『赤蛇』隠密部隊エースの悩み
……『赤蛇』の隠密部隊。
それの仕事は…非常に簡潔に言い表すことが可能なものばかり。
・諜報
・潜入
・暗殺
・処罰
そして、一番分かりやすく、めんどくさいもの。それは………
「ずばり、書類仕事~。はい、紫由、よろしくね」
「あ?自分でやりやがれですよ、兄さん」
今はそのもっとも面倒な仕事をやっている最中だ。今の会話は似ていない兄弟、草壁 威和と草壁 紫由の二人の会話だ。めんどくさい。
「え、兄さんの仕事をやってくれないのー?」
「アンタよりも、僕の仕事量の方が多いんだから、諦めろ」
「えー、じゃ、黒祈でいいや。黒─」
「断る。嫌だ。めんどくさい。俺の方が仕事多い。」
「おおう、言い切る前に言ったね」
………ったりまえだ。めんどくせぇ。
……あぁ、今回の語り手は俺がするらしい。
俺は、成宮黒祈。
今回はめんどくさい、という文字をたくさん見ることを覚悟してくれ。
「えー、最年長の言うことを」
「じゃ、最年長の奴。一番働いてねぇんだから仕事しろ。後、『赤蛇』では俺の方が先輩だ」
「うぐっ!正論は刺さるねぇ?」
どうせ看破できるくせに。やらねぇんだからムカつくんだよ、めんどくせぇ。
「つか、綾凪さんと美琴さん、一樹さんは?」
「美琴様と綾凪様は時雨んとこだよ、報告にね」
「一樹さんは外の仕事です。」
「紫由は仕事のために残ったのか」
「その通りです、黒祈。綾凪様はこの兄のせいでまともに仕事をできていませんから、僕が少しでも終わらせようかと」
「え、それ、綾凪様の書類なの?じゃ、俺がやろうか?」
「最初からそう言いやがってくださいよ!!」
しばらくして、扉が開いた。
「ただいま。」
「〇ね、くそ兄貴!!」
「いっだぁ!!」
「………………」
うわぁ…帰ってきた瞬間にこの…草壁兄弟(弟による)殴りを見ちまったとか…空日……矢上 空日。
……………どんまい。
「………………」
「……お、おかえり。空日」
「…ただいま。」
スルーした……流石、THEほとんど無関心な奴……
「仕事終わりだよな?」
「うん。」
…こいつの仕事というのは、『赤蛇』では裏切り者の拷問、処罰のことをいう。隠密部隊は主に処罰をやらされる。拷問は基本、情報部隊の仕事だ。
「……で、兄さん。頼みますよ?」
「弟が酷いー。空日ちゃん、助けてー」
「?自業自得ですよね?」
まぁ、見ての通り。天然がいると隠密部隊って?とか疑いたくなる。
てか、実際に俺が疑ってる。
「……めんどくせぇ。配置替え願おうかな」
「やめてください。貴方はここに大切な人ですから」
「いや、人じゃねぇし」
「…他に仕事ある?」
「もう終わったろ。美琴さん帰ってくるまで待機だな、こりゃ」
と、言ったら謀ったかのように……
「読んだかなー?」
「漢字違う」
「……よ、呼んだかなー?」
馬鹿かよ。
この二人は、孤詠 美琴さんと、孤詠 綾凪さん。
女みたいな名前の兄弟だが、男だ。
隠密部隊では大切な人…だけど、ちょっと美琴さんは楽天家だ。
「呼んだけど、タイミング見計らってきたろ。馬鹿じゃねぇの?」
「手厳しいね、黒祈は」
「おかえりー、美琴様ー、綾凪様ー」
「おかえりなさいませ、美琴様、綾凪様。」
「ただいま、紫由」
「あれ、俺は?」
「誰だ貴様」
「ひどっ!?アンタの従者ですよ、威和ですってばー」
「嘘に決まってんだろ、馬鹿かよ」
「うっわ、美琴様、弟君が酷いんだけど」
「威和の対応も悪いだろ……綾、もうちょっと優し…」
そこで、綾凪さんの拳が美琴さんにとぶ。
………うるさいな。年上なのに年下みたい
「うるせぇ、黙れ。仕事しろ」
「いや、今してきたところだからね?!」
「だから、うるっせぇんだよ!!」
…もう嫌だ、めんどくせぇ。
俺は、そこで今日初めて立ち上がった。
しかも机を叩いて。
「…………仕事しろ、今すぐ首をかっ切るぞ?(ニッコリ)」
「「………………」」
「かっ切るぞ??」
「「ごめんなさい。」」
「「流石」」
「ねぇ、机凹んでる。」
………………もうこの職場嫌だ。
配置換え願おうかな。




