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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第八章 次の道へ進む時
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グリセリアの両親

視点がアイラへ戻ります。

 シュバルラング龍帝国より帰国後、私はセリアの案で二日間休暇を貰った。

 グレイシアでの生活感覚を取り戻すためと、キリカをここでの生活に対応しやすくさせるためが休暇の目的だ。

 その間私はシャロルや爺や、アテーナやアルテと約一か月程の出来事を報告会の時よりも細かく語り合い、夜になればセリアも交じって語り合った。ちなみに神龍も紹介しといた。

 それ以外はひたすらザッハークとオルトロスを撫でまわして遊んでた。

 さらにこの休暇の間にノワールがセリアのもとを訪ね、貴族復帰と領地の件を承諾した。この短期間の間に覚悟を決めてたらしい。

 ノワールって何かしら悩んだりするけど、そこから決めて復活するの早いよね。


「これからは貴族同士で領主同士になるのね。改めてよろしく」

「はい、お互い頑張りましょう。アイラ様」


 ちなみにノワールの爵位は伯爵になるんだそうな。ヘルモルト家の時と同じだね。環境は全く違うけど。

 爵位を渡す日はまだ決まってないらしく、近々閣僚会議で決めるんだそうな。


 ノワールが受け入れてくれたところで、セリアから改めて領地の説明があった。今度は地図付き。

 私の領地は標高の高い山々があり、大小の清流があり、ひろーい平原があり、深い森があり、急坂があり、キレイな海があり、海岸も砂浜も崖もあり、複数の小島まであるという色々出来る条件が揃い過ぎてる場所なんだそうな。

 ノワールの領地には深い霧がかかっているディゼフォーグ地帯が含まれていた。そこ以外は森と平原。平原の先にはアストラントがあった。

 つまり私がシャロルやノワールと一緒にアストラントから出て、セリアに迎えてもらったあの場所もノワールの統治下となるという事だ。


 私とノワールが新たに治める領地を今まで治めていた人達は、自分達の領地をまともに開拓しなかったらしく、ほとんどが手付かずなんだそうな。これは開拓のし甲斐がある。


 そして今回、セリアの新たな説明で、新たな情報がもたらされた。

 実は私が別館でくつろいでいる間に、私とノワールの領地に調査で入っていた調査団が戻ってきたらしく、その報告によると、私の領地の中にある廃村になっていたはずの村に、謎の集団が生活しているとの事らしい。さらにそことは別に、山深い所に家を建てて暮らしている人物がいたとも報告があったらしい。

 つまり私の領地には、複数個所に複数の何者かが勝手に住んでいるという事だ。これは問題。ノワールの領地は無人らしい。

 ところでいつの間に調査団なんて派遣してたの?


 そして二日間の休暇から明けた今日。私は身だしなみを整え、ノワールも一緒にセリアの案内で城の最上階から一つ下の階へ向かった。

 この階にはセリアの両親、前国王である現大公であるキーズクリフ大公殿下と、その妻であるクレセント大公妃殿下が住んでいる。

 帰国した日の夜に話した通り、私とノワールはセリアの両親にご挨拶する事となったのだ。


 目的の部屋の前まで到着したところで、同行していたシャロル、アリス、アテーナ、アルテのサポート勢は待機。セリアを先導に私とノワールは部屋に入る。


「父さん、母さん今平気?お邪魔するよ」

「ん?セリアか」

「あら?おはよう、セリア」


 セリアはなんとも気軽に部屋へ入って行った。ご両親が反応する中で、セリアの後ろにいる私とノワールは緊張気味。


「前に話した二人を紹介しに来たよ。こっちがアイラで、こっちがノワール。二人とも、こっちが私の父さんで、前国王のキーズクリフ。そんでこっちが母さんのクレセント」


 セリアは私達とご両親の間に立って、それぞれを紹介する。


 セリアのお父さん、キーズクリフ大公殿下は、黒髪をオールバックにして武将髭を生やしたガッチリした体格の人。

 お母さんのクレセント大公妃殿下は、黄色の髪を短くまとめた美人な女性。しっかり者な印象。


 私とノワールは深く一礼して自己紹介する。


「お初にお目にかかります。アイラ・ハミルトンと申します。グリセリア女王陛下のお誘いに応え、アストラント王国より参りました。ご挨拶が遅くなってしまった事、お詫び申し上げます」

