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もう間違えません  作者: アカイ葵
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ルーベルトリア王国王太子、ネイト殿下の誕生日パーティー。

国王陛下とネイト殿下の挨拶で始まったそれは、一国の王太子誕生日パーティーに相応しい、豪勢できらびやかなものだった。


緊張しながらも、アルヴィン様と共に、殿下と婚約者であるルリ王女への挨拶を済ませて、今は軽く食事を摘んでいるところ。

ちなみに、ルリ王女は小柄で神秘的な雰囲気の、とっても可愛い方で!

ドキドキしながらも王女の国の言葉で話しかけたらとても喜んでくださった。

慣れない言葉で大変ではないかと、僭越ながらお手伝いを申しでたのだけれど。

「心遣いに感謝する、しかし私がルリについているから心配いらないよ」と殿下に言われてしまった。

殿下が王女を大切にしているのは傍目から見ても確かで、お互いに想い合っているお二人はただただ素敵だった。


(みんなが殿下と王女に憧れるのが分かるわ。…私もアルヴィン様とあんな風になれたら…)


ちらりと隣で、同じ様に軽食を摘んでいるアルヴィン様を盗み見る。

いつもアルヴィン様はかっこいいけれど、今日のアルヴィン様はいつも以上にかっこよすぎて反則だ。

サラサラの髪を少し横に流していて、普段は髪に隠れている額と耳をだしている。

礼服も、深い紺の色合いが美しく、私の青いドレスに合っていて嬉しくなってしまった。

迎えに来てくれたアルヴィン様を見た時、あまりの格好良さに腰をぬかしかけたのは秘密。

こんなに素敵な人なんだから、きっとこの会場でも沢山のご婦人方の注目を集めてしまっている。

だって、ずっと色んな方向からの視線を感じているもの。


そこまで考えて不安になってしまった。

私とアルヴィン様は他からどう見えているのかしら?

繊細な、優しい雰囲気のアルヴィン様の隣にいるのがこんな強面の女だ。

「どうしました?暗い顔をしていますね」


私の様子に気づいたのか、アルヴィン様が顔を覗きこんで尋ねてきた。


「……アルヴィン様が、かっこよすぎるんですよ。

す、素敵すぎるんです。だからみんなアルヴィン様を見てらっしゃるんです」


「ん?褒めていただいて嬉しいですが…、なんでそんなことを急に?」


「だって!実際、たくさんの視線を感じますもの。

みんながアルヴィン様を…。

あ、厚かましいのを承知でお願いします!

できればでいいんですけれど、他のご婦人と、ダンスを踊るのは…今日はやめていただけないでしょうか…。こんなに素敵なアルヴィン様と至近距離で接する方がいたら絶対に恋してしまいますもの…!」


言ってしまった!!大変なワガママを言ってしまった。でも、どうしても言いたくなってしまって。

恥ずかしさと不安で、持っていたグラスを握る手に力が篭る。


「…殺し文句、素で言ってるなぁ…」


「…?」


低く、アルヴィン様が何かを呟いた気がしたけど、何を言ったか聞き取れなかった。

聞き返しても、微笑まれるばかり。


「みんなから注目を集めているのは、僕じゃなくてオリアーナ様の方ですよ。

こういった大きな式に出ることは稀だったでしょう、見慣れない美人のオリアーナ様に、みんな見惚れているんです」


アルヴィン様の言葉が、私の為を思って言ってくれた優しいお世辞だとは分かっていても嬉しい。

照れくさくなってしまって、ふふふっと笑ってしまう。アルヴィン様に褒められて、さっきまでの不安な気持ちは薄れていった。


その後、話しながら小腹を満たし、私がグラスを空にした時だった。

アルヴィン様がいつもの微笑みをたたえて何でもないように


「オリアーナ様、ガルリアドの王子の元へ挨拶に行きたいと思います。いっしょに来てくれますか?」


その言葉に力強く頷く。

色々良くない話を聞いたけれど、大丈夫。

アルヴィン様がいてくださる。

隣国の王族だ、きちんと失礼のない様にしなくては。





「ベルナルト王子、ツェザーリ王子。

お久しぶりでございます、アルヴィン・ステルです。お二方にご挨拶をと思い失礼させて頂きました」


アルヴィン様が、二人の男性に声をかける。

私もアルヴィン様のエスコートの元、お二方の前に立った。ガルリアド王国の第二王子と第三王子だ。

アルヴィン様の挨拶に、返事を返してくださったのは銀髪碧眼に眼鏡をかけた方。

整った顔立ちで、どことなく中性的な感じ。

そして、私の紹介を求めた方もこれまた銀髪碧眼の整った顔立ちだった。

お二方とも大変な美形なことは同じだけれど、タイプが違う美形。

ガルリアド王家の方はみんな銀髪碧眼なのかしら。

アルヴィン様から紹介を受けて、私もお二方に挨拶をする。

自分でできうるかぎり最高に綺麗な礼を心がけて。


「お初にお目にかかります。サイ家四女、オリアーナでございます」


「僕はガルリアド王国第三王子。ツェザーリ・イヴァン・ガルリアドです。サイ公爵にこれほど美しいご息女がいるとは知りませんでした。このように魅力的な女性が婚約者とは、アルヴィン殿が羨ましいです」


眼鏡をかけた方がにこやかに挨拶してくれた。

そうか、眼鏡の中世的な方が第三王子のツェザーリ様。とても有能な政治家だという。しっかり頭の中で記憶する。

と、いうことは…。

さっきから凝視してくる方が、あの第二王子ね。

無言で凝視されてしまって、どうしたらいいかわからず、ついアルヴィン様を見上げる。

挨拶を返してくださらないから、どう話せばいいのかしら?こういった場合どうすれば?

