『黒亀』事件~中編~ 青鳥side
翌日。来てしまった『黒亀』援助任務の日。
その日は朝は晴れのち曇り。所により雨、だそうだ。
こちらの方で雨は降らないらしい
信用してるからな、ニュースよ。
──午後九時頃
ミーティングを終えて、もう出発の時間だ。
「行くぞ、お前ら」
「わかってるヨ。桜之さん、伊織さん、黄金。準備万端かナ?」
「もちろんじゃろうて」
「できてるよ~」
「当たり前っす!」
「いや、黄金が一番心配だかラ」
「ええ!酷いって、姉御!」
「知るかヨ。」
「はぁ…伊織さん、頼みますよ」
「はいはい。ほらー、行くよ?なっちゃん、ゆいくんー」
あれ、マトモな人に囲まれてるはずなのに、黄金のせいで全てが台無しな気がする。
「その次に、十分後ぐらいに出しますんで、偵察含めて護衛、頑張ってきてください」
「わかっておるよ、愁。妾と若葉さんがおれば大丈夫じゃて」
「え、俺は?ねぇねぇ、俺は…?」
「さて、出発するかのう」
……黄金、可愛そうに。
その十分後………
「次、凜、奏理、歩歌、翔、利音ー。準備は?」
「もちろん完璧だよ?」
「「Yes!!」」
「できてます」
「OKです」
「中隊は、心配事はあんまりないワ。問題児二人と一般的に大丈夫な三人だからネ」
「「え、でも終盤はいちばんめんどくさーい人いるじゃん」」
「「それはいうな」」
「利音さんはこの中では最年長なんで、よろしく御願いしますね」
「うん、わかってる」
「うう、僕は黄金君がなんかしてないか心配だよ……いづるさん、胃薬下さい…」
「その年から苦労性は大変…はいどうぞ」
「ありがとうございます、じゃあ、いきますか?」
「うん、行こうか。」
………今は、午後九時十五分。
さあ、出発だ。
………最初に行った三人が、中で警護している。
僕らは『赤蛇』が来るのを待って、路地裏で待機。
───時間は午後九時四十分。
『赤蛇』が来るまで後、二十分。
まあ、そんな時間をじっとしていらかれないやつもいるわけで。
「くぁぁぁ!あーきーたー!」
「うんうん!ひーまーだよ!」
「落ち着いて。飴ちゃんあげるから」
「「いる!」」
「単純だなぁ、二人は」
「昔からなんですよ~。彩兄から貰ったものは食べないのに」
「「あの人、大っ嫌いだもん」」
「…の、一点張りで…」
「まあ、確かに彩雅さんは苦手な人多いかもね」
なんて会話をして時間を潰す。
そんなことを繰り返していた。
──その時間は、今、終わってしまった。
急に……………ナイフが飛んできたからだ。
「「「「「!!!」」」」」
「……全く…面倒ですよね、ホント」
「あっははぁっ!理姉サン、不機嫌だねぇー。そんなにイライラしてっと、禿げるよー?」
「白輝くんは、何でそんなに人を煽るの…?さっさと帰りたいから急ごうよー」
「………来たね?『赤蛇』……!」
「戦闘準備を!」
…構えた瞬間、体が重くなった。気のせいではない。本当に…真上から、圧がかかっているようだった
「俺、帰ってテレビみたいんだよ。だから…黙って這いつくばっててよ」
「…そんな要求が……通るとでもお思いですか………!」
………越川翔。能力は……身体強化。
こんな重力、空気への抵抗となんら変わりはない。
「へえー、立てるんだ……凄いや。ごめん、理さん、白くん。俺、無理だわ」
「全く…すぐに諦めないでもらいたい。私たちは姫様を出すまでもなく勝つのが目標なのだからね、シアン」
「でもさぁ、あいつなら、普通に出てきちゃうんじゃなぁいかな?」
「ならば、それよりも早く片付けるまで。」
次の瞬間。その人の隣には…マシンガンが、二つ。銃が四丁あった
「……五分で、片付けなさい」
「はいはい………」
「頑張っちゃうよー?」
───それからは、地獄だった。
騒ぎを聞き付けた『黒亀』の人がかせいにきたものの、意味なんてない。
瞬殺だったと思う。
かと言う僕らも、重力のせいでまともに動けるのは翔のみ。
他は銃弾を受けぬように防御をするぐらいしか出来なかった。
双子は楽器が出せなければ能力は発動しない。
…が、身体能力はやけに高いのでギリギリ避けていた。
利音さんは特に苦しそうだった。なにせ、彼の力は大地を動かす。
故にこんな建物だらけのところで使用すると最悪、ぺしゃんこになる。
その為、守りは僕がやっていたようなものだ。
「(ヤバイ……!突破口を見つけないと…………!!)」
「………何しておるのじゃ、ぬしらは。」
頭上から聞こえてきた聞き覚えのある声が聞こえたと思ったら、不思議な香りが漂ってきた。
これは………………
「音が恐ろしいから来てみれば、まあなんと凄い光景じゃのう?」
「……さ、桜之さん………」
「まあ、妾の力で………」
桜之さんが手を重力の人の方へ向ける。
そうするとその人はフラフラと倒れた。
「重力は、なんとかなったじゃろう」
「シアン!!」
「………スースー」
「あーりゃりゃ、寝ちゃってるねー?どーすんのさ、理姉サン?」
「どうするも、決まっている!!」
キッと、こちらを睨み付ける女の人。
「倒すだけだ!!」
「奴さんは、六対二で勝とうとしておるようじゃが…動けるなら、こちらの勝ちのようなものじゃよ」
「……………………………………さぁて?どうかなぁ?」
「?!なんか、凄い強気だけど!?」
「勝機、見えないと思うけどね!?」
「……違う違ーう。……もう、僕らの出番が…終わっちゃっただーけ。まあ……ミッションクリアー、みたいな?」
クスクスとそうやって言った人がクルリと向こうを向いた。
その動きに合わせて、構えたが、何もしてこなさそうなので、僕らもそちらをみる。
そうすると…………
「………はぁ、結局、駄目じゃないですか。白輝、理さん」
「………申し訳、ありません」
「ごめんねー、水樹ちゃん。でも、足止めはすんだよー?後、戦力削ったり?」
「馬鹿ですか。私たちの任務は別でしょう。中に行かないと。」
「あはっ!天才でーす☆」
「はぁ………もういいですよ。……いかがなさいますか、姫?」
「……そりゃさぁ…叩け。」
「「「仰せのままに」」」
………………そこに出てきた、人は。
黒髪を右の方で、高そうな黒いスーツを着て、黒縁眼鏡をかけて、死んだような光のない、赤い瞳をした…
──僕にそっくりな人だった。




