神獣達の住処は?
魔力切り離しのために離れていた神獣達と護衛二人は再び私の近くに集まった。
「これにて神獣達との契約と、魔力の限界突破対策は完了しました。アイラさん、もう城へ戻っていただいても良いですよ」
私が今回やる事は全て終わったらしく、オリジン様が場をしめた。城へ戻れば、後はシュバルラング龍帝国の使者が来るのを待つだけ。
それはそれとして、城へ帰ろうにも私は気になる事がある。
「帰って良いのは分かりましたけど、神獣達はどうするんですか?メッチャデカい神獣もいますし、街には連れて行けませんけど…」
「わたくし達神獣はどこにいようと契約者から要請があれば、召喚されるというかたちで主のもとに着く事が出来ます。なので無理に同行させようとしなくても大丈夫ですよ」
私の質問に答えた爺やが言うには、私はいつどこでも神獣の召喚を行えるようだ。なら問題ないか。
「そうなんですか。じゃあ神獣達はみんなそれぞれ住処を持っていると?」
「いいえ。スキュラのように組織を持っている場合であれば住まう場所がありますが、基本的に我々神獣は住処となる場所を持ちません」
住処無いんだ。爺やも他の神獣もみんな世界中動き回ってたのか。
ん~?でも、そうなると?
「その状態で私が召喚したらマズくない?急に寒い地域から暑い地域とかに召喚されちゃったら対応不可能じゃない?」
オルトロスとかキマイラとかね。キマイラ未だに息切れしてるけどマジで大丈夫かな?
私の質問に爺やは頷く。
「アイラ様のおっしゃる通りです。しかしその対策は皆各々していますので問題ありません。ただ主の要請に対して迅速に対応する必要があるため、今後はどこかに待機場所を作らなくてはいけなくなります」
つまり爺やが言いたい事は、熱帯地帯や寒冷地帯の変化には対応可能と。でも対応力を上げるために新しく住処が必要と。
と私が解釈していると、エキドナさんが私の肩に手を置いてきた。
「話は解ったでしょ?主様。というわけでお願いね」
「え?何が?」
「私達の住処決め」
「……うぇ!?」
エキドナさんの言葉に私は驚く。
「え?私が神獣の住処決めるの!?」
「あんたは私達の主よ。当然の事ではなくて?」
えぇ~…。そんな勝手な。急に神獣の住まいを探すなんて無理だよ~。ザッハークとか大きすぎだし、ほとんどの神獣は姿的に街には連れて行けないし~。う~ん…。
「アイラ様。わたくしとオルトロスが同行しましょう。それでアイラ様のご事情を知っている方に説明をしまして、街にいても大丈夫そうな者から住まいを決めていくというかたちでどうでしょうか?それまでは各自どこかに待機ということで。
わたくしであれば人の姿をしていますし、オルトロスは犬の姿をしていますから、人の目に触れても怪しまれる事もないでしょう」
爺やの言う事はごもっともだ。神獣達の見た目では確かに爺やとオルトロスが人里に溶け込める姿をしている。この一人と一匹がいれば、セリアに説明がしやすくなるだろう。
ここは爺やの案を採用する事にした。でもまだ疑問が残る。
「そうね。爺やの案に従うわ。でも他の神獣は待機するにしてもザッハークとか大きすぎて居場所が無いと思うけど。その点の解決方法はないかしら?」
私が巨体神獣に対する疑問を上げると、フェニックスが回答した。
「我々神獣の中でも大型の神獣は、身体を小さくする能力を備えています。………このように。ザッハークも可能かと思いますよ」
フェニックスは突然身体を光らせたと思ったら、姿そのままで小さくなった。鷹や鷲と同じくらいのサイズ。こんなことまで出来るって、神獣はすごい。
思えばエスモスは既に小型化してるわけだし、感心するのは今更か。
「他の大型神獣で小さくなれる神獣は小型化してくれる?」
私が神獣達に小型化を命令すると、次々に小さくなりだした。
二階建ての建物と同等の大きさだったフェンリルはケルベロスと同じくらいになって、四階建ての建物並だったバハムートは人間よりも少し大きいくらいにまで小さくなった。
神獣達の中で最も大きかったザッハークは…。あれ?どこ行った?
「ザッハークは?どこ行っちゃったの?」
「アイラ様、足元にいますよ」
私がキョロキョロしていると、アルテが私の足元を指差した。
足元を見ると、野球ボールくらいの大きさの球体がいた。
色はピンク色に近い赤色。手足は無くてコロコロしてる。つぶらな瞳のカワイイ顔もあって、とても癒し系。
持ってみると割と軽くてほんのり温かい。
…で、この子がザッハーク?
「あなた、ザッハークなの?」
私が質問すると、球体は私の手のひらでポヨンポヨンしている。なんとなく「そうだよ」って言ってる気がした。
この癒し系球体がザッハークの小型化バージョンらしい。通常時とギャップあり過ぎ。
どうして通常時はメッチャ恐ろしい姿で、小型化したらスライムみたいな癒しキャラなの?
「この様子ですとザッハークも同行出来そうですな。ともに行かせましょう」
「う、うん。私以外の人とか見て大丈夫かな?」
爺やは一緒に行かせようと言ってるけど、ザッハークはまだ生まれたばかり。私と護衛以外の人間を見ていない。私はそんな子を急に人前に出してしまって良いのか心配していた。
すると、そんな私の心配発言に対して、ラミアさんが意見を述べてきた。
「アイラ様。ザッハークはまだ赤子同然だと思います。親であるアイラ様が傍にいないと、ザッハークは不安でたまらないでしょう。ここはともに連れて行くべきかと」
う~ん、ラミアさんの意見も確かに。ザッハークは私以上に右も左も分からないわけだし、一緒にいてあげないとダメか。
「分かった。ザッハークも連れて行くわ。ザッハーク、ちゃんと私の言う事聞いて、おとなしくしていてね」
ザッハークはコロンと一回転した。解ったらしい。
「アイラさん。私はそろそろ精霊達のもとに戻ります。帰り道は分かりますね?」
「あ、はい。大丈夫です。ありがとうございました」
「いいえ。ではまた何かご報告がありましたらお邪魔させていただきます。それでは」
オリジン様は一礼すると、一瞬でその場からいなくなった。
「えっとそれじゃあ、アテーナとアルテと爺やとオルトロスとザッハークは私と城へ。他の神獣は一旦解散。出来る限りグレイシア国内にいてくれると安心できるわ。無理にとは言わないけど。住処の事が決まったら呼ぶわね。じゃあ、解散!」
私の言葉を受けて、神獣達はみんな解散していった。
これで私と護衛二人と爺やとオルトロスとザッハークだけとなった。
「それじゃ、帰ろっか」
「ははっ」
「ええ」
「よろしくお願いしますぞ」
「ワン!」
私の言葉にアテーナ、アルテ、爺や、オルトロスがそれぞれ反応し、ザッハークは私の手のひらでポヨンポヨンしてる。
こうして私達は歩いて城へと帰るのだった。
セリアや他のみんなに色々説明しなきゃ…。




