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太陽と月~赤と青~  作者: 黒野凜兎
名無島での出来事~結から終章へ~
53/56

後日譚①



……………色々なことが、駆け巡った夜だった。

悲しみや、死、大切な人の死を目の前で見た人が沢山いた。

その中で、生き残った人たちの後日譚をお伝えしようか。

それが、見届人である私が、唯一できることだからね。


────────────────────────────

(黒祈side)


………駄々をこねて、俺は最後の最後、アンデットに加担しなかった。そして、『赤蛇』にも。

殴られることは覚悟してたのに、何も無かった。みんな、泣いていた。


黒「………………………」

陽「黒祈、だいじょうぶですか〜?」

黒「……………………陽さんは?」

陽「ぼくはですね〜、みんながないてて、かなしいです。でも、まだいきててくれてるひとがいるのは、うれしいですね〜」

黒「………………………」

陽「黒祈。ひとがしぬのはあたりまえです。そのあいだに、なにができるのか、のほうがだいじだって、ほんでよみました」

黒「………………」


陽さんのことだ、きっと絵本だろうけど。そんなにいい言葉が書いてある絵本があるんだな、と思った。

そんな次の瞬間だった。


一「くぅーろぉーきくぅーん!!」

黒「うおっ!?」

空「遠江さん、その行動は危ないのでやめることをオススメします」

一「玲お嬢はやっても何も言わなかったし、いいかなー、と。いや、華麗な回し蹴りはされたけど」

空「結局損しかしてないですよね、それ」


勢いよくぶつかられる。ちょっとだけ、イラッとした。玲姉が回し蹴りしたならいいだろ、と思って、いきなり遠江さんの顔の周りを黒い影で覆ってやった。ざまぁみろ。


一「ぎゃぁぁぁ!? 黒祈、やっぱ元気だね!? ほら、空日ちゃん!? 俺らが心配する必要ないっつったじゃん!!」

黒「え?」

一「これ!! 企てたの……は、俺だけど! 心配って言ったのは空日ちゃんだよ!?」

空「うるさいです」

一「痛い! 理不尽!!」


空日が、遠江さんの脇腹を殴る。顔には変化なかったが、耳が真っ赤だった。

それを見て、陽さんがクスクスと笑っていた。俺も釣られて笑ってしまう。


黒「…………どうするかは、アンデット次第かな」

陽「そうですね〜。なくなったひとたちのぶんまでも……ぼくらはいきるべきですよ、きっと」

黒「………………………おう」


────────────────────────────

(愁side)


