真実、について 青鳥
何故でしょう、『青鳥』は長くなる。『赤蛇』は長くならない。設定を複雑にしすぎたかな………。
愁「………おい、実……………どうしたんだ、こいつ………」
愁さんが困惑したように聞いてくる。
僕だって聞きたい。
だって、二人いるなんて聞いてない。
彩「………さて、と……………彼奴が強くなってるんなら俺も、だよね」
愁「……お、おい、彩雅……? 大丈夫か? どっか痛いのか………?」
彩「お前の中で俺が餓鬼扱いされてるってことが、よぉぉく分かったよ!
ああ、もう……………」
実「……………彩雅さん……?」
さっきまで、隠していた顔は、もういつもの笑顔に戻っていた。
ただ、どこか……さっぱりしたような顔だった。
彩「さて、詳しく話すと………三日とかかかるから、端的にいこうか。うちの…………成宮について」
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うちはねぇ、昔は七宮だった、って話はしたね?その頃から変わった家だったんだけど……親父が当主になってからは更にすごくてね。
ほら、実、覚えてるでしょ?
あの凄い人、って、愁!? 流石にクズはないでしょ……
……えっとまあ、話を戻すかな。
んで、うちには兄弟が多いってのも分かるね?上から言ってってよ、実。
………俺、愁、雷羅……………そう、そこだね。こっからは迷うだろうねぇ〜。
じゃ、説明しようか。複雑な家系図を。
まず、俺がいます。長男、成宮彩雅、二十五歳。
で、すぐに、次からが面倒なんだよね。
次男、成宮愁。二十三歳。
…………………………孤児院から引き取られた、養子。
あぁ、ごめんね、愁。思い出したくなかっ………たってわけでも無さそうだね、お前も強いよなー………。
おっと、サクサクいくって言ったのにこれはまずいね。
次は雷羅だ。長女、成宮雷羅、二十歳。
雷羅と俺はね………半分血が繋がってないよ。父親は同じだ。でも、母親が違う。
複雑なのはこっからって言ったね。つまり、下もそんな感じなんだよ。
面倒だよねぇ…………
さて、次だ。多分………ここで、実が聞いた通りの子が来る。
………次女、成宮玲、十八歳。
今は何故か『赤蛇』だけど、うちで、一番強かった子だよ。
なんで『赤蛇』なんかにいるのか知らないけど。
…………ん?どうしたの、愁。
……………………年齢、? ………気づいたね。そう、十八歳は凜と同い年だ。
三女、成宮凜、十八歳。
まあ………ここまで来ればもう分かるだろ?
……………玲と凜は、双子の姉妹だ。
顔がそっくりな意味はここで証明できたね?
………愁が何か聞きたそうだけど、進まないから後にして。
次も双子。でも、こいつらについては知ってんだろ?
三男、成宮奏理、十六歳。
四女、成宮歩歌、十六歳。
こいつらも、養子だ。髪色も全く違うしな。
……実を言うと、あの破天荒な性格、歩歌だけなんだよな〜。奏理は、結構真面目だよ。
実、ちょっと可哀想になるからその顔はやめてあげて?
…………と、まあ…………実の情報でいけばこうなる。
でも、俺言ったよね、二人いる、って。
それが、この後だ。………正直、言いたくないんだけど、言わないと納得しないだろ?
…………スグに頷いたね……? そんなに気になるの?
……愚問だったか。わかったよ。
……最後、四男がいる。
成宮黒祈、……多分十四歳かな、多分だけど。
なんで多分って……俺、あいつが出てってから一回…………は、この前の『黒亀』事件で会ったな。でも、話してないから、朧気なんだよ。
ただ、彼奴に合わせる顔なんてほとんど無いけどね。
………俺は、父さんを尊敬してるからなおのこと。
………………俺は嫌ってるから大丈夫って………愁は悲しいなあ……?
……え、なんで合わせる顔がないか?
…………………聞いて後悔した、とか言うなよ……?
…………………………よし、なら言うけど。
お前らも、理解してるだろ?都川ちゃんと仁叶くんいるから……[アンデット]っていう奴らがいるってこと。
まあ、この話に入ったってことはだいたいわかるだろ。
…………黒祈は、[アンデット]だよ。
え、何の………ってそこまで聞く?
うん、って…………お前らなぁ……、いや、まあ、いいか。うん。
彼奴は、吸血鬼だよ。日光苦手、血を飲むあれね。
……………そうだね、[アンデット]は極端に日に弱い。
どうなるか、は聞いた?
