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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第十章 視察の道は逸れて
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トラブル後、緊急事態

 リュウグウ城一番のトラブルメーカーだとスキュラさんが語るゲルダを探しに、私はスキュラさんの後に付いて行って、とある部屋に入った。入口には『使用人専用室』って表記してあった。使用人専用ルームらしい。


「ゲルダ!ゲルダはいないの!?」


 部屋に入るなりスキュラさんが叫ぶ。しかし部屋にいた人魚達は誰も何も言わない。それにみんなして目を逸らしてる。何か隠してるな。

 …もしかして、この部屋のどこかにゲルダが隠れてたりして。……ありえない話じゃないかも。ここは念のために『透視能力』を使ってみよー。


 透視能力は神力によって発動できる能力の一つ。壁や扉などの向こう側に隠れている者の姿、霧や煙の中で動く者の姿、バッグなどの荷物の中、服の中や下着の裏側、物置や棚の中身まで、様々な物を見通せる。この能力を収得した直後に発動してみたら、シャロルが戦闘で使ってる特殊糸の収納の仕組みが丸分かりで面白かった。本人には言ってないけどね。ちなみに能力を発動しても周囲には気付かれない。


 そんでもって透視能力を発動してみると~…、あ。


「族長、ゲルダでしたらあちらの方に…」


 使用人の一人がスキュラさんにゲルダの場所を示した。でも私は知ってる。それが嘘だという事を。

 この部屋の中にある大きめな棚の中で、一人の人魚が座って潜んでる姿が見えた。こっちの方見て警戒してる感じだし、なんか性格悪そうな見た目してるし、あれが絶対ゲルダだ。


「あっちの方に行ったのね?ありがと…」


 使用人に礼を言って部屋を出ようとしたスキュラさんの腕を、私は無言で掴んで制止させた。


「…?アイラ様?」


 私はあえて何も言わずに部屋の奥、棚がある方へ進む。進行方向にいる使用人達は特に何も言わない。

 そんなズカズカ進んで行く私を見てスキュラさんと爺やは何かを察したのか、私の後ろに付いてきた。


 私は人魚の姿を透視した棚の前に立ち、人魚が隠れている部分の引き戸を勢いよく開けた。


「…!!」

「ななっ…!」

「やっぱりね…」


 棚の中に隠れていた人魚はまさか見つかると思ってなかったんだろう。私が戸を開けた直後にビクッてなって、それからはそのまま固まっている。

 スキュラさんもまさかここに隠れてると思わなかったのか驚いている。私はわざとらしくボソッと一言。


「カリーナとの言い争いでスキュラさんがやって来る事を見越して、周囲に誤魔化すよう言ってここに隠れたっていうところかしら?でも残念ね。見つけた私達の勝ちよ」

「ゲルダアァァァァ!!」


 私が勝利宣言した直後、背後からスキュラさんが叫びながらゲルダへ突っ込んだ。今度は私がビックリだよ。


「くっ…、族長…」

「お前はクズな事ばっかりして、周囲を混乱ばかりさせて!今日こそ本気でクビにしてやるわ!」

「ふ、ふんっ!クビにでもなんでもしなさいよ。出来損ないのアイツが悪いのよ。親の事ちょっと馬鹿にしたくらいで泣いて。

 そもそもあんたもあんたよ。失敗ばかりで使えないアイツをいつまでもクビにしないから、私が代わりに辞めさせようとしてあげたんじゃない。ちょっとは感謝してほしいくらい…、がっ…!」


 まるで自分を正当化するような発言をし、あげくカリーナだけでなくスキュラさんの事まで批判してきたゲルダ。

 直後スキュラさんは、殺気を露わにしてゲルダの首を強く掴んだ。明らかにスキュラさんの指がゲルダの喉辺りに食い込んでる。これスキュラさんマジだ!


