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太陽と月~赤と青~  作者: 黒野凜兎
名無島での出来事~結から終章へ~
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太陽も月も隠れた夜



─────ここは、西区にある、とある廃工場。

廃工場、というのだから、誰もいないように考えるかもしれないが、その工場の中には、六人の人がいた。まあ、うち四人は寝ているが。

その中に、人が入ってきたような気配がして、古びた扉を見る。


夢「おかえりなさーい、蒼茉(そうま)さん」

蒼「ひええ、死ぬかと思ったよ、マジで」

夢「どうせ自業自得でしょ? 何したの」


酷いなぁ、というのは、ここの廃工場に集まる人らを、一応まとめる立場である人。覇梨(はなし)蒼茉(そうま)さんだ。今の今まで不在だったのだが。


夢「どうせ、自分を押し込んで生活してたんでしょ? いや、偶にメール来てたけど」

蒼「まあねー。てか、あれ何、俺抜きで高いの食べに行ったんでしょ!?」

夢「世壬ちゃんの稼ぎでね」

蒼「は!? それ、フルコースとかじゃん!? 見知った人らでのフルコースとかいったいなんなの、俺は行っても、職場の人とのだからね!?」

夢「いや、世壬ちゃんが」

世「あんたがいない間に食べに行きたかったのよ、クズ」


ふああ、と欠伸をして、世壬ちゃんが起きた。おはよう、というとどれくらい寝てた? と返ってきた。


夢「ざっと二時間かな」

世「ん、ならいいわ。おかえりしなくて良かったのよ、リーダー」

蒼「え、土産も持ってきた俺に対してそれは無くない? 酷くない?」

世「酷くない扱いを求めたいなら、料理場から出ようか出まいか迷ってるあんたの娘の扱いを良くしろっての。噛み砕くぞ」

蒼「………さーて、……なんのことやら…………」

夢「まあまあまあまあ。で、蒼茉さん? 土産って何なの?」


とりあえず、世壬ちゃんが今にも小鬼を出しそうなところで止めに入る。

土産について聞いてみると、リーダーはとても顔を輝かせて言った。


蒼「うーん! やっぱり俺に味方はいるね! 良かった」

夢「いや、蒼茉さんの味方は俺じゃないし。なるつもりもないし。むしろ若干死ねばいいとか思ってるし」

蒼「泣くよ!? ……………っと、とりあえず、土産だね? まずは………」


鍋セット、万年筆、野菜一箱、通帳、裁縫用具、ミシン、元職場の社員名簿、地図、避難用経路図………と、なんかよく分からないものの中に、ちょっとやばいの混ざってる気がした。

万年筆は、世壬ちゃんがかっさらっていった。俺は、裁縫用具とミシンをもらった。(もちろん無断)


