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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第八章 次の道へ進む時
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再結束

 一時間後、リベルトはようやく泣き止み、他の面々も落ち着きを取り戻した。そしてリベルトは再び話し始める。


「僕は王子として以前に、人としてとても愚かな行為をしてしまったと思う。だからどう責められても返しようがないし、認めざるを得ない。

 だからこれから僕は、何を言われてもそれらを受け入れて生きて行こうと思う。アイラが前を向いて歩き続けていたように」


 リベルトは一呼吸置いて、話を続ける。


「アイラから託されていた学院会を傾かせ、シャルロッテや後輩達に負担を強いてしまった事は謝罪する。申し訳なかった」


 リベルトはシャルロッテに頭を下げるが、シャルロッテは窓から外を眺めたまま反応なし。反応を待っても意味がないと踏んだリベルトは、話を再開させる。


「僕は既に学院会に属していない。だから学院会の事はシャルロッテや後輩達に任せる。僕はみんなと同様、残りの学院生活を全うして、その後は王族としての務めを果たす事になるんだけど、過ちを犯した僕はそれだけでは到底許されないだろう。だから僕は、アイラやノワールが去ってしまった今回の件を責任持って終わらせようと思う。

 まずは今回の件の関係者先各所を回って、お詫びしに行く。当然父上や政府閣僚達がそれを許さないとは思うけど、強引にでも僕は行く。

 それを最初として、最終的にはアイラとノワールとシャロルをアストラントへ引き戻す。まだ方法は見つけてないけど、どれだけ時間がかかろうと、必ず引き戻す!」


 リベルトは強い決意を持って、アイラ達の引き戻しを実現させる事を表明。そんなリベルトを見ていた面々は、少しだけ微笑んだ。


「殿下…」

「私はどこまでもお付き合いします。お一人では大変な事ですから」

「私も同感ですわ」

「しゃーねえな~。付き合ってやるか」

「「リィンさんはまず殿下に謝るべきです」」

「わ、私もお姉ちゃんが帰って来てくれるよう頑張ります!」

「俺達も手伝うよ。なあ?ステラ」

「当然よ。友達だもの」


 ナナカはリベルトの決意にただただ感激。

 ティナは共に歩む事を表明し、ホウも同調する。

 リィンは腕を頭の後ろにまわして偉そうな態度をとるが、イルマとエルマの姉妹に今までの喧嘩越し態度の謝罪を促された。

 ニコルは姉であるシャロルを引き戻す事を宣言。レイジとステラも協力を申し出た。


「みんな…。ありがとう。長い戦いになると思うけど、改めてよろしく」


 リベルトは感謝の意を込めて、みんなに頭を下げた。


「殿下のお力になる事は貴族として婚約者候補として当然の事ですわ。わたくしならどんな不正を働こうと必ず力になってぐええぇぇぇぇ…!ティナさん…、苦し…、苦しいですわ~…」

「不正はダメと言っているではありませんか。しかもすぐバレるくせに」


 不正を働いてでも協力する事を宣言したホウの首を、ティナが腕力で絞めた。絞められたホウは、手でティナの腕を叩いてギブアップの意思表示をする。

 相変わらずな二人のやりとりに、学院室には笑いが起きた。唯一シャルロッテを除いては。


(アイラ先輩。どうにか先輩方の関係は戻りましたよ。なんか引き戻すとか言ってますけど、気にしないで先輩は先輩のやりたいように過ごしてくださいね)


 シャルロッテはリベルト達の事など気にもせず、心の中でアイラが聞けば確実に苦笑いするであろうメッセージを真面目に送っていた。


 アイラが不在となった事を発端に壊れかけていたリベルト達の仲は、アイラが育てた後輩によって修復される結果となったのだった。






 それから十分後、リベルトは今後の活動の具体的な内容を皆に説明した。


「えっと、とりあえず丸く治まったって事で良いんだよね?じゃあ、解散…」

「一つよろしいですか?」


 話が終わり、ナナカが解散を宣言しようとしたところで、今までずっと外を見たままだったシャルロッテがそれを止めた。


「王子殿下や皆さんが何をしようと私は興味ありません。皆さんの好きなようにやっていただければ別に良いです。でも念のため言っておきます。

 これはあくまで私の推測ですが、少なくともアイラ先輩をアストラントへ戻すのは不可能と思います」


 最後の最後に意欲を落とす発言をしたシャルロッテに、他の面々は動揺する。


「あ、あんた…、なんでそんな希望のないことを…」


 戸惑うステラの質問に、シャルロッテはすんなり答える。


「アイラ先輩はグリセリア女王陛下からグレイシアへ移住の誘いを受けていたと聞いています。だとすれば、アイラ先輩がグレイシアで冷遇されている事はまずないはず。同行したノワール先輩とシャロルさんだって、それなりの対応を受けているはずです。

