後日譚①
……………色々なことが、駆け巡った夜だった。
悲しみや、死、大切な人の死を目の前で見た人が沢山いた。
その中で、生き残った人たちの後日譚をお伝えしようか。
それが、見届人である私が、唯一できることだからね。
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(黒祈side)
………駄々をこねて、俺は最後の最後、アンデットに加担しなかった。そして、『赤蛇』にも。
殴られることは覚悟してたのに、何も無かった。みんな、泣いていた。
黒「………………………」
陽「黒祈、だいじょうぶですか〜?」
黒「……………………陽さんは?」
陽「ぼくはですね〜、みんながないてて、かなしいです。でも、まだいきててくれてるひとがいるのは、うれしいですね〜」
黒「………………………」
陽「黒祈。ひとがしぬのはあたりまえです。そのあいだに、なにができるのか、のほうがだいじだって、ほんでよみました」
黒「………………」
陽さんのことだ、きっと絵本だろうけど。そんなにいい言葉が書いてある絵本があるんだな、と思った。
そんな次の瞬間だった。
一「くぅーろぉーきくぅーん!!」
黒「うおっ!?」
空「遠江さん、その行動は危ないのでやめることをオススメします」
一「玲お嬢はやっても何も言わなかったし、いいかなー、と。いや、華麗な回し蹴りはされたけど」
空「結局損しかしてないですよね、それ」
勢いよくぶつかられる。ちょっとだけ、イラッとした。玲姉が回し蹴りしたならいいだろ、と思って、いきなり遠江さんの顔の周りを黒い影で覆ってやった。ざまぁみろ。
一「ぎゃぁぁぁ!? 黒祈、やっぱ元気だね!? ほら、空日ちゃん!? 俺らが心配する必要ないっつったじゃん!!」
黒「え?」
一「これ!! 企てたの……は、俺だけど! 心配って言ったのは空日ちゃんだよ!?」
空「うるさいです」
一「痛い! 理不尽!!」
空日が、遠江さんの脇腹を殴る。顔には変化なかったが、耳が真っ赤だった。
それを見て、陽さんがクスクスと笑っていた。俺も釣られて笑ってしまう。
黒「…………どうするかは、アンデット次第かな」
陽「そうですね〜。なくなったひとたちのぶんまでも……ぼくらはいきるべきですよ、きっと」
黒「………………………おう」
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(愁side)
カタカタと、パソコンのキーボードを片方の手の指で叩いていく。その作業をもう何回も何回も繰り返していた。
この前の、成宮別荘での事件。あれは、大きすぎるものだった。故に、整理がいるのだ。
愁「………………」
雷「なんて顔してんノ、愁ちゃん。ほら、リラックスリラックス」
愁「いでででででで! おま、ちょ、雷羅!? 何でいきなり、定規で首突いてんだよ!」
雷「凝り固まってそうだったから、解してやろうかという妹の気遣いヨ」
愁「おいおい………………」
妹にからかわれる。いや、妹、というよりは義妹と言った方が正しいのだろうか。今更そんなことを考えていると、次は別の方向から脇腹をつつかれた。
愁「ひゃ!?」
彩「愁は脇腹弱いよねぇ。初心な娘みたい〜」
雷「彩くんは発言がアウト」
彩「酷い!!」
雷「だって、高校生の時とか、迷子の女の子の時とかサ……」
彩「やめて!! ごめん、やめて!!」
愁「…………彩雅、お前なあ………?」
ちょっと、いろいろされてイラッとしてきたので、彩雅の首を右腕に絡めて締め上げた。
彩「ぎゃぁぁぁ! ギブ! ごめん! 無理!!」
雷「いいわネ、もっとやレ」
愁「おう」
ぎゃぁぁぁぁぁ!!??? と、彩雅の叫びが響く中、ドアが開いた。入ってきたのは凜だった。
凜「……………………………」
愁「……………………よぉ」
雷「…………………こんにちハ、凜ちゃん」
彩「……………ぎ、ギブ……………」
凜「…………10countとる?」
かなり驚きの言葉が出てきて、彩雅が笑うために息を吹き返した。そこを雷羅が腹に蹴りを加えた。
凜「………プロレス?」
愁「いや、彩雅の発言がアウトだったんだ……」
凜「彩兄、いつもだね…。とりあえず、アルバム持ってきたよ」
雷「アルバム?」
凜「うん。知夏と帝弥が隠し持ってた………玲ちゃんと、黒祈が載ってるやつ」
