それぞれの夜
『王子はどこ!?』
『誰かいないの!?』
『生きなきゃダメなの!!』
『約束したんだ!』
『ねえ、お願い!!』
『願いを叶えてください───』
ネ)「…他国が攻めてきてる…!?」
グ)「ブリランテ国を、支配下に置こうとしているみたいです。」
レ)「…話し合いにも応じず、ひたすら武力で攻め込んできている。」
ネ)「…こうなってしまっては、私たちも戦うしかありません。」
グ)「…王子、よろしいでしょうか?」
レ)「…戦争は嫌いだ。何も得るものが無い。でも、何もしない訳にはいかない…。戦闘員を集めてくれ。僕たちも共に戦おう。」
グ&ネ)「かしこまりました。」
リーナは、今回も一人で鏡の前に来ていた。
向こうの鏡の前にも、レインしかいない。
リ)「レイン、元気にしてる?」
レ)「ああ。リーナは元気か?」
リ)「うん!楽しく過ごしてるよ!!」
レ)「そうか、それなら良かった。」
レインの暗い表情に、リーナは不安になる。
リ)「レイ──」
レ)「──しばらくは会えない。」
リ)「え…?」
レ)「…戦争が始まるんだ。僕自身も、戦闘員として戦うことにした。」
リ)「戦争…!?」
レ)「いつかは、起こると思っていたが、思っていたよりも早くてな…。もう少し、リーナたちと話していたかったのだが、そうも行かないみたいだ。」
リ)「レイン…?」
レ)「今まで、本当に楽しかった。たくさん話が出来て、この鏡のお陰だ。」
リ)「ねえ、レイン…?」
レ)「あ、そういえば、ボランティアのお礼をきちんと言っていなかったな!本当にありがとう。感謝している。あの食材のお陰で───」
リ)「───レイン!!ちゃんと、うちを見てよ!!」
リーナの叫び声にレインはハッとする。
リ)「何か、もう一生会えないみたいな言い方してるけど、うちは許さないから。」
レ)「…リーナっ…?」
リ)「もう、誰かが死ぬのは嫌だよ…。」
レ)「・・・・。」
二人の間に沈黙が流れる。
レ)「…分かった。じゃあ、約束しよう。」
リ)「…約束?」
レ)「もしも、僕が無事に帰ってこれた時には、僕の願いを聞いてほしい。」
リ)「レインの…願い…。」
レ)「今は、まだ言えない。でも、帰ってきたら必ず言うから。だから、待ってて欲しい。」
リ)「…レイン…。」
レ)「…これならどうかな?」
レインは照れ臭そうに下を向いている。
リ)「…フフッ!良いよ!待ってる!!ずーっと、待ってるね!!」
レ)「うん。分かった!」
リ)「…だから、必ず生きて帰ってきてね。」
リーナの真剣な目に、レインは深く頷いた。
リ)「それじゃあ…行ってらっしゃい。」
レ)「…行ってきます。」
二人で挨拶をした瞬間、映像は途切れた。
リーナとレインは、それぞれ一息吐き、部屋を出て行った。
レインが部屋を出て行ったのを確認したネラは、レインの部屋に入った。
ネ)「…ミント。出てきて。」
ミ)「ネラさん、お久しぶりですね!」
ネ)「久しぶり!今日は、1つお願いがあってね。」
ミ)「珍しいですね。ネラさんからお願いをされるなんて…?」
ネ)「戦争に入れば、自分の命の保障もないから。」
ミ)「…そうですよね。」
ネ)「…だから、お願いがあるの。もしも、この戦争で王子やグミナに、命に関わる危険があった時、助けてあげて欲しいの。」
ミ)「…ご自分は…よろしいのですか?」
ネ)「私なら大丈夫。どんな危険でも、乗り越えてみせるし、それに、あのお二方がいたから今まで生きてこられたし。」
ミ)「そういえば、ネラさんはお二人に拾われたとか?」
ネ)「知ってるのね?両親も兄弟も亡くして、途方に暮れていた所を、王子が助けてくださった。そして、そんな私の教育をしてくれたのがグミナ。敬語は嫌いだからって、今までタメ口で話して来たけど、ずっと尊敬してた。私にとっての、幸せは、お二方の幸せなの。だから、お二方には生きていて欲しい。」
ミ)「かしこまりました。それでは、どうかご無事でいらしてください。」
ネ)「ありがとう。ミント。」
「──ちょーっと、待ってくれる?」
ネ)「…!?」
王子の部屋の入り口には、グミナが立っていた。
ミ)「グミナさん!!」
グ)「…カッコつけて、一人だけそんなことするんじゃないの。私からもお願いして良いかな?」
ミ)「え、ええ!もちろんです!」
グ)「…もし、この馬鹿ネラが死にそうになったら、私をその場所に飛ばしてくれる?」
ネ)「グミナっ…!!」
グ)「ネラを守るのは、私の役目だからね。ネラ、私ねネラの親に頼まれたてたの。もしもの事があった時には、ネラを助けて欲しいって。だから、アンタが死んだら、私も親に合わせる顔が無いっての。」
ネ)「…し、知らなかった…!」
グ)「そうねー。今まで言ってなかったもの。てか、ネラは簡単に殺させやしないから。」
ネラの目に涙がたまっていく。
グ)「ちょ、ちょっ、泣かないでよ!?」
ネ)「…ありがとうございますっ…!!」
グ)「…はぁ。良い?皆で帰ってくるの。分かった?」
ネ)「はいっ!!」
「──そうだねー。帰ってきてくれないと困るよね。」
グ)「…あのー、呼んでないんだけど?」
ミントの隣には、いつの間にかエイトがいた。
エ)「この後、どうせ呼ぶつもりだったでしょ?」
グ)「へぇー?昨日に比べて、ずいぶん余裕ね?」
エ)「・・・・。」
ミ)「エイトが…弱い。」
エ)「うるさい。」
グ)「でも、ちょうど良かった!最後に挨拶はしておこうと思ってたの。」
エ)「…うん。」
グ)「…また、エイトの皮肉が聞けるように期待してるから。」
エ)「ハッ!皮肉は余計だから。」
グ)「フッ。じゃあ、行ってきまーす!」
ネ)「行ってきます!!」
ミ&エ)「行ってらっしゃい。どうかご無事で。」
こうして、長い長い戦争が幕を開けることになった。




