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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第七章 それぞれの行動と進歩
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ダーナとニースの回想

前半がダーナ、後半がニースの視点となります。

 龍帝陛下とみんなで、謁見の間から龍帝居住区に向かう途中。私はこれまでの過去を頭の中で振り返っていた。


 私は幼少の頃から、この国でなんとなくほのぼのと暮らしてきた。

 学び舎に通うようになってからは、オリガちゃんやサララちゃんと出会って、仕事先を考えなきゃいけなくなった頃に、偶然キリカちゃんと出会った。

 自分にも他人にも厳しいけど優しい真面目なオリガちゃん。温厚でいつも微笑んでるサララちゃん。いつも冷静で落ち着き放ってるキリカちゃん。

 みんなで一緒に龍帝国政府の役人になって、今後も一緒に仕事していくんだろうな~って思ってた。今も一緒なのは変わらないけど、最近なんだかすごい立ち位置に来てしまった気がしてならない。


 新しい龍帝陛下が見つかったって聞いて、キリカちゃんが勇んで迎えに行った時は、私も龍帝陛下がどんな人なのか楽しみだった。

 ここ最近はコアトルさんの横暴な政策で良くない空気だったけど、これでちょっとは変わるかなって思ってた。


 でも蓋を開けてみれば、ちょっとどころじゃない変わり方になった。

 コアトルさんや、一緒になって横暴を働いてた人達はみんな権力を失って牢屋に運ばれて、同時に指揮する人がいなくなって、キリカちゃんが代わりに指揮したけどみんな言う事聞かなくて。

 私は最初、何が起きてるのか理解出来なかった。


 キリカちゃんから事情を聞いた時は驚きの一言だった。だってまさかコアトルさんが独裁を企んでたとは思ってなかったし、まさか龍帝陛下の怒りを買うなんて思わなかったから。

 でも混乱が続く中で、それ以降龍帝陛下が動く様子がなかったのが不思議でしょうがなかった。混乱してるのは知ってるはずなのに。


 私はこのままじゃいけないと思って、とにかく試せそうな行動に出る事にした。

 でもほとんどが効果なしだったし、オリガちゃんにも止められた。それでも諦めたくなかった。このままだと、本当に龍帝国で内乱が起きてしまう。国が壊れちゃう。そう思って。

 キリカちゃんの疲労も日に日に色濃くなっていって、もう時間がないと思ってた矢先、突然龍帝陛下が現れた。


 陛下を見た時、何故か心臓が高鳴った。言葉では言い表せない何かを感じた。

 ニースさんが喧嘩を吹っかけた時は殺されるんじゃないかと思ったけど、龍帝陛下は最小限の注意だけで済ませた。その対応を見てると、コアトルさんがいかに龍帝陛下の怒りをモロに買ったかよく解った。


 コアトルさん達が失職して陛下が現れるまで、およそ二週間が経っていた。

 私は気になってしょうがなかった。どうして今更になってしかも抜き打ちで視察なんてしたのか。

 気が付いたら私は、仕事を放って龍帝陛下を追いかけていた。


 陛下とキリカちゃんに追い付いたは良かったものの、その後の事を考えてなかった私は、単刀直入に聞き出す事にした。

 オリガちゃんは私を止めようとしてきたけど、私はもう止まる気はなかった。「無礼者」と叱咤されても良い。とにかく陛下の気持ちを知りたかった。現状をどう見ているのか、それだけを求めた。

 そんな私に陛下は怒ろうとはせず、後で話そうとだけ言ってきた。……服装を指摘された時は恥ずかしかったけど…。


 龍帝居住区で陛下の口から語られた政策は、今までの龍帝国の歴史にないすごいものだった。オリガちゃんが言った前例がないっていう意見すら蹴飛ばしてた。

 この人なら本当に現状を打破できるかもしれない。直感的にそう思った。


 龍帝陛下は思ってたよりも温厚で親しみやすいし、落ち着きがあって接しやすい。

 歳だって私とほとんど変わらないはずなのに、自分よりずっと大人に感じた。きっとこの方はもういろんな経験を積んでるのかも。


 私はこの方に付いて行こう。きっと明るい未来に出来るはず…。


「ダーナ?何をボーっとしているんだ?」


 なんて考えてたら、オリガちゃんに声をかけられた。


「ん?なんでもないよ。オリガちゃん」

「そうか…?また何か企んでる気がしてならないが」

「何も企んでないよ~!オリガちゃんヒドーイ!」

「二人とも、じゃれ合ってないで行きますよ」

「「じゃれ合ってはない!」」

「クスクス…」


 オリガちゃんに何か疑われて、キリカちゃんにじゃれ合ってるって言われたから否定したら、オリガちゃんと声がハモった。サララちゃんにはクスクス笑いされてるし。

 陛下は私達の一歩先で止まって、笑顔で私達を見てる。


 陛下とみんなで、今まで以上に頑張ってみよう。





*************************************





 俺は陛下から龍帝居住区への立ち入りを許可され、荷物を取りに一旦政務室へ戻った。この後は龍帝居住区へ向かい、陛下や他の者達と合流する。


 この国で生まれ育ち、龍帝国政府の役人になって、嫁にも子にも恵まれ、何一つ不自由ない生活だった。コアトルが首相となり、横暴な政策を打ち込んできた時も、俺は仕事が出来て家族が生活出来ればそれで良いと思っていた。

