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太陽と月~赤と青~  作者: 黒野凜兎
名無島での出来事~転~
33/56

真実、について 青鳥

何故でしょう、『青鳥』は長くなる。『赤蛇』は長くならない。設定を複雑にしすぎたかな………。



愁「………おい、実……………どうしたんだ、こいつ………」


愁さんが困惑したように聞いてくる。

僕だって聞きたい。

だって、二人いるなんて聞いてない。


彩「………さて、と……………彼奴が強くなってるんなら俺も、だよね」

愁「……お、おい、彩雅……? 大丈夫か? どっか痛いのか………?」

彩「お前の中で俺が餓鬼扱いされてるってことが、よぉぉく分かったよ!

ああ、もう……………」

実「……………彩雅さん……?」


さっきまで、隠していた顔は、もういつもの笑顔に戻っていた。

ただ、どこか……さっぱりしたような顔だった。


彩「さて、詳しく話すと………三日とかかかるから、端的にいこうか。うちの…………成宮について」


────────────────


うちはねぇ、昔は七宮だった、って話はしたね?その頃から変わった家だったんだけど……親父が当主になってからは更にすごくてね。

ほら、実、覚えてるでしょ?

あの凄い人、って、愁!? 流石にクズはないでしょ……

……えっとまあ、話を戻すかな。

んで、うちには兄弟が多いってのも分かるね?上から言ってってよ、実。

………俺、愁、雷羅……………そう、そこだね。こっからは迷うだろうねぇ〜。

じゃ、説明しようか。複雑な家系図を。


まず、俺がいます。長男、成宮彩雅、二十五歳。

で、すぐに、次からが面倒なんだよね。

次男、成宮愁。二十三歳。

…………………………孤児院から引き取られた、養子。

あぁ、ごめんね、愁。思い出したくなかっ………たってわけでも無さそうだね、お前も強いよなー………。

おっと、サクサクいくって言ったのにこれはまずいね。


次は雷羅だ。長女、成宮雷羅、二十歳。

雷羅と俺はね………半分血が繋がってないよ。父親は同じだ。でも、母親が違う。

複雑なのはこっからって言ったね。つまり、下もそんな感じなんだよ。

面倒だよねぇ…………


さて、次だ。多分………ここで、実が聞いた通りの子が来る。

………次女、成宮玲、十八歳。

今は何故か『赤蛇』だけど、うちで、一番強かった子だよ。

なんで『赤蛇』なんかにいるのか知らないけど。


…………ん?どうしたの、愁。

……………………年齢、? ………気づいたね。そう、十八歳は凜と同い年だ。

三女、成宮凜、十八歳。

まあ………ここまで来ればもう分かるだろ?


……………玲と凜は、双子の姉妹だ。

顔がそっくりな意味はここで証明できたね?

………愁が何か聞きたそうだけど、進まないから後にして。


次も双子。でも、こいつらについては知ってんだろ?

三男、成宮奏理、十六歳。

四女、成宮歩歌、十六歳。

こいつらも、養子だ。髪色も全く違うしな。

……実を言うと、あの破天荒な性格、歩歌だけなんだよな〜。奏理は、結構真面目だよ。

実、ちょっと可哀想になるからその顔はやめてあげて?


…………と、まあ…………実の情報でいけばこうなる。

でも、俺言ったよね、二人いる、って。

それが、この後だ。………正直、言いたくないんだけど、言わないと納得しないだろ?

…………スグに頷いたね……? そんなに気になるの?

……愚問だったか。わかったよ。


……最後、四男がいる。

成宮黒祈、……多分十四歳かな、多分だけど。

なんで多分って……俺、あいつが出てってから一回…………は、この前の『黒亀』事件で会ったな。でも、話してないから、朧気なんだよ。

ただ、彼奴に合わせる顔なんてほとんど無いけどね。

………俺は、父さんを尊敬してるからなおのこと。

………………俺は嫌ってるから大丈夫って………愁は悲しいなあ……?


……え、なんで合わせる顔がないか?

…………………聞いて後悔した、とか言うなよ……?

…………………………よし、なら言うけど。

お前らも、理解してるだろ?都川ちゃんと仁叶くんいるから……[アンデット]っていう奴らがいるってこと。

まあ、この話に入ったってことはだいたいわかるだろ。

…………黒祈は、[アンデット]だよ。

え、何の………ってそこまで聞く?

うん、って…………お前らなぁ……、いや、まあ、いいか。うん。

彼奴は、吸血鬼だよ。日光苦手、血を飲むあれね。

……………そうだね、[アンデット]は極端に日に弱い。

どうなるか、は聞いた?

