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魔法の鏡  作者: 瑠音
11/17

繰り返し




───速報です!先ほど入りましたニュースによりますと、先ほど午後1時38分頃───」












午後1時頃…

リ)「ねえねえ、この本で良いかな~??」

ル)「…猿でも分かる、幼児教育…。ブフッ!!!!」

リ)「ちょっとおおお!バカにしたでしょ!!」

ル)「もちろん、するわよ!」


今、リーナとルルは、週末の課題の為に市営の図書館に来ていた。今、大学自体は夏休みに入っているが、幼児教育学科は、補講期間にある。


リ)「いいなー!カイルとガイは、もう実家でしょー?羨ましいよー!」

ル)「私たちも一週間もすれば、実家に帰れるわよ。」

リ)「それに、カイルたち車で迎えに来てくれるんでしょ?やったねー!!」

ル)「地元が一緒だと、こーいうことが出来るから良いわよねー。電車代が浮くわ。」



二人は、それぞれ本を選ぶと図書館を後にした。

ル)「せっかくだから、何か食べて帰る?」

リ)「お、良いねー!!」









午後1時15分頃…

リ)「キャー!!すっごい美味しそう!!」

ル)「やっぱり、たまには外食もいいわねー!」

リ)「写真撮らなきゃ!」

リーナは、楽しそうにカバンを漁る。

リ)「あ、カイルたちに自慢してやろー♪」

ル)「アハハ!果たしてどんな反応を返してくるか。」

リ)「ランチなう…と!」

ル)「ほら、冷めない内に早く食べちゃうわよ?」

リ)「はーい!いただきまーす!!」









午後1時35分頃…

リ)「あー!返ってきた~!!」


ご飯も食べ終わった頃、カイルから連絡が返ってきた事に喜ぶリーナ。


ル)「何って?」

リ)「"よぉござんすなぁ"って♪」

ル)「相変わらずの適当さね。」

リ)「これは、スタンプ爆裂するしかないっしょ!!」

ル)「絶対に怒られるわよ?」

リ)「カイルは怒ってるときが一番イキイキしてるもんねー♪」

ル)「あなた、意外と性格悪いわよね。」


リーナは楽しそうに、スマホをタップしまくる。


すると、カイルから連絡が届く。


リ)「ハハハッ!!"やめろ!充電が無くなる!"だってさー♪」

ル)「そうよね。意外と充電減りやすいからね。」


リーナは、構わずにスタンプを送り続ける。


リ)「あ、カイル怒っちゃうかも!!」

ル)「え、今さら?」

リ)「"やめろ!返信すらしねぇぞ!"って。」

ル)「あーあ、迎えに来てくれなくなるわよー?」

リ)「えっ!?それは、困る!!」


リーナは、謝罪の言葉を述べる。と、その時───




ゴゴゴゴゴ…ガタタンッ!!!




リ&ル)「──!?」



突然の揺れに二人は、机をつかんで固まる。


ル)「…驚いたわね。一瞬だったけど…。」

リ)「…う、うん…。」

ル)「今のどれくらいの揺れだったのかしら?」

リ)「また、速報で出るでしょ!」

ル)「カイルたちは大丈夫かしらね?」

リ)「聞いてみよー!怒って返してくれないかもしれないけどねー。」

ル)「そうなったら自業自得ね。」

リ)「カイルなら返してくれるもん!何だかんだで、優しいからねー♪」

ル)「さてと、早く帰っちゃいましょう?」

リ)「はーい!ここは、ルルの奢りかな?」

ル)「ちょっと!?」


二人は、楽しそうにお店を去っていく。








午後2時頃…

リ)「ただいま~!ふぁー…眠いなぁ。てか、カイル連絡返してくれないし!!」

ル)「やっぱり、怒っちゃってるのね。」

リ)「うわああああ!!どうしよー!!!」

ル)「あなた、本当にバカねー。」


ルルは呆れながら、テレビをつける。




『先ほどからお伝えしております、地震についてのニュースです。』




ル)「あら、やっぱり出て・・・。」


ルルがテレビ画面を見て固まっているのをよそに、リーナはスマホとにらめっこをしている。



リ)「あーあー…どうしようかな~?何って送れば、許してくれるのかなぁ?」


ル)「…リーナ。」


リ)「ルル~!やっぱり、ここは電話かなぁ?」


ル)「ねえ、リーナ。」


リ)「でも、電話は怖いんだよな~!」



ル)「リーナってば!!!!!」



ルルの叫び声で、リーナはやっとルルの方を向く。


リ)「…ルル?どうしたの?」


ルルは、テレビの画面から目を離そうとしない。リーナも、恐る恐る画面を覗き込む。


リ)「…え?」


『──なお、震源は瀬戸内海で、香川県、愛媛県北部、岡山県南部、広島県南部、ともに震度6強。この地震による津波も心配されており───』


ル)「ねえ、カイルに連絡してくれる?」


リ)「嘘だ…。」


ル)「私はガイに連絡するから。」


リ)「どうして香川県が…?」



ル)「リーナ!!話を聞きなさい!!」



リーナは、目に涙を浮かべ、ルルの方を向く。


ル)「良いわね?もし、連絡がつかなくても、無駄な心配をしちゃダメよ?ただ、電波が繋がらないだけってこともある筈だから。とりあえず、取り乱さないこと。約束できる?」


