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太陽と月~赤と青~  作者: 黒野凜兎
名無島での出来事~転から結へ~
44/56

開始 赤蛇



最初は、車を近場に止める計画だった。しかし、それで歩いていって遠くから視認されるのも嫌だ、という白輝の(一応)一理ある意見により俺らは………………。

……………車による別荘への突撃を決めた。


──────────────────────────


玲「……………いってぇ…………………」

理「も、申し訳ありません、姫様……!」

玲「や、大丈夫……。それより、準備しろ。すぐに援軍くるから、道を開けるんだ」


了解、と聞きなれた声が五つバラバラに聴こえる。それもいつも通りだった。

そして、それの数秒後に聞こえたこの声も、既に聞きなれたものだった。


白「ひゃぁっはぁぁぁぁぁぁ!!!」

つ「行ってきま~す」


常に、戦闘部隊の先陣をきっていた二人……白輝とつゆさんの楽しそうな声だった。こんな時でも楽しそうなのは油断でもないだろう。この二人に限ってはそれもないし。


理「さて姫様、どうします? 車は放置しますが」

玲「予定通り行こう。月村さん準備して」

水「了解です」


月村さんが、一言返事を返した後、門の中で爆裂音が響く。うちの先陣たちからあんな音は出ないから、誰かビームでも放ったんだろうか。

そう思いながら、月村さんの準備が整うのを待った。


─────────────────────────


白「……………うっへぇ………。まさか、ビームが飛んでくるとは全く思ってなかったよねー……」

つ「後ちょっと遅かったら、焼ける、もしくは木っ端微塵だったわね」

明「……………ひ、久しぶりに使った……」

京「ふふ、それでその威力なら何にも文句はありませんね〜。私も頑張らないといけませんかね」

つ「…………ああ、誰かと思ったら、四ノ原家の………」

京「そうですよ〜。一宮家のボンボンのお付きしてる末っ子です〜」

つ「………末っ子、ね。厄介なのが生き残ってたのね」

白「厄介なの?」

つ「ええ。四ノ原家の中では多分、能力ではトップクラスだったわ」


─────────────────────────


水「姫、準備できましたよ」

玲「姫言うな。ありがとう。出るぞ」

理「援護しますね」

シ「当たり前のことだけどね!」

玲「頼む」


理さんの申し出を了承して、車のドアを蹴り開ける。この車はもう捨てるしか末路がなさそうだから、容赦なく蹴った。(逆側を月村さんが蹴っていたが、そっちのドアは飛んでいった)

その勢いのまま、門から玄関の通路を駆け抜ける。その中で、ある人を見かけた。それをつゆさんに叫んで伝える。


玲「つゆさん、アンタの目標は玄関にいるぞ!」

つ「!」

白「うぉあっ!? つゆりん、いきなり僕の方に相手さん投げないで〜!」

つ「ごめん、玄関行く」

白「え!? ……………あ、なるほどね。うん、いーよ。行っておいで」

つ「ありがとう」

白「ふふん、二対一っていうのもしょーじき怖いけどね! でも、僕は役者だ! どんなときでも、楽しんでおどけて魅せよう! さあ!」


つゆさんが走ってくる中で、やっと明かりを付けてない、ということを思い出したかのように、庭や門の明かりが灯り始める。そして、それらのお陰で、白輝が照らされた。


白「里峰白輝、もしくは湊白亜! 踊ってくれるのは二人でいいかな!?」


─────────────────────────


その勢いのまま、庭の横を走り抜ける。視線を感じて、チラリと庭を見ると、見覚えのある顔が二つほどあった。長男と一宮さんだった。庭も一応見張ってるのか。戦闘部隊がそこから入ってくる予定は無かったが、正面突破で良かった。

まあ、攻撃してくる気は今のところないのか、視線だけだから、無視して、玄関に駆け込む。

そうすると、予想通り攻撃が飛んでくる。しかし、予想外のものがあった。それは頭上からの、不穏な音だった。


歩「さあ! 奏くんの攻撃だよ!」

奏「Let’s dancing!!!」

「「あはははははははっ!!」」

玲「燃えろ」


頭上からの、不穏な音の正体は、光の矢だった。しかし、落ちてくるだけなら対処法がある。俺は容赦なく矢を燃やした。一応、矢自体は数だけで、弱いみたいでボロボロと崩れて消えた。


