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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第七章 それぞれの行動と進歩
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神龍と契約

 洞窟を歩くうちに、なにやら人工的に造られたであろう大きな扉があった。


「どうやら到着みたいね。やっと着いたわね~、ラン?」

「……」


 相変わらずランは無反応。もう私泣くよ?


 扉に近づいてみると、扉は勝手に開いた。中に入ると扉は勝手に閉まった。


 扉の先には大きな空間が広がっていた。

 あれだけ悪かった足元はキレイな平ら。上を見上げると吹き抜けから陽の光が僅かに差し込んでいる。でもその天井の位置もかなり高い。

 周囲の壁には人工的な突起がいくつか確認できた。おそらく火を灯すための物だとは思うけど。


「行き止まりか…。これはどうしたら良いのかしら?」


 私はこの静かで広い空間でどうすれば良いのか分からず考え込む。

 ランは私の隣で黙ったまま。


「来たか、アイラよ。生贄にされし者とともに」


 今まで静かだった空間に、聞き覚えのある声が聞こえた。

 宮殿の客室にいた時のような頭に響く感じではなく、この空間全体に響いている。

 そして、直後に壁の突起に火が勝手に灯った。


「予定通り到着したわよ。それで?どこにいるのかしら?神龍さん」

「我はここにいる」


 神龍の声の直後、突如に大きな魔法陣が展開され、金色に強く光った。あまりの眩しさに私もランも目を覆う。

 それから三秒も経たずして、何かが叫ぶような轟音と同時に神龍が魔法陣から姿を現した。


「少し遅くなってしまって申し訳なかったな。アイラよ」

「…初対面でちょっと失礼かもしれないけど、ド迫力過ぎるわよ」

「…ぁ…、…っ……」


 私達の前に現れた神龍。その姿はなんと三体の龍。

 三体とも身体は金色。目も金色。身体の周囲に纏う光も金色。完全金色づくし。

 身体の大きさはキリカが竜体になっている時の数十倍はある。

 とにかく迫力が凄まじい。会っただけで腰を抜かしそうな程の威圧感と迫力。

 それはまさしく、“伝説の神龍”と言われるに相応しいだろう。

 精霊や神獣と契約を交わし、伝説の存在をこの目で見てきた私でもちょっと気圧される。

 ランは私の隣でしりもちをついた状態で神龍を見ている。完全に迫力に負けているみたい。


「こうして直接会うのは初めてだな。話したのは昨日以来だが」

「そうね。こうして会って話すのは初めてね。改めて、アイラよ。よろしく」

「よろしく頼む。そしてこやつが…」

「ええ。生贄にされた子よ。ランっていうの」

「……」


 私と神龍はランを見る。神龍は三体とも同時に見てるけど、同じ動きしか出来んのか?そもそも全部本物なの?

 見られているランはしりもちをついた時のまま動かない。もはや身動きも言葉を発する事も出来ないみたい。

 まぁ、言葉ならずっと発してないけど…。


 少し沈黙が流れた後、神龍が私の方を向いた。


「アイラよ、こやつの事はひとまず置いておいて、先に契約を成そうではないか」


 神龍の言葉に私は頷く。


「そうね。じゃあ早速、私はどうすれば良いの?」

「まずはこの娘をここの端に移動させなければ」

「分かったわ。ラン、動ける?悪いけど少しの間、この部屋の端っこで待機していてちょうだい」


 私がランに移動を願い出ると、ランは頷いてゆっくり端へ移動した。


「ではアイラよ、まずは服を脱いでほしい。我との契約の仕方では、服を着たまま行うと服が破れてしまう」

「了解。ちょっと待ってて」


 私はそそくさと服を脱ぎ、ランがいる橋の方に置いておく。

 裸になっての契約は精霊の時に経験しているので、特に躊躇いはない。

 まぁ、私の場合、そもそも裸を見られる事に対する恥じらいがないんだけど。


「この辺で立ったまま目を瞑って動かないでほしい。手は前で握った状態で頼む。途中様々な異常に襲われると思うが、決して動かないように」

「じっとしてりゃ良いんでしょ?解ったわ」


 結局内容は精霊の時と同じだ。全裸になって指定位置で動きを止めて目を瞑って腕はお祈りする時みたいに。

 精霊の時と違いがあるとすれば、立ったままというところか。


 私は立ったまま目を瞑って動かない事を意識する。

 直後再び轟音が響き渡った。神龍が動き出したらしい。

 そして数秒後、身体にもの凄い衝撃が走ったと思ったら、突然何も聞こえなくなり、何も感じなくなった。

 何も聞こえない。何も匂わない。身体の感覚が全くない。全身完全麻痺だ。

 この状態だと自分が今どういう体勢なのかも分からない。でも私は立ったままだと思う事にして、神龍に指定された状態を維持する事を意識し続けた。


 それからどのくらい時間が経っただろうか?突然全ての感覚が戻った。

 物音も聞こえるし、洞窟の臭いも感じ取れる。身体の感覚もある。


(契約は果たされた。目を開けて姿勢を崩しても構わぬ)


 神龍は昨日のように頭に直接言ってきた。

 言われるまま目を開けると、私の位置は変わらず、ランの位置も変わってない。周囲の空間もそのまま。

 でも一つだけ大きく変わった事がある。


 神龍がいない。


 あ、これもしかして、私の中にいるな?


(ちょっと神龍?もしかして私の身体の中に入ったの?)

(そうだ。ちょうど今、スルトと久しぶりに再会していたところだ)


 やっぱり。私の中に入ったから感覚がなくなる程の衝撃が走ったわけね。

 て、スルトと知り合いだったんだ。伝説仲間同士それもそうか。


(もう服は着ても良いぞ)

(私から出る時にまた服を脱げとかないの?)

(それはない。今後は服を着ていても出入り可能だ。服が破れる心配もない。あくまで契約時のみだ)


 もう服を着ても問題ないようなので、私は端に置いた服を着る。

 その時にチラッとランを見たけど、彼女はまさに信じられないものを見た、という表現がよく伝わる表情で固まっていた。

 そりゃ人と伝説の龍が契約する瞬間に立ち会っちゃったんだもんね。そうもなるよね。


 空間の中心に戻った私は、再び神龍に問いかける。


(神龍、そろそろ出て来てよ)

(応)


 神龍は轟音と同時に私の背中から出てきた。私も感覚的に出てくるのを感じた。


「ちなみに我は小さくもなれる。話しやすさ重視のため、今は小さくなろう」


 神龍はそう言うと、マジで小さくなった。

 胴体の太さは私の腕よりもふたまわり程太いくらい。


「これなら話しやすいだろう?」

「うんまぁ、話しやすいけどさ、あんた達ってさっきからどれが喋ってるの?」


 私がずっと気になっていたのが、三体のうちどれが会話をしているのか。

 三体とも見た目変わんないし、動きも同じだし、表情とかないから分かんない。


「それは秘密だ。それよりも生贄を何とかせねば」


 サラッと話を逸らしやがった神龍は、端に座るランの方を向く。

 確かに神龍の言う通り、ランを何とかしないと。

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