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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第八章 次の道へ進む時
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食事処でお話

 いつの間にかノワールと知人になっていた兵士の実家である総菜屋さんを訪れた私達。

 話の後、みんなで惣菜をいくつか購入して、私達はおばさんやジオと別れた。


 ジオは終始ノワールに対して緊張している様子だったけど、あの感じは立場関係の緊張じゃなくて、明らかに好意を抱いてる緊張の仕方だった。もしかすると、ノワールと初めて出会った段階で一目惚れしていた可能性がある。でもノワールはジオの気持ちに気付いてないっぽい。頑張れ!ジオ!


 それから間もなくして、時刻はお昼頃になっていた。

 私達はアテーナとアルテの案内で、ある食事処に入った。前世の日本にあった『カフェレストラン』みたいな所。


 席に着いた後、早速料理を注文。料理を待つ間、私はノワールに気になっている事を聞くことにした。


「ノワール、あなたジオとはいつどうやって知り合ったの?」

「あー、ジオさんとですか…」


 惣菜店で出会った若い兵士、ジオ。ノワールが彼のような下級兵士と、それ以前に私の知らない所で知り合っていた事が驚きで、気になってしょうがなかった。


「あれは少し前、大公殿下や大公妃殿下とお会いする前の事だったんですが、城内を歩いていたら目の前に挙動のおかしい人が同じ所をウロウロしていたんです」


 セリアの両親と会う前か…。つまり私は別館でくつろいでた時…。知らないうちにノワールは動き回ってるのね。


「困っているような表情だったので気になって声をかけてみたら「道に迷ってしまった」と言われまして、詳しく事情をお聞きしたところ、上司に頼まれて書類を軍本部へ届けに城へやって来たものの、迷子になって混乱していたようなのです」

「それがジオってわけね」


 私が城を巡った時、城内部の構造はそこまで複雑に思えなかったけど。もしかしてジオは方向音痴なのかしら?


「それで目的地まで案内をしまして、本来ならそこでお別れなのですが、別れる直前にジオさんのお腹が大きく鳴りまして、ジオさんの用事が終わった後に食堂まで案内しました」


 ジオのお腹が鳴った事はともかく、ノワールはジオを食堂へ案内するために、ジオの用事が終わるまで近くでわざわざ待ってたってことでしょ?親切過ぎない?


「食堂へお送りした後ジオさんとは別れまして、それから何時間か経った後鍛錬しようと部屋を出てちょっと歩いたら、また迷子になっているジオさんと遭遇しまして…」


 やっぱジオは方向音痴だ。同行者いないと動けないタイプだ。


「何度も迷子になりながら歩いていたらしく、精神的に疲れてらっしゃるご様子だったので、近くのベンチへ行って休憩も兼ねてしばらくお話していました。その後城の出口まで送って差し上げまして、そこでお別れしました。今日お会いしたのはその時以来ですね」


 ノワール優しすぎ。ノワールは優しすぎる。重要な事なので二回言いました。

 レイリー様…、ノワールはとても優しく親切な子になりましたよ…。


「まぁ、変な輩じゃない事は確かみたいだし、友人が出来て良かったわね!ノワール」

「まだ会って間もないので友人と呼んで良いのか正直分かりませんが…。しかしこれもアイラ様が私をこの国へ誘ってくださったおかげだと思っています。本当にありがとうございます」