蒼「で、後はねー」

夢「あぁ、そういえば、アイツ、帰ってきてるよ」

蒼「え」

夢「一時間くらい前に、ひょっこり来て、ちょっと野暮用とかで出てったよ」

蒼「………まじか……予想よりも早くてビックリしてる」

世「ざまぁ」

蒼「そんな事言ってると、一番大きな土産、見せないぞー?」


まだあったのか、と驚く。多すぎる、どうやって運んだんだろう。


世「もしかして、そのでかい箱?」

蒼「そーそー。ほら、開けていいよ」

世「いや、これさ。中身………」


世「人間でしょ」


世壬ちゃんの口から驚きしかない言葉が出る。蒼茉さんは笑って言った。


蒼「せーかい、せーかい! さっすが、うちで二番目に殺人容疑が多い世壬だね。人の気配はすぐ分かると」

世「で、何、誘拐?」

蒼「まあ、うん」

世「普通に社会に溶け込んでた奴とは思えない」

蒼「はい、凄いでしょ」


うわ、開き直りやがったと思った。誘拐、これをさっさとやってしまうから、うちのリーダーなのだろう。


夢「そう言えばさ」

蒼「ん?」

夢「この団体は、無名なの?」

蒼「いや、考えてはあるよ?」

夢「…………禄でもなさそう」

世「同意」


酷すぎるね! と叫ばれるが、知ったことではない、と言うように世壬ちゃんが料理場に向かう。流石に放置は不味いから、こっちは任せた、ということだろう。


夢「……で、何なの?」

蒼「Killers」


物騒だな。率直にそう思った。ピッタリだとも思ったが。この人が考えつくもので、これ以上にしっくりくるものが無かったのだろう。世壬ちゃんなら、どこの言葉かわからないもの出してきそうだし、それでいいか、と思う。