すると、ツェザーリ王子のほうが、兄上、と咎めてくれた。

ツェザーリ王子に声をかけられてハッとしたように挨拶なさった第二王子。


「ベルナルト・ガニー・ガルリアド。ガルリアド王国第二王子で、ツェザーリの兄です。

私は以前こちらの国に滞在していたこともあったのですが、オリアーナ嬢を見かけたことはありませんでしたね。貴女がいれば絶対にわかったはずだ。

オリアーナ嬢はあまり夜会などには参加していなかったのかな?」


ツェザーリ王子とは違って、男性的な美形という感じのベルナルト王子。

キリリとした眉にすっと通った鼻筋。

ベティ嬢をはじめとして令嬢方が騒ぐのも不思議ではないけれど…。

私はなんだかその自信に溢れた物言いに少しだけ、不信感を抱いてしまった。

もちろん、一国の王子なのだからそういった物言いもおかしくはない。


(仮面舞踏会なんて、そんな如何わしい所に行くはずないわ)


ヒュー兄様から、第二王子は仮面舞踏会などの夜会によく行っていたと聞いていたので、心の中だけで反論した。

とりあえず、当たり障りのないことを返さなくちゃ。きちんと社交しないと。人見知りだなんて言ってられない。


「私はどうにも世間知らずでして。まだまだ一人前とは言い難いですので、あまり夜会などに出るのは少なかったのです」


「僕としては嬉しいかぎりですよ。彼女のこの美貌を、夜会で他の男の目に晒す機会が少なくて」


すると急にアルヴィン様が、するっと私の腰に手を回した。

えっ!えぇ!?

体がアルヴィン様に引き寄せられて密着する。

かーっと頭に血がのぼって、心臓がばくばくと鳴り出す。どうしようどうしよう。

表情だけはサイ家の名にかけて、表面上でないよう必死に取り繕っているけれど。絶対、絶対この動揺はアルヴィン様にも伝わっている…!!

なんだかアルヴィン様、いい匂いもするし…!!!


「ははは、仲睦まじくているんですね。

きっとオリアーナ嬢の花嫁姿も眼福ものでしょう。

我が国とステル領は隣接する地にありますし、お二人の結婚披露宴にはぜひ参加させてほしいものです」


「ツェザーリ王子にも列席いただけるとは、こんなに名誉なこともありませんね。

しかし、王太子殿下の右腕と名高いツェザーリ王子にご足労いただくのはあまりにも恐れおおいですよ」


私の混乱を他所に、アルヴィン様とツェザーリ王子はにこやかに話している。

会話を続けながらも、私の腰に回した手に幾分かグッと力がこめられたのを感じて、どうしたのかと見渡すと。


…会話に加わっていなかったベルナルト王子が、私の腰の辺りを、なんだか…嫌な感じで、またしても凝視していた。

どことなく、視線に熱があるというか…粘っこいというか。

あまり上手く言えないけれど、貰って気持ちのいい視線ではない。

そんなベルナルト王子に目を合わせられるはずもなく。必死で平静を装い、アルヴィン様とツェザーリ王子の会話を微笑んで聞くことに徹する。






互いの国や領地について話し終わり、私たちは王子の前を失礼した。

あれからずっと腰に回されていた手は今は解かれている。

わ、私、自分を褒めたい!だって、本当はときめきすぎて叫びたいたいのを我慢できたのだもの!


「急に触れてすみませんでした。変にちょっかいをかけられないよう、牽制させてもらいました」


やけに爽やかにアルヴィン様が言い切る。

ドキドキしすぎて困っただけで、全く嫌ではなかったのでそこは、いい。

ただ、混乱しきりだった私に比べて、平然としているアルヴィン様がちょーっとだけうらめしい。なので、ほんの少しだけ口を尖らせて言った。


「牽制ってよく意味がわからないです。

あの、最後ツェザーリ王子が小声で何かアルヴィン様におっしゃっていませんでしたか?何を言われたんですか?」


「…話す場がほしいと。ツェザーリ王子は噂通り有能な政治家ですね、話が分かる方だ」


「ツェザーリ王子と二人だけで話を?」


「ええ。オリアーナ様、お願いがあります。これからダンスが始まりますが、僕と踊った後はヒューの側にいてください。僕は少し場を離れます。

ですから、絶対にヒューから離れないでほしいんです」


アルヴィン様が真っ直ぐ私を見て真剣な口調で言った。

…あれ?もしかして、これってアルヴィン様からの初めてのお願い事じゃないかしら?

途端に嬉しくなって大きく頷く。


「はい!承知しました」


「サイ公爵やダリオ殿でもいいんですけど、きっとお二人は陛下と殿下の側を離れられないと思うので、ヒューが適任です。ヒューには僕から話を通しておきますから」


確かにアルヴィン様の言う通り、サイ家からは私以外の男性陣は全員式に出席していた。

(お義姉様は出産したばかりなので欠席。お母様もお義姉様と甥の側にいる為欠席)


アルヴィン様とツェザーリ王子が、二人だけでどんな話をするのか気になるけれど。

無理に聞き出すことはしないようにしよう。

そう心に決めて、私はアルヴィン様に手をとられダンスホールへ向かった。


アルヴィン様とのファーストダンスだわ!




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