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魔法の鏡  作者: 瑠音
14/17

戦いの始まり

ここから流血表現が続きます。

苦手な方はご注意ください。






グ)「良い?城に侵入させないように、部隊を多数に分けて。向こうのトップグループは、かなりのやり手。無理だと思ったら、倒そうとはせずに、時間稼ぎを頑張って欲しいの。そうすれば、援護に入れる可能性も出てくるはずだから。…それじゃあ、健闘を祈る。」




『おおおおおおおおおおおお!!!!』




全員で気合いを入れ、それぞれの位置につき、戦闘体勢に入る。



生きる。生きる。生きる。生きる───。



僕たちは、私たちは、あの人のために、自分のために生きるんだ!!












ル)「リーナ?どうしたの?ボーッとしてるけど。」

リ)「へ?あ、いや、何でもないよ!」

カ)「ずいぶんボーッとしてるってことは、あの王子の事でも考えてたのか?」

リ)「ちっ、ちちちち、違うよ!!!!」

ガ)「分かりやすいな。」

リ)「もおー!!いじめないでよー!!」


日本ではね穏やかな時間が流れているというのに、ブリランテ国では戦争が行われている。

同じ時間に、多くの人が亡くなっていく。

恐ろしい事だ。

レインたちは、本当に無事で帰ってくるのだろうか。リーナにはそれが気になって、仕方が無かった。












戦争が始まって、1ヶ月が過ぎた。


ブリランテ国は劣性で、少しずつ敵の軍は城に近づいてきている。


グ)「…城に侵入されるのは時間の問題かもしれませんね。王子。」

レ)「…そのようだな。」

ネ)「…不安な日々が続きますね。」

グ)「…城の中が静かなのが、逆に恐怖を増しますよね。」


レ)「…大丈夫だ。今までだって、乗り越えてきた。また、3人で何とかするぞ。」


グ&ネ)「承知!!」






それから1週間後、レインたちが考えていたように、城に敵軍が侵入してきた。


グミナとネラは異様な緊張感を肌に感じながら、レインの側で剣を構える。


レ)「…グミナ、ネラ。もしもの時は頼んだ。」


グ)「…王子、もしもなんてありませんよ。」


ネ)「…必ず、生きましょう!」





その時、ドオオオオン!!と、頑丈な扉が蹴破られる。そこには、3人の敵が立っていた。



「へぇー?噂には聞いてたけど、本当に優秀な部下は二人だけなんだー?」


金髪の長い髪の毛に、つり上がった瞳。高い身長に、スタイルの良さから強さが伺える。話し方からも、強気が伝わってくる。



「あの真ん中の人が王子?」



淡々と話す少し小さめの女。白くフワッとした髪の毛で、前髪は切り揃えられている。ミステリアスな雰囲気が、隠しきれていない。



「この勝負、もらったな。」



そう言ってニヤッと笑ったのが、その中でも一番幼いレインと年の変わらない位の少年。



それぞれが、一斉に斬りかかってくる。



ドオオオオオオオン!!と音が響き渡り、次の瞬間、グミナとネラはハッとする。



グ)「王子!!王子はどこ!?」



グミナが王子を探しているところに、勢いよく人影が飛んでくる。




グ)「──!?」




キイイイイイン!!!!



金属音が耳に痛いほど響き渡る。



「王子の心配より、自分の心配したらどう?」



長い髪を掻き分けて、ニヤリと笑う女。


グ)「チッ…。やられた。」


「見たところ、アンタが強そうね?名前は?」


グ)「…グミナ。あなたは?」


「アタシはリリィ。アンタを殺す女の名よ。」














ネ)「王子!!クソッ、誰かいないの!?」



「いるよ。ここにねッ!!!!!」



体ごと飛び込んでくる、少年。こんな小さい子供まで戦争に出るの…!?



「小さいからって、なめない方が良いよ?すぐに君を殺して、王子も仕留めに行くから。」



ネ)「そんなことさせない!!」


ネラの短剣を、ヒラリヒラリとかわす少年。


コイツっ…強いっ…!!!!