愁「へぇ…………凜、よく知ってたな」
そう言うと、凜は、目を伏せた。
凜「……………………………………玲ちゃんが。」
凜が、言うと、みんなが黙った。
存在しないことになっていた次女。最後の最後に記憶が戻ってきた。
凜は、最期に見ることが出来たらしい。少し、羨ましい
凜「………………とりあえず、整理しないとね」
雷「そうネ。………あ」
雷羅が、何かを思い出したかのように声を出した。何事かとそちらを見る。
彩「どうしたの、雷羅」
雷「…………いや、もしかしたら、玲ちゃんの最近の写真、あるかモ」
凜「え!?」
雷「ちょっと探してみる」
雷羅は、楽しそうにした。凜が、僕も手伝う、と言った。
彩雅と俺が顔を見合わせた。雷羅は、どこでそんなのをてにいれたのだろうか、と。
しかし、妹たちの笑顔を見て、まあいいか、と笑った。
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(百々佳side)
小雪ちゃんに、集められた。
その為、山奥の洋館に集まった。しかし、吉倉先生は病院の用事で来れていない。
小「………………アンデットは、解散」
いきなり言われた言葉で、大半のやつが固まる。私もその中だった。
しかし、固まってないやつもいた。
蛟「まあ、三人も死んだし、そうだよね。しかも、運営役だった黒塚くんと洸也くんだ。小雪さんのお世話してた神奈さんもね」
黒「………………だろうな」
小「理解が早くて助かる。この洋館は、私の部屋以外、好きに使っていい」
小雪ちゃんは淡々と述べた。
ああ、これは何言っても無駄かな、と思う。魅波ちゃんはぎゃあぎゃあ言ってたけど、狐茶くんが、どうどうと宥めてる。
陽くんと髏呂ちゃんは相変わらず何考えてるかわからない。
しかし、なんとなく全員が理解したのだろう。ああ、終わりだなって。
小「異論は認めない。以上。解散」
さて、私はどうするべきかしら。仕事を淡々としようかしらね。
これから、アンデットの分岐点は沢山分かれていくんだろうな、と思って、私は洋館の扉を目指した。
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(レンカside)
ゴチャゴチャゴチャゴチャ。
乱雑な配置が、もっともっと混沌としたものになっている。
それは、以下の理由であって。
①『赤蛇』ボスの死亡
②『赤蛇』半壊
③民間組織『青鳥』からの死者
④成宮播麻の非人道的な実験
⑤政府の職員だった、瀬川縁と宙島花那汰の死亡
そして、次が一番大問題となっている。
⑥政府長官補佐、伏見那緒と政府調査員長、伊勢真の行方不明
どれも痛手過ぎて、今、珍しく私の机の上が書類で埋まっているのだ。
練「やりたかなーい…………………」
レ「やりたくなーい……………」
深「僕も働いてるんだからさっさと、ほら!! ああくっそ、那緒がいないとこんなに出来ないんだね!?」
深影君はやっと気づいたみたいだった。いつも甘えてたもんなー、とか思う。いや、私もだけど。
彼の妹ちゃんも一応、政府の職員(兼癒し要員)だが、今、幼稚園だそうなので、彼はバリバリ本性さらけ出している。彼女がいると深影君、シスコンだから面白いんだけどな、と思う。
深「で、なんなの、那緒と真は攫われたの!?」
レ「今んとこ、そっちの路線のが確率としては高いわねー。自分で出てくメリット無いもの」
深影君とレミが書類を捌きながら話している。
私は、心の中でどうかな、と呟いた。子供の夢を壊したくないし。杞憂だといいけど。
私からしたら…………良い子の皮を被った悪い子こそ、何よりも怖いからね。
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(帝弥side)
ある晩、東区に私はいました。迷い無い足取りで、ある所の目の前でした。
もう目の前に迫っていたのですが、残念ながら、そこには三人の警備員さんがいました。
兄上には言ってあるので、時間がかかってもいいんですけど、約束なので、早い方がいいでしょう。
帝「すいません、ちょっといいですか!」
なんだ、と騒ぐ警備員さん。しかし、私は押し通らせてもらいます。肩を掴まれそうになりましたが、事前に触れておいた壁の方に引き寄せられていきました。
多分、気絶くらいで済むだろう、と思います。
