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太陽と月~赤と青~  作者: 黒野凜兎
名無島での出来事~起~
13/56

『黒亀』事件~後編~ 青鳥side



………今、立っている者は?

………今、聞こえる悲鳴は?

………今、この場の状態は?

………………どれも、最低なものだ。

…頭が痛い。

ガンガンする。

誰かの能力だろうか。

……いや、違う。

誰もそんな力使ってはいなそうだ。

………………では、何故?

………何故、このタイミングなのか。

…あぁ、酷い…頭痛が、している。


「………ッ!!」

「あら、動きが鈍いですよ?大丈夫ですか、貴女」

「…敵を心配するなんて、余裕だねぇ?」

「えぇ、余裕です。だって、我々の勝利は………決定事項ですから」

「何をぬかすか、小娘がっ!」

「……香り系の能力の方、ですか?なら、ハンカチで口を塞ぐか、息をせずに、貴女を倒せばよいだけのこと」

「やってみるがよいぞ?」


………桜之さん、もしかして、僕らから敵を遠ざけてる?

被害から守るため?

………この中では、桜之さんが一番攻撃的じゃないのに?


「……桜之さ───」


──刹那、轟音が響き渡った。

そして、静寂。

…二方向から来る足音がする。

片方は………


「凜ちゃん!無事かしラ?!」

「……結局、最終部隊まで到着させちゃったか…」

「…利音さんと翔が重傷、奏理と歩歌は…」

「「怪我してるし、今現在瓦礫の下敷きでーす」」

「…軽傷なのは桜之さんと凜だけか」

「………随分と、普通に言うな?『青鳥』?」


僕にそっくりな子が憎たらしげに彩兄のほうを見ていう。

彩兄はそれを驚いた表情で見た。


「…おや………珍しい。君がわざわざ出てくるなんてねぇ?」

「アンタはとっととこの世からおさらばしろよ。成宮彩雅?」

「お断りだね。まだやりたいことはあるからさ」

「…あっそ」


……もう一つの足音。

それは………


「やっほぉ~?隠密部隊、ただいま到着したよー」

「まともに報告できないんですか、兄さん」

「……威和、紫由?静かにできるかな?」

「もちろんですよ、美琴様」

「はぁーい、了解ッスよ。美琴様」

「敬意がなってませんよ、兄さん」

「いやいや、今さら?」

「今さらです。」

「紫由くんは、厳しいよな」

「だよね、黒祈君!」


…………あぁ、ヤバイ。人増えた。

僕もう無理。無──


「さぁーて?凜、まだ行けるね?行けるよね?」

「………イケマス」

「…サイガ、虐めないであげて」

「うるさいなぁー?」

「……………!?」

「いづ!?」

「つゆりさん!!?」

「………やっと、見つけられたよ。つゆり」

「…うっさいよ、いづる」


…あぁ、どこがで、見たことがあると思った。

…いづさんの親族なのか?

…ん?

恐ろしい斬り合い…に使われてる武器が………メス!?


「「刃こぼれするわ!!」」


同じタイミングで、赤い瞳の子と叫ぶ。

…何故だろうか?

頭が、いっそう痛くなってきた

何故だろう。

あの子は…知ってる気がする。


「………君は、誰?僕を…知ってる?」

「お前は知ってるけど。お前は俺を知らないよ。」


何故か、聞こうとしたんだ。

でも、聞けなかったんだ。

そのわけは…その子の後ろから、歩いてくる人たちがいたから。


「…………?」


その子が、振り返った。

……そして、叫んだ。


「……総員、退避用意!!!」

「「「「…………?!」」」」

「…〔アンデット〕が、来やがった!」


………何かが、歩いてきたのはわかっていた。

近づいてくるにつれて、はっきり、二人の人がいるのもわかった。

──────次の瞬間。

目の前の道がえぐり取られた。


──え?

──え?え?

────何が…起きた?


「…散歩の、通り道なの。…どいてよ」

「まあまあ、雪女ちゃん。多少五月蝿いぐらいならいいじゃん?」

「…やだよ、鬼神さん。私、人間嫌いだもん」

「あらら、そりゃ駄目だね。…というわけで……」


───刹那、走る悪寒。


「どかないようなら潰すよ?」


「…鬼神さん、雪女さん。潰すのはやめてくれない?」

「あれ、黒祈君?逃げないと?」

「大丈夫。先に行って」

「あれ、君はどっちだっけ?」

「逃げてる方です」

「………なら……呆然としてる奴等を、始末したらいいんだね?」


…矛先が………『青鳥』に向いた?


「!逃げるぞ!!」

「……ばーか。人間は…嫌いだよ?そういう判断が遅いところも含めて」


──────特に、君たちとかは。


─あれ?

……もしかして…あの大きな氷の塊は……僕を標的にしてる?

綺麗な、光った、透き通った、氷?

…彩兄の作るやつよりも、大きいなぁ?

…あ、愁兄と雷姉が、なんか言ってる。

彩兄は……いつも通りの顔が、少し歪んでる?

珍しいなぁ?

……僕は、死ぬのかなぁ?

………死ぬときは、なんだっけ?

走馬灯?が見えるみたいなことを聞いたけど……

思い出す記憶なんて、いいもんないし。

……これが、僕の最後かぁ……

あ、でも他の仲間は無事ってことか。

………それなら、この終わり方も……


「……悪く、ないかもね。」


目を閉じた。


「……………馬鹿っ!!!」


─僕に似た声を、最後に聞いた気がしたのは……現実か、それとも………

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