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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第九章 領地視察へ
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次の目的地は

 もうどれだけ待っても会話が止まる様子のないシャロルとギルディスさん。さすがにこのままだと日が暮れるので、私が強引に両者の会話を止めた。

 しかしタイミング的に中途半端な会話の終わり方をしていたようで、締め括りとしてシャロルがギルディスさんに、今後正式な政府調査団が来た際に警戒せず従うよう頼み込んだ。

 そしたら、それを聞いていたさっきの奥さんが、不安そうな表情で訊ねてきた。


「あの…、話は理解出来ましたが、その後私達はどうなるのですか?」

「そ、そうだ…。今後俺らはどうなるんだ?」

「やっぱりここから追い出されるんじゃ…」

「そしたら俺達また居場所を失って放浪するはめになるぞ!俺はもうこりごりだぞ!」


 いつの間にか近くにいた人達へ不安が伝染してる。

 どうしたものかと思っていると、キオサさんが前に出た。


「皆さん、落ち着いてください。魔物との戦闘後の協議にて、今後の方針は決定していますので後程お知らせします。この方々はグレイシア政府の方々であり、グレイシア政府中枢とも繋がりを持っています。

 今後この場所がどうなるかはまだ明確ではありませんが、私や皆さんを追放したり、手荒な対応はしないことを約束してくださいました。ですから…」

「でも、あくまでそっちの連中がそう言ってるだけだろ?信用出来るのかよ?」

「そうだ!そもそも本当に政府の人間だって証拠も…」

「おい、どこの誰かも分からないとはいえ、魔物の襲撃から救ってくれた人達だぞ!そんな言い方失礼だろ!」

「そうよ!ウチの主人だって本当に危なかったのよ?」


 キオサさんの話は途中で止められ、その流れで住人同士が喧嘩し始め…。キオサさんもまとめるの大変ね…。


「はぁ…。アイラさん、ここの者達には私から後程じっくり説明しますのでご心配なく」

「あ、はい…。あはは…」

「わしも協力しよう。かわいい弟子が仕える者が領主となるのじゃ。喜んで力になるぞい」

「師匠…」

「それよりもお前さん達はそろそろここを離れた方が良いじゃろう。今の状態じゃと、誰かが警戒心からお前さん達を攻撃しかねん」


 キオサさんはため息をつきながら、私に心配しないよう言ってきた。…苦労してるんだね。

 ギルディスさんも協力を申し出てくれた。けど今は立ち去るよう言ってきた。でも確かにギルディスさんが言わんとしてることは理解できる。


「そうですね。そろそろ失礼しようと思います。みんな、洞窟に戻るわよ。シャロル、師匠さんに何か言いたい事あったら短文で頼むわよ」

「承知致しました。お嬢様」


 シャロルは私の言葉に頷き、ギルディスさんの方を向く。


「では師匠、またお会いしましょう。今度は色々時間をかけてお話しましょう」

「うむ、待っておるぞ」


 あれ?意外とアッサリ…。ハグとか握手とか良いの?……ま、いっか。


「ではキオサさん、私達はこれで失礼します」

「ええ。今回はお助けいただいて本当にありがとうございました。またお会いする日まで」


 こうして私達は村を後にし、フェニックスや精霊達と合流。洞窟へ戻った。






 洞窟に戻ってお昼頃。


「それにしてもあんた、師匠と再会して喜んでた割には別れ際アッサリしてたわね?」

「影なる者、去り際別れ際は素早く潔く。子供の頃、師匠からそう教わりました。隠密術を持つ者にとって、主以外の者に固執することはご法度なのです。それが師匠だとしても」

「へぇ~、なんかカッコイイわね。さっきの別れ方全く素早くも潔くもなかったけど」

「あはは…。まぁ、そうですね」

「ところで、もしかしてって思ったんだけど、シャロルはその教えに倣ってニコルに何も言わずアストラントを出たの?」

「いいえ?あの子に対してはただ独立心を身に着けてほしかった一心でそうしました。これで精神でも壊そうものなら、ニコルはまだまだ未熟者の域にすら入らない子供というわけですね」

