五話
見直しをしてないので誤字など多数あると思います。
また後日修正します。
森の奥に建てられた空き家から転移した二人は城の中、それも敵地のど真ん中である謁見の間へと直接転移していた。
十六夜とルイナスの視界に映るのは驚愕の表情を浮かべた国を動かす家臣達の姿。他に近衛兵の姿も見えるが皆同様に突然現れた二人に驚き、本来の役目を忘れて呆然と口を開けているだけだ。その間抜けっぷりに十六夜は苦笑するが、その事に口を挟む事はない。
あまりの驚きに言葉を失う国の家臣達を他所に十六夜は一歩前へと足を踏み出し、手に持つ聖剣を国王へと向けた。
「久しぶりだな。レイオール王」
玉座の上に居座る壮年の男性に向け、十六夜はそう口を開く。
彼の名前はレイオール・シュタルツ・ヴィ・ルーファス四世。このルーファス王国を統治する国の頂点に座する男だ。顎に濃い髭を生やし、右目には縦に傷が入っている。年は四十前後と言った所だが、その身に持つ雰囲気は王と言う事もあり、他の者にはない重圧感を放っている。
レイオールは王でありながらかつての異種族戦争において前線で戦い数多くの武功を上げた王として有名だ。その行動は王として褒められるものではないが、彼の活躍により異種族戦争での被害は激減されたと言われる程だ。
その戦争時には仲間が死ぬことを強く嫌い、数多くの兵士をその体で直接助けたと言う噂も広がり、民衆、引いては兵士から絶大な支持を得ている。当然戦以外の政治活動なども非常に優秀な面があり、戦争の影響で貧困気味になっていた国を立て直したのもレイオール王の手腕による所が大きい。
「生きていたのか……十六夜冥夜よ」
十六夜を見て冷静さを取り戻した王は冷酷な瞳を十六夜へと向ける。一方でレイオールの声により気を取り戻した臣下達は王を守るように十六夜達の前へと足を進めた。近衛兵も剣を構え、一歩前へと迷いなく足を踏み出す。自分達が対峙している十六夜と言う相手に敵わないと分かっている中で迷いなくそう動けるだけでもレイオールが深く敬愛されている事が分かる。
「俺も死んだと思ってたけどな……色々あって生きてた。まぁそんな事はどうでもいい。俺がここに来た理由は分かるだろ?」
視線をレイオールからルイナスの方へと切り替える。そんな十六夜の様子を見て意図を察したレイオールは目を細め、一瞬何かを考えた素振りを見せたた後に右手を緩慢な動作で上げた。すると玉座の後ろにあった扉が開き、中から一人の女性が歩みを進めてきた。
腰まで伸ばした金色の髪に少し吊り上がった瞳。そして鋭く尖った耳。彼女がエルフ王シールカの妹であるエールカに間違いないだろうと十六夜は判断する。双子とまではいかないが、すの姿はシールカと被るものがあり、彼女と短い期間だが過ごした事のある十六夜には直ぐに分かるものだった。
「初めまして勇者様。私の姉のお世話になったようで」
エールカの言葉にルイナス含め、十六夜は眉を潜めた。
「……まるで俺がシールカと会っている事を知ってる素振りだな?エルフの里に行った事は報告してない筈だが?」
当時から人と亜種族の仲が悪いと知らされていた十六夜はエルフの里での出来事を国の方へ連絡はしていなかった。当然エルフの方が人類に勇者が来たなど告げる事は考えにくい。つまり、エールカは何らかの手段で当時から十六夜達を監視していたと言う事になる。
精神魔法の事を含めるとそう言った処置をしていても何も可笑しくはないが、当時の自分達が誰一人も気付けていなかった、と言う事実に歯痒い思いを感じる。今更そんな思いを抱いた所で中かが変わる訳ではないのだが。