「ノワール・サンドロットと申します。同じくアストラント王国より参りました」


 私とノワールが自己紹介を終えると、大公殿下が深く頷いた。


「うむ、よくぞ参られたな。娘より話は聞いている」

「さぁ、お座りくださいな。楽にしていただいて良いですよ」


 大公妃殿下の指示で私とノワールは両殿下の向かい側のソファに座る。セリアはというと、私の隣で私にくっ付いてる。…コイツは空気を読む気ないな?


「セリアの父で前国王のキーズクリフ・グレイシアだ」

「セリアの母で、妻のクレセント・グレイシアと申します」


 両殿下の自己紹介に、私とノワールは改めてお辞儀をする。


「二人とも硬くなりすぎ~。もっと力抜いて良いよ~。うちの親はもう国王引退してる身なんだからさ~」


 私とノワールへ、私にくっ付いたままグッタリくつろぐセリアからもっと楽にするよう声がかかる。でもあんたは力抜き過ぎ。


「まずはアイラ殿。うちの娘の誘いに応じてくれた事、心より感謝する。アストラントでの事は娘から聞いている。大変な思いをしたな」

「そんな。感謝するべきは私の方です。密書を交わしてアストラント政府の企みを教えてくれなければ、私は混乱していた事でしょう。対策を練る時間を作るきっかけを作ってくれたからこそ、私は覚悟を決めてグレイシア王国に来れました。その後も色々支えてくれて、彼女やグレイシアの方々には本当に感謝しています」


 セリアは一方的に私へ密書を送ってきていた。もしそれがなくてセリアが私に借金問題を教えてくれなかったら、私は確実に混乱していただろう。セリアにはその事も含めて受け入れ態勢を整えてくれていた事にも感謝してるし、セリアの行動を理解してくれた人達にも感謝している。


「まあ、謙虚なのですね。でもご家族やご友人とつらいお別れもしましたでしょう?それすら乗り越えてグレイシアに来てくださった事は、こちらとしてはとても喜ばしい事です。これからを担う方の一人が、こちらへ来てくれたのですから」


 大公妃殿下は家族や友達との別れを気にしてくれてるみたい。優しい人だ。


「それに娘もこんなに甘えてしまって…。娘の我儘に色々付き合わされているのではないかと心配していましたが、逆に娘の勝手な行動を制御してくださっている事はとても助かっています。この子の親として、お礼申し上げます」

「いえいえ、そんな…。日々楽しくさせてもらってますよ?彼女といるといつも場が明るいですし」


 セリアが仕事をサボって行う勝手な行動は、大公妃殿下も把握しているらしい。

 ちなみに現在セリアは、私の腕にしがみついて頬をスリスリしている。主人に甘えるペットか、あんたは。


「閣僚会議でも娘が閣僚に対してかなりの圧力をかけていると聞いていてな。独裁しないか心配で仕方なかったのだが、アイラ殿が来て以降圧から解放されたと知らせが来てな、政務面でも迷惑をかけた上に制御してくれた事、大変に感謝している」


 大公殿下からも感謝攻撃が来た。私こういうの苦手。


「ねぇ、ちょっと?さっきから聞いてりゃあ制御制御って、それじゃあまるで私が暴走した人みたいじゃんか」

「実際その通りでしょう?あなたは王女の頃から好き放題動いて、女王に就任してからはその度が増すばかり。セレスはあなたが発案した機械工業部門に居座ったまま動かず、王族の品位も捨てたも同然。私もお父さんもどれほど頭を抱えていたか!アイラさんが来てくださって本当に救われた思いですよ!アイラさんはこんなに謙虚ではありませんか!もっとアイラさんを見習いなさい!」


