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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第七章 それぞれの行動と進歩
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ノワール、第二の試練

視点がアイラから外れます。

 時を少し巻き戻して、アイラが異空間収納の収得に躍起になっていた頃。精霊窟ではノワールが装備継承第二の試練として、ネロアの幻影獣『フリーザー』に挑もうとしていた。

 フリーザーは大鳥型の幻影獣。全身には冷気を纏っている。


「あの、すいません。今回の相手飛べますよね?飛行されたら戦いようがないのですが…」

「確かに飛行は出来ますが、今回はフリーザーも飛ぶ気はありませんのでご安心ください。この精霊窟には実は魔法陣で形成された天井がありまして、飛行したら確実に頭強打しますので飛ぶことはありません」


 フリーザーは大きな翼を持っているので飛行されることを危惧したノワールだったが、ネロアがそれを否定して丁寧に説明した。


「ではそろそろ始めましょう。ノワールさん、立ち位置に行って構えを」

「はい」

「グルフㇷㇷㇷㇷ…」


 ノワールは開始位置に移動して戦闘態勢に入る。フリーザーもやる気になっている。

 開始されはしたものの、お互い出方を見ていて睨み合ったまま動かずにいた。






「……」

「……」






 10分後。






「……」

「……」






 さらに10分後。






「……」

「……」






 さらに20分後。






「……」

「……」






 40分経っても両者一切動かず。


「すいません、一回中断で。両者ともあまりに動かなすぎです」

「いつ動く気でいたのよ…。そもそもこんだけ長い時間止まっていられるあんた達がすごいわ」


 しびれを切らしたオリジンが戦闘の一時中断を宣言し、ノワールとフリーザーは力を抜いた。

 アグナもツッコみつつ、止まっていられる事に感心している。


「相手が仕掛けてくるのを待っていたんですが…」

「グァ…」


 ノワールはずっとフリーザーが仕掛けてくる時を待っていたらしい。

 フリーザーは申し訳なさそうに鳴いた。


「どちらでも良いので動いてください。試合再開」


 両者オリジンの指摘を受けつつ戦闘再開。今度はすぐにフリーザーが仕掛けた。

 フリーザーは冷気を濃縮し、ノワールに向かって冷気のビームを放った。

 ノワールは冷静に攻撃を回避。ノワールが立っていた場所は氷漬けになっていた。


(やっぱりこの幻影獣は氷中心の技ね。まともに攻撃を受けなければ冷気には突っ込んで行けるはず。氷を利用するやり方もあるかもしれないけど、それだと難易度は高いか。

 割と頭も利くみたいだから、頭脳戦に運ぶ事もありえそう)


 ノワールはさっきの40分間でフリーザーに前回のようなひたすら突撃は無謀と判断していた。

 突撃よりも頭脳戦を予想しつつ、まずは一太刀浴びせるためにフリーザーに向かって走り出した。

 フリーザーは翼を振って攻撃。ノワールはそれを回避し、直後に翼の端を掴んで剣を突き刺した。


「グルアァァァァァ!!」


 フリーザーは悲鳴を上げて一時的に動きを止めた。ノワールはその隙を見逃さず、フリーザーの足元まで移動した。

 フリーザーは悲鳴を上げた時にノワールから目を離してしまっていたため、ノワールがどこにいったか分からなくなっていた。フリーザーから見て、足元は完全に死角だったのだ。


「まずは一か所」


 ノワールはフリーザーの足へ剣を横に振った。

 そしてこの攻撃は、単に傷を負わすどころか、フリーザーの片足を切断するに至った。


「グ、グギァァァァ!!」


 フリーザーはさらに悲鳴を上げ、バランスを失って倒れ込んだ。ノワールは戦闘開始から僅か数分で、相手に重傷を与える事に成功した。


(まずは攻撃成功か。でも今は連撃して追い込む事はしない方が良い。頭に血が昇って猛反撃してくる可能性も少なくないはず。…それが演技だとも考えられるけど)


「グルアァァァァ!!」


 ノワールの読みは正解。足を切断されたフリーザーは明らかに怒っている様子になった。でも僅かに笑っていた。


 そんな戦いを見守る精霊達は、またしてもノワールの戦いに驚いていた。


「なぁ、あいつが火傷負いながら戦闘してたの昨日だよな?その翌日にこの戦闘ってあいつマジで戦闘未経験者か?」

「まるで何事もなかったかのようにしてるわよねぇ。しかも開始間もなく相手の足切断とか」

「動きから見てもかなり冷静ですね。先程の長時間睨み合いという持久力もすごかったですが、今のフリーザーの怒りの演技に何一つ動じていないのもすごいですね」

「なんだか、演技してるのを分かってて、その演技が終わるのを、待ってるみたい…」

「昨日から今日の短い間に試練を希望された時は驚きでしたが、精神面と身体面は問題なさそうですね。それにしても予想通りでしたか。あれだけ猛烈な攻め方をしていた彼女が、今回は相手の様子を窺って冷静にしているのですから、やはり彼女は強者かもしれませんね」