そんな十六夜の思いを察したのか、エールカは瞼を細め、感情の籠っていない冷酷な瞳を十六夜へと向けた。
「強すぎる力を持った貴方達を野放しにしておくと思っていたの?あなたのお仲間に付けた魔法陣も鎖の一つ。貴方達は最初から鎖を付けられた犬だった、て事よ」
「貴様ッ!!」
エールカの物言いにルイナスは言葉を荒げ腰に下げていた剣に手を掛けるが、十六夜が手でそれを制する。
十六夜としては、彼女の余裕のある態度が非常に気になるのだ。確かにルイナスに仕掛けられた魔法陣と言うアドバンテージはある。だが、それはこの場で最強の戦力を持っている十六夜の命を奪うものではない。例えルイナスを殺したとしても、十六夜がいる限りエールカ達の命も危ない状況には違いないのだ。なのに、彼女は圧倒的優位にいるかのように、余裕を持っている。その事が引っかかっていた。
「酷い言いようだな。最初から俺を殺すつもりだったのか?」
十六夜の問いにレイオールが口を開く。
「ああ。聖剣を持つ人間は確かに大きな力になる。だが魔法で縛る事が出来ない以上野放しにする事は出来ないのだ。過ぎた力は国を滅ぼす切っ掛けになる。その事を身を持って知っているからな」
聖剣に選ばれた勇者に与えられるスキルの一つに勇者の心、と言うものがある。効果は至ってシンプルで精神魔法と言った魔法の効果を完全に無効化にすると言ったもの。それがあったからこそ、十六夜はエールカに精神魔法を掛けられる事はなかった。
「身を持って知っている、か。そうだろうな…過去に召喚した勇者が自分達に牙を向けばそう言えるだろうな」
十六夜のその言葉にレイオールは眉を顰める。十六夜の言葉に怪訝な表情を示したのはルイナスだけであり、他のエールカや家臣に近衛兵の表情は何も変わっていない。その様子を見る限り、十六夜の口にした言葉の意味を把握しているのだろう。
「……貴様、知っていたのか。いや、知っていても何ら可笑しくはないか」
「俺も最初は半信半疑だったんだけどな、あんたらの反応を見て確信に至ったよ」
十六夜とレイオールの間で勝手に話が進む間、ルイナスは何を言っているのか理解が追い付かず十六夜へと視線を向ける。その視線に気づいた十六夜は小さくため息を零すと事の内容について語りだした。
「俺がこの世界に召喚される前に異種族戦争ってのがあったんだろ?その時にな、実は勇者がもう一人召喚されてたんだよ」
「なっ!?」
十六夜の口にした内容にルイナスは表情を驚きに染める。その反応も当然のものであり、ルイナスはそんな事実を聞いた事もなかった。
「知らないのは当然なんだけどな。亜種族を制圧する為に召喚した勇者が魔王となって逆に自分達に牙を向く。そんな話を国民に言える訳がない。だからこいつらは勇者の存在をなかった事にした」
「ま、待ってくれ。それじゃあ冥夜が倒したのは……先代勇者だと言うのか?」
「そうなるな。……そうだな、折角だからその証拠を見せてやるよ」
――エールカへの威嚇にもなるしな。
そう考えた十六夜は何も持っていない左手をまっすぐ正面に突き出す。すると小屋の中で見た黒い霧が左手の回りに漂い始め、その後に聖剣と似た濃密な魔力が謁見の間に満たされた。
あまりの魔力の濃さに耐性のない家臣達は苦しそうにうめき声を上げるが、十六夜はそれを無視し、それを取り出した。
左手が見えなくなる程の黒い霧に包まれた場所から何かを掴み、そのまま一気に引き抜くと、左手には黒と赤で彩られた禍々しい剣が握られていた。剣首から剣先にまで走る赤い線は血管のように脈打っており、まるで剣そのものが生きているかのような錯覚に陥る。