 アイラ先輩の事ですから、現時点でグリセリア女王陛下が後ろ盾となって何かしている可能性も十分考えられます。もしそうなっていた場合、殿下や皆さんがアイラ先輩方を戻そうとしたところで、グリセリア女王陛下がそれをさせないために動き出すでしょう。皆さんが最終目的を実現できる可能性は、限りなくゼロに近いと思いますよ?」

「まぁ、それは…」

「確かにそうかもしれませんが…」


 シャルロッテが立てた現実味ある推測に、リベルトとティナが戸惑う。


「あとこれも推測なんですけど、アイラ先輩もしかしたら、こうなる事をずっと前から解ってたんじゃないかなって思うんです」

「ど、どういうこと?」


 ナナカはシャルロッテに恐る恐る尋ねる。シャルロッテは再び外を見ながら話し始める。


「アイラ先輩、武術大会で優勝した後、グリセリア女王と対談したって言ってました」

「うんまぁ、それは俺達も知ってるけど…」


 リィンがシャルロッテの言葉に反応し、他の面々も頷く。


「でもアイラ先輩、私と話す中でその話題だけは詳細を教えてくれなかったんです。流すようにしか言わなくて、何かを誤魔化しているかのように思えたんです。

 先輩がいなくなった後にその事を思い出して、次に先輩が学院を去る時の事を思い出した時に、学院を去る時に随分冷静だったなって思ったんです。

 それで考えたんですけど、アイラ先輩はグレイシアへ行く可能性をゼロとは考えずにいて、今回の件も実は全てアイラ先輩の手中にあったんじゃないかなって思ってるんです」


 シャルロッテの推測に、皆気味悪そうに戸惑う。


「あんた、アイラがグレイシアへ寝返ろうとしてたって言いたいわけ?」


 ステラが険しい表情でシャルロッテに問う。


「だって不自然じゃありません?政府から言い渡された罪状をアッサリ認めて一切抵抗を見せず、私達と別れる時だって至って冷静。

 出発当日になって借金隠蔽が発覚したのもなんだか不自然ですし、ましてや先輩はその前にいなくなりました。

 いくら天才のアイラ先輩でも多少は戸惑いを見せても不思議じゃありません。なのに先輩はまるで全て解っていたように動いてたじゃないですか。

 私も当時は気付きませんでしたけど、よく考えてみると不自然な箇所が多いんです。そしてそのほとんどが、アイラ先輩の策だと仮定するとしっくり収まるんです」


 戸惑っていた面々は、何も反応する事なくしばらく考え込んだ。


「確かに…、今更言われてみれば…」

「ありえねえって話じゃねえな…」

「う、嘘でしょ…?本当に?」

「で、でも、証拠も根拠もありませんわ!」

「そ、そうよ!あくまでシャルロッテの推測でしょ!?」

「「そ、そうですよ!」」

「俺もアイラが裏切ったとは考えたくない」

「お姉ちゃん、きっと何も言わずに付いてったんだろうなぁ…。アイラ様第一だったから…」

「信じられないけどありえない話でもない。と僕は思う。まずは全部掘り返して調べていかないと…」


 ティナとリィンは納得し始め、ナナカは怯えた表情になっていた。

 ホウとステラとイルマエルマ姉妹は焦った様子で否定し、レイジも難しい表情でそれに同調した。

 ニコルは自分の姉が去った理由を推測していた。

 リベルトは改めて事件の調査ルートを検討していた。


(なんだか…、眠くなってきた…)


 推測後、学院室の面々を眺めていたシャルロッテは、一人眠気に襲われていた。彼女はそのくらいリベルト達の事に関心を置いていなかったのだ。


「シャルロッテ。学院会の再建に僕達の仲の修復、推測からなる助言。君にはお世話になりっぱなしだ。僕自身も君のおかげで吹っ切れたよ。お礼を言わせてほしい。本当にありがとう」

「私は思った事を思ったようにしただけです。お礼を言われる事はしていません。あなた方が何をしようと知りませんが、私はその行動がアイラ先輩の行動の妨げにならなければそれで良いです」


 眠気に襲われているシャルロッテにリベルトは声をかけ、行動に対してのお礼をした。

 シャルロッテはリベルトのお礼を受け取らず、アイラの妨げにだけはならないよう忠告した。


「さて、やる事終わったんで私これで失礼しますね~」

「えぇ!?ちょっと!?シャルロッテちゃん!?」


 自分のやる事を達成したシャルロッテは、そそくさと学院室から出て行った。

 ナナカが驚いてシャルロッテを呼び止めるも、彼女は聞く耳を持たなかった。


「…やっぱあいつ変わったな」

「なんか、エリート役人みたいだよな」

「同感」


 レイジはシャルロッテが変わった事を改めて実感し、リィンはエリート役人と表現し、ステラもそれに同調していた。


 その後リベルト達も解散。こうしてアイラの友人だった彼らもようやく前へと進もうとし始めた。

 リベルトを中心として集まる彼らが、今回の件がアイラの手中にあった事と、グリセリアと密書を交わしていた事を知ることになるのは、まだ先の話。

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