おっさんの初魔術
2018/08/11 メートル表示をm表示に変更しました。
本話のタイトルを変更しました。
おっさんは宿屋周辺をうろちょろして色々な店舗を覗いて行く。
大通りに面して店舗が立ち並び、空き地や裏路地には出店や露店が並んでいる
比較的安めの露店でうどんに似た「ウロン」という麺類を食べたおっさんはこの世界の食事に物思う。
神殿で召喚された際や常識の勉強の際にも聞かされたのだが、この世界はカルローリアと言い過去に魔王や世界の危機が幾度か存在した。 その度毎に異世界から勇者となる者達が召喚されている。 過去に幾人もの日本人が召喚されていたとの事だった。
一神教を信じる人種はこの世界を否定し相容れない為召喚されない。 多神教で宗教的に禁忌が少なく、あらゆる宗教に寛容な日本人が最も召喚されやすいらしい。
その為所々に日本の名残りが存在する。
今食べたうどんに似た「ウロン」もそうらしい。 おっさんの考えではうどんがいつの間にか訛ったのだろうと思う。
よく召喚ものや転生もので主人公が和食を再現したりするのだが、この世界ではそんな事をしなくても普通に味噌、醤油や和風の出汁類がある。
過去に召喚された勇者が積極的に広めたものらしく日本人として42年を過ごしたおっさんにはありがたい。
ただ関西人であるおっさんには関東風の醤油辛く感じる味付けはキツイのだが・・・
関西人は薄口とか言う人もいるが、そんな事はない。ただ関西人はどちらかと言うと甘みを好むと言ったほうが良い。その為関東風の濃口醤油が勝った味付を醤油辛く濃く感じるのだ。また鰹節の出汁より昆布の出汁を好むので感じ方が違うのである。
様々な店舗を見て回っているが、実はおっさんは買う必要のある物は少ない。
神殿を出る際に渡された背嚢には生活に必要になるであろうタオルや歯ブラシ、櫛、剃刀、石鹸等と2~3着の衣服、下着が入っている。
ただ暫くはこの街を拠点にして生活費を稼ぐ必要がある為街の造りや店舗の配置を知っておく必要があるとおっさんは思っている。
おっさんは武器屋や鍛冶屋を覗いて気付いたのだが、意外にも刀や太刀が置かれている店舗が何軒かあった。
その内の一番品揃えの良い店で話を聞いてみると、400年程前に召喚された日本人が刀鍛冶らしく刀の製法が鍛冶師の一部に細々と伝わっているとの事だった。
おっさんの手持ちでは格安の刀ですら買えないので諦めるしかないのだが、おっさんは関西人。手持ちの長剣を下取りに出して値切って買えないかと刀を売る店全てで交渉してみた。
当然の如く拒否されたのだが・・・
そんな事をしながら時間は過ぎ夕方になり宿へと帰ったおっさんは夕飯を宿で食べながらミニオークのプータが客に配膳するためちょこちょこと動き回っているのを見て思わず微笑み、プータの可愛さを堪能した後、自分の部屋へと戻り早々に就寝するのだった。
翌朝、おっさんはプータの動きの可愛さを堪能しながら朝食を食べた後冒険者ギルドへと向かった。
まだ朝早い時間帯であるがおっさんは依頼の内容を見て回る。
本来おっさんはこのカルローリアの文字を読み書き出来ないし喋る事も出来ない。 しかし召喚時に持っていた言語変換のスキルが勝手に同時通訳している様で読み書き会話が可能となっている。
おっさんが見たところGランクにはこれが冒険者がする仕事かと思わざるを得ない仕事しかないようである。
【何で冒険者が引っ越しの手伝いやら公衆便所の掃除やらやらなあかんねん? なんでも屋の仕事ちゃうんか?】
おっさんは依頼掲示板を隅から隅まで見て、幾つかの仕事を見繕っておく。
【一番マシなんは外壁の補修作業かな? 必須スキルが土魔術やから受けれるやろうし、依頼の中ではそこそこの依頼料やし。 後は外堀の清掃と補強やろうか。 こっちは必須が水魔術と土魔術になってるな。 拘束時間とか書いとらんのが若干怖いけど、まあしゃあないやろな。 うん? よー考えたら、儂魔術使えるんかいな? どっかで魔術撃てるか確認しとかなあかんな。】
おっさんはギルドを出て、ギルドから最も近い南門へ向かった。 おっさんはそのまま南門から外へ出て街道を外れ30分程歩き森が見える野原へとやって来た。
おっさんが魔術を使おうと思うと頭の中に呪文の一覧がリスト化されて浮かんで来た。 そのリストの中から〈アースウォール〉を選択すると頭の中に長い文言が浮かぶ。 文言を追って呪文を詠唱すると地面が盛り上がり壁が形成されて行く。
縦5m、横30m、厚さ1.5mの大きな壁だった。 ゲームでは縦2m、横1.5m、厚さ15cmの防御壁だったものが城壁クラスに変化していた。
【こりゃあかんわ。 他の呪文も試しとかな危ないで。】
おっさんは今度は〈ファイアボール〉を選択してみたのだが、15cm程のボールでは無く1m近い球体であり、速度も途轍も無く速く視線で誘導出来てしまうというとんでも無い物に変化している。
〈ファイアボール〉が地面に着弾し、紅蓮の炎が弾けクレーターが出来上がる。
【阿呆みたいな威力やな・・・。 こりゃ上位の呪文は使わん方がええかも知れんな。 〈メテオストライク〉なんか放ったら街位消し飛ぶんやないか?】
おっさんが今後の魔術の運用をどうするか考えていると、南に見える森から数十体の人型が飛び出して来る。
大きさと色合いから小鬼だと判断出来るのだが、何だか妙に装備が良い様であった。
20体の小鬼は光を反射させた小剣を手に革鎧を着ており隊列を整え、おっさんへと向かい走って来る。
おっさんは走って来る小鬼の数を減らすべく〈エアカッター〉の呪文を放つ。
取り敢えず数体でも減らせれば良いと思っていたのだが、巨大な横長の真空波が発生した様で走って向かって来ていた小鬼は上半身と下半身が綺麗に分断されていた。
おっさんは多少威力が上がっているだろうと踏んで〈エアカッター〉の呪文にしたのだがそれでもオーバーキルだったようだ。
おっさんはウエストポーチから布袋を取り出し、ナイフを使って小鬼の右耳を削ぎ、心臓横にある魔石を抉り出し布袋へと入れて行く。
【手が血塗れやがな。 金になるとは言え余り気分のいいもんやないな。】
水魔術で〈ウォーターボール〉を浮かべ、手を洗って血を落とす。
大地に落ちた小鬼の持っていた小剣を集め、空間魔術の〈収蔵庫〉へと仕舞っていく。
【取り敢えず街に戻って、魔石と小剣を売って講習受けなならんな。】
おっさんは小鬼の遺体を〈ファイアボール〉で焼却して街へと帰って行くのだった。
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