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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第八章 次の道へ進む時
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イライラシャルロッテ

視点がアイラから外れます。

 アイラがグリセリアと桜を眺めていたちょうどその頃、アストラント王国サブエル学院の学院会室には、シャルロッテの希望で招集されたアイラの学友達が集まっていた。

 シャルロッテ、ナナカ、リベルト王子、リィン、ティナ、ホウ、レイジ、ステラ、ニコル、イルマとエルマの姉妹が現在いる面々である。


「えっと、一応言われた通りにみんなを呼んだよ。シャルロッテちゃん」

「ええ、ありがとうございます」


 シャルロッテに声をかけたナナカだったが、礼を言うシャルロッテに、ナナカは只ならぬ感覚を感じ取っていた。シャルロッテの雰囲気がいつもと違うように感じたのだ。

 当初は学院会の事で何か聞きたい事があるから呼んだんだろうと思っていたナナカだったが、現在のシャルロッテを見てようやくそうではない事に気が付いた。

 ゆえにナナカも少し緊張していた。シャルロッテはアイラの知能を受け継いだ天才の後継者。何を言ってくるのか分かったものではないからだ。


「なんかシャルロッテに呼ばれてきたけどよ…」

「皆さん集めて何かありますの?」


 リィンとホウは招集された理由が分からず戸惑っている。


「皆さん、今日はお集りいただきありがとうございます」


 ここでシャルロッテが話を切り出すため、集まった者達に礼をした。


「今回お集りいただいた理由は、皆さんの関係についてです」

<<<……>>>


 シャルロッテの語った理由に全員黙り込み、学院室の空気が一気に重くなる。


「アイラ先輩とノワール先輩。それとアイラ先輩のメイドだったニコル先輩のお姉さん。彼女達がいなくなってから二か月が経ちました。

 その間に崩壊しかけた学院会は指揮系統が一新され、ようやくあるべき姿へ形を取り戻し、学院そのものも以前の活気を取り戻しつつあります。

 しかしそれでも、当時と変わらぬままの方々がいます。それがあなた方です」

「……何が言いてんだよ」


 遠回しにも率直にも感じ取れる言い回し方のシャルロッテに、リィンが威圧をかけながらシャルロッテに問う。

 そんなリィンを見たシャルロッテは、呆れるように微笑んだ。


「何が言いたい?フフ…。これほど言ってもご理解いただけませんか。私はね、いい加減我慢の限界なんです。アイラ先輩がいなくなって、これからみんな一丸となって学院会を、学院を支えて盛り上げていかなくてはいけない時に、いいや、それ以降も、あなた達は黙ったままだったり、ひたすら怒っていたり、いつまでくだらないやりとりを続けるつもりよ!!」


 シャルロッテは勢い良く立ち上がり、同時に机を強く叩いた。

 怒りを見せたシャルロッテに、他の面々は一斉に驚く。


「王子殿下は黙って俯いたまま!リィン先輩は常に喧嘩ごし!ティナ先輩とホウ先輩は双方の間でオロオロしてるだけ!双子先輩も同じく!レイジ先輩とステラ先輩とニコル先輩は後方から王子批判!ナナカ先生は傍観!

 私は呆れて何も言えません!これをアイラ先輩が見たら間違いなく怒りますよ!」


 シャルロッテは早口で言い切った後、興奮を抑え呼吸を整えるために、一旦ため息をついた。

 他の面々は呆然としたまま黙っている。


「だから私は決めました。アイラ先輩に今後を託された者として、意地でもこの問題に終止符を打たせると。だから皆さんは、今ここで仲直りしてください。仲直りしない限り家には帰しません」

<<<はぁ!?>>>


 シャルロッテの発言に、一同一斉に驚く。


「え?シャルロッテちゃん?ど、どういうこと?」

「どうもこうも、そのままの意味です」


 唐突なシャルロッテの目的発表に理解が至らなかったナナカは思わず聞き返す。しかしシャルロッテは冷たくあしらった。


「いくらアイラの近くにいて、あいつに後を任されたっつても、お前俺らの後輩じゃねえか。後輩風情が何エラそうな口してんだよ」


 場を仕切り、先輩である自分達に強い態度をとるシャルロッテに不快感を覚えたリィンは、彼女に対し威圧をかけて不満を口にした。

 そんなリィンに、シャルロッテは目を細めて見下すような視線を送った。


「剣以外無能な人が何言ってるんですか?」

「なっ…!」


 リィンの威圧に屈するどころか、逆に挑発的な態度をとったシャルロッテにリィンは驚く。まさか彼女の口からそんな発言が飛び出すなど思ってもいなかったからだ。


「リィン先輩の剣の腕は確かでしょう。野性的な勘もね。でも知識的な頭脳や判断力はない。おまけに学力もない。ましてや今回の亀裂の原因の一つであるあなたが、いくら後輩相手だからと言ってそんなエラそうな態度をとれる立場ではないと思いますが?」

