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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第八章 次の道へ進む時
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 工場から出て少し歩くと、セリアが突然足を止めた。


「みんな申し訳ないんだけど、この辺で待機か解散してくれないかな?できればこれから見せる物は、アイラと二人きりで見せたいんだ」


 突然のセリアからの要望に、みんな戸惑いの表情を見せる。


「いくら神の眷属たるお二人でも立場がございますから、敷地内でもお二人のみというのは…」

「私はどこへでも追跡できますので、隠密なら大丈夫でしょうか?」


 アリスはセリアの要望に難色を示している。

 シャロルは隠密術で追う気満々。…じゃなくて、だからストーカーすんなっつーの!しかもしれっと許可を取ろうとするな。

 ノワール、アテーナ、アルテも、口には出さないけど考え込む姿勢を取っている。


「お願い!今回だけ!絶対アイラだけに最初は見てもらいたいんだ!そのために今まで一人で必死に管理して、誰も近づけないようにしてたんだから!」


 セリアは手を合わせて頼み込む。ここまでお願いをしてくるセリアは中々珍しい。

 それにしても私に見せるために今まで誰も近づけさせなかった、か…。そこまでして私に見てもらいたいものって…?

 どうにせよ、今回はセリアの願いを通してあげた方が良さそうかな。


「みんな申し訳ないけど、今回だけ許可してあげて。セリアも必死みたいだし」

「う~ん…。分かりました。同行出来る地点まではともに参ります。そこでお戻りをお待ちするという事でよろしいでしょうか?」

「それでお願い!理解ありがと、アリス」


 私の言葉でアリスがようやくオッケーを出し、セリアもホッとした表情を見せた。


「私達もギリギリまでご一緒致します」

「アテーナと同じく」

「私も同様です」

「特殊ルートはダメでしょうか?」


 アテーナ、アルテ、ノワールの三人も、アリスと同じく同行出来る所まで一緒に来る意思を表明した。

 シャロルは未だに隠密して良いか聞いている。何故そこまでして隠密行動したいのか。私が許可しない限り隠密はダメだって言っておかないと…。





 それからちょっと歩くと、敷地内の森がやや深い場所までやってきた。目の前には『グリセリア以外立ち入り禁止。立ち入った者は即刻処刑』と書かれた看板が設置されていて、鎖で道が封鎖されていた。この看板明らかに手書きだ。しかも絶対セリアの字だ。


「じゃあ、この先は私とアイラのみで」

「あぁ、ここって陛下がもう十年以上立ち入りを禁止していた所ですよね。まさか今日までずっとアイラ殿を入れさせるために立ち入り禁止にし続けていたのですか?」

「そだよ。この先の場所は私とアイラのために造ったようなもんさ。アイラに見せた後は、立ち入り禁止を解いて、規則付きでみんなにも開放する予定」


 アリスが言うには十年以上立ち入り禁止にしてたのか。そんな長い間セリアが立ち入り禁止にし続けていた場所…。一体どんな物があるのかしら?


「ほらアイラ。行こ」

「うん。じゃあみんな、ちょっと待っててね」


 私はセリアに手を引かれながら、森林の道を歩いて行った。


「十年以上も誰も入れさせないって、あんた一体どんな危険物造ったの?」

「危険物じゃないよ!しつれーな!それに『造った』て言うより『育てた』て行った方が正しいかな。研究に研究を重ねて、改良しまくって、今まで制作してきた中で一番大変だったかも」

「ふ~ん。よく分かんないけど、それも仕事サボってやった事?」

「あ、あははは…。否定できないね…。でもあれらを育てるにはそうするしかなかったんだ。そうしないと時間が足りなかったから。これはマジでね」


 私の問いにセリアは複雑な回答をした。でも彼女が最後に言ったマジというのは本当みたい。笑みを見せてる彼女だけど、どことなく真剣な感じだったから。






 少し歩くと、前方がちょっと明るくなってることに気が付いた。近づくにつれ、それが何なのか分かった。


「ジャーン!どうよ?」

「わぁ!」


 私は思わず興奮した。目の前にあったのは桜並木。道の両サイドに何本もの木から桜が満開に咲き誇り、両方の木の枝がぶつかるギリギリまで成長して、天然の桜のトンネルが出来上がっていた。地面も散った桜の花びらでピンク一色。

 まさか今世で桜が見れるなんて、思ってもみなかった。


「前世の記憶を思い出したばかりの頃に、偶然桜に近い木を発見してね、それがここの木々だった。当時は手付かずだったんだけど、ちゃんと管理したら桜が咲くんじゃないかと思って、一人で環境整備を始めたんだ。

 たくさんの時間と苦労をかけたけど、どうしても咲かせる一身で必死だった。当時の私は前世の記憶もまだ曖昧でアイラの事も思い出せていなかったし、農業知識も機械知識も全然だった。なのに何故かこれだけはって思ってたんだ。不思議なもんだよ。全く」


