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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十章 視察の道は逸れて
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海から地上へ

視点がアイラへ戻ります。

 ゼーユングファーを出てスキュラさんや爺やと一緒に地上へ向かう私。暗闇だった周囲は徐々に明るくなり始めていた。


「僅かに明るくなり始めましたけど、なんだか里へ向かった昨日よりも海面へ上がるのが早くありません?昨日は深海まで到達するのにもうちょっと時間がかかったような…」

「そりゃあ、昨日はすっごく遠回りして里に向かってたからね」

「遠回りしてたんですか!?」


 どうやら昨日と今日では進んでるルートが違うらしい。私から見れば海の中はほぼ同じ景色だから分からんわ。


「昨日はアイラ様を海に慣れさせようって目的もあったのよ。だから海の生物達と交流もさせたんだし」

「昨日の魚達とのふれあいってそういう目的だったんですか…。てっきり全部偶然かと…」


 まぁ、楽しかったけどね。


「あぁ、そうそう。今後もし海水浴目的とかで海で遊ぶ機会があったら気を付けてね。砂浜の波に足を着けてるだけでも周囲が危険かもしれないから」

「どういうことですか?」

「アイラ様が海に入るか、少しでも海の水に触れると、海岸や砂浜に近い場所で生息する生物達がアイラ様から発せられる神力に反応して近寄って来るかもしれない……ってハルクリーゼから知らせが来てたわ。

 みんなアイラ様の言う事聞いてくれるはずだから暴れたりはしないでしょうけど、中には有毒魚とかもいたりするでしょうし、ちょっと深い場所に行けばサメとか来たりする可能性もあるから、気付かないでいるとアイラ様の周囲にいる人が襲われるかもね」


 私を中心にして超危険じゃないですか、やだー。


「どういう対策とったら良いですか?」

「アイラ様が存在を感知できた段階で、アイラ様から声をかけてあげれば良いと思うわ。念話魔法でも海の生物達には通じるから。『襲わないでね』とか『この辺にいてね』とか」

「なるほど…。そもそも神力に反応したからって、どうして近寄ってくるんですか?」

「地上の生物でもそうらしいんだけど、野性動物って本能でいろんな事察せるらしいのよ。海の生物達はアイラ様から溢れ出る神力が海水に混ざって流れる事で、その感覚を察知して神力の発信源がある方向、つまりアイラ様がいる方向へと進路を変え始めるわ。あっちに王者がいるってね。

 人間並みに知能ある生物ってみんな偉い立場にご挨拶しに行ったり気に入ってもらおうとしたりするでしょ?それと同じ。海の生物達はアイラ様に可愛がってもらおうとするわけよ」


 それって近寄るなとは言えないじゃん…。海水浴する時細心の注意払わないと…。


「…ん?ていうことは、今も…」

「今は寄って来ないわよ。リヴァイアサンさんがいるから」

「はっはっは。いやぁ~、わたくしめはとんだ嫌われ者でしてな~」


 そういえば爺やは大型生物以外避けられてるんだっけ…。


「昨日は逃げられる理由が分からないって言ってたけど、思い当たる出来事とかないの?」

「思い当たる出来事とすれば、大昔にある生物と喧嘩した事でしょうな。あの頃からわたくしめは避けられ始めましたからな。いや~、若気の至りですな」


 爺やが喧嘩した?海の生物と?


「今はもう絶滅したんだけど、この海にはリヴァイアサンさんとほぼ同じ大きさの巨大生物がいたのよ」

「へぇ~。その生物と爺やが喧嘩したと」

「そう。それでリヴァイアサンさんが勝ったんだけど、その喧嘩を境に複数体いたはずのその生物は徐々に個体数を減らしていって、間もなく絶滅したの。

 その生物はけっこう強くて恐れられてたんだけど、リヴァイアサンさんがそれに勝って、その後まもなく絶滅してしまった事から、今度はリヴァイアサンさんが恐れられ始めて、当時の魚達は『リヴァイアサンさんに反抗すると絶滅させられる』って認識したみたいなのよ。あれからだいぶ年月経ったけど、今も当時の魚達の祖先となる現在の生物達にその認識が伝えられちゃってるみたいなのよ」


 じゃあ間違いなくそれが避けられてる理由じゃん。もう原因判明してるじゃん。


「でもどうして巨大生物達の個体数は減って行ったんですか?」

「それは当時のリヴァイアサンさんのせいだと思うわ」

「当時の爺やのせい?」


 どーゆこと?単純に喧嘩しただけじゃないの?