………当たると灰になるそうだよ。その上考えてみなよ、吸血鬼だ。更に弱い。灰すら残らないかもしれない。

まあ、これはまだいい方だ。

問題は………これが、次言うことが……まだ大衆の前に晒されてないって事だ。

……………まあ、心して聞いてね。


────────────────


彩「[アンデット]は成宮家当主、成宮播麻にて、人工的に作られた生物だ。……元から[アンデット]な訳では無いんだよ」


………………今、こいつは何と言った?


実「……………作った……?」

彩「………………」

愁「おい、どういうことだ? 俺らは……そいつの元で、生きてたのか…?」

彩「そうだよ。多分……それで出来たお金も、俺らの生活資金になってる」

愁「……冗談じゃねぇぞ、彩雅。お前、何で言わなかった!」

彩「言った方が良かったか?」

愁「んなもん、言った方が良いに決まって………」

彩「じゃあ受け止められるのかよ!!」


彩雅さんが、叫んだ。

………僕は、今まで、この人の悪い顔をたくさん見てきた。それと同時に、苦笑もかなり見てきた。

僕には、この人の本当の顔が分からなかった。

………そして……………叫ぶのを見るのは、初めてだった。


彩「お前は!! 弟が人体実験に使われたなんて知りたかったか!? 俺は、知りたくなかったよ!すぐにでも、止めさせたかった!! でも、あの父さんだぞ!? 止めさせたらお前らに被害がいくかもしれなかった! 血の繋がりがあっても、半分でも、無かったとしても! 大事な、数少ない家族をまた傷つけられたくなんてないんだよ!」


───悲痛な叫びだった。

と、同時に、彼の本当の顔がチラついた気がした。

………彩雅さんは、冷酷だし、冗談ばかりだし、無茶ばかり言ってくる。けれど、それはただの表面。

本当は……失うのを恐れる、一人の人間だったのだ。


彩「………だから、玲が家出したって聞いたとき、俺は何なんだって思ったよ。あの時はまだ……たった七歳だった子が。人間じゃなくなったまだ3歳の弟を抱えて家を飛び出したんだ。………兄って何なんだって、考えさせられた」

実「………………………」

愁「………………………………」

彩「……ただ、その二日後には……そんな妹がいた、という記憶が、俺の弟妹の頭から消えてた。混乱したし、辛かった。何でって思った。でも、それを乗り越えないと………」



彩「……俺は、戻ってくるかもしれないあの子を、堂々と迎え入れる事が出来ない、と思った」


────────────────


……………………………この人は、十四歳でそれを考えたのか。

僕が、まだ玉座でふんぞり返っていた子供だった頃に。

全てを忘れた弟妹がのうのうと生きていた頃に。


愁「……………それ、みんなに話さなくていいのか」

彩「…………………話して納得してくれなかったんだけど、それも忘れたの?」

愁「おう」

彩「お前の開き直り度は昔から嫌いなんだよね、知ってた?」

愁「勿論だけど」

彩「この野郎………。……あ、ちなみに、実様時代の実は大っ嫌いだったよ。島の内情も知らないくせにふんぞり返ってて」

実「思い出すと吐き気するのでやめて下さい、服に嘔吐物かけますよ」

彩「お前ら、何なの!?」


知るか、と心の中で一蹴りしておく。

正直、こうやって言っておかないと思い出して気分が悪くなると思う。


実「………で、どうします、この話」

愁「………………」

彩「話さないよ」

愁「記憶の件もか?」

彩「話すわけないじゃん、お前みたいに混乱するし。異常に飲み込み早かったけど」

実「あなたの無茶ぶりのせいで慣れたんでしょ」

愁「正解」

彩「この野郎……………」


適当なお喋りのおかげで調子が戻ってきた。

良かった、いつもの二人だ。

僕もきっといつも通りだろう。


愁「まあ、凛と奏理、歩歌からブーイング受けるだろうな」

彩「そこは黙らせるから大丈夫」

実「うわっ……………流石」

彩「間には何があるのかを教えてくれないかな、実?」

愁「流石は長男様だな」

彩「うるっせー」

愁「………で、親父様のことはどうするんだよ」

彩「………もう遅いよ。[アンデッド]実験は終わってる」

愁「マジかよ………」

実「…………………………」


ちょっと待て。

この言い方なら…、この人もしかして……………


実「………彩雅さん」

彩「ん?何?」

実「………アンタもしかして……」



実「……………[アンデッド]の被害者も全部把握してるんですか……?」



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