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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十章 視察の道は逸れて
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再会と、ジーナの状況

前半は視点がアイラから外れ、後半にアイラへ戻ります。

 アイラ達が洞窟へ移動し、波の音だけが響く砂浜に残ったアテーナとスキュラ。二人がこうして面と向き合って会う事は、実に約二千年ぶりの事だった。


「アテーナ、おいで」

「スキュラさん…!」


 スキュラは腕を広げて受け止める姿勢を作り、アテーナを呼んだ。アテーナは普段は見せない今にも嬉し泣きしそうな表情で、スキュラの胸に飛び込んだ。そんなアテーナをスキュラは優しく包み込むように抱き締めた。


「久しぶりね、本当に…」

「はい…!お久しぶりです」


 二人の抱擁はその後しばらく続いた。そして抱擁を止めた後、スキュラが口を開く。


「アテーナ、私と会う事躊躇ってたの?なんで?」


 スキュラはアイラと契約して以降、接触を図るタイミングがアテーナにもあったにも関わらず、何故か距離を置いて、今回もアイラやアルテミスに促されている事に疑問を持っていた。


「…二千年前、私が死んで、天へ昇って神の使いとなった後、自分の時間を見つけては天からスキュラさんの事を見てました。神獣になって、人魚族の族長になった後も何かと忙しそうにしているのを見ていて、今回も私なんかと会ってたら、スキュラさんの大切な時間を潰しちゃうんじゃないかなって思って…。

 それに中心はアイラ様なわけですし、私は既に死んだ身です。今こうして地上にいるのも、生きている者達とは違う原理です。死人しびとである私が、いくら神獣とはいえ再び会うのはどうかと…」

「……」

「……」

「…プッ…!フフフ…、ウフフフフ」


 アテーナの返答にスキュラはポカーンとした表情で数秒固まった後、軽く吹き出して笑い出した。


「なぁに?そんな事思ってたの?そんな気遣いしなくたって大丈夫だし、死人とは言え神の使いでしょ?別に何とも思わないわよ。ミイラじゃないんだから。

 それに自分の仕事量の限界値も自分で設定してやってるもの。ちゃんと自分の時間を作ってるし、部下達も優秀だから問題ないわよ」


 スキュラはアテーナの頭を撫でる。対してアテーナは黙ったまま俯いていた。


「あんなに小さくて可愛かったあなたが、成長したと思ったら神の使いか…。いつどういう事が起きるかなんて、本当分からないわねぇ」

「スキュラさん…。その…、すいませんでした。二千年前、急にいなくなって、悲しい思いさせてしまって…」


 二千年前、アテーナは天神界へ昇った後、自分の死が原因でスキュラが当時のハルクリーゼやオリジンと縁を切り、人魚としての役目に没頭していた事を知った。

 以来アテーナは自分のせいでスキュラがそうなってしまった事に責任を感じ、暴走するかのように働くスキュラが心配でならなかった。


「アテーナは何も悪くないわ。龍帝国で経験した辛い思いを乗り越えて、平和と正義のために懸命に戦って、力尽きる時まで戦い続けたんでしょう?とても立派な事だわ。その立派さが認められて、あなたは神の使いになった。すごい事じゃない?

 私があなたの死を悲しんだのも、地上と縁を切ったのも、必死になって働いたのも、全部私が勝手にやった事。あなたが責任を感じる事はないし、あなたには何の罪もないわ」


 スキュラはアテーナの気持ちを受け止め、責任を持つ事を止めるよう諭した。


「ねぇ、あなたの死をオリジンから聞いた時、敵兵と近い距離でまるで寄り添うように亡くなってたって聞いたんだけど、なんでそうなったの?」

「あぁ、えっと、好敵手だったんです。何度も対戦しては引き分けに終わってて、最後の戦いで私は相打ちになって死にました。でも息絶える前にお互い誓い合ったんです。もしまた会えたら、その時は仲間でいようって」

「そういうことだったの…。お互いを認め合って息絶えたのね…」

「はい」

「その、当時の好敵手ってどんな人だったの?」

「先程アイラ様をお迎えした時に一緒にいましたよ。緑色の服を着てる…」

「あっ!もしかしてアイラ様と一緒に私との会話を薦めてきた子?」

「あ、はい。そうです。アルテミスっていいます」

「はぁ~。一緒に天へ昇って一緒に神の使いになったのねぇ。そして一緒に降りてきたと。以前の敵は今の友って言うところかしら?」

「そうですね。今となっては親友です。一緒にアイラ様をお守りしています」


 微笑みを見せたアテーナに、スキュラは少しだけ安心感が生まれた。


「天へ行っても仲良くしてる子がいてくれて良かったわ。私じゃ天は見れないし。それに、アテーナの魂はもうどこにもないんだろうって思ってたから…」

「……」


 スキュラの発言に返答に悩むアテーナ。そんな彼女にスキュラは笑みを向けた。


「だからね、アテーナ。今あなたがこうして生前とは違う存在となって現れてくれた事が、私は嬉しくてたまらないの。アイラ様やハルクリーゼには本当感謝しなきゃね」

「あはは…。きっかけはハルクリーゼ様の初歩的なミスですけど、私もアイラ様が現れてくださって良かったと思っています。親友や仲間達と今の時代を直に楽しめてますから」


 神の使いと神獣という全く立場の違う二人だが、こうして再会を果たせたきっかけであるアイラとハルクリーゼに対し、二人は共通して感謝の念を抱いていた。


「天神界…だっけ?確か地上の様々な所を見渡せるのよね?ハルクリーゼとかオリジンとか、他の神の使い達はこれからの世界をどう見て考えているの?」

「私や他の使い達は、あくまで現在の状態しか見れませんし、未来も特に考えません。余地も出来ませんしね。でもハルクリーゼ様とオリジン様は何かしら考えてると思います。

 アイラ様や同様の存在であるグリセリア様へ全面的な補助を行っていますし、お二方をどんどん強化させていろんな経験させています。その事から予想すると、もしかすると将来アイラ様とグリセリア様が天神界へ昇った時に何かをしようと考えているのかもしれません。とは言っても、アイラ様もグリセリア様もまだ二十歳にすらなってないのでずっと先の話ですが」