「聖剣アポカリプス、姿形はあんたらが知ってるものとは変わってると思うが、分かるだろ?」
ルイナスは当然の如くその剣を見ている為、その剣が本物だと理解出来ていた。これは勝てない、そう思わせる程に強力な力を秘めたその剣を見ただけでルイナスは気付かない内に体が恐怖心から震えている。しかし、恐怖心を煽られたのはルイナスだけではなく、家臣や近衛兵も剣から発せられる膨大な魔力に当てられ、カチカチと歯を鳴らす程に震えていた。
唯一平常心を保っているのは十六夜とレイオールの二人だけであり、エールカさえも余裕に満ち溢れていた表情が青白く染まっている。
「二つの聖剣を持つ勇者か…その力をどうするつもりだ?」
「そうだな…ここにいるあんたらを皆殺しにするなんてのはどうだ?」
「ほぅ…お前に出来るのか?」
十六夜はレイオールの問いに行動で示した。
左手に持った黒い聖剣を無造作に振るう。それだけで十六夜の足元からレイオールの玉座の真横に一直線に深い斬れ筋が出来上がった。家臣や近衛兵には当たっていないが、家臣の真横すれすれに切り込まれた切れ筋を見て家臣の一人が腰を抜かしている。
「私達が憎い、か。当然の話だろうな。だが私を殺すと言う事がどう言う事かは分かってるだろうに」
「そうだな。あんたとその家臣達が死ねば国は衰退の一筋を辿るだろうな。…まぁ今はそんな事はしないさ」
「今は、か…」
レイオールの呟きに言葉を返す事なく十六夜はそこで会話を終え、視線をレイオールからエールカの方へと向ける。この場に来たのはレイオールと話をする為ではない。エールカを捕らえる為にここに来ている。精神魔法に関しては既に対抗策を取っている為問題はないが、あまり時間を掛けないに越した事はない。
「エールカだったか。お前には俺と来てもらうぞ」
「…そう言われて大人しく付いていくと思っているの?」
「ああ、安心してくれ。そんな甘い考えは持っちゃいない。最悪お前の手足を切り落としてでも連れていくさ。生きてればいいだけだからな」
そう口にしながら腰を落とし二つの聖剣を構える十六夜の瞳に迷いはなかった。その様子から言葉に嘘はないと感じたエールカは寒気を覚えながらも、自身を奮い立たせるかのように一歩前に歩みを進めた。
確かにエールカ含めこの場に十六夜にかなう相手は誰もいない。寧ろ十六夜に真正面から戦いを挑み勝ちを掴み取る存在などいない事はエールカも理解している。だからこそ、彼女は最初から用意していた。十六夜の心を揺さぶる事の出来るものを。
「そんな事言っていいのかしら?あなたの大事な人は団長さんだけではないんじゃない?」
そう言うと同時にエールカか出てきた扉が再び開き、中から二人の人影が歩いてきた。一人は鎧を纏った近衛兵。そしてもう一人は見慣れた制服を着た十六夜のクラスメイトの一人だった。
「真帆…」
「め、冥夜?」
彼女の名前は駿河真帆。十六夜とは幼馴染の関係にある。異世界から元の世界に帰り、性格が変わってしまった事を一件に二人の間には深い溝が出来てしまったが、クラスメイトで唯一大切な存在と言える彼女を前に十六夜は体を固まらせる。
そんな十六夜の劇的な反応を見てエールカは冷徹な笑みを浮かべる。あの騒ぎの後、すぐさま目を覚ましたのが駿河真帆だった。彼女が目を覚まし、一番最初に口にした言葉は冥夜はどこにいると言うものだった。ルイナスが消えた事を含め冥夜と言う名前を聞いたエールカは十六夜が戻ってきたと理解し、幼馴染だと言う彼女を用意した。
十六夜達の旅を見ていたエールカだからこそ知っていた。十六夜は仲間の存在に途轍もなく甘く、どこまでも愚かになれる事を。だからこそ、幼馴染と言う立場の彼女を得た瞬間にエールカは勝ちを確信していた。