「…っ…!お、お前…!」

「こうして後輩が問題を解決しようとわざわざ動いているのです。むしろ感謝してほしいくらいですね。

 いつまでも意地張って、周囲の声の真意も探ろうとせず、反抗的。将来そのまま家督を継いで当主になってみなさい。部下もついてくれず苦労なさると思いますよ?言われて悔しいのでしたら、さっさと王子殿下と仲直りして、未だ持ち合わせていない能力の収得に励むべきかと」

「~~~!」


 呆れるように、諭すように、見下すように正確に弱点を突いて言葉をつらつらと並べるシャルロッテに、リィンは言い返す事が出来ず身体を震わす。震えているのは弱みを突かれ、怒りはあるものの言い返せないからだ。


「シャルロッテ。いくらなんでも今のは言い過ぎです。反抗的な態度をとったリィンも確かに悪いですが、今の追い込みはさすがにどうかと思いますよ」

「そうですか?リィン先輩は感情的になりやすいですから、これくらい言って感情を潰さないと静かにしてくれないと思ったんですけどね」


 ティナはシャルロッテに言い過ぎと指摘するが、シャルロッテは聞く耳持たず。


「そもそもあなた、リィンがバカってどこで知りましたの?」

「アイラ先輩が言ってました。『リィンは活発で野性的な勘は働くけど、それ以外は何も出来ないから心配』て」

「アイラさん…」


 ホウの質問にシャルロッテはアイラの名を出して説明する。話を聞いたホウは額を抑えた。


「元凶アイラかよ…。アイツめ…」


 リィンも知らない所でアイラが語っていた事実に、悔しそうな表情を浮かべた。


 アイラは学院にいた頃、シャルロッテと暇を持て余している間に様々な人の長所や短所やその他諸々をシャルロッテに話していた。特に意味があるわけではなく、単純な無駄話として。

 しかしシャルロッテはそんな話でもしっかり記憶し、現在はその記憶をフル活用していた。


「できれば私もさっさと終わらせたいので、早速吐いてもらいましょうか。ねぇ、殿下。一体いつまで黙秘というつまらない手段を使い続けるつもりで?」

「……」

「あなたが話さないと何も始まらないし終わらないんですよ。いずれ国の王になる人が、拗ねた子供のように俯いたままで…。あぁ、くだらないったらない」

「……」


 呆れるように批判するシャルロッテの発言に対しても、リベルトは俯いて黙ったまま。


「ねぇ、シャルロッテ。あんた一体どうしちゃったの?アイラと一緒にいた時はにこやかでいつも笑顔だったじゃない。いつからそんなに冷たくなっちゃったの?」


 アイラが学院にいた頃、シャルロッテはアイラに懐き、元気いっぱいに笑っていた。アイラと親しかった面々は、そんなハキハキと話すシャルロッテを見て微笑ましく思っていた。

 しかしアイラが学院を去り、一人で行動し始めるようになって以降、シャルロッテは冷たく淡々と物事をこなすようになっていた。そして現在に至っては、仲が修復しない面々に苛立ちを抑えきれず、リィンを黙らすほどの毒舌にまでなっていた。

 そんな短期間で変貌をとげたシャルロッテに、ステラは戸惑い気味に疑問をぶつけた。


「別に全てに対して冷たいわけじゃありませんよ。後輩達には明るく優しく接する事を心がけていますし、同級生や学院会の人達とも笑顔で会話しますし。でもあなた方にそれは出来ません。あなた達は自ら関係性を悪くして、アイラ先輩が託した学院会を崩壊させかけたんですから」

「…要はお前、俺達の事が憎いのか」

「ええ、そうですよ。アイラ先輩が創り上げた組織を崩壊させかけ、その修復を私や後輩達がやっているというのに、あなた達は未だに時を止めたままで同じような事繰り返してて、正直言ってメッチャウザいんです。アイラ先輩が見たら悲しむような日々ばかり送ってきて、私は見かける度イライラしてストレスなんですよ」


 アイラと親しかった面々は、現在のシャルロッテの事について冷たい部分しか認識していない。

 しかし実はシャルロッテは、仲良しのミリーや他の同級生、学院会で会う役員や後輩に対しては今までと何も態度を変えていない。なので学院会会長としても、それ以外の時でも、シャルロッテの評判はとても良い。

 淡々と物事をこなす時もあるものの、それは他の誰もが納得できるような状況時のみで、今のように苛立ちを放出させて毒を吐く事はまずない。

 レイジはここにきて、ようやくシャルロッテの冷たさが自分達限定である事に気が付いた。

 この時ナナカも、自分が教員としてシャルロッテをちゃんと見きれていなかった事に気付き、密かに心の中で反省していた。

 他の面々もレイジの解釈でようやくシャルロッテの態度に理解が行ったが、誰も何も発言する事はなく、ニコルは恐怖心から若干震え始めていた。

 アイラの知識を受け継ぎ、王族貴族に引けをとらない睨みを見せるシャルロッテが恐くて、皆何か言いたくても言えなかったのである。

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