「言わせておけば愚かな発言ばかり。今までずっと大目に見てきたけどいよいよクビどころか処刑ものだわ。あんたは人魚族の恥よ。人魚族にあんたみたいのはいらないの。さようなら」

「…っ…!……っ…」


 スキュラさんはゲルダの首を掴んでる手の力を明らかに強くした。ギリギリと音が鳴ってる。ゲルダもさっきよりももがいてる。

 えっと、これは止めるべき?と思ってたら、爺やがスキュラさんの腕を触って首を横に振った。爺やがスキュラさんに無言で「殺しちゃダメだ」ってサインを出したというわけか。


「がふ…!げっほげっほ!げっほっ!」


 直後スキュラさんはゲルダの首から手を離し、ゲルダはその場に座り込んでむせ始めた。

 しかしスキュラさんがここまで怒り任せになるだなんて、こりゃあゲルダは過去に相当トラブル量産し続けてたわね?


「はぁ…、はぁ…。フフ…、ほら見なさいよ。あんたは部下を殺す事すら出来ながばぁっ…!」


 回復してきてゆっくり立ち上がったゲルダがまた何か言おうとしていたので、なんかイラッとした私はゲルダの腹部にグーパンチを食らわせといた。

 殴られたゲルダは吐血して倒れて意識を失ったみたいだけど、やり過ぎたとは思っていません。


「ア、アイラ様…」

「うるさかったので一発殴っておきました。おそらく殴られた衝撃で骨折または内臓の損傷があるでしょうから、意識が戻って逃げようとしても軽々動く事はできないでしょう。後はカリーナを見つけてゲルダを追放すれば、丸く治まりますよ」


 淡々と語る私に、スキュラさんは呆然としてる。爺やは何故かニコニコしてる。なんで爺やって私の行動に対していつもニコニコしてんの?


「あ、あははは…。やっぱアイラ様はすごいよ。そこまで冷静に淡々と対処できるなんてさ。私は族長としても神獣としてもまだまだだね…。怒りに囚われてたわ…」

「今までたくさんご苦労されてきたんでしょう?ゲルダの事も。でしたら仕方のない事ですよ」

「あはは…。コイツの居場所どころか私の苦労までお見通しか。さすが他の神獣達や精霊が認めるだけあるわね」


 スキュラさんは終始苦笑いしながら私を評価してくれた。冷静に対処した私と比較して怒り任せになっていた事を、スキュラさんは反省したんだろう。


「あんた達!どうしてゲルダの居場所を誤魔化そうとした!」


 と思ってたらスキュラさんは今度は矛先を周囲にいた使用人達へ向けた。でも使用人達はみんな俯いてしまっている。


「答えなさい!なんでゲルダを庇ったの!」


 さらに強く問うスキュラさん。みんなちょっと怯え始めてる。


 そういえばこうしてる間もゲルダ放置だけど、ここって兵士的な役割の人魚いないの?普通さっさと拘束するもんじゃないの?


「ゲ、ゲルダに…」


 最初に「ゲルダはいない」的な事言ってた使用人がやっと口を開いた。


「ゲルダに、脅されたんです…。そう言わないと、鱗全部剥ぎ取るって…」

「ゲルダなら、本当にやりかねないから…」


 …はい?鱗を全部剥ぎ取る?確かに人魚達みんな下半身に鱗あるけど…。


「そう…、他のみんなも?」


 スキュラさんの問いかけにみんな頷いてる。


「そう…。解ったわ。あなた達は不問とします。罪には問いません」


 スキュラさんは使用人達を被害者側と認定して許したみたい。…じゃなくて!鱗剥ぐってどういうこと~?誰か説明プリーズ!


「スキュラ族長!いらっしゃいますか!?」


 突然廊下側からスキュラさんを探す大声が聞こえたと思ったら、カリーナを探しに行っていたはずのミンスマンさんがいた。メッチャ慌ててる様子だし、なーんか嫌な予感…。


「ミンスマン?どうしたの?カリーナは?」

「カリーナでしたら無事見つけました。現在里の者達と共に避難しております」

「避難?どういうこと?」


 避難という言葉にスキュラさんは緊急事態を予感したのか、真剣な表情へ変わっていってる。周囲にいる人魚達や爺やも険しい表情をしてる。


「里の周囲海域にガブガが襲来してきました!今回は一頭や二頭どころではありません!数十頭はいる集団です!既に里は奴らに囲まれています!」

「なんですって!?」


 ミンスマンさんからの報告を聞いた途端、スキュラさんは驚きの声を上げ、周囲の人魚達はどよめきだした。話から察すると、その『ガブガ』は敵か何かかしら?