 この子は何かある度に私のおかげだと言う。ホントに私は何もしてないのにね。


「お待たせしました~」


 ここで店員さんが料理を運んできた。ノワールとジオの話はこの時点で終了し、みんな料理に感心を移す。

 ひと通り食べ終わった後、私は以前気になったある事を聞いてみることにした。


「そうだアテーナ、アルテ。前に二人は敵同士だったって話してたでしょ?二人の生前の事聞かせてよ」

「「あぁ、そういえば言いましたね」」


 以前神獣と契約しに行く時に、アテーナとアルテは生前敵同士だったと話していた。私は今その事を思い出したのだ。


「え!?お二人って敵同士だったのですか!?」

「意外過ぎますね…」

「普段ずっとお二人でいますよね?今はそんなに仲がよろしいのに?」


 シャロル、ノワール、キリカも驚いてる。アテーナとアルテっていつも常に一緒に行動してるから、周りの人はそう思えないよね。


「はい、実は昔は敵同士でした」

「対面しては戦って引き分け、また会って戦っては引き分けを繰り返してましたね」


 驚いている三人にアテーナとアルテは頷く。二人の生前の頃の戦闘力が互角だったらしい。


「私とアルテが生きていた当時、この世界は各地で戦が起きておりました。私はオリジン様の部下として、各地で転戦していました」

「当時ハルクリーゼ様を頂点として集まっていたどこの国にも属さない組織が、世界連合組織『光差す翼』でした。オリジン様は組織の幹部でしたね。

 アテーナも属していたその組織と当時対立していたのが、軍事大国として強国の一国だった『アヴローラ大帝国』で、私はその国の兵士でした」


 アテーナは当時の世界情勢と自身の立場を説明し、アルテが組織と国の名を出す。


 二千年前当時存在していたとされる世界連合組織『光差す翼』は、当時のハルク様が世界中で起きていた貧困や戦をなくすために立ち上げた組織として、今も教科書等に載っている。ただしハルク様自体が伝説なので、光差す翼も伝説扱いだけど。ちなみにこの組織が後のハルク教だとも言われている。

 アヴローラ大帝国は二千年前に実在した国として、悪い意味で有名。というのも、皇族も政府も民も誰もが傲慢で我儘な国だったと伝えられていて、かなり酷かったと言われている。

