閑話 ダンジョンのおっさんの裏側で
日をまたいで続投です。
我は偉大なるDMにして至高なる小鬼の王である。
ゴブ助と呼ばれた童の頃から幾星霜。
数多の時(人の世で10年という果てしなく永き時間)を生き抜き進化の果に小鬼王へと至った覚者である。
幼少の頃より闘いの中で育ちし我は小鬼王となり、滾る破壊衝動に突き動かされ支配する集落の同族を連れ遠征を行った。
万夫不当たる我が遺跡を住処とする食人鬼を攻め滅ぼした後に、それは起こった。
低能なる食人鬼の長は自らの棲む部屋の奥に財宝を隠し持っていたのだが我がその部屋に入った刹那、我は謎の魔法陣に囚われた。
光が拡散し我は狭き部屋へと飛ばされる。
薄暗い部屋の中央に漆黒の闇を思わせる大ぶりの魔石。
我は童の頃、集落の古老(呪術小鬼
)より聞いた昔話を思い出した。
小鬼の王が迷宮の王となった。
迷宮核に招かれし王は迷宮を支配し、下劣にて欲深き人族を贄となし小鬼の楽園を築いた。
この後は王の活躍の話が続くのだがそれはおいておこう。
我は気付いた。
気付いたのだ!
我は迷宮核に招かれたのだと!
我は昔話の小鬼王と同じく選ばれた存在なのである!
我は迷宮核に触れDMとなったのだった。
迷宮核は我に数多の智慧を授けた。
我は階層を造り、トラップを設け、我が眷属を配置した。
気に入らぬ事に知能の劣る食人鬼種や再生力の高いだけの醜大鬼種のDPが高く我が栄光たる同族小鬼種が格安であるとは納得が行かぬ事であるのだが。
我は叡智の限りダンジョンを整備した。
下劣にて欲深く愚かにも冒険者と名乗る人族共を誘き寄せ喰らう準備を終えた我は満を持してダンジョンの開通を行った。
開通時に100体程の小鬼が外へ飛び出して行ったのは予想外ではあったのだが・・・
開通後は暫くは人族共を狩ることはしない。
多くの贄を誘き寄せる為に見逃してやろう。
同族が倒されるのを見るのは忍びない。
されど迷宮核の知識では通過儀礼とも言うべき必要な事であると・・・
初めの10組は見逃した。
次に来る人族は必ずとも狩る!
我はそう決意し水晶球を覗く。
我が部屋に警報が鳴る。
どうやらまたもや愚劣なる人族がやって来た様である。
水晶球を覗けばなんと一人ではないか!
一人でこのダンジョンに来るとは片腹痛い。
返り討ちにしてくれよう。
数こそ力である!
我は人族の赴く先々に小鬼を配置して行く。
倒された同族が100体に至り我は不審を感じる。
何故この人族を狩れぬのかと。
我は急ぎ、鑑定を掛ける。
我が目にしたのは、とんでもない数のスキル持った異世界人のステータスであった。
伝説に聞く勇者であろうか?
されど勇者なるものの表示は無い。
我は訝しみながらも同族を配置して行く。
よく見れば1分辺りの取得DPがとてつもなく多い。
この人族を早く狩らねばヤバイ。
ヤバイ。
同族が配置しても配置しても倒されていく。
この人族には無限の体力があるのであろうか?
念の為地下1階のボスを替えておこう。
小鬼公程の力が有れば狩れるであろう。
序に弓使い小鬼、戦士小鬼を配置すれば完璧である。
段々とDPが無くなっていく。
同族が討ち取られる事500余体。
我は絶望の一歩手前である。
あとはボス部屋で食い止める事を期待するしか無い。
水晶球に映る闘いは絶望であった。
何故こんな化物が来るんだ。
このままでは短時間で我の所に来るではないか!
我が絶望に頭を抱えのたうち回っていると人族は帰って行く様である。
助かった。
ダンジョンから出て行った人族を見て我は安堵の吐息と共に命が助かった事に喜びを感じる。
正直もう2度とあんな化物はゴメンである。
この後、おっさんがまたダンジョンに入ります。
この小鬼王は生きた心地がしなかったでしょう。
小鬼王の口調というか言葉遣いが途中から若干変化していきますがこれは意識して行っております。
前話で次から話が動きますと書いておきながら閑話を書いてしまいました。
ごめんなさいm(_ _;)m