「さてどうするのかしら。私と一緒に彼女も斬る?」
近衛兵にエールカの隣まで連れられた駿河はエールカの盾にされるかのように腕を掴まれ、前に突き出される。現状を理解できない駿河は酷く混乱しているようだが、十六夜の手に持つ剣や周囲の近衛兵などを見て、危険な状態だと言う事だけは理解しているようで目尻には涙が浮かんでいる。
「め、冥夜ぁ…」
駿河は弱弱しく助けを求める声を上げるが、十六夜は何も反応を示さなかった。
「大人しく降服するならこの子の命は助けてあげる。貴方には今度こそ死んでもらうけどね」
そう口にしながら近衛兵からナイフを受け取り、その刃を駿河の首元に宛がう。駿河は小さく悲鳴を漏らすが、エールカは視線を十六夜から外そうとはしない。ルイナスと駿河。二人の人質を手に握るエールカだが、相手は魔王を討ち滅ぼした最強の勇者。油断出来る相手ではない。
「貴様らはどこまで卑劣な事をすれば!」
エールカの取った行動にルイナスは怒りの声を上げ、駿河を助けようと前に進もうとするが、隣に立っていた十六夜が笑っていた事に気付き、思わず足を止める。下を俯き、肩を小さく震わせ小さく笑みをこぼすその様子に嫌な予感を覚える。
「はは…あははは…なめられたもんだよなぁ」
そんな十六夜に声を掛けようと手を伸ばした瞬間、唐突に十六夜はゆっくりとアポカリプスを宙に掲げる。
「お前らは何も理解してないようだな。自分達が優位に立っていると勘違いしてるんじゃないのか?」
「…なんですって?」
「お前が俺の前に姿を現した時点でこっちの勝ちは確定してるんだよ。人質なんて取った所で意味はない」
十六夜がそう口にした次の瞬間、駿河を連れてきた近衛兵が突如真っ二つに引き裂かれた。なんの音もなく二つに分かれた近衛兵はなんの言葉も発する事なく、臓器と血を床に広げ、物言わぬ骸と化した。その唐突な事態にエールカ達は反応できず、小さく疑問の声を零すだけだったが、靴先にまで広がってきた近衛兵の血を見て死んだのだと理解出来た。
「な、何をしたの!?」
「い、いやあああああああああ!」
突然隣で人が真っ二つになり死ぬという光景を見てしまった駿河を目を瞑り絶叫の声を上げた。十六夜はその姿を傍目で見ながらも、アポカリプスの能力を止める事はなかった。
次々と近衛兵達が体を二つに割かれながら死んでゆく。その異常な光景に国の家臣たちの幾人かは気を失い、残りの者達も肩を抱き震えていた。十六夜の隣にいたルイナスだけはこの事態の原因が十六夜が持つアポカリプスの能力だと知っている為、表面上は冷静でいられた。
しかし、その内側は非常に複雑なものだった。今も一人づつ死んでいる近衛兵達は本来ルイナスの仲間だった者達。それが家族同然の十六夜の手によって一方的に虐殺されているのだから、冷静な心を保てる訳もなかった。だが、彼らがルイナスを裏切ったのは事実。彼らに掛ける情けはなかった。
一方近衛兵が全員死んだ事を確認した十六夜は最後に駿河を掴むエールカの右手を切り落とした。突如自分の右手が落ちた事に呆然とするエールカだが、次に襲ってきた激痛に叫び声を上げた。その時に掴んでいた腕がなくなった事により開放された駿河はそのまま地面へと倒れ込む。
「あああああああ!腕が!私の腕があ!」
そう叫びながら残った左腕で治癒魔法を使い、吹き出る血を止めたエールカは血走った瞳で十六夜の方を睨み付ける。そして迷う事なく、ルイナスを殺す為に精霊魔法を起動した。
「お前だけは殺してやる!」