カタカタと、パソコンのキーボードを片方の手の指で叩いていく。その作業をもう何回も何回も繰り返していた。

この前の、成宮別荘での事件。あれは、大きすぎるものだった。故に、整理がいるのだ。


愁「………………」

雷「なんて顔してんノ、愁ちゃん。ほら、リラックスリラックス」

愁「いでででででで! おま、ちょ、雷羅!? 何でいきなり、定規で首突いてんだよ!」

雷「凝り固まってそうだったから、解してやろうかという妹の気遣いヨ」

愁「おいおい………………」


妹にからかわれる。いや、妹、というよりは義妹と言った方が正しいのだろうか。今更そんなことを考えていると、次は別の方向から脇腹をつつかれた。


愁「ひゃ!?」

彩「愁は脇腹弱いよねぇ。初心な娘みたい〜」

雷「彩くんは発言がアウト」

彩「酷い!!」

雷「だって、高校生の時とか、迷子の女の子の時とかサ……」

彩「やめて!! ごめん、やめて!!」

愁「…………彩雅、お前なあ………?」


ちょっと、いろいろされてイラッとしてきたので、彩雅の首を右腕に絡めて締め上げた。


彩「ぎゃぁぁぁ! ギブ! ごめん! 無理!!」

雷「いいわネ、もっとやレ」

愁「おう」


ぎゃぁぁぁぁぁ!!??? と、彩雅の叫びが響く中、ドアが開いた。入ってきたのは凜だった。


凜「……………………………」

愁「……………………よぉ」

雷「…………………こんにちハ、凜ちゃん」

彩「……………ぎ、ギブ……………」

凜「…………10countとる?」


かなり驚きの言葉が出てきて、彩雅が笑うために息を吹き返した。そこを雷羅が腹に蹴りを加えた。


凜「………プロレス?」

愁「いや、彩雅の発言がアウトだったんだ……」

凜「彩兄、いつもだね…。とりあえず、アルバム持ってきたよ」

雷「アルバム?」

凜「うん。知夏と帝弥が隠し持ってた………玲ちゃんと、黒祈が載ってるやつ」

愁「へぇ…………凜、よく知ってたな」


そう言うと、凜は、目を伏せた。


凜「……………………………………玲ちゃんが。」


凜が、言うと、みんなが黙った。

存在しないことになっていた次女。最後の最後に記憶が戻ってきた。

凜は、最期に見ることが出来たらしい。少し、羨ましい


凜「………………とりあえず、整理しないとね」

雷「そうネ。………あ」


雷羅が、何かを思い出したかのように声を出した。何事かとそちらを見る。


彩「どうしたの、雷羅」

雷「…………いや、もしかしたら、玲ちゃんの最近の写真、あるかモ」

凜「え!?」

雷「ちょっと探してみる」


雷羅は、楽しそうにした。凜が、僕も手伝う、と言った。

彩雅と俺が顔を見合わせた。雷羅は、どこでそんなのをてにいれたのだろうか、と。

しかし、妹たちの笑顔を見て、まあいいか、と笑った。


────────────────────────────

(百々佳side)


小雪ちゃんに、集められた。

その為、山奥の洋館に集まった。しかし、吉倉先生は病院の用事で来れていない。


小「………………アンデットは、解散」


いきなり言われた言葉で、大半のやつが固まる。私もその中だった。

しかし、固まってないやつもいた。


蛟「まあ、三人も死んだし、そうだよね。しかも、運営役だった黒塚くんと洸也くんだ。小雪さんのお世話してた神奈さんもね」

黒「………………だろうな」

小「理解が早くて助かる。この洋館は、私の部屋以外、好きに使っていい」


小雪ちゃんは淡々と述べた。

ああ、これは何言っても無駄かな、と思う。魅波ちゃんはぎゃあぎゃあ言ってたけど、狐茶くんが、どうどうと宥めてる。

陽くんと髏呂ちゃんは相変わらず何考えてるかわからない。

しかし、なんとなく全員が理解したのだろう。ああ、終わりだなって。


小「異論は認めない。以上。解散」


さて、私はどうするべきかしら。仕事を淡々としようかしらね。

これから、アンデットの分岐点は沢山分かれていくんだろうな、と思って、私は洋館の扉を目指した。


────────────────────────────

(レンカside)


ゴチャゴチャゴチャゴチャ。

乱雑な配置が、もっともっと混沌としたものになっている。

それは、以下の理由であって。

①『赤蛇』ボスの死亡

②『赤蛇』半壊

③民間組織『青鳥』からの死者

④成宮播麻の非人道的な実験

⑤政府の職員だった、瀬川縁と宙島花那汰の死亡

そして、次が一番大問題となっている。

⑥政府長官補佐、伏見那緒と政府調査員長、伊勢真の行方不明

どれも痛手過ぎて、今、珍しく私の机の上が書類で埋まっているのだ。


練「やりたかなーい…………………」

レ「やりたくなーい……………」

深「僕も働いてるんだからさっさと、ほら!! ああくっそ、那緒がいないとこんなに出来ないんだね!?」


深影君はやっと気づいたみたいだった。いつも甘えてたもんなー、とか思う。いや、私もだけど。

彼の妹ちゃんも一応、政府の職員(兼癒し要員)だが、今、幼稚園だそうなので、彼はバリバリ本性さらけ出している。彼女がいると深影君、シスコンだから面白いんだけどな、と思う。


深「で、なんなの、那緒と真は攫われたの!?」

レ「今んとこ、そっちの路線のが確率としては高いわねー。自分で出てくメリット無いもの」


深影君とレミが書類を捌きながら話している。

私は、心の中でどうかな、と呟いた。子供の夢を壊したくないし。杞憂だといいけど。

私からしたら…………良い子の皮を被った悪い子こそ、何よりも怖いからね。


────────────────────────────

(帝弥side)


