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異世界で最強 ~転生と神の力~  作者: 富岡大二郎
第七章 それぞれの行動と進歩
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竜の使者

 天神界から意識が戻って目が覚めた瞬間、私は布団から飛び起きた。


「ちょっと!セリア!起きなさい!」

「ん~?あぁ~、戻ってきたね~」


 私はセリアを叩き起こす。セリアは目を擦りながらゆっくり起きた。


「あんたは何してくれてんのよ~!ハルク様ガチで落ち込んでたじゃないのよ!今後私が会いづらくなるでしょうが!

 あんたあの人がなんなのか解ってるわけ!?神よ!神!!私とあんたを再会させてくれた恩人よ!解ってんの!?えぇ!?」

「お、落ち着いて…。揺らさないで…。クラクラする…」


 私はセリアの肩を掴んで揺さぶる。セリアは気持ち悪そうにストップを訴えてきたので止めてあげた。


「うぅ…、気持ち悪…。ちょっとした出来心だよ~。悪気はないんだって~。そもそもなんでハルク神様はあそこまで落ち込むのさ」

「なんで落ち込んだかは知らないけど、二度とあんな行動しないでよ。発言含めね」

「え~、比較対象がいたらいつでも…」

「やめろって言ってるのが分からない?」

「痛い痛い痛い。分かった、やめる。もうやらないから離して。胸が潰れるから。痛い痛い」


 反省の色無しのセリアに二度と今回のような行為は行わないよう注意したものの、セリアはまだやる気でいたので圧をかけながら彼女の胸を鷲掴みにして強く握った。そうして彼女はようやく反省するのだった。

 多分今回のハルク様の落ち込みはオリジン様にも伝わるだろうな…。きっと天神界メンバーにも。










 それから日数が経ち、案の定オリジン様と天神界メンバーに話が通ったらしく、オリジン様やアテーナからハルク様の落ち込み話をされた。

 オリジン様は「グリセリアさんの行動と言動も確かに良くないのかもしれませんが、そもそもハルクが裸だった事がきっかけでもありますし、落ち込みようはアイラさんに対しても失礼に当たりますので、その事をハルクに言った上で後は放っておきました。

