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魔法の鏡  作者: 瑠音
16/17

どうして…!?






あれから、1ヶ月以上過ぎたが、レイン達が、鏡の前に現れることは無かった。そして、カイル達の頭の中からも、鏡の事は少しずつ消えていっていたのだ。



リ)「…ミント。ミントー!!」



ミントを呼ぶリーナの声が震える。


毎日のように、この鏡の前に来ているが、リーナはなかなか行動を起こすことが出来ていなかった。


真実を聞くのが、怖かったからだ。



ミ)「リーナさん!!お久しぶりです!」

リ)「ミント!」

ミ)「どうされました?今日も、願い事ですか?」

リ)「違うの…。うち、レイン達が心配で…。」


ミ)「王子たち…ですか?」


リ)「今、レイン達はどういう状況なの!?皆、無事なの!?」


ミ)「リーナさん、落ち着いてください。皆さん、ご無事ですよ。」


リ)「…!!良かったぁ。」




ミ)「今は…ですけどね。」




リ)「え…?」




ミ)「未来では、明日、城内に最強の敵が3名送り込まれると言っています。お三方とも、命の危機にさらされることでしょう。」


リ)「三人ともっ…!?」


ミ)「ええ。さらに、ピンチの時に王子の近くには誰もおりません。」


リ)「嘘でしょう!?」


ミ)「未来は、そう言っております。」







リ)「…レイン…。ミント、最後のお願いがあるの───。」
























レ)「…はぁっ、はぁっ…!!」




マリアが持っている、本から飛び出す数々の猛獣は、確実にレインの体力を奪っていた。マリアは、涼しい顔をして、本を片手に何かを唱え続ける。



マ)「防いでばかりでは、何も出来ませんね。」



あの本をどうにかしなければ、状況は1つも変わらない…!!


レインは、猛獣と戦いながらも、マリアの口の動きに注目をしていた。口の動きから、何を言っているのかを推測し、そのまま、猛獣を倒した瞬間にマリアの元へ駆け寄る。


マリアは、再び何かを唱え始めるが、レインはそれを阻止するために、短剣を投げつける。


マユは、驚き、唱えることを止め、短剣を慌てて交わした。


その隙に、マリアの近くへ行くと、




レ)「─────────!!」




と、大きな声で唱えた。


マ)「嘘でしょっ…!?」


明らかに動揺した様子の、マリア。


本から現れた猛獣は、レインではなく、マリアに向かって攻撃を始めた。



マ)「ふざけないでっ!!私は、あなた達の主よ!?分からないのっ!?」



マリアの声は届く筈もなく、猛獣はマリアを襲い続ける。




マ)「キャアッ!?」




マリアは、足を滑らせその場に座り込む。猛獣の大きな手が振りかざされる。マリアがギュッと目を瞑ったその時だった──。



ズシャッ!!



目の前で猛獣達が弾け飛んだ。マリアは、恐る恐る目を開ける。目の前には、レインが立っていた。



レ)「…ふぅ。危ない危ない。」



レインは、そう言いながら剣をしまう。


マ)「…どうしてっ…!?」

レ)「いやぁ、誰かが死ぬの嫌だからね。」

レインはそう言いながら、ニコッと笑う。



マ)「…余計なことしないで。」



レ)「…え?」


マ)「…助けてなんて言ってない。ましてや、敵に助けを乞うことなんて無い…。知らないの?お人好しはね、いつか損をするのよっ!!」


そう言った瞬間、マリアは本を破り捨て、そして、その中の一枚を口に放り込んだ。

レインは、ただならぬ気配に、再び剣を抜き、一度距離を取る。



静かに、目を瞑っていたマリアだが、次の瞬間目が真っ赤に光り、そのまま、レインに向かって飛び込んできた。


武器も持たずにか…!?



レインは、驚きながらも、片手で受け身を取る。


しかし、次の瞬間、その手から、鮮血が飛び出した。



レ)「──!?」




よく見ると、マリアの体は鋼鉄で出来ており、腕は鋭く尖っていた。

つまり、自分自身が武器になっているのだ。


レインは、片手で剣を操りながら、防ぐことしか出来なかった。


マリアは狂気に満ちた目で、レインに向かってくるばかり。クソッ…!やっぱり、僕は甘いんだ…!!


マリアはニヤリと笑うと、思いきり腕を振り切り、レインを壁に叩きつけた。




レ)「ガハッ!!」




叩きつけられた、レインの体からは、たくさんの血が流れ出てくる。

意識が、朦朧としてきて、立つこともままならない。



僕は、死ぬのか?こんなところで…?