ある晩、東区に私はいました。迷い無い足取りで、ある所の目の前でした。

もう目の前に迫っていたのですが、残念ながら、そこには三人の警備員さんがいました。

兄上には言ってあるので、時間がかかってもいいんですけど、約束なので、早い方がいいでしょう。


帝「すいません、ちょっといいですか!」


なんだ、と騒ぐ警備員さん。しかし、私は押し通らせてもらいます。肩を掴まれそうになりましたが、事前に触れておいた壁の方に引き寄せられていきました。

多分、気絶くらいで済むだろう、と思います。

私は、玄関ドアの横にあった呼び鈴を押しました。電子音がしばらくした後、何方でしょうか、と声がしました。少し、警戒した感じでした。


帝「成宮の従者です! 少し奥様に御用があるのですが、よろしいですか?」


成宮、と言うと少し警戒を解かれた気がしました。流石元数字家ですね。

ご要件はなんでしょうか、と聞かれた。私は正直に言った。


帝「淡間屋シアン様についてです!」


沈黙。その後、息を呑むような感じがした後、がちゃんとドアの鍵が開いた気がしました。

中に入っていいということでしょう。私は普通にドアを開けて入りました。すると、中には機関銃をもった黒いスーツの人たちがいました。


帝「あ、入っちゃダメなやつでしたか! すいません、でもお話があるので、ってうわっ!?」


あの人たち、こちらが言い終わる前に乱射し始めましたね。うむむ、正当防衛の正当防衛になりますけど、まあ大丈夫ですよね。うん。

私は、近場にあった壺に触れ、そちらに人と弾丸全てを引き寄せました。

…………正当防衛ですので、例え、反動で割れた壺の破片が刺さって死んでも私は知りませんよ。

私は、歩き始め、窓に触りながら部屋を目指します。最後の直進をして、大きな扉の前で三度、ノックをしました。

間を置いて、どうぞ、と聞こえてきました。では遠慮なく、と入ると、そこには一人の女性がいました。


帝「こんばんは! 淡間屋………葵様、でしたよね!」

葵「ええ。帝弥さん、だったかしら。ご要件は?」

帝「はい、シアン様についてですね!」

葵「シアンがどうかしたの? あの子、死んだんでしょ? 遺書が届いたわよ? とても、生みの親に送るような文じゃなかったけど」

帝「ああ、はい! だって、シアン様を殺めたのは私ですから!」


そこまで言うと、淡間屋様の様子が変わりました。ああ、意外と大事にされてたんじゃないですか、シアン様。多分、戦力として、とか跡継ぎとして、だと思いますけど。


葵「………………へえ、貴女が。一番出来の良かったあの子を。」

帝「あ、もしかして貴女様は元雇い主と同じ種類の思考の方でしたか! でも、人の命は尊べるような方だっただけ、元雇い主よりはマシですかね!」

葵「成宮播麻さんのこと? …………なら、あれと一緒とかやめて欲しいわ。いつも会合を引っ掻き回して帰っていくのだもの。二度と会いたくないわ」

帝「もう二度と会わなくていいですよ! 私もあまり会いたくないですので、その辺は有難いことこの上ないです!」


何を言ってるんだ、この子は、とでも言うような目で見られました。まあ、それもそうでしょうね。あんな殺しても殺しても死ななそうな人間を、もう二度と会わなくていいですよ、なんて言われたら、退きでもしたのだろうか、とか思うでしょうね。


帝「成宮播麻は死にましたので!」

葵「はあ? あの悪魔が?」

帝「ええ! ご自分の娘様の手で、撃たれて死んで、焼かれて跡形もなく! どうやら、最初から死ぬ気だったようですよ、元雇い主は!」

葵「………………正気じゃないわ」

帝「いや、正気じゃないのは、シアン様もでしたよ!」

葵「は?」


今度は恨みこもった目で見られました。当たり前ですね、はい。

さて、あまり時間かけると兄上に怒られるので、さっさとしましょうか。


帝「私、帝弥はですね! ただのシアン様から、自分が大人しく死ぬ代わりに、生まれた家で今も飼われている義弟たちを救ってやってくれ、あの家を滅ぼしてくれ、と言い残されたのです! ええ、素晴らしい方でした! 貴女様が育てられた子などと微塵も思えないくらいに!」

葵「っ!? ………突にゅ………!」

帝「いえ! もう全員、窓の破片で亡くなってますよ!! 先ほど自分の能力を発動させましたので、この家で生き残っていらっしゃるのは、貴女様とシアン様の義弟様のみとなります! では、貴方もいらっしゃいませ、奈落の底へ! 私もいずれ向かう羽目になります、少々…………三十~七十年ほどお待ち下さい、さようなら!!」


その直後、壁に何かが勢い良く当たりました。私は、それを確認して、最初から見えていた扉を破りました。中には、子供が数人いたのです。

彼らに、手を伸ばすと、怯えたように縮こまられました。しかし、それだけでめげていたら、元雇い主の近くでなんてやってけませんでした。私は、彼らの頭を撫でました。


帝「もう大丈夫ですよ! さあ、地獄から出ましょうか、シアン様の弟様方!」



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