奏「うわぉ………………」

歩「きゃー! あ、でも、立ち止まらせるっていう目標は達成したからいいか!」

理「何?」

桜「そこで止まっておれ、『赤蛇』」

い「………失礼します。そちら、能力のネットとなっております………」


またまた見覚えのある二人が出てきた。罠か。


つ「……………邪魔」


しかし、つゆさんが、ネットのような罠を、自分の能力で解いた。まあ、これはつゆさんいたら有難いことに解くことが出来るだろう。ネットを張った人と同じ能力を使うのだから。


つ「私の目的はアンタらだからね。……仕事もやるけど、いろいろよろしく」

玲「わぁってるよ」

水「誰しも目的はあるからね。ただし、シアンも置いていくから」

シ「俺は物か何かかな!? まあ、つゆりちゃん一人じゃ大変かもしれないから残りますけど!」

つ「ん、ありがと。でも獲物は盗らないで」

シ「そんな後が怖いことはしまっせん!!」


何だかんだで、この二人は相性いい。だからほとんど心配してないけど、ここまで明るいと大丈夫かと疑いたくなる気持ちもある。

まあ、無用だと言われそうだから言わないが。


つ「さあ、お姉さまと幼なじみのお姉さま? 一緒に踊りやがれです」

シ「物騒だから、近寄らないように、残りの子達もよろしくねー」


───────────────────────────


そのまま、廊下を走って目的地を目指す。誰もいない廊下は、恐ろしい程に不気味だった。暗いのには慣れてるけど、殲滅対象が一人だってのは静かなんだな、と思った。

しかし、何となく、本当に景色の一環として見た扉に違和感を感じた。もう一度しっかり見てみると、取っ手の部分が、一定間隔で光っているのがわかった。そして、その光はだんだんバチバチと火花をあげているように感じた。


玲「月村さん、止まれ!」

水「はい!」


ピタリと、先行していた月村さんが止まる。まだ、扉の取っ手が光っている、と思ったその瞬間。先程まで月村さんがいた場所に大きな火花が落ちた。いや、火花というのは間違いかもしれない。ほかの言葉で言い表すなら……………


理「………放電!?」

雷「あラ。意外と頭のキレる方ネ? ……………って、よく見たらアンタ、鹿沢さんじゃない?」

理「──────あ?」

水「………危なかった……。姫が止めてくださらねば、黒焦げでし………って、理さん?」


月村さんが、ホッとした顔で俺と理さんの方を向いた。しかし、理さんの様子がいつもと違うのに気づき、すぐに問いかけた。


理「…………」

雷「違わないわよネ。アンタ、鹿沢さんとこの、消えた跡取りさん……」

理「姫様。ここ、私に任せてもらっても?」

玲「………いいよ。もうすぐ、アイツらも来………」


許可の言葉を出そうとした時だった。壁に、穴が空いたかのような音が飛んできた。

相手……成宮雷羅は驚いてそっちに目を向ける。その隙を見逃す理さんではない。能力でバズーカを創り出していた。それを、派手に撃ち込む。爆裂の際に出た煙で、俺らは姿を隠しながら、目的地へと向かった。複雑な廊下を抜けた先の……………成宮播麻の書斎へ。


──────────────────────────

(白輝side)


大きな大きな音がした。それは、僕が出したものではない。つまり、答えは一つだった。


明「い、今の音は………?」

白「怖い怖ーい、怪物さんたちだよ。梅花ちゃん」

京「………アンデット、ですかー?」

白「おお、これだけでよく分かったねぇ。そうだよ、アンデットの皆さんだ」


嘘だ、というかのように梅花ちゃんの瞳が見開かれる。嘘だと思いたいみたいだけど、残念ながらきっと真実だ。

まあ、『赤蛇』も本当に彼らが来たのか、と聞かれれば、きっと彼らだろう、としか言えない。だけど、彼らは恨んでいるからね、今回の抹殺対象を。きっと動かないはずがない。


京「………」

白「音はどこからだと思う? この方向だと、綺麗な薔薇とかの咲いた……」

明「…………庭、ですか?」

京「!!!」

白「そーそー。さあ、どうする? 僕は知ってるよ? あなたが大切に大切に守ってきた子のことを。あなたが生きる意味のように縋っているあの子のことを! 助けに行く? それとも信じる? さあ、さあさあさあさあ!! 決めるのはあなただ、四ノ原京子さん! ふふふふふ、僕はどっちをとってもあなたを尊敬するよ。たった一人のために、人生を賭ける、あなたをね!」


