冒険者の店のおっさん
今回も短めですが、投稿は早めになりました。
おっさんはマリーベルから聞いたギルドの真裏に有るギルド直営の冒険者の店に来ていた。
「イラッタイマセ。」
入店の際に、たどたどしい挨拶を掛けられたおっさんは外人さんかな位に思い商品を見始める。
とりあえずダンジョンでの野営に必要な一通りを手に入れるべく店の中で商品を物色する。
通常のキャンプ時の野営ならばテント、寝袋、毛布、カンテラ位が有れば良いのだろうが、この世界には魔物がいる。
ましてやダンジョン内であれだけの頻度で小鬼に遭遇したのだから他に何かいるものがあるかもしれないと漠然と考えていた際に、おっさんはふとギルドで聞く事がもう一つあった事を思い出す。
【ステータスオープンの時に簡易表示みたいな事出来んか聞くの忘れとったわ。 何か40の声を聞いてからチョコチョコと忘れものが増えてきてるで。 アカンな。 気を付けんと危ないで。 買い物終わったら覚えてるうちにギルドで聞いとこ。】
おっさんは手っ取り早く買い物を終わらせるべく店奥に声を掛ける。
「すみませーん。 野営に必要な一式が欲しいんですが。」
暫く待っても店奥からの反応が無い。
【さっき外人さんらしき店員さんが挨拶しとった思ったけど、どっか行ったんやろか?】
もう一度声を掛けるべく息を吸った際に店奥からの反応が返って来た。
「はーい、お待たせしました。」
前掛けを着けながらマリーベルが奥からやって来る。
後ろには従う様に黄色いエプロンを着けた小鬼がいた。
小鬼のエプロンの胸の所には黒糸で「ぼうけんこぞう」と小さい字で刺繍がしてあり、その下には赤糸で「店番 ミリィ」と刺繍されている。
おっさんは訳が分からず呆然としているとマリーベルが話しかけてくる。
「いらっしゃいませ。 野営道具一式で良いですか?」
マリーベルはにっこり微笑み貴方が呆然としている理由は解りますよとばかりに続ける。
「このお店はギルド直営ですので店番はギルド職員が持ち回りで行っています。 今日は当番の職員が体調不良で休みですので、この子が店番を行っています。 この子は店のマスコットのミリィです。 この『冒険小僧』はギルドの真裏でギルドと繋がっていますので、この子の連絡で私が受付からやって来る事になりました。」
「マスコットと仰いますが、小鬼ですよね?」
「この子は小鬼に似ていますが小鬼とは別種の赤小鬼なんです。 良く見てください。 通常の小鬼と比べて肌の色が若干赤味がかっているでしょう? 通常の小鬼は緑の血をしていますが赤小鬼は赤い血をしているので肌の色味が違うんです。 知能は赤小鬼の方が圧倒的に高いです。」
「はあ。」
「小鬼の様に凶暴性も無く体内に魔石が存在しない事から亜人の一種で収斂進化により小鬼と類似したものではないかと国立魔術研究開発機関では類推されています。」
「はあ、そうですか。」
「野営道具ですが初めは初心者用の『野営君セット』が過不足なく必要な物が揃っていてお勧めです。 一人用のテント、寝袋、毛布、魔術ランプ、魔術ミニコンロ、ミニナイフ、小鍋、虫除け香、魔物除け香のセットになります。 このセットは1人で野営出来るとセットになりますが、依頼中の1人での野営はお勧め出来ませんよ。 護衛依頼等で複数の冒険者がいる時に使用すると考えて貰った方が良いですね。」
「じゃあそれを頂きます。 幾らになりますか?」
「大銀貨7枚になります。」
「あっ、他に携帯食って置いています?」
「携帯食等はギルド酒場で売ってますのでそちらで購入してくださいね。」
おっさんは〈収蔵庫〉から大銀貨7枚を出して、マリーベルにお金を渡しながら尋ねる。
「ギルドで聞き忘れたのですがステータスオープンの際にもっと簡易に表示出来る方法はないんですかね?」
「ステータス表示系のスキルは魔術と同様に本人の意思で表示が変更出来ますよ。 ただ次回表示の際に前回の表示形式が残りますので咄嗟の場合に困りますのでそこだけ気を付けてくださいね。」
「ありがとうございます。 また何かお聞きする事があると思いますがその際はよろしくお願いします。」
おっさんは丸められた大きな包みを〈収蔵庫〉に収納し『冒険小僧』を辞去した。
生物の不思議の一つに収斂進化があります。
違う生物が似た環境で生活した場合等に形態が似てくる進化ですが、これを知った時には非常に驚きました。
今回出てきた「赤小鬼」は収斂進化とゴブリンをペットにすると言う発想から思いついたものです。
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