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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第八章 次の道へ進む時
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前世の思い出

「私とセリアは、元々同じ学校に通っていて同じクラスでもあったんだけど、入学してから一年間は関わる事はなかったの」

「当時の私、独りぼっちだった」


 私とセリアは前世の事を語り出す。

 高校入学から次の春が来るまでの一年間は、私とセリアは全くの他人だった。お互い存在は認識していたけど、基本的に関わる事はなかった。


「セリアは入学直後から有名でね、周囲に対して半端ない威圧かけまくって、友達の一人も作らずずっと一人でいたのよ」

「逆にアイラは顔広かったよね~。見かける度に違う人と交流してんだもん。私を抜いて他に知り合ってない人いないんじゃないかと思ってたよ」


 前世の頃の私はたくさんの友達を作って過ごしていた。逆にセリアは常に一人。完全に正反対だった。


「陛下とアイラさんで見事なまでに逆ですね」

「陛下は何故、周囲に対してそこまで威圧していたのですか?」


 オルシズさんは率直な感想を述べ、アリスがセリアの当時に威圧の理由を問う。


「私は圧をかけてたつもりは全くなかったんだよ。無意識に圧が出てたみたいでさ」

「後から分かったんだけど、当時のセリアは緊張からそういった状態になってしまう性格だったの。馴染みさえすれば普通なんだけど」


 人って結局みんな第一印象で判断するから、セリアはとことん悪く見られちゃってたんだよね。


「あれ?陛下の性格って結局当時も今も変わってない…」

「うん、なんだかんだで変わってない。アイラもあんま変わってないけど」

「多分記憶と一緒に性格もそのまま持ってきたんじゃない?ハルク様に聞いてみないと分からないけど」


 セリアの性格が変わってないと考え込むリリアちゃん。思えば環境と身体が変わっても中身そのままなんだから不思議。


「ただセリアは圧だけじゃなくてね、とにかく仕返しがすごくて、そのせいでみんなセリアから距離置いてたのよ」

「あの程度の仕返しの何が悪いのさ。因果応報じゃん」


 私がセリアの仕返し話をすると、セリアは納得できないという感じの態度をとる。


「例えば、どのような事を?」


 ノワールから内容の質問が飛ぶ。


「ある時ね、セリアをイジメようとした連中がいたの。セリアはその連中に水をかけられて、セリアは全身びしょぬれになったんだけど、どういうわけかセリアは何か返す事もなくどこかにいなくなったの。

 しばらくして戻ってきたと思ったら、セリアは何かが入った大きい容器を持っててね、そしたらそれを水をかけた連中にぶちまけたのよ」

「あん時マジで怒って怒り任せだったな~…」


 私が話す横で、当時の当事者は思い出に浸っている。

 当時私とセリアの同級生がセリアをイジメようと企て、セリアにホースで水をかける事件が発生していた。しかし当時のセリアは盛大に濡れたのにも関わらず、やり返すどころか言葉すら発さずどこかへいなくなってしまった。

 この事に私も周囲も水をかけた連中も困惑。逆に反応に困る状況になっていた。

 しばらくして戻ってきたと思ったら、セリアの手には大きなポリタンク。しかも液状の何かが入っていた。


「セリアの急な行為にみんな驚いてたんだけど、私はセリアが容器の蓋を開けた瞬間に嫌な予感がしてね、身の危険を感じてその場から離れたの」


 私が離れた理由は簡単だった。ポリタンクからガソリンに近い臭いがしたから。セリアがこの後どうしようとしてるのか想像がついたからだ。


「私の予感は的中して、セリアがかけた液体は発火性がとても強い物だったの。連中にかけた直後に火を起こそうとしてたから私も怖かったわよ。

 でもすぐに先生が止めに入って、なんとか火災になる事と連中が火だるまになる事態は避けられたわ」

「燃やして良かったと思うんだけどね。あんな連中」


 未だに反省する気なしのセリア。当時の私は「この子は人の命を何だと思ってるんだ」と思ってた。


「やっぱり今と変わらないような…、というより今の原型が前世だったという事ですか」


 なんかオルシズさんが一人で納得してる。何やら納得できる情報が得られたらしい。


「あとは先生に注意されたからって有毒性のある液体飲ませようとしたり」

「あ~、あったね~」

「いたずらした奴を包丁持って追い掛け回したり」

「あったあった」

「縄で拘束して学校の屋上から強制的に落としたり」

「懐かしいね~」


 有毒性のある液体とは『アルコールランプ』の中のアルコールの事。

 包丁は調理室から持ってきたらしい。

 縄で縛って落とすのは、いわゆる強制バンジージャンプ。


 セリアは懐かしがってるけど、懐かしむようなことじゃないからね?


「失礼を承知で言わさせてもらいますが、女王陛下ってロクな事してないんですね…」

「私、追い掛け回されるきっかけを聞いた気が…」

「そういった行為が今世でいつだったかの大量処刑に繋がるわけですか」


 アリスは失礼を承知で感想を述べる。

 リリアちゃんは自分が以前に追い回された事を思い出したんだろう。沈んでいる。

 オルシズさんが言った大量処刑とはなんぞ?