ケラケラ、という擬音が似合いそうな笑いを見せる。常に笑みを絶やさない。それが僕の信条、大切にするもの。そして、選ぶ必要も無いような質問を人に投げ掛ける。答えは決まっているだろう。

僕の言った言葉を、心の中で数回噛んだ後だろうか。彼女は庭の方に走り出した。梅花ちゃんが、それを見て追いかけようとする。しかし僕は……。


明「!!」

白「はい、少しでも動いたら君、喉にナイフが刺さっちゃうぞ? 若き女優さんは、身体に傷なんて付けたくないでしょ?」

明「なん………なんで、ですか。白亜様……」

白「僕は里峰白輝だ。白亜は懐かしい過去だよ。君が憧れていてくれた僕は、とっくの昔に死んでるんだ」


自虐的な笑みを浮かべて、淡々と真実を述べる。そう、僕は一回死んでるようなもんだ。何もかも知らないような顔してすべて奪ってった奴らに、少しでも報復をしたいだけ。


白「でもね。ファンであってくれて、ここまで踏み込んで来てくれた君を傷つけたくはない。でも仕事だから。やることはやるよ。………例え、もう君がファンじゃ無くなっても、ね」

明「……………い」

白「い?」

明「…………………今も、大好きです。何しても、ずっと……大好きです。カッコイイし、演技はうまいし………全てにおいての、憧れです」


なんてこと言ってんだよ、この子は。今、どんな状況下におかれてるかを理解してないのかな? そんな感じに頭がグルグルしてくる。そんな中で、結論らしきものが頭に浮かんだ。


白「………ああ、人に奉仕するだけの僕らは、元から割と狂ってるのかも」

明「……………?」

白「気にしないで。で? 降伏します? しないと喉を掻っ切るけど」

明「…………………仕事には、責任を持ちたいです」

白「え。マジで?」

明「なので、……………あの、死んじゃっても、仕方ないかなって……」


そこまで聞いて、僕は怒りがこみ上げた。思わず、拳を振りあげようとした時だった。

破壊された門の方から、冷たい風が吹いてきたのは。僕は振り上げかけた拳で、梅花ちゃんを突き飛ばした。そして、僕自身も後ろに跳んだ。立っていた場所は、白い何かに包まれた。


白「………ちょっとちょっとぉ………これは死ぬってば……アンデットさんさぁ!」

小「……………殺す気でかかってるから、当然」

白「いやぁ、梅花ちゃんはともかく、僕を殺す必要はないでしょ〜」

小「アンデット全員に伝えたのは、邪魔する全てを排除。つまり、一応、『赤蛇』も例外じゃない。でも、一応聞く。君らは、私の道を阻む?」


幼い子供のはずなのに。アンデットの長───夕凪ちゃんからは、恐ろしい量の殺気が出ていた。梅花ちゃんは怯んでるね。


白「………僕は目的一緒だろうから、そのつもりはさらさら無い」

小「そっちは?」

明「……………………」

白「戦意喪失してる。だから、進みたいなら進めばいい。僕も進むけどね」


梅花ちゃんは、もはや喋れる状態ではない。言うなれば、生まれたての子鹿のようになっている。だから、戦意喪失してる、と伝える。

すると、夕凪ちゃんは興味を失ったかのように冷気を止めた。


小「そう。じゃ、失礼するね。行くよ、黒塚」

友「了解です」


そして、どこからか現れた………天狗のような人を連れて、玄関の中に入っていった。何故天狗、と思わないこともないけど、まあ、アンデットだからそんなものなのだろう。


白「………だぁぁぁぁ、アンデット、こっわ〜………」

明「あ、あの。……ありがとうございます!」

白「いやいやいや、僕らは一応政府組織だからー。民間人に怪我してもらっちゃあ困るし」

明「それでも………助けてくれました」


ああ、これ、恩とかそんなんだ。面倒だなぁ、と思うけど、この子は僕のファンだった。なら、その範疇でなんとか片付けてくれるだろう。


白「………なんでもいーけど、そろそろ行くから。後は自分でなんとかしてね」


無責任だな、と思わないこともないけど。僕らの作戦はまだ終わってない。つまり、まだ戦わなければいけない。梅花ちゃんはもうそろそろ大丈夫だろう。

僕は、アンデットの二人が行った、玄関に向けて歩き出した。



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