本来ルイナスを殺すつもりなどなかった。彼女の存在はルーファス王国に置いて排除する事の出来ない力だったからだ。エールカ含め王の考えでは十六夜だけを排除し、ルイナスをいままで通り鎖につないだ状態で使う。それが理想だった。
しかし、十六夜の使う理解不能な力や人質が機能しない事を理解したエールカはこのままで終わらせまいとルイナスを殺す行動に移る。もはやその行動はルーファス王国に取ってなんの意味もなさない行動ではあるが、一方的にやられるという屈辱に耐えられなかったエールカは最後の意地とばかりにそのような行動に出た。
「っ!!」
エールカが精霊魔法を使った事が理解出来たルイナスは体を強張らせるが、彼女の体に異常が起きる事はなかった。
「な、なんで…?」
本来ならルイナスに仕掛けられた魔法陣が彼女の魔力と反応して心臓を止める筈なのだが、ルイナスは死ぬ事なく立っている。ルイナス自身も怪訝な表情をしている所を見るとルイナスが何かをした訳ではないと理解出来た。となればエールカの精霊魔法を邪魔したのは一人、十六夜しかいなかった。
「残念だったな」
そう口を開いた十六夜の感情のない表情を見て、エールカの中で何かが折れた。力なく膝頭を地面に付け、視線を地面へと向ける。
「化け物が…」
小さくそう呟かれた言葉に十六夜は何も返すことなく、エールカの方へと歩みを進める。近衛兵達も全員死んでいるこの状況で十六夜を止める事の出来る者はいない。レイオールだけが鋭い眼差しで十六夜の方を睨んでいるが、十六夜に対抗する手段は持っていない為、行動を起こそうとはしなかった。
そのままエールカの隣まで辿り付いた十六夜はスキルの一つである亜空間ボックスから魔力封印具を取り出す。エールカは既に対抗する気力すらわかないのか、無抵抗のまま手足と首に魔力封印具を付けられた。封印具を付けられたエールカは苦しそうなうめき声を上げるとそのまま気を失い、前のめりに倒れた。十六夜が彼女に付けた封印具は特別性でその効果が非常に高い。その強い力は完全にエールカの魔力循環を止め、気を失わせた。
「邪魔したなレイオール。目的のものは手に入ったから帰らせて貰う」
アポカリプスはそのままにもう片方の聖剣を消し去り、気を失ったエールカを肩に担ぐ。その際に学生服のシャツが血で赤く染め上げられ、地肌が濡れる感触に気持ち悪さを覚えるが仕方がないと割り切る。
地面に倒れている駿河は無視し、十六夜はルイナスの隣に行くと彼女に肩に手を置いた。そのまま転移でエルフの里に行こうとするが、その前にレイオールから声が掛かる。
「…これからどうするつもりだ」
本来なら反応する必要などないのだが、十六夜の中にも一つ気に残る事があった。レイオールの質問に答えを返す事なく、十六夜は自身が言いたい事だけを言う為に口を開く。
「クラスメイトの事だが…そいつらが俺を止める切り札になるなんて思わない事だ。あんまり余計な事をするようなら…その時はあんたを殺す」
正直十六夜としてはクラスメイトの事はどうでもいいと思っている。確かに自身が原因でこの世界に来てしまった事には罪悪感があるが、所詮仲間ではないクラスメイトを助ける義理は十六夜にはなかった。
「…」
十六夜の言葉に何も返さず、沈黙を貫くレイオールに十六夜はつまらなそうに鼻で笑うが、そのまま何も言う事なく、転移の魔法で消えていった。
十六夜達が消え、後に残ったのは近衛兵達の骸と恐怖に怯える家臣。改めて勇者の力の大きさを認識させられたレイオールは今後の事を憂い、大きくため息をついた。しかし、その顔には狂気を感じられる笑みが浮かべられていた。