「そう。ハルクリーゼもオリジンも根は良いから、そう悪い事は企んでないとは思うけど。でもあの二人、二千年前から隠し事多いって言われてたからなぁ」


 ハルクリーゼとオリジンは親友の間柄である。そういった関係もあってか、光差す翼の中でも二人だけで物事を決める事が多かった。それは現在でも同じく、特にアイラやグリセリア関わりの事に関しては、二人が決めて精霊や神獣、天神界メンバーに通達する流れが構築されている。

 スキュラは神獣としてそれを承知しているものの、ハルクリーゼとオリジンが一方的に物事を決めてしまう状態が続いている事に若干の不安を覚えていた。


「う~ん…。私は仕事をサボり続けるハルクリーゼ様と、それに怒るオリジン様しかほとんど見てないので何とも…」

「あっはっはっは!やっぱそこだけは変わんないのねぇ、あの二人。アイラ様も同じような事言ってたけど、アテーナから見てもそういう感じなら二千年もの間ほとんど変わってないって証拠ね。なんだか安心したわ」


 アテーナはハルクリーゼとオリジンの説教劇を生前の頃からよく見ていた。それもあってアテーナにとっては、二人は喜劇的なやり取りをする面白い二人という印象が強かった。

 なのでアテーナはスキュラからの問いの返答に困ったが、スキュラはその話を聞いて思わず笑ってしまった。同時にスキュラは、自分の心から不安が消えていく感覚を感じ取っていた。


「ねぇ、アテーナ。生前に私と最後に会ってから先、今この時までの事を聞かせてくれる?あなたがどんな光景を見てきたのか、どんな道を辿ってきたのか、聞かせてほしいわ」

「はい。えっとですね…」


 アテーナはスキュラに今までの自分の経験談を話し始め、スキュラはそれをとても穏やかな表情で聞いていた。


 そんな二人の会話を、アルテミスは陰でこっそり聞いていた。


(アテーナもスキュラ様も嬉しそう。会わせることが出来て良かった)


 アルテミスは安堵しながら、優しい表情で二人を見守っていた。





*************************************





 洞窟へ向かった私は、まず途中で方向を変えて川へ直行。川で塩を落とした。

 その後シャロルからタオルを貰って、入念に拭いた後に身体を冷やさないよう魔法で身体中から温風を発生させて身体を温めた。意地でも厚着はしない。


 そんで改めて洞窟へ向かうと、出入り口の隅でベヒモスが真っ白になって固まっていた。

 シャロルに事情を訊ねたところ、オリジン様にフルボッコにされて説教を受けたためらしい。これがジーナと関係あるらしいんだけど。


 でもって洞窟内に設置してあるベッドへ向かったら、ジーナが意識不明の状態で横たわっていた。驚きつつも洞窟にいた面々から事情を聞いて、私は心底呆れかえった。

 ベヒモスがやらかした行動以前に、ノンストップで休息も食事も睡眠もさせずに模擬戦を続けさせるなんてどうかしてる。ジーナはまだ神力の浸透すらしてない普通の人間なんだよ?


「なんでみんなして賛成してやらせてるのよ。ジーナは普通の領域の人間だって考えてよ」

「ですがお嬢様。ジーナさんが自ら発案していた特訓法の方がよろしくなかったと私は思います」

「ジーナ発案の特訓法?」


 シャロルからジーナが発案してきたという特訓法の内容を聞いた私は、もう驚きしかなかった。


「何を考えてるのよこの子は!完全に自殺行為じゃないの!」

「いやもう、本当にそうなんですよね…」


 シャロルは苦笑いの表情で私の言葉に共感してる。


「ジーナさんが案を言い出した時は、私を含め皆さん戸惑いました。しかし直後に山脈全体に雲がかかっている事にバハムート様が気付いたため、オリジン様とアグナ様が確認に行きましたところ、現地は吹雪だったそうです。そのためジーナさんの案は帳消しとなりまして…」

「ここでの休みなし特訓になったってわけね?」

「はい…」


 ヤレヤレ…。ジーナの案は危険すぎるから中止になった事は正解だろうけど、今のジーナがあの状態じゃあ結局ほとんど変わってないわね。


「ですが…、言い訳になってしまいますが、一応収穫はありました。特訓途中でセイレーン様からジーナさんの武器変更案が出まして、私が愛用しているナイフや、各自皆さんが持ってらっしゃった様々な小型武器を試させたところ、ジーナさんはどういう武器でも共通して扱う事が出来ると分かりました」

「そう。ん~…、てことはジーナは小型武器のオールラウンダーってことか…」


 特訓内容はともかくとして、ジーナがどれだけの実力をつけられたのかは気になるわね。

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