………当たると灰になるそうだよ。その上考えてみなよ、吸血鬼だ。更に弱い。灰すら残らないかもしれない。
まあ、これはまだいい方だ。
問題は………これが、次言うことが……まだ大衆の前に晒されてないって事だ。
……………まあ、心して聞いてね。
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彩「[アンデット]は成宮家当主、成宮播麻にて、人工的に作られた生物だ。……元から[アンデット]な訳では無いんだよ」
………………今、こいつは何と言った?
実「……………作った……?」
彩「………………」
愁「おい、どういうことだ? 俺らは……そいつの元で、生きてたのか…?」
彩「そうだよ。多分……それで出来たお金も、俺らの生活資金になってる」
愁「……冗談じゃねぇぞ、彩雅。お前、何で言わなかった!」
彩「言った方が良かったか?」
愁「んなもん、言った方が良いに決まって………」
彩「じゃあ受け止められるのかよ!!」
彩雅さんが、叫んだ。
………僕は、今まで、この人の悪い顔をたくさん見てきた。それと同時に、苦笑もかなり見てきた。
僕には、この人の本当の顔が分からなかった。
………そして……………叫ぶのを見るのは、初めてだった。
彩「お前は!! 弟が人体実験に使われたなんて知りたかったか!? 俺は、知りたくなかったよ!すぐにでも、止めさせたかった!! でも、あの父さんだぞ!? 止めさせたらお前らに被害がいくかもしれなかった! 血の繋がりがあっても、半分でも、無かったとしても! 大事な、数少ない家族をまた傷つけられたくなんてないんだよ!」
───悲痛な叫びだった。
と、同時に、彼の本当の顔がチラついた気がした。
………彩雅さんは、冷酷だし、冗談ばかりだし、無茶ばかり言ってくる。けれど、それはただの表面。
本当は……失うのを恐れる、一人の人間だったのだ。
彩「………だから、玲が家出したって聞いたとき、俺は何なんだって思ったよ。あの時はまだ……たった七歳だった子が。人間じゃなくなったまだ3歳の弟を抱えて家を飛び出したんだ。………兄って何なんだって、考えさせられた」
実「………………………」
愁「………………………………」
彩「……ただ、その二日後には……そんな妹がいた、という記憶が、俺の弟妹の頭から消えてた。混乱したし、辛かった。何でって思った。でも、それを乗り越えないと………」
彩「……俺は、戻ってくるかもしれないあの子を、堂々と迎え入れる事が出来ない、と思った」
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……………………………この人は、十四歳でそれを考えたのか。
僕が、まだ玉座でふんぞり返っていた子供だった頃に。
全てを忘れた弟妹がのうのうと生きていた頃に。
愁「……………それ、みんなに話さなくていいのか」
彩「…………………話して納得してくれなかったんだけど、それも忘れたの?」
愁「おう」
彩「お前の開き直り度は昔から嫌いなんだよね、知ってた?」
愁「勿論だけど」
彩「この野郎………。……あ、ちなみに、実様時代の実は大っ嫌いだったよ。島の内情も知らないくせにふんぞり返ってて」
実「思い出すと吐き気するのでやめて下さい、服に嘔吐物かけますよ」
彩「お前ら、何なの!?」
知るか、と心の中で一蹴りしておく。
正直、こうやって言っておかないと思い出して気分が悪くなると思う。
実「………で、どうします、この話」
愁「………………」
彩「話さないよ」
愁「記憶の件もか?」
彩「話すわけないじゃん、お前みたいに混乱するし。異常に飲み込み早かったけど」
実「あなたの無茶ぶりのせいで慣れたんでしょ」
愁「正解」
彩「この野郎……………」
適当なお喋りのおかげで調子が戻ってきた。
良かった、いつもの二人だ。
僕もきっといつも通りだろう。
愁「まあ、凛と奏理、歩歌からブーイング受けるだろうな」
彩「そこは黙らせるから大丈夫」
実「うわっ……………流石」
彩「間には何があるのかを教えてくれないかな、実?」
愁「流石は長男様だな」
彩「うるっせー」
愁「………で、親父様のことはどうするんだよ」
彩「………もう遅いよ。[アンデッド]実験は終わってる」
愁「マジかよ………」
実「…………………………」
ちょっと待て。
この言い方なら…、この人もしかして……………
実「………彩雅さん」
彩「ん?何?」
実「………アンタもしかして……」
実「……………[アンデッド]の被害者も全部把握してるんですか……?」