「当時のわたくしめは少々怒り任せなところがありましてな、喧嘩に勝った後も怒りが収まらず、同じ存在である連中を徹底的に追い回して襲い続けまして、気が付いたら絶滅させておりました」

「爺や…」


 やり過ぎにもほどがある…。なに大量虐殺してんのよ。昔の爺や怖っ。


「今は喧嘩など致しませんのでご安心くださいませ。アイラ様のご命令がない限り、暴力的な行為は致しませんゆえ」


 そりゃそうだよ。今暴れられたら私ドン引くよ?


「その喧嘩の原因っていうか、きっかけってなんだったの?」

「泳いでいる際にすれ違いまして、その時に軽くぶつかった事がきっかけでございました」


 やってる事ただのチンピラじゃん!それで絶滅まで追い込まれちゃったんだから、巨大生物達は解せなかっただろうな…。


「まぁ、もしあのままアイツらが今も生存してたら海の生態系狂ってたでしょうし、ある意味リヴァイアサンさんのおかげで安心できてるとも言えるのよね」


 スキュラさんは巨大生物達がいなくなってくれて良かったらしい。とすると何か迷惑行為を働く生物だったのかしら?






 だいぶ泳いでやっと陽の光が差し込んでる所まで来た。メッチャ明るい。目がチカチカする。神力で自動補正されるだろうけど。


「この辺、昨日イルカ達と泳いだ所に似てて思い出します。また一緒に泳げたら良いな…」

「今はリヴァイアサンさんがいるから無理だけど、アイラ様が呼べば来てくれるわよ。海遊できる深さであれば一緒に泳げると思うわ。さっき言ったように念話で声が通じるから、呼べば喜んで来てくれるわよ」

「本当ですか!?わーい!」


 またイルカとふれあえる~!超嬉しい~!


「ただ魚達を呼び寄せる注意点として、深海に住む魚達を浅瀬で呼んだり、逆に深海で深海に適さない魚達を呼ばないでね。最悪の場合死んじゃうから」

「あ、はい。それは気を付けます」


 前世の頃にたまにニュースで「浅い所に深海魚が現れた」なんて見た事があったけど、あれは自然にやって来たのであって意図的じゃないから、無理に呼び寄せるのは良くないわね。






 それからさらに泳ぐ私達。もう底が目の前にある浅い所まで来た。


「目的地までもうすぐよ。ここまでお疲れ様だったわね」

「いえいえ!楽しかったですよ。前世の頃も含めて体験出来なかった事が出来て」


 海の中で普通に呼吸して、気軽に海の生物達とふれあい、前世の頃に存在していた技術ですら辿り着けてなかった深さまで潜り、この世界で伝説に近い扱いとされている人魚達と出会って親しみを深めた。

 これほど楽しい経験をさせてもらって、疲れるはずがない。むしろ逆に吹っ飛んだよ。


「スキュラさん、しばらくは海岸にいるんですよね?」

「ええ、そのつもりよ」

「アテーナと、たくさんお話してあげてくださいね」

「うん、たくさんお話するわ」


 アテーナとスキュラさんを会わせた後は、しばらく二人きりの方が良いはず。他のみんなを近づけさせないようにしないと。特にベヒモスとか、それからベヒモスとか、後はベヒモスとか。


「アイラ様。陸へ上がった後はそのまま川に入ってくださいまし。真水で塩を落としませんと、後で身体表面がベタつきますゆえ。無理そうでしたら水系魔法で水をかぶってでも構いません」

