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太陽と月~赤と青~  作者: 黒野凜兎
名無島での出来事~承~
25/56

頻発する事件~上編~ 赤蛇




「はぁ?馬鹿じゃねぇの」

「ちょ、酷い」


いきなり、失礼した。

この会話は、俺、成宮玲とボスである月村時雨の会話の一部である。

全部説明するには、少し前まで遡る。

少しお付き合いいただこう。


まず、最近、ある事件が多発している。

うちの隠密部隊員である遠江一樹さんも巻き込まれたあの事件だ。

規模が拡大しつつあり、政府から正式に事件捜査及び終わらせろ、との通達がきた。

で、俺がその通達を受け取ったので兄者に渡しに来た。


「失礼します。……兄者。」

「ん?あ、おかえりー。どうだった?」

「捜査依頼来た。」

「やっぱりかー」


たはは、と苦笑する兄者。

予測はしていたそうだ。

なら先に言えって思うが口には出さない。


「で?指示は?」

「そうだねぇ………………あ、そうだ。今、暇な部隊ってある?」

「………?比較的、全部仕事は少ないと思う。暇ではないけど」

「うーん……戦闘は残ってもらいたいし…隠密は遠江さんがねー…なら、情報か」

「?何がどうしたんだ?」


嫌な予感がする。

なんか、嫌な予感がする。

大事だから二回いったぞ。


「『青鳥』に協力依頼を出しに行こう!」

「はぁ?馬鹿じゃねぇの」

「ちょ、酷い」


………と、言うわけだ。

うん、ふざけてんのか、この人は。

『青鳥』と、協力?

嫌に決まってんだろうが。


「いや、でもね?これは正直、『赤蛇』だけじゃ対処は難しいんだよ?表にも裏にも被害がでてる。」

「んなことはわかってんだよ。大事なのは『青鳥』と組む事だ。反発は絶対出るぞ」

「いや、それを話し合いで解決するのが俺の特技だよ?」


……もう何を言っても無駄か。

そう考え、最後に溜め息だけついた。

それを見て、兄者は笑い、次の言葉を吐き出す。


「じゃあ、情報部隊によろしくね。お姫様?」


………どうにでもなりやがれ。

俺は知らないからな。







────情報部隊が、帰ってきたみたいだ。

天音さんがご機嫌だし、向こうも協力を承諾したのだろう。

まあ、向こうにも不利益はないし。

これで組めなかったら『青鳥』は壊滅ギリギリまでいきそうだしな。


「…玲」

「ん?………なんだ、緋暮さん。おかえりなさい」

「おう。幹部は集まれってさ」

「んなこったろーと思ったよ。了解」


………俺としては大反対なんだけどな。



「はい、緋暮さん、おかえりー」

「ただいまでーす。で、はい承諾書」

「お疲れちゃん♪」

「うっぜぇ」

「月村さん、顔も声も言葉もすげぇことになってるよ」

「うん、お兄ちゃん、滅茶苦茶悲しいよ」

「死ねよ」

「はいはい、早くしてくださいな、馬鹿」

「母さんも母さんだけどね」


………うん、やっぱりまともじゃねぇよな、うちは。

常時この馬鹿騒ぎだから、突っ込みたくもなくなってきた。

今回は天音さんに同意だ。

てか、おそらく面倒くさくてハルと紫由、無視を決め込んでるな。


「……で、協定の内容だけど。緋暮さん、よろしく」

「はいよ。内容っつってもさ……協定結んだから、一緒に調査する。それだけだけどね」

「嫌」

「姫、秒速で否定しないでくださいよ………」

「嫌なもんは嫌」

「みゃーちゃん、仕方ないよ?」

「諦めてくださいませ」

「ほら、隠密の二人も仰ってますので」

「…………嫌なものは嫌です」


駄々をこねる。

さて、駄々をこねたのはいつぶりだろうか。

軽く……………十年ぶりくらいか?

うん、それより前の気がするわ。

……あれ、ついたことあったっけ?


「玲ー?嫌でも、命令で何とかするよ?」

「………うげぇ…」

「どれだけ嫌なのさ…」

「というか、何故そんなに嫌なんですか?美琴様は知っているようですが」

「あー…………言っていいの?」

「………………………………」

「あ、別に構いませんよ。嫌な記憶なら思い出さなくとも」

「……すまんな、紫由」

「だからいいですって」


あぁくそっ!

仕方ねぇのはわかってるけどやりたくない!


「で、本来、応対の役目をするのは戦闘部隊だから、よろしくね」

「拒否権は?」

「あるわけないでしょ」

「………了解」


苦虫を噛み潰したみたいな顔になってるだろうが、仕方ない。

やれるだけ、やろう。

ただし、やれるだけ、だがな!!

その後、戦闘部隊は、三つに分けられ、『青鳥』と行動することになった。

まあ、そこはギリギリセーフとしよう。



…………………で、まあさっそく来たんだが……


「……………………」

「あ、あの」

「………………………」

「おーい?」

「すいません、姫…………うちの方は拒絶反応を示しておりますので」

「地味に酷いんですけど」

「申し訳ありません。私は月村水樹と申します」

「あ、はい。僕は…」

「存じております、成宮凜様ですね。」

「え、あ、はい。……ん?何で知って…」

「うちの情報部隊、怖いので」

「ア……ハイ」

「ほら、ひ………じゃない、幹部様ー?貴方も名乗ってくださいな」

「…………………玲」

「え、名字は……」


聞かれるよなー………?

言いたくねぇなぁ………?