 でもある日、同僚が失態を犯してコアトルから罰を受けた。そいつにも家族はいた。コアトルは、あいつはあろうことかその同僚の家族にまで手を出しやがった。その結果同僚は一家で自殺した。

 コアトルに対して許せないという感情が芽生えたと同時に、自分も同じ事になるんじゃないかと恐怖した。


 そんな中、新しい龍帝がやってきた。どんな人かは知らなかった。興味もなかった。

 でもキリカ補佐からコアトルと側近達の失脚を聞いた時は驚きだった。しかも龍帝の怒りを買ってコテンパンにされたと。

 それからは地獄のような日々が始まった。休憩時間返上で働きまくった。指揮系統は完全に失われ、政府内は収拾のつかない状態になっちまった。おかげで俺はイライラが溜まる一方だった。


 そんなある日、キリカ補佐が政務室の入口で突っ立っていた。隣に誰かいるような感じだったが、俺のいた位置からはよく見えなかったし、関心もなかった。

 俺はイライラ任せでキリカ補佐を注意した。単に注意のつもりだった。キリカ補佐が無視してきたのでもう一度強めに言ったら、隣にいた人物が俺の前に出てきた。

 その人を見た瞬間に、何故か身体が一瞬震えた。よく分からないが恐怖のようなものが身体の底から込み上げた。

 まだ若い女性。美人でどこか神々しさを持っていた。俺は訳が分からず何者なのか聞いた。

 そしたらキリカ補佐が間に入ってきて、その人が龍帝である事を知った。


 俺は一気に血の気が引いた。あの頭が良くて体術も持ち合わせていたコアトルですら敗北した相手。しかも神龍様と契約している絶対覇者。そんな人に俺は睨まれている。

 これでは俺の命どころか家族まで危ない。そう思って必死に謝罪した。

 けど陛下は怒る事なく軽い注意だけで許してくれた。これがコアトルだったら終わりだっただろう。陛下の寛大さに俺は思わず涙した。なにより家族に危害が及ばずに済みそうで安心した。


 俺は後々になってどうして龍帝陛下が急に視察なんてしたのか気になったが、理由なんて聞ける立場じゃないと思って疑問をかき消した。

 それから昨日になって、突然龍帝陛下からお話があるという通達を受けた。もしかするとあの視察が何か行動を起こした始まりだったんじゃないかと思い、今日は興味津々で謁見の間へ向かった。

 しかしまぁ、陛下がやって来た時に後ろにあの若い仲良し小娘三人がいた時は驚きだったな。いつの間に陛下と接触を図ったんだか。


 陛下が政府内権限の全回収を宣言した時は驚愕だった。周囲の声には馬鹿にする声もあったが、俺は陛下は本気だと察した。やはり視察で何か思い付いたに違いないと。

 陛下が内容を話した時、俺は大いに納得していた。確かに龍帝という絶対強者であれば、誰もが従わざるを得ない。あの方の立場だからこそ出来る事態収束策。おそらくこれは龍帝国政府が崩壊しないための最終手段だ。ならば協力しないわけがない。

 視察してきた時の事も挽回しないといけない。あの三人組も事前に策を聞かされて協力したんだろう。だったら俺もあの中に入れてもらうとしよう。

 そう思っていたら、自然と身体が龍帝陛下の方へ向いていた。そして協力を希望した。

 陛下は優しく迎え入れてくれた。そしてダーナに本心を見抜かれた。アイツはいつもそういうところだけ鋭いんだよな。


「あれ?お前何してんだ?」


 荷物をまとめてたら、同僚が声をかけてきた。


「あぁ、俺これから龍帝居住区に向かうんだ」

「はぁ!?なんでだよ!?あそこは龍帝陛下の許可がないと入れないぞ!?」

「許可なら謁見の間でもらった。俺も陛下の考えに全面協力する。そのために陛下に頭下げて協力を願い出た。俺も今日上段にいた三人と同じ位置に移る」

「お前…、本気かよ…!」

「本気だ。おそらく陛下の考えたあの宣言が、この政府を保つための最終手段だ。お前も協力しとけよ」


 俺はそう言い残して政務室を出た。

 この国と家族を守るために、今まで以上に働かないとな。

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