 ベヒモスはノワールが戦闘未経験者であることを疑い、アグナは普通に感心している。

 ネロアはフリーザーの策に動じていない事に感心し、シルフも同じ反応。

 オリジンはノワールの状態を分析しながらも、彼女が強者である事を認め始めていた。


 怒りの演技が通用しないと気付いたフリーザーは、その場で冷気のビームを再び発射。


(……やってみるか)


 ノワールはフリーザーの攻撃を回避しながらランダムに動き回った。攻撃するわけでもなく、ひたすら走り回る。

 足を切断されてその場から動けなかったフリーザーは、方向だけ変えてノワールへ攻撃を続ける。それがノワールの作戦だとも気付かずに。


「あいつなにやってんだ?」

「なにか考えがあるんでしょうかね?」


 ベヒモスとネロアは首を傾げながら見守る。


 しばらくしてフリーザーはノワールを追う事に疲れ始め、攻撃の手を緩めた。


(そろそろかしらね…)


 ノワールは再びフリーザーに向かって走り出す。フリーザーはノワールに向かって攻撃。

 ノワールは攻撃回避と同時に、周辺に張っていた氷の高めの場所に移動し、滑り台感覚で氷の上を高速で滑り始めた。


 フリーザーは最も攻撃範囲の大きい冷気のビームを中心に攻撃をしていた。ノワールはそれを逆手に取った。

 ビームの後は必ず氷が張る。それは平坦ではなく凸凹に、そして低く張る所と高く氷が突き出す所と、状態はバラバラ。

 ノワールはそれを分かっており、あえて戦闘範囲中に氷を張らせて滑れるように仕向けたのだ。


 ノワールはスケート等をやった経験はない。そしてアストラントもグレイシアも雪すら降らない。しかしノワールは最初に張った氷を見て直感的に策を思い付いていた。そして一か八かの賭けを持って策を実行したのだ。


 ノワールは氷の上をバランスを取りながら高速で滑る。そのスピードにフリーザーは対処出来ない。

 焦り出したフリーザーはノワールが近づいた時に翼で攻撃。しかしノワールはそれすら逆手に取った。


(遅い)


 ノワールはフリーザーの攻撃タイミングに合わせて、回避するどころか翼の上に飛び乗った。

 そしてそのままフリーザーの背をつたってフリーザーの頭上にジャンプ。空中でフリーザーに剣を向けた。


「お?頭に剣突き刺す気か?」

「おそらくそのようですね」


 ベヒモスとネロアは、ノワールがフリーザーの頭に剣を突き刺そうとしていると予想した。

 しかしノワールがとった攻撃は、精霊の予想に反したものだった。


「斬り裂け」


 ノワールは剣の方向を突き刺す体勢の垂直ではなく、刃を向けて斬り裂くための横状態にしていた。

 そして自分の腕力と落ちる勢いを使ってフリーザーの頭から顔、首までを縦真っ二つに斬り裂いた。

 当然フリーザーは致命傷。声を出す事もなく消滅した。

 睨み合いを除いた戦闘開始から勝敗が決するまで、20分もかからない早期決着となった。

 ノワールは前回のように怪我を負う事もなく、今回はノワールの完全圧勝となった。


(終わったか。何ともあっけない。作戦がうまく出来て良かった)


 ノワールは自分の髪の毛を触る。毛先は冷気でカチカチに凍っていた。


(これ、いつ溶けるかなぁ?)


 勝敗よりも自分の髪の毛を気にするノワールであった。





 そして戦闘を見ていた精霊達は、驚きの表情のままでいた。


「ネロア、お前の幻影獣真っ二つになってたぞ」

「ここまで早く決着が着くとは思っていませんでした…。しかもこんなあっけなく…」

「しかも今回あの子は一撃もくらってないしね」

「カッコイイと思う…」

「しかしあまりに強すぎるような…。貸した力が関係しているのかしら…?」


 ベヒモスとネロアは呆気にとられた状態。アグナも感心していた。

 シルフは率直な感想。

 オリジンはノワールの強さに疑問を感じ始めていた。


 そんな事も知らず、ノワールは精霊窟の奥を見つめていた。


(この先あといくつ試練があるのかしら?それこそ猛者がいるんだろうな…。今回はきっと運が良かっただけ。また気を引き締め直さないと)


 ノワールは軽くため息をつくと精霊達と合流して総評をしてもらい、しばしの間休息を取るのだった。

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