「うん、解ったわ」


 前世の頃も海やプールから上がった後は必ずシャワー浴びてたしね。当然よね。






 それから少し進んで、底に足が着けられるようになった。


「ぷはぁ!」


 私は海面に顔を出す。約一日ぶりに地上の空気を吸い込んだ。


「ん~!一日ぶりの外の空気~!」

「フフ…、水中生活が出来る状態でもそう感じるのね」


 私の感想をスキュラさんがニコニコしながら聞いてた。で、なにやら正面に見えている岩を指差した。


「私はあそこの岩へ行くわ。ちょうど居やすいのよ」

「あの岩ですね?解りました」


 スキュラさんは昨日いた岩に向かうらしい。どうやらこのまま砂浜へは上がれないみたい。






 砂浜が近くなるにつれ、誰かが走り回ってる姿が見えた。あれは…、シルフちゃんだ。オルトロスとザッハークもいる。あの不動の生物は…、エスモスか。


「お~い!」


 私は歩きながら砂浜に向かって叫ぶ。声は聞こえたようで、みんな足を止めてキョロキョロしてる。


「こっちだよ~!」


 もう一度声をかけると、シルフちゃんと三匹はこっちに気が付いた。


「あ~!アイラ様だ~!お帰りなさーい!」

「ワンワン!ワワン!」


 シルフちゃんは元気良く手を振ってくれて、オルトロスは吠えてる。

 ザッハークも嬉しそうに飛び跳ねていて、エスモスは大きな反応はないけどこっちを見てる。


 そして私が砂浜へ上がると、私の前に寄って来た。

 爺やは私の一歩後ろに立ってて、スキュラさんは岩へ飛び移った。…スゴイ跳ね方だった。


「ただいま、みんな。他のみんなは?」

「洞窟の方にいるよ。今呼んでくるね。みんあぁ~!アイラ様が帰って来たよぉ~!」


 シルフちゃんは洞窟の方へ、叫びながら可愛らしく走り去って行った。


「フフフ、相変わらず可愛らしいわねぇ。シルフちゃんは」


 スキュラさんは微笑ましい表情でシルフちゃんを見ていた。やっぱシルフちゃんは伝説達の癒しなのね。


「ところでその子がザッハーク?私まだちゃんと会ってないのだけれど」

「はい、そうです。私が生み出した新しい神獣のザッハークです。ほらザッハーク。スキュラさんにご挨拶」


 私はザッハークを手のひらに乗せ、スキュラさんの前で挨拶を指示した。ザッハークはクルンと回転し、挨拶の意思を示した」


「スキュラよ。どうぞよろしくね」


 スキュラさんは笑顔でザッハークに名乗り、ザッハークを撫でた。ザッハークはポヨンポヨンしている。


 直後、洞窟方面から多数が走る音が聞こえ、同時に洞窟側にいた面々がやって来た。


「アイラお嬢様!お帰りなさいませ!お帰りをお待ちしておりました!タオルを…」

「ただいまシャロル。タオルはいいわ。一旦海の塩を落とすためにこのまま川に入るから」

「畏まりました。ではその後タオルをお渡し致します」

「うん、お願い。皆さん、ただいま戻りました。留守をお任せしてしまってすいませんでした」

「良いんですよ。お帰りなさい」

「お帰りなさいませ。龍帝陛下」


 シャロルとの会話後みんなに挨拶して、オリジン様とキリカが返してくれた。私はこの時、集まっている面々が全員ではないことに気が付いた。


「ジーナは?それからベヒモスも」


 私がジーナとベヒモスがいない事を疑問にすると、何故か一部は苦笑いを浮かべ、一部はそっぽ向いた。


「えっと…、ジーナちゃんとベヒモスは~…」

「後程ご説明致します」


 セイレーンは苦笑いの表情で言葉を詰まらせ、それに被せるようにオリジン様が後で説明すると述べた。絶対なんかトラブル起きたでしょ?


「じゃあ、スキュラさん。私、奥に行きますね。今回はありがとうございました」

「こちらこそ色々とありがとう。今日はゆっくり身体を休めてね」


 私がお礼を言うと、スキュラさんはウィンクで返した。


「一丁前にウィンクなんかしてんじゃないわよ。腹立つわ」

「はぁ?腹立つのはあんたの態度でしょ?いい加減その捻じ曲がった性格何とかしなさいよ」

「ハンッ!あんたの腐った根性ほど曲がってないわよ」

「なんですって~!?」

「なによ~!?」

「お二人とも!」

「「すいません…」」


 昨日と同様、エキドナさんとスキュラさんが喧嘩し始めて、オリジン様が止めた。なんかお約束になってる気が…。


「アテーナ、ちょっと来て」

「はい、なんでしょうか?」


 私はアテーナを手招きして近くに来させ、そのままアテーナの肩を持って彼女をスキュラさんの前に移動させた。


「あんたとスキュラさんの関係はスキュラさんから聞いたわ。あんたも色々話したい事あるでしょう?こうしてスキュラさんが目の前にいるんだから、久しぶりに話しなさいよ」

「で、でも…」

「何を躊躇ってるのよ。あんたはスキュラさんが帰る時まで洞窟側に来ないで。これは主としての命令。良いわね?」

「……」

「従うべきよ。アテーナ」

「…はい」


 アテーナは何やら躊躇っていたので、命令というかたちで言い聞かせた。私の後ろからアルテも後押しした。アルテも多分事情は知ってるんだろう。

 スキュラさんは前に立つアテーナを優しい表情で見つめてる。


「じゃあ、アテーナ、スキュラさん。お二人で久々の会話を楽しんでください」

「ええ、ありがとう」

「はい。皆さん、行きましょう」


 私の言葉にスキュラさんがお礼を言ってきたので、私は会釈だけ返した。

 そしてアテーナとスキュラさんだけを砂浜に残し、私達は洞窟の方へ移動した。

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