私は、玄関ドアの横にあった呼び鈴を押しました。電子音がしばらくした後、何方でしょうか、と声がしました。少し、警戒した感じでした。
帝「成宮の従者です! 少し奥様に御用があるのですが、よろしいですか?」
成宮、と言うと少し警戒を解かれた気がしました。流石元数字家ですね。
ご要件はなんでしょうか、と聞かれた。私は正直に言った。
帝「淡間屋シアン様についてです!」
沈黙。その後、息を呑むような感じがした後、がちゃんとドアの鍵が開いた気がしました。
中に入っていいということでしょう。私は普通にドアを開けて入りました。すると、中には機関銃をもった黒いスーツの人たちがいました。
帝「あ、入っちゃダメなやつでしたか! すいません、でもお話があるので、ってうわっ!?」
あの人たち、こちらが言い終わる前に乱射し始めましたね。うむむ、正当防衛の正当防衛になりますけど、まあ大丈夫ですよね。うん。
私は、近場にあった壺に触れ、そちらに人と弾丸全てを引き寄せました。
…………正当防衛ですので、例え、反動で割れた壺の破片が刺さって死んでも私は知りませんよ。
私は、歩き始め、窓に触りながら部屋を目指します。最後の直進をして、大きな扉の前で三度、ノックをしました。
間を置いて、どうぞ、と聞こえてきました。では遠慮なく、と入ると、そこには一人の女性がいました。
帝「こんばんは! 淡間屋………葵様、でしたよね!」
葵「ええ。帝弥さん、だったかしら。ご要件は?」
帝「はい、シアン様についてですね!」
葵「シアンがどうかしたの? あの子、死んだんでしょ? 遺書が届いたわよ? とても、生みの親に送るような文じゃなかったけど」
帝「ああ、はい! だって、シアン様を殺めたのは私ですから!」
そこまで言うと、淡間屋様の様子が変わりました。ああ、意外と大事にされてたんじゃないですか、シアン様。多分、戦力として、とか跡継ぎとして、だと思いますけど。
葵「………………へえ、貴女が。一番出来の良かったあの子を。」
帝「あ、もしかして貴女様は元雇い主と同じ種類の思考の方でしたか! でも、人の命は尊べるような方だっただけ、元雇い主よりはマシですかね!」
葵「成宮播麻さんのこと? …………なら、あれと一緒とかやめて欲しいわ。いつも会合を引っ掻き回して帰っていくのだもの。二度と会いたくないわ」
帝「もう二度と会わなくていいですよ! 私もあまり会いたくないですので、その辺は有難いことこの上ないです!」
何を言ってるんだ、この子は、とでも言うような目で見られました。まあ、それもそうでしょうね。あんな殺しても殺しても死ななそうな人間を、もう二度と会わなくていいですよ、なんて言われたら、退きでもしたのだろうか、とか思うでしょうね。
帝「成宮播麻は死にましたので!」
葵「はあ? あの悪魔が?」
帝「ええ! ご自分の娘様の手で、撃たれて死んで、焼かれて跡形もなく! どうやら、最初から死ぬ気だったようですよ、元雇い主は!」
葵「………………正気じゃないわ」
帝「いや、正気じゃないのは、シアン様もでしたよ!」
葵「は?」
今度は恨みこもった目で見られました。当たり前ですね、はい。
さて、あまり時間かけると兄上に怒られるので、さっさとしましょうか。
帝「私、帝弥はですね! ただのシアン様から、自分が大人しく死ぬ代わりに、生まれた家で今も飼われている義弟たちを救ってやってくれ、あの家を滅ぼしてくれ、と言い残されたのです! ええ、素晴らしい方でした! 貴女様が育てられた子などと微塵も思えないくらいに!」
葵「っ!? ………突にゅ………!」
帝「いえ! もう全員、窓の破片で亡くなってますよ!! 先ほど自分の能力を発動させましたので、この家で生き残っていらっしゃるのは、貴女様とシアン様の義弟様のみとなります! では、貴方もいらっしゃいませ、奈落の底へ! 私もいずれ向かう羽目になります、少々…………三十~七十年ほどお待ち下さい、さようなら!!」
その直後、壁に何かが勢い良く当たりました。私は、それを確認して、最初から見えていた扉を破りました。中には、子供が数人いたのです。
彼らに、手を伸ばすと、怯えたように縮こまられました。しかし、それだけでめげていたら、元雇い主の近くでなんてやってけませんでした。私は、彼らの頭を撫でました。
帝「もう大丈夫ですよ! さあ、地獄から出ましょうか、シアン様の弟様方!」