自分に問いかけるが、答えは出ない。



マリアは、ニヤリと笑って、短剣を用意する。


レインは、必死で立とうとするが、武器を持つ手にも力が入らない。




クソッ…約束したのにっ…!!




約束したんだっ…!!生きて帰るって…!!




リーナに会って、伝えることだって…!!




レインは、悔しさから涙をこぼしていた。



こんなところで死ぬわけにはいかないのに…。


体が、言うことを聞いてくれない。




マ)「…フフフッ。王子様の命…いただきますっ!!」




マリアが叫んで、短剣をこちらに投げつける。



ブシュウウウッ!!!!と鮮血が飛び散る。



レインは、ガタガタと震えていた。


自分自身には痛みの1つもない。






目の前にいるのは…誰だっ…!?






レインは、フラフラッと倒れるその人物を抱き締めた。




レ)「──!?」




その顔を見て、やっと気がついた。




レ)「どうしてっ…君がっ…!?」




レインは震える手で、その少女を抱き締めた。


「…レインっ…?ああっ…レインだっ…!」


苦しそうな呼吸で、そう呟くのはリーナだった。


レ)「リーナっ!!どうしてっ!?どうして、こんなことにっ!?」


リーナは、レインの顔に手を伸ばし、レインの涙を拭った。しかし、リーナの手だけで拭いきれず、リーナの顔に涙がポタポタっと落ちる。


リ)「…レインっ…うちね、ずっと心配だったよ?レインは、無事だろうか…?って。」


レ)「リーナ。リーナ、もう良い。」


リ)「レインっ…泣かないで?うち、今幸せだよ?こうして、レインに会うことが出来てっ…レインを守ってっ…レインに抱き締められてっ…レインの側にいてっ…レインっ…ずっと、ずっと会いたかった…!!」


リーナの瞳からも、涙が溢れる。


その涙は、とても美しく、そして、とても儚い。


レ)「僕だってッ…ずっとッ…!!」


リ)「…こうして会えたらねっ…伝えたいことがあったんだよっ…?聞いてくれる…?」


レ)「…伝えたいこと…?」


リ)「うんっ…うちねっ…ずっと、ずっと、レインの事がっ…好きだった。…ううん。今も好きだよっ…?」




レ)「──!?」




リ)「…レインはっ…?レインはっ…うちの事っ…好き?」



その言葉に、レインの目から更に涙が溢れる。リーナの事が見えないくらいに、涙で視界がにじむ。


レ)「…もちろんっ、好きだっ!!僕だって、ずっと伝えたかった!!」


リ)「そっかぁ…。良かったぁ…。じゃあ、私たち、両思いだったんだねっ?…幸せだよ?レインっ…。」


レ)「リーナっ!!僕だってッ…幸せだッ!!」


リ)「…レイン、これからも、私の好きなレインでいて?レインの事っ…ずっと…思って…る…から。」



そう言って、リーナは目を閉じた。急激に重くなる体。





レ)「リーナ…?嘘だろっ?リーナ!?リーナ!?」






いくら呼んでも、肩を揺すっても、目を覚まさないリーナ。

しかし、その顔は実に幸せそうだった。



レインは、震える唇を噛み締め、リーナを静かに床に寝かせると、真っ直ぐにマリアを睨んだ。




レ)「…許さない。お前だけは、許さねぇ。」




ただならぬ雰囲気に、マリアは一瞬怯んだ。


その瞬間、レインは、もう目の前に来ており、受け身の体勢を取る間もなく、壁に叩きつけられた。


鋼鉄の体にヒビが入り、マリアの本体が現れる。


レインは、マリアを掴むと、その鋼鉄を引き剥がし、そのまま胸元を剣で貫く。



マ)「ウグッ!!」



鮮血が飛び散り、返り血を浴びることも気にせずに、レインは再び剣を引き抜くと、違う場所にまた差し込む。


ブシュッ!!ブシュッ!!と、血管が切れる音が鳴り響く。



マ)「ガッ…!!ハアッ!!」



レインの目は、狂気に満ちており、ただ、マリアを差し続けた。


その時──



グイッ!


誰かに腕を引っ張られ、後ろを睨む。


そこには、グミナとネラが立っていた。


その二人を見た瞬間、レインの腕から力が抜ける。

そして、その場に座り込んだ。



グ)「…王子、間に合わず申し訳ございません。」



レ)「…いや、お前達は悪くない…。悪いのは、弱い僕だ。」



レインは、血で真っ赤になった手を見て、泣き崩れた。





リーナ…僕は、結局最後まで君に救われてばかりだった。


僕はっ…君に生かされたっ…!!



静かに眠るリーナを見て、レインは声をあげて泣き続けた。



グミナと、ネラも静かに涙を流していた。








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