おっさん、ギルドマスターに出会う
間が空いてしまいました。
おっさんはギルドにやって来た。
講習を受ける為であるが、その前に街の外で倒した20匹の小鬼の討伐依頼報酬を手に入れるつもりであった。
受付に声を掛け、小鬼の右耳と魔石の入った布袋を買取カウンターへと差し出す。
「おっ、結構入ってそうだね。」
ギルド職員の小太りの親爺が買取カウンターの上に布袋を逆さにして魔石と討伐証明である小鬼の右耳を出して行く。
「ふん。 小鬼の耳は20個か。 後1つで7組になったんだがな。 知ってると思うが小鬼は3匹で1組として報酬が出る。 バラになると安くなるが、構わないか?」
「別に構わないですよ。」
「じゃあ、魔石20個で大銀貨2枚、小鬼6組で大銀貨1枚と小銀貨2枚、バラが2匹で小銀貨1枚、計大銀貨3枚と小銀貨3枚だな。」
【大体3万3千円位か・・・結構ボロいな。 でも命掛けてやったと考えたら、えらい安いか? まあ、大した労力やあらへんから構わんけどな。】
おっさんは親爺からお金を受け取り、ポーチへと直す。
講習の為に再び受付に声を掛けると、2階の小会議室へ行くように促された。
階段を昇ると右がギルド経営の宿の宿泊部屋、左に会議室等の小部屋が幾つかある。
小会議室と書かれたプレートの部屋にノックをして入室すると教壇の様な小机と椅子が3脚並べられていた。
おっさんは一番奥の椅子に腰掛けていると若い男女2人が入室して来、それに続いておっさんより若干年上らしき大柄な男が入って来た。
「新人が揃った様だな。 では講習を始めるぞ。」
大きい声で講習の開会を宣言し、講習会は始まった。
大柄な男は此処のギルドマスターであり、新人講習は全てこの男が行っていた。
名をバルバロッサと言い、海賊チックではあるが元海賊では無い。
約2時間程の講習を終えるおっさんにバルバロッサが近づいて来る。
「悪いが、少し込み入った話がある。 執務室に向かうので付いてきて欲しい。」
バルバロッサはおっさんの返事を聞く事もなく小会議室を出る。
おっさんは思い当たる理由は無いけれども、仕方なく付いて行く事にする。
階段を昇った3階の奥まった所にギルドマスターの執務室はあった。
「此処が執務室だ。 中に入ってくれ。」
バルバロッサはドアを開けおっさんを通す。
「其処のソファに座ってくれ。 紅茶位は出すから。」
茶器が立てる音を聞きながらおっさんはソファに腰掛ける。
湯気の出る茶器をおっさんの目の前のテーブルに置き、バルバロッサは向かいのソファに腰掛け、カップに口をつけ紅茶を一口含む。
「話何だがクラバル師からお前さんの事は聞いている。 召喚者で幻の職業である大賢者の上にレベル1でレベル15〜20に相当する高ステータスだそうだな。 通常レベル15位の冒険者はDかEランクに位置している事が多い。 お前さんにはGランクから始めるのは面白く無いかも知れんがギルドの規則上やむを得んのだ。 過去に召喚された大賢者は魔王シュラーク、魔神アウラベイを滅ぼした大英雄だった伝えられている。 お前さんもそうなるとは思うが今はそのランクに甘んじて欲しい。」
バルバロッサは申し訳なさそうに頭を下げる。
「気にしないで下さい。 私は神殿で一般的な事は習いましたが、この世界の実際の事には疎い。 出来ればこの世界を楽しみながらゆるゆると生きて行きたいので下位ランクから始めるのはこちらとしても有り難い事だと思います。」
「そう言って貰えるとこちらとしても有り難い。 何かあれば何でも言ってくれ。 此方で対応出来ることなら対応させてもらうつもりだ。」
「・・・一つ引っ掛かる事があったのですが。」
「何だ?」
「講習会に参加する前に南門から出て街道を外れ30分程歩いた野原で南の森から出て来た小鬼20匹に襲われたのです。 小鬼は通常あまり知能は高くなく、主に木の枝を加工した棍棒や冒険者の遺体から剥いだ武器等が多いと聞いたのですがその小鬼全ての持っていた武器が真新しい小剣だったのです。 あまりにも統一されていて違和感があったものですから・・・。 小鬼から手に入れたのがこの小剣なんですが。」
おっさんはそう言いながら小鬼から手に入れた小剣を〈収蔵庫〉から出してテーブルの上に置く。
バルバロッサは小剣を手に取り眺めていたが、緊張した表情となる。
「同じ小剣が20本か?」
「同じ小剣が20本ですね。」
「此処の紋章を見て欲しい。」
バルバロッサは柄部分に刻印された紋章を示す。
「これはヴイシュマール辺境伯の簡易紋章で、通常は辺境伯の常備軍の持ち物に刻印される。 ヴイシュマール辺境伯領は此処から南西方向に徒歩で約1月以上、距離にして約1,000km程ある。 それを小鬼が持っているのは確かに可笑しい。 すまんが、適正な価格は払うので持っている小剣を全て出してくれないか?」
おっさんは空間魔術の〈収蔵庫〉から20本の小剣を出していく。
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