「アハハッ!5分でいけるかな?僕の名前は、ショウ。まぁ、言った所ですぐに分からなくなるけどねッ!!」




ショウに、蹴りを入れられ、ネラの体は吹っ飛ぶ。















レ)「…作戦勝ちだな。うまく、バラバラにされてしまったようだ。」



「戦力は分散させといて、悪いことは無いの。早いところ、お命頂戴します。王子。」



レ)「…僕も、そう簡単にやられる訳にはいかない。名前を聞いておこう。」



「マリア。以後、お見知りおきを。」



レ)「マリアか。覚えておこう。」



















ヒュン! タタタッ! キィン! ズザーッ!

ダァン! ビュビュン!! ガキンッ!


絶え間なく音が飛び交う、城の大広間。

階段や、壁、置物を上手く使い、自由に室内を駆け回る。



リ)「アハハッ!アハハハハッ!良いよ!良いよっ!!アンタ、やりがいがあるよ!!アハハハハッ!!」



狂ったような笑い声に構わず、絶えず動き続ける。


リリィは、笑いながらも、正確にグミナを狙って、弓を放ち続ける。


やはり、かなりのやり手か。


グミナは攻撃を交わしつつ、走り回りながらも、とにかく、隙を伺っていた。ある一点に絞って、一気に仕留めるしかない。


リリィが、弓袋に片手を差し込んだ瞬間、グミナは一気にリリィに向かって飛び込んだ。



ギイインッ!!



鈍い、金属音が響き、グミナは思いきりリリィの武器を弾き飛ばす。

リリィは目を見開き、顔を歪めた。グミナは、躊躇うことなく、そのまま剣を降り下ろす。



キイイイイインッ!!



再び、高い金属音が響き渡る。


何だ…!?手応えが全くない…!?


リリィは、舌なめずりをすると、ニヤリと笑みを浮かべる。リリィの手には、いつの間にか剣が握られていた。



リ)「今のは、ちょーっと焦ったよ。」



そして、さっきまで弓袋に差し込んでいた手を、グミナに向かって振り上げる。


ブシュッ!!と、鮮血が飛び散った。


グミナは、驚きひとまず距離を取った。


急いで、状況を確認する。



グミナの横腹からは、大量の血が溢れ出している。それは、仕方がない。


リリィを見ると、両手に剣が握られていた。


あの、弓袋はおとり…!?




リ)「…アハハッ!アハハハハッ!!グミナ。覚えたよ!アンタの名前!きっと、忘れられない戦いになるよ!!アハハッ!アハハハハッ!!」




グ)「…私も、きっと忘れない。あなたのこと。」


リリィは、顔に付着した血を舌で舐めとると、真顔になる。



リ)「アタシに剣を使わせるのは、アンタが初めてだよ。褒めてあげる。」


グ)「…それは、どうも。」


リ)「…流血してんのに、随分と冷静だね?もっと、驚いて泣き叫べば良いじゃない。」


グ)「あいにく感情表現が苦手なもので。」




リ)「チッ…。好かない奴。やっぱり、一気に片付けちゃっても良いかなぁ?良いよねぇっ!?」




リリィは、完全に瞳孔が開いた状態で、グミナの胸元向かって飛び込んでくる。



ガキンッ! キィンッ! ジャキンッ!



圧倒的な、剣さばきにグミナは防ぐことしか出来ない。

重たい剣を受け止める事で、傷口が開き、鮮血が飛び出していく。


これはッ…長期戦にするとヤバイかもしれない…!!




リ)「苦しそうねぇっ!?苦しいよねぇっ!?その顔が見たかったのぉっ!!アハハッ!!アハハハッ!!」




その笑いに恐怖を覚えたその瞬間、グミナの手に握力が無くなり、剣を弾き飛ばされてしまった。


グミナがハッとした時には、壁に蹴り飛ばされ、そのまま顔の横に、剣が突き刺さる。


グミナは完全に身動きが取れなくなった。その姿を見てリリィはニタァと笑みを浮かべる。





リ)「アハハッ!アハハハハッ!!これで、チェックメイト!!王子の首は、アタシが貰ったぁぁぁッ!!」





グミナが、ギュッと目を瞑った瞬間──



キイイイン!!