 時間が経てば復活するでしょうし、今まで通り接してくれるでしょう。アイラさんがそこまで気にして気を遣う事ではありませんよ」と言っていた。


 その翌日。身支度を済ませみんなが仕事を始める時間帯。

 ノーバイン城別館は元々地盤の高い土地に造られている事もあって眺めが良いのだが、たまたま窓から外を見た際に、街の方が騒がしいように思えた。

 そしてその直後、一瞬だけだが空が陰に覆われた。

 私は驚いて空を見上げる。すると上空には低空飛行する生物がいた。

 鳥じゃない。鳥にしては大きすぎる。神獣にもあんな生き物はいなかった。


「おや?どうやら来たようですな」

「爺や、あれが何なのか知ってるの?」


 私の隣から窓を覗き込んだ爺やは上空にいる生物が何なのか知っている様子。


「あやつは竜ですよ。シュバルラング龍帝国からの使者でしょう」

「竜…。そっか、ついに来たんだ…」


 いよいよ龍帝国の使者がやってきたようだ。

 私は足早に自室へと向かい、いつでも出立出来るよう準備を整えた。


「アイラ!」

「あ、セリア。アリスも」


 別館リビングで待機していると、セリアとアリスが別館にやってきた。


「今、なんかデッカイのが空を飛んでて、もしかしたら竜じゃないかって」

「私も確認したわ。爺やが言うには竜ですって」

「てことは…」

「シュバルラング龍帝国の使者が来たってことね」


 最初セリアは慌てた様子だったけど、使者と聞いて冷静を取り戻した。アリスはずっと冷静だったけど。


「とりあえずアイラはまだここで待機してて。使者を迎えるから」

「分かったわ」


 セリアとアリスは走って別館から出て行った。


「お嬢様…。しばしの間、お別れですね」

「そうね。一か月かからないとは思うけど、しばらく会えなくなるわね」

「私はここでお帰りをお待ちしております。どうかお気を付けて」

「うん。シャロルも爺やもセリアとオルトロスとザッハークの事お願いね」

「お任せ下さいまし」

「ご命令、承りました」

「オルトロス。何かあったらここを守ってね。ザッハーク。私がいない間、みんなの言う事をちゃんと聞いてね」

「ワン!」


 私はシャロルと爺やに親友と配下の神獣の面倒を任せ、オルトロスとザッハークにも指示を出した。

 ザッハークも声は出さないが、理解しているようでクルンと一回転した。


 それから約十分後。セリアとアリスが戻ってきた。


「アイラおまたせ。城の謁見の間まで来て。荷物も持って」

「はいはい、了解」


 私が言われた通りに謁見の間まで向かうと、そこにはオルシズさんとリリアちゃん。それと、見知らぬ女性がいた。


「アイラ、この人がさっき空を飛んでたキリカ氏だよ」

「アイラ様でございますか?」

「はい、そうです」


 セリアの紹介直後にキリカという女性は私に声をかけてきた。

 私が受け答えをすると、丁寧にお辞儀をしてきた。


「初めまして。シュバルラング龍帝国龍帝補佐官のキリカ・フィクサリオと申します。

 このたび我々竜族が行った儀式にて、あなた様が新たなる龍帝に選ばれました事をご報告致します。

 ぜひ私とともにシュバルラング龍帝国へおいでくださいませ。新たなる龍帝として、神龍様との契約をお果たしくださいまし」


 キリカというこの人は、金髪のロングヘアーをポニーテルにして、キリッとした目つきの女性。その瞳は澄んだ青色。

 服装は青色と緑色の巫女のような格好をしているけど、ホウが着物を着てた時みたいに肩から胸まで着崩している。胸板は全開だ。でも何故か首周りにだけ襟らしき物がある。

 整った顔つきとスタイルの良さ、高貴な雰囲気を纏った美しい女性だ。


「分かりました。求めに応じて参りましょう」


 私が頷いて容認すると、キリカは納得したかのように微笑んだ。


「あなた様なら容認してくださると思っておりました。実は白く美しい女性が私の夢に出てきまして、私がここへ来るのを待っていると教えてくださいました。他の者は信じてくださいませんでしたが…」


