夢とある日の朝
初めての投稿です。
よろしくお願い致します。
夢を見た。
見上げる程の高い建物が並び、多くの人々があちらこちらへ行きかう。
私はその中を歩いてんだけど、突如強い光に照らされて、そこで夢は終わった。
夢から覚めて起き上がると、そこはベッドの上。クイーンサイズ並みの大きなベッド。
部屋は西洋風の高級ホテルのような豪華な造りになっていて、窓の外から入ってくる陽の光が暖かくて心地よい。
ベッドに座ったまま目を擦りながら、私は呟く。
「また、前世の夢か……」
私の名前はアイラ・リースタイン。
アストラント王国、リースタイン子爵家の令嬢で、もうすぐ王都にある学院に入学する予定の15歳。
ごく普通の貴族令嬢と言いたいところだけど、私には他の人々と違うところがある。
それは、前世の記憶がある、というところ。
幼い頃から時々前世の夢を見ていて、最初に見た夢がきっかけで前世の事を思い出した。
私の前世は日本人で、名前は後藤春華というどこにでもいる普通の女子高生だった。…自分でどこにでもいると言うのも変だけど。あとは護身術の為に太極拳をやっていた事くらい。…独学だけど。
ただ、思い出せているのはこれぐらいで、まだまだ思い出せていない事もたくさんある。
「こうして何度も夢として見るってことは、前世に強い未練が……あるわけないよね。だとしたら、幽霊として日本に留まっているはずだし」
どうして死んだのかも思い出せていないが、死んでしまった以上はどうする事も出来ないし、転生した今の人生を楽しみたいと思ってる。
なんて思っていると、ドアがノックされ、開かれた。
「おはようございます、お嬢様。今日は既に起きてらっしゃったのですね」
部屋に入ってきて、そう言いながら丁寧にお辞儀をして微笑みを浮かべているのは、ラベンダー色の髪を肩上まで伸ばしたメイド服の女性。
彼女の名はシャロル・バレスタイン。私の専属メイド。
「おはよう、シャロル」
「はい、おはようございます。もしかしてお嬢様、また前世の夢を見てました?」
「さすが私の専属メイド。よく分かるわね?」
「なんとなく、そんな気がしたので」
(さすがシャロルね。幼い頃から一緒にいるだけあるわね)
シャロルは私が幼い頃からメイドとしてリースタイン邸で仕えている。
私より3つ年上の18歳なんだけど、雰囲気はかなり大人びている。
それと何故だかしらないけど細い糸のような物とナイフを用いた戦闘技術を持っていて、暗殺技術まで持っている恐ろしいメイドでもある。どうしてそんな技を持っているのか気になってはいるけど未だに怖くて聞けない。メイドは戦闘とかできないよ?普通。
ちなみに、私の前世の記憶の事を知っているのはシャロルだけ。私の良き理解者でもある。
「お嬢様、今日は朝の武術特訓はなさいますか?」
「ええ、するわ」
私は前世で毎朝太極拳の練習をしていた。記憶を思い出してからというもの、その習慣まで蘇ってきて、朝やっておかないと落ち着かない。
寝間着から動きやすい服装へ着替えた後、髪をシャロルに整えてもらう。私の髪は黒髪のスーパーロングで膝下辺りまで伸びている。
前世ではショートヘアだったので、今世では思いっきり伸ばしたいと思ってわざと散髪せずに伸ばし続けた結果、ここまで伸びた。維持するのが大変だけど、実は結構気に入っていたりする。
そのため、櫛で髪を梳くだけでも大変なはずなのに、シャロルは手際良くあっさり私の髪を整えていく。
頭の下の方で一つにまとめ、一本の三つ編みにしてもらえば準備完了。これが私の普段のヘアスタイル。
「終わりました。お嬢様」
「んー、ありがと」
私はその場で背伸びをし、軽く深呼吸する。
「じゃあ、行きますか」
私とシャロルは部屋を出て、庭へと向かった。




