ノワール、最後の試練へ
視点がアイラから外れます。
アイラがランを首相にする事を決めていた頃、精霊窟ではノワールが精霊窟最奥まで来ていた。
「ノワールさん、ここが最終試練の場所となります。あちらをご覧ください」
オリジンが指差した先、そこには銀色の重厚そうな鎧と、同じく銀色の大きな剣とも槍とも言えるような迫力のある武器が収められていた。
「あれが…」
「ハルクが生前愛用していた装備と武器です。今回の最終試練を乗り越えれば、あれらはあなたの物です」
オリジンの説明を聞きながら、アリアンソードを見続けるノワール。彼女はアリアンソードから不思議な感覚を感じ取っていた。
(この感覚はなんだろう?アリアンソードから何か流れ込んできてる気が…。それにこの場所に移ってから妙に身体が熱い…)
妙な感覚と自身の身体の熱さを気にするノワール。そんな彼女の異変に、オリジンは気付く事なく話を進める。
「それで、最終試練のお相手ですが…」
「あ、はい」
この時ノワールは、最後の試練の相手は今まで相手にしていないルーチェ、パリカー、マーナのどれかの幻影獣だろうと予想していた。
しかし、オリジンはノワールの予想を大きく外した名を出してきた。
「私です」
「…え?」
オリジンの発言に、ノワールはキョトンとする。
「私が最終試練の相手です。ノワール・サンドロッド。あなたが本当にハルクの装備を継承するに相応しいか、見定めさせていただきます」
オリジンは真剣な表情をしながらも、闘気を出して準備万端にしていた。
「え?えぇ?オリジン様が直々に相手されるんですか?」
「はい」
「ルーチェ様かパリカー様かマーナ様の幻影獣じゃないんですか?」
ノワールの二つ目の質問に、オリジンは苦い表情を浮かべる。
「本当は全ての幻影獣と戦わせる予定だったのですが…」
「ですが?」
「ルーチェの幻影獣はやたら眩しいばかりで目がチカチカしっぱなしなんです。あれでは勝負が出来ません。
パリカーの幻影獣はヘドロのような見た目でして、汚れなのか幻影獣なのか判別が難しいため省きました。
マーナの幻影獣はそもそも透明で見えないんです。なのでこの三者の幻影獣との試練はなしになりまして、最後の試練は私ということになりました」
オリジンの説明にどこからどうツッコんだら良いか分からなかったノワールは複雑な表情を浮かべた。
「えっと、まぁ、理解は出来ました。まさか精霊の女王様と戦う時が来るとは思いもしませんでした。アイラ様が聞いたらさぞ驚かれるでしょうね。では、よろしくお願いします!」
ノワールは笑みを見せて、深く頭を下げた。
「ええ。あなたの実力、しっかり見させていただきますよ?」
オリジンも一言返し、二人は戦闘開始位置に移動した。が、その直後。
「オリジン様~。橋から落ちたゴレングスなんだけどよ~」
今までのやりとりを全く聞いていなかったベヒモスが、場の空気も一切読まずにオリジンに声をかけた。
「あんた空気読みなさいよ!!」
「バカですか?バカ中のバカですか?」
「ベヒモス最低」
「あなたは周囲の状況を見れないのですか?後でお説教です」
「あ、あはははは…」
空気を盛大にぶち壊したベヒモスに対し、アグナ、ネロア、シルフ、オリジンが激怒。ノワールは苦笑いしか出来なかった。