 両陛下の「制御」というフレーズに対し侵害と訴えたセリア。そしたら大公妃殿下の説教が始まった。

 説教されたセリアはメッチャウンザリした表情で私の胸に顔をうずめた。


「アイラ~!親に説教された~!慰めて~!」

「ここで私に慰めを求められても困るんだけど…。そもそも自業自得じゃない」

「私だって頑張ってるもん!メンドイ仕事片付けてるもん!」

「どうせ約四割だけで残り六割はリリアちゃん行きでしょ?」

「さすがアイラ!よく分かったね!」

「やっぱ働いてないじゃない。それじゃ慰められないわね~」

「ガーン…!わーん!アイラのいじわる~!」


 私が慰めを拒否すると、セリアはさらに密着し、ほとんど全身で私を抱き締める状態になっていた。彼女のこういった行為は日常的に行われているので、私は慣れてるし動じない。


「コラ、セリア!女王ともあろう者がやたら甘えるのではありません!ごめんなさいね、アイラさん」

「私は気にしていませんので大丈夫ですよ。日頃からずっとこんな感じですし…」

「まあ!日頃からこんなに甘えているの?セリア!あなたもうちょっと自重しなさい!」

「別に良いじゃん。布団だって一緒なんだし、アイラにこうしてる事が私は好きなんだから」

「はぁ…」


 クレセント殿下がどれだけ注意しようと聞く気ゼロのセリアに、クレセント殿下はいよいよため息をついて頭を抱えだした。多分セリアは日頃から親の言う事聞かなかったんだろうな…。


「あの、クレセント殿下。彼女は確かにいつもこんな感じですが、女王としての威厳も自覚もその他諸々もちゃんと持ってますのでご安心を!」

「そ、そうですか…。私としてはそれらを日常的に出してほしいものなのですが…」


 私は慌ててクレセント殿下に声をかけたけど、どうも効果はないみたい。

 でもその後クレセント殿下はノワールに目を移して、声をかけた。


「さて、えっと、ノワールさんでしたかしら?当初の予定ではあなたは同行する予定ではなかったと聞きましたが…」

「はい。家族の事で色々ありまして、その最中にアイラ様からグレイシア移住のお話を聞きまして、同行を願い出ました」

「家族の事?」


 ノワールの説明にクレセント殿下は首を傾げる。ノワールの家の劣悪事情が伝わってない?


「ノワールの家の話ってけっこう重かったからさ。話して良いのかどうか分かんなくて話してないんだ」


 て、セリアは言った。確かにお姉さん亡くなってるし、兄と親は最悪だし、事象をホイホイ話して良いか迷うか。


「ええと、私の家というのがですね…」


 ノワールはヘルモルト家の生活事情と、私とアストラントを出るまでの事を両殿下に打ち明けた。

 彼女が話せば話す程、クレセント殿下の表情は驚きと困惑が入り混じった表情になっていった。


「そのような劣悪な環境に…。お姉さんもつらい思いをしたまま亡くなったのですね…。お可哀想に…。

 しかし一人の子の面倒だけを見て他の子を放置するとは、同じように子を持つ親として許せませんね。立場や境遇関係なく許されない行為です。

 ノワールさん、今までよく耐えてきましたね。それと、お姉さんのご冥福をお祈り致します」

「ありがとうございます。姉もきっと大公妃殿下にそのように言われて喜んでいると思います」


 クレセント殿下はノワールの両親に対して怒りを持っている様子。子育てをしてきた親として、育児放棄を行ってきたノワールの両親の事が許せないんだろう。

 レイリー嬢もまさかグレイシアの前国王妃様から冥福を祈られてるなんて思ってもないだろう。



 ……。



 ……私のお父様とお母様は元気かしら…?



 ……。



 そういえば、さっきからキーズクリフ殿下がやけに静かだけど?


「あの、大公殿下?」

「……」


 私が呼んでも全く反応しない。なんでフリーズしてんの?


「ちょっと父さん。また目を開けたまま寝ないでよ~」

「起きてください。まったくいつもいつも…」


 寝てたのかーい。しかも目を開けたまま…。いつ寝たの?全く気付かなかった。しかもいつもなのかい。

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