その音に、恐る恐る目を開けると、リリィの手から剣が無くなっていた。


リリィは、状況が飲み込めないようで、目を見開いている。


気づけば、グミのそばに刺さっていた剣も無くなっていた。




そして、自分の目の前に立っている人物を見て固まる。


見覚えのある、綺麗な黒髪。


見覚えのない、スラッとした体。


ゆっくりと、こちらを振り返る、その人物に、グミナの目に涙が浮かんだ。





エ)「…ネラのお願いで、助けに参りました、姫。」




グ)「…遅い。」


エ)「仕方ないじゃん。それぞれ危ない状況で、どこに行こうか迷ってたんだから。」

グ)「…でも、どっちにしろ私の所に来てたでしょ?」

エ)「…うーん…まぁ、それは否定しない。」

グ)「フフッ…!エイト。ありがとう。」

エ)「お礼は、全部が終わってからにしなよ。」



グミナは、フラフラする足で、エイトの隣に立つと、リリィに向かって剣先を向けた。



リ)「…おかしいッ!!この城には、3人しか残っていなかった筈…!!」


グ)「…ごめんなさいね。隠し玉って事でよろしく。」


リ)「…チッ…!」


リリィは残っている短剣を引き抜く。

それを見た瞬間に、グミナはリリィの元に走り出した。

一対一の対決なら、負ける気がしない。

さらに、短剣であれば、グミナにとっては朝飯前だ。


素早く隙をつき、短剣を弾き飛ばすと、そのまま、胸元に剣先を突き刺した。



ブシュウウウッ!!!!!と、血が飛び散る。



リ)「…ガッ、ハアッ!!!」


グ)「…はあっ、はあっ…!!」


リ)「アタシがッ…!負ける、筈がッ…!!」


グ)「…王子の命を狙う者はっ…誰一人として生かしておく訳にはいかないっ!!」



リ)「…クッ…クッソオオオオオオオッ!!!!」



リリィはそう叫ぶと、その場に倒れ込んだ。


グミナも、返り血を、手の甲で拭うと、後ろに向かって倒れる。


しかし、床に倒れる事はなく、エイトによって支えられる。




エ)「グミナ、お疲れさま。」


グ)「エイト…。」


エ)「…本当に無事で良かったよ。」



エイトは、グミナの血を指で拭いながら、優しく笑う。



グ)「…不思議ね。今までは、小さい姿ばかり見てきてたから、エイトってこんなにも大人っぽいなんて知らなかった。」

エ)「アハハッ!残念ながら、グミナと同い年だよ。」

グ)「え…!?知らなかった!」

エ)「言ってなかったもん。」

グ)「…そっかー。同い年かー。」

エ)「身長は、グミナよりもすごい高いけどね。」

グ)「本当にね!分けてほしいくらい。」


エ)「ハハッ!惚れ直した?」


グ)「うーん…少しだけ?」


エ)「本当に、素直じゃないよねー?」


グ)「エイトのせいよ?」


エ)「うーん、否定出来ないなー。」




エイトは、グミナの傷口に触れると、何かを囁く。



すると、傷口が光に包まれて、塞がっていく。



グ)「──!?これっ…!!」


エ)「痛そうだったから。これは、俺からのサービスって事で。」


グ)「良いの?依頼者とここまで、深く関わって…?」


エ)「覚悟はしてるよ。でも、後悔はしてない。」



グ)「…エイトっ…。」





エ)「…あの、さ。違反ついでに、抱き締めても良い?」


グ)「…え?」


エ)「…嫌なら良いけど。」


グ)「…私が断ると思う?」


エ)「…残念ながら思わないよ。」




エイトは、優しく笑うと、壊れ物を抱くように、グミナを抱き締めた。





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