リ)「…わ、分かった…。」


リーナたちの、地元は香川県だ。今は大阪に住んでいるリーナたちだが、カイルたちは一足先に地元に帰っている。そこで、大地震が起こっている。もしかすると、カイルは怒って返さないのではなく、何かに巻き込まれているのかもしれない…。そう考えると、気が気でなかった。リーナは、震える手で通話ボタンを押す。






プルルルル、プルルルル、プルルルル、プルルルル…




4コールしたが、出る気配は無い。




リーナが、焦っていたその時───



ル)「あ、ガイ!?」


ルルが声をあげた。ガイは、繋がったみたいだ。


ル)「そう、無事なのね?…ええ。ちなみに、カイルは一緒なの?…そう。分かったわ。ありがとう。」


リーナがボーッとしている間に二人の電話は終わってしまっていた。気づけば、カイルとの電話は留守番電話サービスに繋がっていた。


リーナは静かに電話を切る。


リ)「ガイは、どうだったの?」

ル)「ちょうど、広い場所にいたみたいで何の被害もなかったみたい。」

リ)「良かった…。カイルは?」

ル)「…一緒にはいないらしいわ。でも、確か今日はコンサートに行くとかで…。」

リ)「コンサート…!?」

ル)「ええ。何度も電話をかけてるらしいんだけど、繋がらないらしいの。」


それから、電話をかけ続けたがカイルが出ることは無かった。テレビでも、少しずつ様子を伝え始め、特に香川県の被害は著しいらしい。家が全壊しているところも多く、死者も何百人にものぼる。


自分の親たちは、無事だったが、今は地元の体育館で避難生活を送っているらしい。日本全国の自衛隊や消防隊が一斉に中国四国地方に集まり、救助活動を行っているという。


ル)「…当分は、香川には帰れないわね。」


リ)「…え?」


ル)「交通機関も麻痺してるみたいだし、それに二次災害の恐れもあるわ。」

リ)「…そうだよね…。」

ル)「…カイルなら大丈夫よ!あのカイルが簡単に死ぬはずないわ。」

リ)「…うん。そうだよね…。」


ル)「そうよ!だから───



プルルルル、プルルルル



その時ルカの携帯が鳴り響いた。


ル)「ガイだわ?」


ルルは、恐る恐る携帯を耳に当てる。


ル)「もしもし、ガイ?」


ガ)『ルル!!落ち着いて聞いてくれ!!カイルが─』


その言葉にルルは固まる。


リーナも嫌な予感を隠しきれていなかった。


ル)「そう、救助はされたのね。良かった。」


リ)「救助は…?」


ル)「ええ。ありがとう。また、そっちに向かうわ。」


プツッと電話を切り、落ち着いた様子でリーナの方を向いた。



ル)「コンサート会場で、下敷きになっていた所を、救助されたらしいわ。…もう、亡くなってはいるらしいけど。」



リ)「──!?」



ル)「…また、会いに行きましょう?きちんと、お別れを言いに。」


リ)「…嘘だよ。嘘。こんなの嘘だ。」


ル)「リーナ。」


リ)「うちは信じない。こんなの、きっと悪い夢だよ。そうだよね?」


ル)「リーナ、話を──」




リ)「──触らないでよ!!!!」




リーナは、ルルの伸ばしてきた手を振り払う。

ルカは怒るわけでもなく、リーナを見つめた。



リ)「…嘘だよっ…嘘だっ…カイルっ…カイルっ…カイルーーーーーー!!!!」



リーナが泣き叫ぶ中、ルルもその場で下唇を噛み、静かに涙を流した。きっと、悪い夢だ。早く覚めてくれ。そう祈っても覚めない夢に、私たちは抗うことなんて出来なかった。














それから、1か月後、初めて香川県に帰ることが出来た。酷い状態で、自分の家も跡形も無くなっていた。


私たちの安らぎの場所はどこに消えたのだろう?


久しぶりにカイルの親に会い、仏壇の前で手を合わせる。まだ、受け入れられない事実。


すると、カイルの親は、リーナにカイルの携帯を渡してくれた。あの日で止まった、記録。リーナからの電話や、色んな人からの連絡が入っている。そして、リーナとのトーク画面を開きリーナは固まった。


リーナのスタンプ爆裂、その後の謝罪、心配の連絡。


その前に、カイルから送信されていない、"俺を怒らせたら怖いぞ~?(笑)"という、冗談めいた文。


あと、送信を押すだけで、リーナに届いていた。


その言葉は、この携帯の中でずっと止まっていた。


リーナは、溢れる涙を押さえることが出来ず、その場に崩れて泣き続けた。


カイル、カイル、カイル───!!!



その日の内に、大阪に帰らなければならないということで、リーナたちは急いで大阪に帰った。

当たり前だが、そこにカイルはいない。



リーナは夜中になり、静かに自分の部屋を出ると、奥の部屋へと向かった。


リ)「…ミント。」


久しぶりにミントを呼んだ気がする。


ミ)「…リーナさん、とても痩せられましたね?」


リ)「…そうだね。」


いつものリーナとは違う様子にミントも黙っていた。


リ)「…ミント、お願いだから私を止めないでね?」

ミ)「…ええ、分かりました。」

リ)「…お願いがあるの。カイルを…私たちの故郷を返してほしい。…あの日の地震を、無かった事にして欲しいの。」


ミ)「…分かりました。その願いは、とても大きいですが後悔はされませんか?」


リ)「…しないよ。幸せが戻ってくるのなら…。」


ミ)「…かしこまりました。それでは、目を閉じてください。3、2、1───」






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