よし。


「…吾輩は猫である。」

「…え?」

「吾輩は猫である。」

「……な、名前はまだない」

「そういうことだ」

「え?!」

「ないってことにしとけ」

「え、あ、うん」

「……(どれだけ知られたくないんですかね~)」


月村さんの呆れた目線が刺さる気がする。

無視を決め込もうか。

うん、そうしよう。


「………というか、すいません……」

「?何故謝るのですか?」

「いえ、実は……もう一人いるんですよ。貴方がたと組む人…」


盛大な遅刻だな。

重役か?

そうじゃないなら殴りたいものだが、相手はうちの奴らじゃないからな。

殴れない。


と、そんな思案をしているときに、足音が聞こえてきた。


「あっ!遅い、未鶴!!」

「わり、昨日ゲームしてた」

「未鶴!?」

「……元気ですね」

「その通りだな」


その声を聞いてか、今きた奴が振り返る。

あっけらかんとゲームしてた、と言ってのけた奴は───


「………………は」

「未鶴?どうしたの?」

「…………」


口をパクパクさせていた。


「自己紹介をお願いできますか?」

「…………どうせ、あんたら知ってんだろ?」

「えぇ。ですが、情報の照らし合わせも大切ですので」

「………そこの奴に聞いたら?」


あ、俺を指差しやがった。

人を指差すな、貴様。

とか思うけど、まずは返答かな。


「さて、何の事でございましょう?和泉未鶴」

「敬語なのかどうなのかをはっきりしろよ」

「断る」

「即座に否定かよ」

「はいはい、喧嘩っぽいのしないでくださいまし?私は月村水樹です。よろしくお願いしますね」

「……玲。名字は聞くな」


あ、和泉未鶴。

あん?って顔しやがってる。

殴っていいかな?

………月村さん、マジで怖いからやめて。


「……さて、私たちが探すのは南区。貴方がたにとっては最初の事件が起きた場所ですね?」

「あの、貴方がたにとっては、とは?」

「あぁ、失礼。私たちの中にも被害者が出まして。それが南区の事件と同時刻だった、というだけですよ」

「そう、なのですか…ありがとうございます」

「で、行くなら行こう。さっさと終わらせて帰る」


一言発して南区へと向かう。

追いかけてくる気配があるから大丈夫だろう。

……先行きが思いやられるのだが。



一方、東区メンバー────


「……糸坂、いづるです…」

「夏野目桜之じゃ。」

「若葉伊織です、どうぞよろしく」

「朝戯理と申します」

「…………淡間屋シアンでーす…」

「「…え、淡間屋!?」」

「ほら、だから言ったじゃん、理さん!!」

「私は知らん、とも言ったろう?決めたのは水樹さんだ」

「そうだけどさぁぁ!!」

「……朝戯さん」

「?なんでしょう、糸坂さん」

「……つゆは元気ですか?」

「えぇ。貴女と組むのを猛反対するくらいには元気ですよ」

「……良かった」


「(いいのか……)」


「………後…」

「?」

「……どこかで、お会いしたことありますか?」

「………………先日の事件以外では、御座いませんと思いますが…?」

「…………そう、ですか……」


「(…………うん。朝戯さん、は会ったことないよ)」




そして、もう一組。

北区にて─────


「はいはい、どーもぉ!里峰白輝でぇす!」

「白輝、うるさい。私は糸坂つゆり。」

「むぐぐぐぅぅぅ!むぐぅ!!」

「あ、えっと、満辺みつべ 侑奈ゆうなです」

「はいはい、満辺侑奈ちゃんね!……で、何で君は隣の子の体をロープでグルグル巻きにしてるの?」

「あぁ、えっとですね……あ、ちょっと明ちゃん!」

「ぷはっ!!何してくれてんの、侑奈ちゃん!?」

「いや、だって絶対騒ぐでしょ?」

「酷すぎない?!私、女優だからね!?」

「……女優、だってさ?白輝」

「……。」

「……はっ!し、失礼しました!私は梅花うめはな あきらですっ!あ、あの!もしかして、湊白亜様ですか!?」

「?湊白亜………あぁ、こいつか」

「…………うっさいよ、つゆりん!……もぉー!そうだよ、そうです!僕はみなと 白亜はくあですぅ!!」

「きゃぁぁぁぁあ!!!」


「「(あ、ダメだこれ)」」




南区メンバー


(まあ、簡単に言えば、もとに戻る)


「………調査、っつてもな…」

「だいたいは“上”や『青鳥』がやってくれたみたいですしねぇ」

「やることねぇじゃん」

「あ、あはは………」

「俺まで駆り出したのに、何にもねぇとか呪う」

「未鶴くーん!?」

「つか、“上”ってなんだよ」


…………あれ?

こいつら、知らないの?

月村さんに言ってもいいのかを目線で聞く。

………何も言わないなら言ってもいいんだろうか。

よし、言うか。


「俺ら、『赤蛇』は政府の上位配下組織だ。“上”ってのは政府。つまり、俺らの行動のだいたいは政府の命だ。」

「「……………は!?」」

「元気ですね、お二人。」

「……まあ、それを知らずに動いてたから、俺らの行動をいちいち止めようとしたのか。納得いったわ」


これで止められなくて済むかな。

………ん?

これ、俺らが名無島のほぼ最強戦力になるような………?

…まあ、いいか、別に。


「あはは、姫はバッサリ言いますね?」

「悪いか」

「いえ、全く。…で、お二人様?できるだけ、我々の仕事の邪魔は…しないでくださいね?」


この言葉は、フリーズしてる和泉未鶴と成宮凜に向けられた言葉。

どうか、邪魔しないことを願ってるよ。


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