 セリア自身も何かに突き動かされるように桜開発に着手してたんだ…。この子表向きはグウタラなのに陰でもの凄い力使ってるわよね。


「苦労して育てたのね。まさか今世で桜を見れるとは思ってなかったわ。ありがと、セリア」

「お礼はまだ早いよ。これだけじゃないからね」

「へ?」


 良いものを見せてくれてお礼を言った私だけど、まだ見せたいものは終わってないらしい。


「とりあえず歩こうよ。奥に行こ」


 桜のトンネルを私とセリアは手を繋ぎながら歩く。思えば前世でも高校の近くにあった桜の近くを、こうして一緒に手を繋ぎながら歩いたものだ。


「ちなみに紅の宝玉取り入れてから、魔力と神力使って枯れないようにしてあるから、実質万年桜…、いや、永遠桜?になってるから。年中この景色を見れるよ。花が散ったそばからすぐに咲くってね」

「あんたロクに力の制御できないってのによくそんな事できたわね」

「大変だった。微調整超難しかった。木を壊してないか不安だったよ」

「そんなに制御の難しさ身に沁みてるなら訓練しなさいよ…」

「身に沁みかけたけど、沁みてはないよ?」

「変な抵抗してんじゃないわよ!沁みかけた時点で解りなさいよ!」


 往生際が悪いな。ホントに。






 そうして歩くうちに桜のトンネルの出口までやってきた。と思ったらセリアが足を止めた。


「ねぇ、アイラ。目を瞑って」

「え?なんで?」

「いいからいいから~」


 私はセリアに言われるまま目を瞑る。そのままセリアに連れられながら歩く。


「はい、良いよ~。目を開けて~」


 セリアに言われるまま普通に目を開けた私は、目の前に広がる光景に心奪われ、思考が完全に止まった。


「どうどう~?ハンパないでしょ?」

「うん…。すごい…、すごい。すごいわセリア!あなたやっぱ天才よ!」

「えへへへ~」


 思考がだんだん戻って来た私は、思わずセリアに抱き着いた。セリアも嬉しそう。


 今目の前に広がっている光景。それはとても太く大きな大樹に咲き誇る満開の桜。そしてその大樹を囲むように多くの桜の木々が、満開の状態で立ち並んでいる。

 一面桜色の幻想的で美しい光景に、私の興奮はマックスになっていた。


「アイラ、大樹のふもとまで行こ」


 セリアに手を引かれ、大樹のふもとまで移動する。ここから桜を見上げる光景は、まさに別世界と言えるだろう。


「ねぇ、アイラ。覚えてる?」

「ん?」

「前世の頃にさ、私が独りぼっちだった頃に、たまたま例年よりも遅咲きだった桜の木の下でアイラが私に声をかけてくれた時の事」

「あー、そういえばあれがあんたとの出会いだったわね」


 前世で高校にいた頃、多くの友達を作っていた私とは対照的に、セリア、当時の神楽はいつも独りぼっちだった。

 そんな状態が続いたある年の春、例年よりも大幅に開花が遅れた桜があって、セリアは一人でその桜を見上げていた。

 私は偶然そんな彼女を見かけたのだけれど、その時のセリアの目がとても悲しそうで、心配になった私は咄嗟に声をかけた。それがセリアとの関係の始まりなのだ。


「今だから言えるんだけどさ、実は私、あの時自殺を考えてたんだよね」

「ええっ!?」


 そうだったの!?声かけて大正解だったわ!


「周囲から警戒されて友達の一人も作れず、親は仕事で会わない時がほとんど。そんな生活がもうウンザリでさ、生きてる意味あるのかなって思ってたんだ。散っていく桜の花びらを見て、こんな簡単に散れたらなって…。

 そんな時にアイラが声をかけてきてくれて、他の連中は私に近寄らないのに、アイラは根気強く私と接し続けてくれた。私はそれが本当に嬉しかったんだ」

「セリア…」


 セリアは私の方へ向きを変えて、私に抱き着いてきた。


「アイラ。こんな私だけど、また一緒にいてくれる?私の友達でいてくれる?」

「何を今更。当然でしょ。今世だけじゃなくて、一緒に生涯全うして天神界に行っても一緒にいましょうよ。どこにいても、結婚しても、どんな立場になっても、私達の関係は揺るがない。いつだって親友よ。ずっとね…」


 私はセリアを抱き締め返す。


「アイラ…。ありがとう…。約束だよ。これからも、ずっと…」


 ずっと親友でいる事を誓い合い、それからはしばらく二人で桜を眺めていた。

 風の音と、風で揺れる木々の音。時々聞こえる小鳥の鳴き声。そんな桜舞う静かな空間で、私とセリアは身体を寄せ合いながら、前世の思い出話に浸っていた。








 ……別に百合とかの関係じゃないからね?

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