「なんだかんだで一年が過ぎて二年目を迎えて、こんな感じに桜が咲いてた頃に、桜を眺めながら歩いてたらセリアが立ち止まったまま桜を眺めてたの」

「私とアイラが出会った時だね」

「私はセリアの桜を眺める目がとても悲しそうに見えてね、なんだか放っておけなくて思い切って声をかけたの」

「そんなに危険行為繰り返していた陛下によく声かけられましたね…」


 私がセリアと出会った時の事を語ると、リリアちゃんが感心してきた。確かにあの時既に誰一人関わろうとしなかったセリアに声をかける事が出来たのは私自身不思議でならない。


「最初は急に声かけられてビックリだったよ。なんだコイツと思って突き放してたんだけどさ、その後もしつこくて」

「私自身友達作ろう意識が点火しちゃって、もう仲良くなるまで声かけてやろうと思ってたわ」


 私は初めて声をかけたその日から、どれだけ冷たくされようとしつこく声をかけまくった。突き飛ばされようがキレられようが構わず。


「お嬢様…、そんなに友人を作れる力があるのならば何故学院入学までご友人を作らなかったのですか…」

「それはみんな貴族だったから!ていうか今更その事引っ張り出さないでよ!」


 話を聞いていたシャロルが呆れた様子で、サブエル学院入学以前の頃に友達作らなかった事を今更責めてきた。


「それでそこから時間をかけて仲良くなって、一緒に出掛けるようになったり、セリアお手製の服を着たり、どこかにお泊りしたり」

「アイラと遊ぶようになってからは世界が変わったかのような感覚だったよ。楽しくて仕方なかった」


 ちなみに私が過激露出服を好むようになったのもセリアと関わりだしてから。


「そういえば、アイラがキレたのも私が仲良くなった後だったよね?」

「そうね。あの時はあんたの気持ちが少しだけ理解できたわ」

「お嬢様が本気で怒った時ですか…」


 思い出したように話を振るセリアに、私も当時の事を思い出す。

 シャロルは私がマジギレするイメージが沸かないようで首を傾げている。


「当時一つ上の先輩だった人から、セリアと縁を切るよう言われたの。しかもセリアの事散々馬鹿にして、酷い発言ばかりしてきて…。私ももう怒りで正気を失って、そこから先は記憶がほとんどないわ」

「その時私は近くにいなかったんだけど、アイラが向かったはずの方で騒ぎが起きてるって話が聞こえたから、行ってみたらなんかとんでもない事になってて驚いたよ。

 アイラがその先輩の首を掴んで絞めてて、その先輩は全身血だらけで、アイラも手足血だらけで、周辺にはあちこちに血が付着してて、アイラの目つきがいつもと違くて。

 私驚きと同時に、このままだと先輩が死ぬと思って慌ててアイラを止めに入ったよ」


 最後にセリアが止めに入ったのは私も覚えてる。気が付いたら血だらけになっている先輩がいて、自分でなんとなく怒り任せにこの人を殴ったんだなって思った。


「キリカ。龍帝国でアイラが口調と態度を変えたって言ってたよね?」

「はい、言いましたが…」

「その時のアイラの口調って、まさに王って感じの口調じゃなかった?態度も淡々としてるっていうか」

「…!はい!そんな感じでした!」

「前世の頃と今じゃ度合いも違うだろうけど、それが本気で怒った時のアイラなんだよ」

「龍帝国の時はちゃんと自我持ってたけどね」


 セリアとキリカが話し込んでるけど、他のみんなはやっぱり想像できないみたいで難しい顔をしてる。

 私は誤解されないよう、龍帝国の時は自我があった事を伝えといた。


「話戻すけど、それから時が経って二人で出掛けたある日、当然死が訪れたって感じかな」

「そうだね。まさか神様経由で再会出来るなんて思ってもみなかったけど」


 こうして私とセリアは前世語りを終え、一旦沈黙が流れる。


「聞いていて思ったんですが、お二人って意外と関係持ってからまだ長くないんですね」


 アテーナが沈黙を破るようにコメントしてきた。確かに私とセリアの関係は高校二年から。鉄パイプの下敷きになって死んだのが確か冬だったから、今世で再会してからの分も含めても、多分一年経ってるかどうか。

 そんなにも短いのに、お互い想い続けていられるんだからすごいよね。私とセリアって。


「今は長くなくてもこれからがあるさ。私はずっとアイラと変わらない関係を続けるよ。昨日ここで二人でそう誓い合ったんだ」

「うん。こうしてまた出会えたんだもの。二人でいつまでもどこまでも突き進むつもりよ」


 私とセリアはみんなにこれからも二人で進む事を宣言。これからも一緒。これが私とセリアの共通認識だ。


「なんだか…、生前の頃の私とハルクを見ているようです…」


 オリジン様が何かボソッと言葉を発したので顔を向けると、なんだか懐かしそうな表情を浮かべていた。直感的にハルク様との事なんだろうなと感じた。

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