2.強制
新学期が始まりあたり一面は綺麗な桜色_________
ともならない。
何故かは分からないが我が校は桜の木がない。
まあ、あっても無くても自分にとって関係はない。
逆に桜がないと何がいけないんだ?
風流?
日本を桃色で埋める気か?
流石にそれは言い過ぎだと自分でも思いながら俺は本を開く。
ラノベはいい。
何より自分のような人間が主人公なのだ。
まるで自分がハーレムになったりモンスターを倒した感じになる。
まあ俺だけなんだろうけど。
俺のおすすめはクロ土先生だ。
青春系から異世界ものと幅広く書いてはいるが飽き性のためどれも長くは続かない。
けど面白い。
「__________。それでいいか?妹尾」
「あー、いいと思いますよ。」
先生に話しかけられた気がしたが今いい所なので適当に相槌をうっておく。
しかしやっぱクロ土先生の書く作品はいいなぁ…
かれこれ読み続けてどれくらいたったのだろう。
目を休めるため栞を挟み黒板へと目をやると俺の名前が書かれていた。
『図書委員 妹尾月雫』
しばらく頭の中で考える。
なんで?
いつの間に?
んん???
そこで一つの結論に辿り着いた。
寧ろ図書委員って天職ではと。
本は好きだし別に苦じゃないな。
寧ろ図書室に置く本を決めれる。
ラノベだ、クロ土先生のラノベ置こう。
この学校の図書室にはラノベが何故かない。
いや、なくなった《・・・・・》という方が正しいのか?
先輩から聞いた話だと俺らが入学して数ヶ月後図書委員が急にラノベだけを図書室から処分し始めた。
そして一年も立つ今ではラノベなんてない。
これを聞いた時俺はどれだけ絶望したか。
ラノベは世の中に沢山ある。
だからこそ一度は見てから買いたい!
それが俺の流儀なのに!!
だから逆に図書委員になったことを喜ぶしかなかった。
それに図書委員になれば誰がその騒動を起こしたのかも分かる。
一石二鳥ではないか。
新学期から俺はついてるなと窓の外へ目をやる。
あ、今日の晩御飯なんだろ…
とても幸せの絶頂にいた俺は早く委員会にならないかともわくわくした。
普通ラノベとかならここで何でこうなる?!とかなって嫌々していくにつれハーレムになったりとかあるけど別にリアルにそんなのは求めないぞ!
俺、現実はちゃんとわかってる!
「あ、あの…ッ」
声をかけられた振り向くと女子が立っていた。
赤ブチのメガネをかけふわふわのくせっ毛を腰まで伸ばしたゆるふわ系(髪)な女子だ。
オマケニスコシムネオオキイ。
こんな大人しそうな子が俺に話しかけるなんてなんだ?
まさか新学期早々告白とか?
…冗談はラノベだけにしとけよ、俺
「同じ図書委員になりました。笹井といいます…」
「笹井さんね、俺は妹尾。今年1年宜しくね」
笑顔で握手を求める俺、
最高に青春ぽくない??
笹井さんの方を見るととても困っていた。
アッ、この子コミュ障なのね。
大丈夫、俺もだから…
ん?なのになんで笹井さんとは話せるかって?
だって女の子と話せるチャンスなんてないんだから今のうちに話さなきゃ
「と、取り敢えず今日の放課後図書室です…」
え、今日からなの?
うわ、めんどくさいな…
でもなったからにはやらないといけない。
俺頑張れば出来る子だもん!
「それじゃあ、また放課後で」
「は、はい!」
笑顔で返事をしてくれた彼女は急ぎ足で席へと戻った。
保っていた笑顔が段々と崩れていき机にうつ伏せになってしまった。
「だはぁ…女の子とこんなに喋ったの久しぶり」
もうマヂ無理…
なんでだ?なんで黒土先生の書く作品の男どもは平然と喋れるんだ!?
「笹井さんって結構おっぱい大きいよな」
「あ、確かに。話しててすこし目がいっ…た……って何言わせるんだよ!この変態メガネ!!」
てへぺろと言わんばかりの笑顔をこちらに向けてくるこのメガネ。
榎山楓
キノコだ。
変態キノコメガネだ。
こいつとは家が近所ともありまあ幼なじみだ。
正直幼なじみには女の子がよかった。
「でもお前図書委員なんてよく引き受けたな。俺なら尻尾まいて逃げるわ」
笑っているが目は笑っていない。
これはガチだ。
こいつ図書室で何かやらかしたな
俺は確信を得て少しいじめてやろうと思った。
「おやおや、キノコは何をやらかしたんですかね?まさかレイ…」
「おぉーっと??何を言うかね、そんなことはしないっての、ただ委員長に問題があるんだよ」
委員長、?
ああ、先輩か。
去年の図書委員の先輩そんなに怖いのか
「図書委員長様には気をつけろよ。」
先輩に目をつけられなければいいってことかな?
まあそれなら俺でも頑張れるわ
「おー、なんならその委員長様とも仲良くなってやんよ」
そんな簡易的な気持ちで戦場へ旅立ったことを未来の俺は後悔している。