そうやって勝手に思考に浸っていると、扉がまた開く音がした。


夢「あ、帰ってきた」

蒼「あっはっは、………………やばいやばい」

夢「へ?」


蒼茉さんが、笑って、笑って………だんだん青ざめていった。やばい、と口にするまでに。蒼茉さんは、ソファから立って、窓の方へと、向かったのだが………。


蒼「うぎゃあ!!」

夢「……………………………今回は何したの」

?「…………いや、なんとなく」

夢「あー……………わかる」

蒼「なんでわかるの!?」

「「「「普段の行い」」」」

蒼「人数増えやがった!!」


一人、帰ってきたと同時に、樹々くんとアヴィさんが起きてしまった。

やーめーてー、と蒼茉さんが叫んだ。


ア「んだよ、このデカイ荷物。開けるぞ?」

蒼「あ、誰も開けなかったのに躊躇ないね?」

樹「あ、帰ってたんだ。おかえりー」

?「はい、ただいま」

ア「………………おいおいおい、やばい者、拾ってきやがったな……?」

蒼「そう? お前の方がやばい者拾ったことあるでしょ」


今度はアヴィさんが、顔を真っ青にして言った。横から樹々が覗き込んで、げ、と言った。俺も隙間から覗き込んでみると、確かに、げ、と言ってしまうような者だった。

その時、丁度、箱の中の人が目覚めた。


樹「うわ、起きた」

ア「………蒼茉、お前、責任とって面倒みろよ……?」

蒼「は? 無理無理。その子、多分俺へのあたり強いから無理 」

夢「お、おはよーございまーす………。伊勢、真さん? でしたよね」

真「……………………は?」


がばり、と箱の中から体を起こす伊勢さん。そりゃ驚くだろう。だって、周りに犯罪者が沢山いたのだから。

しかし、その中で、犯罪者ではない、少し見たことのある顔が、二つあったのだから、尚、驚いたようだ。


真「…………………………………な、那緒さん……? それに………君は、…………確か、『青鳥』の…………………越川翔………?」

蒼「はい、脳は正常だね。俺は政府で長官様の補佐してた奴、伏見那緒だよー。ビックリしてるね、うんうん。実は、この犯罪者の集団のリーダーしてる、覇梨蒼茉だけどね」

翔「越川翔です。ええ、合ってますよ」

真「…………………ここは……」

ア「西区」

真「…………………は、はは。頭が痛い………」


伊勢さんは、頭を抱えて、箱に再び戻った。これが夢であれば、とでも考えてるんだろう。


真「……………私は、犯罪者を、平気で政府に入れてたのか………」

蒼「でも、いい仕事してたでしょ? 文句言いつつも、働いてたし。………まー、深影は何度かマジでぶっ殺してやろうかと思ったし言ってたけど」

翔「うっわ、やっぱくずじゃねぇかよ」

蒼「翔は、俺の幼なじみだから許すけど、それを深影に言われてたら殺してたわ」


ケラケラと蒼茉さんが笑う。伊勢さんはもう何も聞きたくないとでも言うように目を閉じて耳を塞いで蹲っていた。

それを、アヴィさんが持ち上げた。力持ちすぎる。


ア「まあ、蒼茉がここまで丁寧に連れてきたんだし、殺しゃしないだろ。私の部屋に寝かしとくぞ」

蒼「あ、はーい。ああ、真くん。一応、そいつ、国際指名手配されてるけど、多分うちでは一番まともだから。安心して寝てなー」


無理だろ、と思うが、まあ仕方ないな。変なのに気に入られたのが悪い。そういう事で腹をくくってもらおう。


翔「………………………」

樹「てか、翔ー。お前さ、コガネくん? はどうしたの? 死んだ?」

翔「うん」

夢「まじか」

翔「だから、家にはお礼言って出てきた」


そう言えば、翔の両親は………とっくの昔に翔を捨てて、行方不明なんだっけ。

翔は言わば、黄金くんって子に、拾われた子ども。だから、黄金くんに恩を返すために同じ家で暮らしてたけど、黄金くんがいなくなったのなら、その家にいる意味は無い。

並の覚悟では育った家を捨てられないが、翔にとっては黄金くんのみが大切だったんだろう。………まあ、親と同じようなものだったのだろうね。


樹「じゃ、翔の独り立ち祝いに飲み直す?」

ア「もう酒ないぞ」

夢「恋々に頼めば?」

樹「や、あいつは非常時しか盗って来ないからなー。俺が行くわ」

世「リーダー、やっぱり死ねよ」

蒼「は!?」

世「アンタが出しゃばってるからみなちゃんが出てこれないのよ」

蒼「ええ…………覇梨くん、普通に出てきて構わないからな……?」


その言い方が駄目なんだけどな、と思いつつ、()は、蒼茉さんをぶん殴った。

これでこりれば、多分動きやすいんだけどな、と思う。


蒼「……………………あ、翔」

翔「何?」

蒼「お前だろ、縁くんと花那汰ちゃん殺したの」

翔「………木の上で見てた悪趣味な人ら?」

蒼「多分」

翔「せーかい。蒼茉くんがちゃんと能力で過去に戻っててくれて助かったよ」

蒼「褒めろ褒めろ」

翔「蒼茉くんの奥さんを褒めるね」

蒼「………正しいからなんにも言えねぇ……」


何の話だろうか。そんな顔をしていた俺らに気づいたのか、蒼茉さんが話し始めた。


蒼「こいつね、何を考えたのか、黄金くんと自分の能力を入れ替えてたのは知ってるね? それを、元に戻してきたの。俺と……俺の大切な人の能力使ってね」

樹「あ、なるなる。だから、翔が姿も知らないのに殺せたのか。ちょっと前まで身体強化が能力だったよねー」

ア「便利なもんだな」


俺と翔は何も言わなかった。だって、その能力を使用させることが出来るのは、もう蒼茉さんだけだから。

俺と翔は、その能力者と面識もあったが、もう会えないことを知っているからだ。


蒼「で、正しい能力の………空気凝固で、空気を固めて相手を貫いた、と」

ア「私と似たようなやつか」

翔「そうですよ」

蒼「でもまー、よくやった。あの子達、残しとくと面倒だったからさー」

翔「蒼茉くんに褒められても嬉しくはないね」

蒼「幼なじみに優しくない!!」


あったりまえだ、と言うように翔は鼻で笑った。それを見て、蒼茉さんは心が折れたように、倒れた。

今だ、殺せー! とアヴィさんは飛びかかる。そこが乱闘現場となるが、俺は避難する。

翔は、興味無いように、フラフラと部屋の方の階段を目指して行った。目が、光がなかったので、本当に黄金くんは死んだのだろう。俺らにも黄金くんを攻撃したら殺す、と言ってたので、何というか…………ヤンデレ、とはまた違うが、………強いて言うならファザコンに近いものだったんだろうとは思う。拾われた感じだし。

その気持ちが、少しはわかる俺は、翔を気にかけぬ振りをして、がら空きになったソファでもう一眠りしようと目を閉じた。



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