武術大会終了後
武術大会終了後。
客席にいた学院生達はホームルームのため各教室へ向かい、私達出場者は控え室の中心に壁を作って元の格好に着替える。
着替えの間もティナやホウをはじめ、他の出場者だった人達からも称賛の声をかけられた。やっぱり褒められるのは慣れてない。恥ずかしい。
着替えを済ませ、ティナとホウとレイジと一緒に教室へ戻る。教室に入るとクラスのみんなから大歓迎された。
「すごいわよ!アイラ!爆弾所持犯をあんたが撃退した話で今持ちきりよ!」
「優勝おめでとうございます!撃退劇は素晴らしかったです!もう惚れ惚れしちゃいます!」
ステラとニコルに称賛され、続くようにみんなから称賛の声を浴びる。
この時私はまだ廊下にいたのだけど、周りを見ると他のクラスの教室からも学院生達が顔を出し、私に称賛の声を上げていた。まるで私は英雄かのようになっていた。
教室へ入ってしばらくすると、王子殿下とリィンがやってきた。
「やぁ、お疲れみんな。特にアイラ、事件の早期解決はお手柄だったよ。あの時は爆弾を所持している事から、長期化する可能性を考えていたんだ。まさか突撃していくとは思わなかったよ」
「いや~、興奮したぜ!今度、俺と勝負してくれよな!」
「ありがとうございます、殿下。機会があれば勝負受けるわよ?リィン」
王子殿下の称賛とリィンの勝負の申し込みをきっちり受ける。
直後、王子殿下から予想もしなかった発言が飛び出した。
「アイラ。突然申し訳ないが、至急、特別応対室へ向かってほしい」
「特別応対室ですか?」
来賓があった際に使われ、学院生は原則使用禁止の特別応対室。そこに私が行けと?
「そこでグレイシア王国、グリセリア女王陛下が君を待っている」
王子殿下の言葉に、私も他のみんなも驚く。
「殿下、それはどういう事ですか?」
そう聞いたのは私ではなくティナ。そういえば大会前にグリセリア女王を見た時、ティナは警戒する表情を浮かべていた。
「グリセリア女王陛下が『アイラと二人きりで話したい』と申し出てきた。おそらく、優勝した事と爆弾所持犯撃退の件で興味を持ったのだと思う」
王子殿下はこう言ってるけど、神楽の事だから私が大会に出場するしない関係なく何らかの形で会ってきただろうな~。みんなは不安そうな表情を浮かべている。
「あの女王、アイラに何を吹き込むつもりだ?」
「アイラ、ヤバくなったら大声で叫んで全力で逃げるのよ!」
リィンは警戒している。それとステラ…、それは子供が不審者に遭遇した時の対処法だよ…。
「アイラ様…」
ニコルも心配そうな表情を浮かべている。そんなニコルの頭をやさしく撫でて微笑む。
「そんな心配しなくても大丈夫よ。じゃあ、ちょっと行ってきます」
私はみんなにそう告げて、教室を出て特別応対室へ向かった。
「お嬢様」
「あれ?シャロル」
特別応対室へ向かっていると、いつの間にかシャロルがいた。学院の校門で待機してるはずじゃ…。
「特別応対室前までお供します」
「え?どうして知ってんの?てか、なんでここにいるわけ?」
「勝手ながら学院内において隠密行動をさせていただいております。お嬢様がいらっしゃった教室でのお話を聞いておりましたので」
なんでいつの間にか隠密行動してんの!?うちの従者はぁ!しかも主に許可も取らずに!
「どっから話聞いてたの?」
「天井裏から」
「なんで盗み聞きしてんのよ…」
「直感的にお嬢様に何かあるような気がしまして」
「あぁ、さいですか…。まさか、神楽との会話も盗み聞くつもりじゃあ…」
「いえ、さすがに止めておきます。お嬢様が嫌がりそうな気がしましたので」
察してくれたのはありがたいけど、隠密行動して盗み聞きして良いなんて一言も言ってないぞ。私。
ということで、シャロルとともに特別応対室へ向かう。私は微笑みながら歩くペースを上げていた。
「なんだか嬉しそうですね、お嬢様」
「そりゃね。前世の頃の大親友と再会できるんだから」
女王と会うという事に心配する友人達をよそに、親友と再会できる事に私の気分は盛り上がっていた。