 ハルク様は彼女の夢に現れたのか。でも、おかげで話が早い。


「そうですか。では早速行きましょうか。龍帝国へ」

「承知致しました。とは言っても他のお知り合いの方々とのお話もあるでしょう。ここで一旦待機しておりますゆえ、準備が整いましたらお声かけくださいませ」


 準備は出来ちゃってるんだけどね。

 まずは順序的にセリアの側近三人組に声をかける。


「アリス。私の親友の護衛、頼むわね」

「お任せを。私は時に陛下の刃となり、時に盾となります。無礼な輩には指一本触れさせません」


 アリスのセリアに対する忠誠心はかなりのようだ。本気が伝わってくる。


「オルシズさん、リリアちゃん。またセリアに何かされたら帰った時に教えてくださいね」

「承知しました」

「詳しくお伝えするために記録残しておきます!」

「その記録、見つけ次第燃やすね」

「「「……」」」

「え?ちょっとなにさ?なんでそんな目で見んの?」


 私はオルシズさんとリリアちゃんにまたセリアに何かされたら教えるよう言っておいた。

 リリアちゃんは記録に残すと言ったけど、直後セリアがそれを燃やすと宣言してきた。

 私とオルシズさんとリリアちゃんはセリアを睨む。セリアは疑問の表情を浮かべる。


「もし記録を燃やされたらそれも言ってちょうだい。お仕置きを倍にするから」

「はい!分かりました!」

「それ以前に女王陛下が真面目に仕事していれば良い話ではありますが」

「私、真面目に仕事してんじゃん」

「「「どこが?」」」

「えぇ…」


 私とリリアちゃんでセリアお仕置き倍計画を話していると、オルシズさんがそれ以前の意見を述べてきた。

 それに対してセリアが自分の真面目さを主張してきたけど、私とオルシズさんとリリアちゃんでそれを同時に疑問視した。

 その反応を受けたセリアは若干ショックを受けている。真面目に仕事してる自信あったんかい。


 直後、ノワールと天神界メンバーのジーメンス三姉妹、私の護衛二人、別館警備の二人、アプテさん、へーメスがやってきた。


「アイラ様…」

「ノワール、行ってくるわね。あなたも無事に装備継承出来る事を祈ってるわ」

「はい。アイラ様もお気を付けて」


 ノワールと軽くハグした後、天神界メンバーに声をかける。

 ちなみに護衛二人と別館警備の二人は朝早くから街の朝市に出かけていたため、会うのは今日が初めてだ。たまに仕事放って生活満喫してるな。この四人。


「アテーナ、アルテ。しばらくの間、私の大切な人達をお願いね」

「御意」

「承知しました」


 二人はそれぞれ反応。この二人がいれば安心できる。


「エウリア、メリッサ。別館警備しっかりね」

「虫一匹入れさせません」

「ん…」


 エウリアの虫一匹は無理だと思う。メリッサはいつもの反応。


「向こうにいる間に髪型とか変えたくなったら、帰って来た時に応えるわよ~?」

「あはは。その時はお願いします」


 スンテノさんは変わらず明るい。この人柄が散髪繁盛してる理由なんだろうな。


「龍帝になるんですから、お化粧はきっちりしてくださいね。見栄えは大事に」

「はい。気を付けます」


 アプテさんはやっぱり化粧を気にするか。それもそうか。


「龍帝になって戻ってきたら、ぜひ龍帝国と貿易を始めてほしいね。その時に僕の出番が来るってものさ」

「貿易できるかは保証しかねるわよ?」


 へーメスは龍帝国と貿易交渉したいらしい。難しいと思うけど。


「ところでヘルメールさんとへーパトスさんは?」


 今ここには天神界メンバーのうちヘルメールさんとへーパトスさんがいない。私の疑問にアテーナが答えた。


「ヘルメールさんはご承知の通り各地廻っておりますのでいません。へーパトスさんはこういう場が苦手なのでいません」


 ヘルメールさんは解るけど、へーパトスさんはやっぱ寡黙だからこういう場はダメか。


「…ん?」


 こうして話しているうちに、謁見の間の外が騒がしい事に気が付いた。


「なんか騒がしくない?」

「多分、キリカ氏がやってきたからじゃないかな?迎えは一部の者のみで行ったから、閣僚含めほとんどの兵士や使用人は事態を知らない」

「そうなの!?」


 私の疑問に答えたセリアが言うには、城のほとんどの人がキリカが空を飛んでた事に混乱してると言う。てことは街もかなり混乱してるんじゃ…。


「陛下!女王陛下!こちらにおられましたか!」


 突然セリアを呼ぶ声が聞こえたと思ったら、政府の閣僚達や兵士が一斉に集まってきた。叫んだのはエーデル君だ。


「陛下、王都上空に何らかの生物が出現したと知らせが」

「街は混乱に陥っております。すぐに非常事態宣言を発令しましょう」


 ヴァン、ルーフェスさんは冷静にセリアに提言する。

 ねー、やっぱこうなるんだよ。


「非常事態宣言を出す必要はない。上空にいたのは竜だ」


 セリアの言葉に閣僚や兵士は驚いている。


「竜、ということはシュバルラング龍帝国の者ということでしょうか?」

「何故、グレイシア王国に…」

「それはアイラが持ってる荷物と彼女を見て察してほしいね」

「アイラ侯爵閣下の荷物と…、えっと、そちらの方は?」


 リナリアさんとクラナッハさんの疑問にセリアは私の荷物とキリカを指差す。それを見たミランダが戸惑いの反応をする。


「セリア、ちゃんと説明してあげなさいよ」


 見かねた私はセリアに説明を促す。


「へいへい。実は竜族の儀式でアイラが龍帝候補に上がったらしい。アイラは今からしばらくグレイシアを離れてシュバルラング龍帝国に滞在する」

「龍帝候補!?かの伝説の神龍様と契約なさるのですか!?」


 セリアの説明にクラナッハさんが驚愕の表情を浮かべる。


「そういうこと。ね?アイラ。さっきの竜はアイラのお迎え。そこにいるのが人型になった龍帝補佐のキリカ氏だよ」


 キリカは黙ったまま一礼する。


「皆さんすいません。王国の幹部になったばかりだというのに、しばらく国を離れることになりました。帰ってきたらしっかり勤めは果たしますので」

「何言っちゃってるんスか~!二千年もいなかった龍帝になれるってスゲー事ッスよ~!」

「その通りだ。気を付けて行けよ。帰って来るの待ってるからな」


 私の謝罪にフリマンとヴィクターが答える。

 これで以上かな?


「ではキリカ。そろそろ」

「もうよろしいでしょうか?」

「ええ、いつでも」

「分かりました。では城門前の広場へ移動をお願いします」


 私はキリカと一緒に城門付近にある広場へと移動した。他のみんなもぞろぞろと付いてくる。


「では少々お待ちを」


 そう言ってキリカは私と距離をとった。直後、彼女の身体がきれいな青色に光り始めた。

 そして、大きな青色のつむじ風が発生したと思ったら、治まったと同時に大きな竜が出現した。

 美しい青色の胴体に翼の部分はエメラルドグリーン。頭の先と尻尾の先だけ黄色い。

 別館の窓から見たのと同じ、美しい竜だ。


「ここから背にお乗りください。荷物を落とされませんようご注意を」

「分かったわ」


 キリカは翼を下ろして背に私を乗せるための道を作った。

 私はキリカの背に乗り込む。


「じゃあ、行ってきます!」

「いってらっしゃい。無事に戻ってきてね」


 私はみんなに声をかけ、セリアが答える。


「それでは出発します」


 キリカが出発を宣言し、翼を羽ばたかせて地上から離れた。

 キリカは旋回しながらどんどん高度を上げていく。ある程度の高度になったところで、龍帝国がある方面へと飛び始めた。


 王都フェルゼンが、グレイシア王国が遠のいていく。


(必ず神龍と契約して戻ってくるからね)


 これはお別れじゃない。アストラントを離れた時とは違う。

 一時的に離れるだけ。必ず戻る。


 私はそう思いながら、そして神龍や龍帝国の民との出会いを楽しみにしながら、景色を楽しむのだった。


 …景色って言っても今は周り海だけど。

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