おかえりとただいまの夜
私とセリアは寝室へ向かった後、裸になってベッドに入る。龍帝国から帰国後初の添い寝。
私が横になった途端、セリアは今まで以上に強く抱き着いてきた。
「あ~!アイラの温もり~!やっっっと快眠できる~!」
「なによ、そんなに眠れなかったの?」
「ほとんどの日を仮眠と呼べるかどうか程度の時間しか眠れなかったよ。全然寝た気しなかった」
「あんたそんなんで、いずれ私が結婚とかして一緒に寝なくなったらどうするの?」
「その辺は一切考えてない。考えるとストレス感じるから考えない」
「考えろ。現実見ろ」
まったく、この子は将来大丈夫かしら?
「そうそう。これからのスケジュールなんだけど、ちょっと色々付き合ってよ」
「なに?なにかあるの?」
「見せたい物がいくつか。あと会わせたい人が何人か」
「ザックリね…。出来れば詳細を教えてちょうだい」
「見せたい物は今説明すんの大変だから見せる前に言うよ。あと会わせたい人は私の今世の家族」
「セリアの家族?前国王陛下…、今は大公殿下だっけ?あと大公妃殿下?」
「そーそー。あと姉さんもね」
そういえばセリアの両親には挨拶してないどころか会ってすらなかった。
私はもうグレイシア貴族なんだから、ちゃんとご挨拶しておかないと。
「ノワールも会わせた方が良いかな?一応グレイシアに来たわけだし…」
「ノワールが領地と爵位の件をどう返答するか次第かな」
「そっか…。ノワール、まだ頭抱えてるのかな…」
「精霊達が見守ってるみたいだし、何よりノワールは自分で決断してハルク神様の装備継承して半精霊にまでなったんだから、今回もどっちの判断をしようとちゃんと理由付けて結論を出してくれるよ。今は悩むべき時間だよ」
「それもそうね…」
今はセリアの言う通りかな…。ノワールだってもう一人立ち出来るはず。領主と爵位の話を受け入れようと断ろうと、きっと自身の力で歩めるはずだ。
きっともう私とレイリー嬢の約束は果たされてると思う。精霊の力を手に入れたあの子が、一人で歩めないはずがないんだから。
それこそノワールが立派な領主として慕われれば、それ以上レイリー嬢への手向けになる事はないだろう。
「あとは~…。あ、まずは城内と王都の街を巡らないとダメか」
「そうね。城で働く人々と交流して、それから街に出て色々見回って覚えないと。じゃないと自分の領地の事とか国の仕事とか監査長官の仕事とか何も出来ないわ」
私はまだ全くという程この国の事を知らない。知らない事を知って覚えなくちゃ何も出来ない。
アストラントからグレイシアへ移住してきてから二か月ちょっと。やるべき事はまだたくさん。
でも急がなくて良いかな。ゆっくり色々覚えて、ゆっくり片付けていこう。
「ねぇ、アイラ」
「なに?セリア」
「おかえりなさい」
「うん、ただいま」
私とセリアはお互いに微笑み合い、そのまま寄り添って眠りについたのだった。