「…ホント、ニコルにだけは常に厳しいわよね。あんた…」


 自分の妹の事をやたら心配したり、やたら怒ったり、やたら厳しくしたり。シャロルってニコルに対しての時だけ何だか変よね。


「ニコルとは、どちら様の事で?」


 傍で私とシャロルの会話を聞いてたキリカが、ニコルが誰なのか訊ねてきた。


「話してなかったっけ?シャロルの妹よ。私と同い年で、アストラントにいた頃の友人よ」

「引っ込み思案で周囲に迷惑ばかりかけるような情けない妹ですよ」


 私はキリカにニコルの事を教えてあげた。シャロルも説明してるけど、内容がだいぶヒドイ。


「そうですか。シャロルさんは妹さんの事、大切に思っているのですね」


 いや、キリカは何をどう解釈したらドイヒーなシャロルの説明からその言葉が出てくるのよ。


「皆さん、ご昼食出来ましたよ」


 ここで今日の昼食を作っていたアテーナが呼びにきたので、私達は昼食タイムに入った。






 昼食を終えた私達は、次の目的地へと移動を開始する。同行メンバーは精霊達を抜くとさっきと同じ。精霊達は今度は洞窟で待機する。

 次なる目的地は、キオサさんやギルディスさんがいた村からずっと山奥。そこにあるという何者かが住んでいる一軒家に向かう。


 まずはフェニックスに乗って上空を移動。途中から徒歩で向かう。

 歩いてる感じだと、目的地はだいぶ山奥で高い所っぽい。ずっと上り坂。


 と、歩いてる途中で動物の気配を察知。同時に人の気配も察知した。同時に同じ方向から気配を感じ取るということは、もしかして…。


「くっ…!ぐぅっ!」


 やっぱり当たり。一人の少女が熊と戦ってた。あれは完全に追い込まれてるわね。


「あのまま熊に攻撃させると危ないわね。ちょっと先行するわよ」

「え!?ちょっとお嬢様!?お待ちください!」


 私はシャロルの声を無視して熊に接近。熊が私の存在に気付いた瞬間、熊は急に大人しくなった。

 熊は体長3メートルはあるであろう巨体。でも今は全然怖さがない。私が頭撫でても素直に甘えてるし。


「私、この子に用があるの。悪いけど離れてね。これあげるから」


 私は異空間収納から大きな肉の塊を出して熊にあげた。城の別館から持ってきたかいがあった。

 熊は大人しく肉を受け取ると、口で加えた状態でゆっくり去って行った。


「さて…、あなた、大丈夫?」


 直後私は少女が無事か確認する。

 どうやら見る限りは目立った外傷はない。でも声をかけても、腰を抜かして座った状態で私を見たまま動かない。

 少女は私と同じくらいの年齢だと思う。割と整った顔立ちの子ね。


「やっと追い付きました…。ご無事ですか?お嬢様」


 私を追いかけたシャロルも追い付いて私のもとに到着。でも他のメンツがいない。


(あまり複数で行きますと警戒される可能性があると思いまして、シャロルさん以外は近くで見張ってます)

(あー、はいはい。了解。何かあったら念話するわ)


 アルテから念話が届いた。キリカとアテーナとアルテは近くで気配を消しながら行動するつもりみたい。


「もしもーし。大丈夫~?」


 少女は中々動く気配を見せなかったので、彼女の前で手を振ってみたら、彼女はハッと我に返った反応を見せた。やっぱフリーズしてたか。


「あ、あなた方は…?」

「その前に助けていただいてお礼の言葉もなしですか。随分失礼ですね」

「シャロル、そういう事言わないの。今は気が動転してる状態なんでしょうから。私はアイラ。彼女はシャロルよ。あなたの名前は?」

「……ジーナと申します」


 ジーナという少女は名乗るまでに間があった。警戒してることがよく分かる。まぁ、こんな山奥にそうそう人なんていないのは当然だし、用事を作って来る場所でもない。警戒されるのも当然なんだけど。


「ジーナね。よろしく。それで…、立てる?」

「……」


 私はジーナに手を差し伸べたけど、ジーナは恥ずかしそうに俯いて動かない。この子多分、腰が抜けて立てなくなってるっぽい。ホント私が来なきゃ熊に殺されてたわよ?この子。


「立てないかしら?それなら…、はい」


 私はジーナに背を向けた上でしゃがみ、手を後ろにまわした。つまりおんぶする姿勢である。


「お嬢様!それはいくらなんでも…!」

「他に手段はないでしょ?強制的には立たせられないし、立つまで待ってたら日が暮れるわよ。ほら、ジーナ」

「……すいません、失礼します…」


 ジーナはゆっくりと私の背にもたれかかった。私はジーナを持ち上げて立ち上がる。当然ながら重みは一切感じない。おんぶしてる感覚だけがある。


「それで?あなたの家は?」

「……あっちの方へ道なりに行った先にあります」


 ジーナは再び答えるまでに間があった。おそらく警戒心から言って良いか迷ったんだろう。でも動けないから言うしかなかったと。…この子はまず人が親切心でやってくれてる可能性があることを考えてほしいなぁ。


「にしても、あなたはなんであそこにいたの?」

「己を鍛えるために鍛錬を積んでいました。その途中で熊と遭遇しまして…」

「向かってきたから応戦したと」

「はい…」


 それで苦戦を強いられてやられそうになってたと。


「あの…」

「ん?」

「あの熊を、知っているのですか?あんな手懐けるなんて…」

「フフ~、秘密♪」


 私は笑顔でジーナの問いをかわす。まだ彼女が何者か分からない以上、やたら伝説に関わる話は出来ない。私は熊を手懐けられたのも、契約してる神獣達が野性動物に情報を与えたおかげなんだから。

 ちなみにシャロルは黙ったままずっと私の一歩後ろを歩いてる。ジーナを監視してるっぽい。

 そんなシャロルからずっと後ろの方からは、僅かに他の同行メンバーの気配を感じる。






 しばらく歩くと、ログハウスが見えてきた。


「あそこが家です」

「あそこね。とりあえず家までこのまま運ぶわね」


 私はジーナをおんぶした状態で、シャロルと一緒に調査対象となっている目的地の家に到着したのだった。

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