 現在アヴローラ大帝国は消滅しており、国があったとされる場所一帯は荒野や岩山が広がる無人地帯になっているらしい。長年どこの国も所有していないんだとか。


「光差す翼とアヴローラ大帝国が戦いを始めた頃、私達は偶然戦場で相対しました」

「私が絶対の自信を持っていた遠距離射撃を全て回避して突っ込んできた時は驚きましたよ」


 戦場でたまたま出会った二人か…。もの凄い確率ね。


「アルテミスさんの射撃を全て避けたのですか…?さすがですね…」

「よく見るとなんとなく軌道が読めますよ?」

「いや無理です。それが出来るとしたらアイラお嬢様か女王陛下くらいだと思います」


 シャロルはアルテの射撃を全てかわしたアテーナに驚く。シャロルは私が龍帝国にいる間に二人から指導を受けていたから解るんだろう。

 軌道が分かると言うアテーナに、シャロルは困惑気味に首を横に振った。


「それで、その勝負は引き分けだったのね?」

「はい。引き分けで終わりました。私もアルテも互いに撤収で」

「お互いに次ぎ会ったら必ず決着をって言い合ってましたね」

「それから戦いがある度に何故か出会って何度も何度も戦って…」

「それでも優勢にも劣勢にもならず…」


 何度戦っても互角のままか。まさに好敵手だね。にしても何度も会うってすごいね。


「そんな状態が何年か続いて、気が付けばお互いを認め合うようになっていました」

「好敵手としてこれほど相応しい相手はいませんからね」


 何年も互角のままが続いたらそうもなるよね。なんだか戦国武将の武田信玄と上杉謙信みたい。


「しかし世の情勢は変わっていきました。光差す翼が全体的に優勢になってきて…」

「アヴローラは国自体疲弊してきて追い込まれて行ったんです」


 世界連合組織と一国じゃ、いくら強国でも差が出てくるよね。連合組織は他国から支援を受けてただろうし。


「ハルクリーゼ様やオリジン様、他の仲間も善戦して、光差す翼はとうとうアヴローラ帝都を陥落寸前まで追い込んだんです」

「極限まで追い込まれたアヴローラは最後の抵抗に出ました。残った兵士総出撃で、皇族は逃げるという内容でした」

「皇族格好悪い」


 アテーナは光差す翼の状況を、アルテはアヴローラの動向を説明する。私はアヴローラ皇族の行動に格好悪いと物申す。国民捨てて自分らだけ逃げるとか、皇族として失格ね。


「私とアルテの戦いも最後を迎えました。決着を着けるため、私は進行する部隊から一人抜け出して、一直線にアルテのもとを目指しました」

「この時私も同じ事をしていました。帝国兵としての最後の意地を見せるため、アテーナを探して軍から抜け出しました」


 二人の戦いも最終局面というわけか。そして偶然か運命か、二人してお互いのもとを目指してたんだ。


「そして私とアルテは出会いました。偶然にも周囲に誰もいない所で」

「近くで轟音は聞こえていましたが、もはや私も気になりませんでした」


 誰もいない状態で一対一の真剣勝負…。まるで宮本武蔵と佐々木小次郎の巌流島の戦いのよう。


「私もアルテも、必死になって戦いました。今までにない程に全身全霊で」

「私は途中で城が燃えている事に気が付きましたが、もう止まるつもりはありませんでした」


 お互いマジの中のマジで戦ってたんだね。城が燃えてたという事は、光差す翼が勝利した証拠なんだろうけど、アルテはもう止まらなかったのか。


「結局、一騎打ちはどのように決着が着いたのですか?」


 ノワールが二人に決着の展開を聞くと、アテーナもアルテも何故か苦笑いを浮かべた。


「戦いは結局…」

「決着着かなかったんです」


 えぇ?決着が着かなかった?


「私もアルテも長時間の全力戦闘で限界を迎えてました。なので私は最後の賭けとして、捨て身の一撃を放つ事にしたんです」

「私もアテーナと同じ事をしようとしていました。自分が持てる全てを使って、戦いを終わりにしようとしたんです。もう遠距離で狙う事もなく」

「そしてお互い同時に攻撃を放って…」


 最後の結末に対する緊張に、私達は黙り込む。


「私はアルテの攻撃を食らい」

「私はアテーナの攻撃を食らいました」


 要するに相打ちか。だから決着が着かないって事なんだ。


「私とアルテは刺し違えという状態で、私はそこで自分の命が終わる事を直感的に悟りました。でもそれはアルテも同じだったようで、私達はお互いの方へ顔を向けました」

「それでお互い誓い合ったんです。もしいつかどこかで別のかたちで出会う事ができたら、その時は仲間でいようって」

「その約束をした直後、私は意識を手放しました」

「私もおそらくアテーナと同時です。あの時以降の記憶がありませんので」


 なんとドラマチックな終わり方…。…あれ?でもそうなると?


「そこであんた達が息絶えたってことは、二人はハルク様やオリジン様よりも早く死んだってこと?」

「はい、そうです」

「ちなみに戦死扱いです」


 んん~?そうなると変だぞ?


「それってあんた達はハルク様よりも早く天神界へ行った事になるけど、二人はハルク様の手によって天神界入りしたんじゃないの?」

「「違いますよ?」」


 私が疑問を投げると、二人とも同時に否定してきた。


「私達はハルクリーゼ様が神に就任する前の先代神、エーファ様の導きで天神界へ来たんです。一騎打ちに感動したとか言われて」

「最初天神界で目が覚めた時は驚きでした。周囲はお花畑で、正面には知らない人がいて、隣にはアテーナがいたんですから。二人で揃って困惑してました」


 二人はクスクス笑いながらあの世に逝った後の事を語る。でも私には新たな疑問が浮かんでいた。しかも超今更な疑問。


「そういえばハルク様、自分の事『創造神』とか言ってたけど、今更ながらそれは変よね?神様も精霊王様にも先代がいたみたいだし…」


 私が大聖堂で天神界へ飛ばされ、初めてハルク様と出会ったあの時、ハルク様は確かに自分が『創造神』だと言っていた。今思えば歴史年数に合わないんだけど…。

 私の言葉に、アテーナとアルテは苦笑いしていた。


「ハルクリーゼ様がおっしゃったその発言はおそらく…」

「威厳を保つための格好付けだと思います」

「へぇ~、そう…」


 アテーナとアルテの壮絶な終わり方に言葉が出ないシャロルやノワールやキリカとは別に、私の頭の中ではハルク様の威厳がまた一つランクダウンしていた。

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