲアの状態を教えてくれて、キリカが五百年前に移住した理由を話してくれて、そしてオリジン様がパンゲアの美しさを語ってくれた。

 ていうか遺跡とかファンタジーに必要不可欠じゃん!ましてや巨獣がウジャウジャいるんでしょ?まさにゲームの世界!今度龍帝国行ったら絶対行こう!


「お嬢様…、目が輝いていますよ…?絶対行く気満々ですよね?」

「だって遺跡のような場所があるのよ!?しかもアテーナやオリジン様が過ごした場所でもあるのよ!?現龍帝として、そして神龍のためにも行かなきゃダメでしょ!?」

「解りました…、解りましたから…。満面の笑みで迫らないでください…」


 シャロルが何故か呆れ気味に訊ねてきたから、私はテンションアゲアゲで言い返した。


「パンゲアへの視察ですか…。兵を同行させるとなれば反対が出るかもしれませんが…」

「別に誰かが案内さえしてくれれば、あとは一人でも大丈夫よ。ガブガと戦った時だって、一発殴って勝ったくらいだし」

「いや…、さすがに陛下をお一人にするわけには…」


 キリカの心配を私は笑顔で返した。ガブガと戦った時はスルトが力を与えてくれてたけど、多分それがなくても私は巨獣に勝てると思う。だからこそ行ってみたい!


「私は今も様子見にパンゲアへ行きますよ。…五秒程」

「それ、行ったことになるんですか…?」


 オリジン様は今も時々パンゲアへ行くみたいなんだけど、滞在時間が僅か五秒。私は思った事そのままツッコんどいた。





 その後も人魚族とのやり取りをみんなに話して、私が地上へ帰る時の話になった直後に、爺やが何やら思い出した様子で話し出した。


「そうでした、アイラ様。あの姿を皆さんにお見せしてはいかがですかな?」

「ん?あの姿?」

「人体擬態でスキュラさんを見本で行った、人魚の姿ですよ」

「あ~!あれね!そういえばまだ見せてなかったわね」


 爺やが言ってたのは、スキュラさんも大興奮だった私の人魚姿の事だった。


「人体擬態って、確か私を試して行ったアイラ様のお手製能力ですよね?」


 セイレーンが首を傾げて訊ねてきた。


「うん、そうよ。ゼーユングファーを出る前にスキュラさんに協力してもらって、人魚の身体に変身する事に成功したの」

「え?ではお嬢様は、人魚族の方々と同じ姿になれるということでしょうか?」

「そうよ。せっかくだし見せてあげる」


 私はシャロルの問いに頷いて、ゼーユングファーにいた時と同じ工程、さらに早着替え能力も追加して、人魚の姿へと変身した。今私がいる場所は水がないけど、椅子に座ってる状態だし、バランスは保てるでしょ。


「ジャーン!どうよ?」

「お、お嬢様が…、本当に人魚に…!」

「わ~!キレイ!カワイイ~!」

「ヒレまできっちり再現されてる…。これはすごい…!」


 シャロルは驚きの表情のまま固まってて、セイレーンは興味深々で私の魚化した下半身を触ってきた。生前から直接人魚を見てきたアテーナも、私の再現技術に驚いてる。

 他のみんなも近寄っては来ないものの、驚きと興味が混じった表情で見てくる。


「あ、でもこの姿、ここだとちょっと呼吸が苦しいかも…。やっぱり水がある場所じゃないとダメか…。スキュラさんが地上で活動出来ない理由ってこれか…」


 私は急いで人間の姿に戻った。


「はぁ~…、呼吸が落ち着いた」

「まさか人魚の姿にまでなるなんてね…。スキュラもよく許したもんねぇ」


 擬態を解いた後、エキドナさんが感心するようにコメントしてきた。


「あ、スキュラさんには事情を説明することなくご協力いただきました。私が一方的に誘導しまして。後でちゃんと説明しましたけどね」

「あんた神獣兼人魚族長相手に何やってるのよ…」


 何故かエキドナさんに呆られた。エキドナさんってスキュラさんと相性悪いから興味示さないと思ってたんだけど、意外ね。


「セイレーンとスキュラさんに協力いただいたわけですし、次はエキドナさん、ご協力を…」

「なんでそうなるのよ!嫌よ!」


 むぅ…。話の流れでオッケー貰えると思ったんだけどなぁ。ダメか…。


 その後も夜遅くまでみんなと話し続け、各自自由行動をし始めた後も、私は複数の者達と会話を続けていた。


 こうして、視察休止期間は終わりを告げた。明日からは領地視察を再開する予定。

 もちろん途中からの再開になるんだけど、ゼーユングファーでの出来事が濃すぎて気持ちが落ち着いてない。早く視察モードに切り替えなくちゃ…。

これにて第十章は以上となります。

ここまでお読みいただきましてありがとうございました。

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