「なんでこうも次々と問題が起こるのよ!あー!もう!全員緊急避難!他に留まってる者がいたら引き連れて避難させて!」

<<<はい!>>>

「ミンスマン、あなたも避難を…」


 スキュラさんはイラつきつつも、周囲の人魚達やミンスマンさんへ指示を出してる。こういう時即決して指示を出せるところは見てるとカッコイイ。これからの私の立場を考えると、是非とも手本にしたいわね。そんな私は何が何なのか分からぬまま現在説明待ち。


「アイラ様」

「爺や?」

「どうやら戦闘のようですぞ。ガブガは海に生息する『巨獣』の一種です。とても凶暴な奴らでしてな、理由までは分かりませんが稀にこの里を襲ってくるのです。過去の襲撃でも幾名もの人魚達が犠牲となっております」


 巨獣。この世界の各地のどこかに生息しているとされる巨大な獣。

 個体数はそれほど多くはないとは言われてるけど、万が一現れた場合は最低でも二ヶ国分の軍事力を持って応戦しないと対処出来ないと言われている。

 どういう個体がいるかは全く分かってないって私はサブエル学院で教わった。なお、いつから存在してるのかも不明。


 ひとまず爺やの説明で今の状況は理解できた。でも一つだけ疑問が残る。


「ここにはスキュラさんが神獣として鎮座してるし、今なら爺やだっているのに、どうして構わず襲ってくるの?神獣は生物界の頂点的存在でしょ?」

「巨獣は対象外でございます。奴らは我々神獣や精霊方、神龍殿が何を言おうと襲ってきます。言う事を聞かないと申すよりは、聞いて理解する能力がそもそもないようでして」


 神獣管轄対象外か…。そんな存在もいるのね…。

 巨獣に関しては色々聞きたい事浮かんでるけど、今はそれどころじゃないわよね。


「爺や。今回現れたガブガ…だっけ?そいつはどんな見た目をしてるの?」

「サメがそのまま巨大になったと思っていただければ」


 サメが巨大…。それまさか『メガロドン』じゃないよわよね?


「承知致しました。どうかご武運を!」

「お願いね」


 ガブガの姿をイメージしてたらミンスマンさんがどこかへ去って行った。同時にスキュラさんが真剣な表情でこっちを向いた。


「アイラ様、ごめんなさい。歓迎どころじゃなくなっちゃったわ。私はこれからガブガの討伐に出るわ。あなたは隙を見て地上へ戻って。リヴァイアサンさん、申し訳ないけどアイラ様を地上へ連れて行って」


 スキュラさんは私をここから逃がす判断を示した。なーにを言ってんだろうね~。


「お断りします」

「お引き受け出来ませんな」


 私がスキュラさんの指示を拒否すると、爺やも同じように拒否した。


「何言ってるの!?今は緊急事態なのよ!?」

「その言葉、同じようにお返しします」

「え…?」


 確かに今は緊急事態。でもだからこそ、神の眷属たる私の出番。


「スキュラさんは私が無事で安全な場所へ逃げられるよう判断をしました。それは人魚族の長として懸命な判断だと思います。しかし一つだけ、スキュラさんは判断材料を入れ忘れてます」


 私は神気を解放させて体外へ放出させる。


「私が何者なのか、解ってますよね?」

「!!」


 私が神気解放状態で微笑むと、スキュラさんは驚いた様子で後ろへ若干退いた。


「これが…、アイラ様の気の力…」

「フフ…、スキュラさんは初めてアイラ様の神力を直に見れましたな」


 スキュラさんが驚いている間に、私は身に着けていたマイクロビキニからいつもの定番露出服に早着替え能力で着替えた。同時に髪型もポニーテールからいつものヘアーに戻した。

 これじゃないとなんか戦闘しにくい感じっていうか、マイクロビキニでサメ討伐とか訳分からんし…。


「さて、行きましょうか。ガブガ討伐」

「え、ええ…。急がないと…」

「緊急ですぞ。急ぎましょう」


 ガブガ襲来によって誰もが緊急避難し、無人状態となったリュウグウ城を私とスキュラさんと爺やは移動を開始。城の外へ向かい始めた。


 …あ。そういえばゲルダはそのまんまだけど…。


 ……。


 ……。


 ま、いっか。

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