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4 夜の侵入者、信じがたい記憶

「高村先生! まだ居たの!」


 鋭い声に、高村ははっと顔を上げた。


「あ、南雲先生…」

「何時だと思ってるの、あなた。司書室からもう帰るから、と連絡が来たのよ…ああ、何だ、こっちであなた、作業していたのね」


 図書室の一角。机の上には、資料や指導案の下書きが散らばっていた。


「向こうでやれば、良かったのに」

「たまには気分を変えてみたら、と言われまして…」

「森岡先生ね…」


 ち、と南雲は軽く眉を寄せ、舌打ちをした。


「ともかく時計を見てちょうだい。もう職員室の皆も帰って、あなた一人なのよ。ここの教員が残る場合は、鍵を渡せばいいだけのことなんだけど、あなたじゃそういう訳にはいかないのよ」

「わ、わかりました」

「熱心なのもいいけど、時間も少しは気にしてね」

「は、はい…」


 矢継ぎ早の言葉に、高村は慌てて机の上を片付けた。

 窓の外は既に夕方を通り越して真っ暗だった。


「南雲先生も遅かったのですね」


 やや早足で階段を降りながら、高村は問いかけた。


「ええ、少し用事があってね」

「はあ」


 高村は曖昧にあいづちを打つ。

 彼女の口調には、その用事の内容に関して、決して踏み込ませない強さがあった。きっとこの女性には迷いも何も無いのだろうな。高村はややうらやましく思う。


「…ああ、一階も真っ暗ですね」

「防火扉が閉められてしまうのよ。だから、昇降口の方の常夜灯の光も入って来ない…どうしたの?」


 廊下の真ん中で、高村は立ち止まっている。出入り用の小扉に手を掛けながら、南雲は問いかけた。


「…何か、音が、するんですが…」

「音?」

「向こうの突き当たり、って何でしたっけ」

「調理室だけど? …そんな訳はないでしょう?」

「すみません、見て来ていいですか?」

「ちょっと、高村先生!」


 ぱたぱたと、音を立てながら彼は、廊下の突き当たりまで駆け出した。確かにこの方向から、がらん、と物が落ちる音がしたのだ。

 調理室だ、と言われれば納得する。あれは彼の記憶にあるものの中では、ボウルや小鍋を落とした時の音に近い。

 扉に手を掛ける。がらり、と戸車の動く感触があった。


「開くの? 鍵は閉めたはずよ?」


 南雲の声もやや上ずっていた。


「でも、ほら…」


 彼は奥の扉も開けた。あ、と彼は声を立てた。窓に飛びつこうとしている二人組がそこには居た。


「おいそこの二人!」


 彼は思い切り声を上げた。常夜灯の逆光に、一人は男、一人は女に見えた。どちらも長身だ。窓を開けて、そこから出ようとしていた。


「おい!」


 男の方が先に出て、女を受け止めようとしている様である。高村は迷わず、女の方へと走った。やや長いスカートをうるさそうにまくりあげ、女は窓に足を掛けた…その時。


「きゃ」


 ずる、と女はバランスを崩して、床に引きずり落とされた。高村が窓に掛けた足首を掴んだのだ。


「高村先生!」

「南雲先生、…女性のようなので」

「わかったわ」


 南雲は高村が押さえ込んでいる手を受け継いだ。女はばたばたともがき続ける。


「やめて!」


 はっ、とその声に、高村はこう呼んでいた。


「遠野さん?」


「…だからって、ねえ…」


 はあ、と大きく南雲はこめかみに指を当て、ため息をついた。


「もう少し、何か方法があるでしょう? あなた方ともあろう者が!」


 ああ声が大きい、と高村はふと思う。周囲の目が全て、このテーブルの四人に集中しているかの様だった。

 四人。そう四人だった。

 あの後、窓の外に出た男が、女―――遠野のために、もう一度、窓から律儀に入り直して来たのだ。


「真っ暗な学校の中で口論しても仕方が無いわ」


 南雲はそう言って、高村とともにこの二人を、最寄りのコーヒーショップへと連れて来たのだ。

 この時間のコーヒーショップは賑わっていた。

 会社帰りに小腹が空いた者、学校帰りの大学生、そんな人々であふれている。空いているテーブルを見つけるのが難しいくらいだった。

 話し声もうるさい。音楽もひっきりなしに鳴り響いている。なのに、この二人と南雲の声は、その中ですら、実によく響くのだ。自分を加えれば、四つ巴の大声合戦になるのが見えていたので、高村はできるだけ発言を控えていた。


「山東君…あなたまでが」

「だけど、行動するしかない時だって、あるでしょう!」


 山東と呼ばれた彼もまた、声が大きく、響く人物だった。

 身体も、顔のパーツも全体的に大きく、濃い。肌はよく焼け、髪は短かかった。

 体育系の大学生と聞いていたが、確かにうなづけた。これが、森岡が言っていた「伝説の生徒会長」。


「だいたい、何で今更、あなたがが中等のことに足を突っ込むの? あなたはもう、大学の勉強が本分でしょうに」

「お言葉ですが、南雲先生」


 山東はテーブルに両手をつくと、ぐいっ、と身を乗り出す。言葉こそ丁寧だったが、その口調には相手とは既に教師と生徒ではない、対等の人間に切り込もうとする時の迫力があった。


「日名は俺達の共通の友人でした。だからその行方を知りたい、と思うのは当然ではないですか。大学だろうが、中等だろうが、それは関係は無いはずです」

「そうです」


 遠野もまた、強く言い放つ。


「もともと、学校側が、あの子の行き場所を最初からはっきりさせてくだされば、私達だって、こんな風に学校にもぐり込んだりはしません!」


 どん、と遠野は右手でテーブルを叩く。一瞬、トレイに乗ったコーヒーが揺れた。


「だけどこっちも、日名さんについては、唐突に学校を辞めた、という連絡しか入っていないのよ。学校側もそうしたら、後は書類上の手続きをすることしかできないの。それは、どうしようもないことだわ」

「じゃあ、一体、何処に聞けばいいって言うんですか?」


 遠野はぐっ、と詰め寄る。そして突然声をひそめ、抑揚の無い声でつぶやいた。


「あの子は…殺されたんだわ」


 え、と高村は目を大きく広げた。


「…馬鹿なことを」


 南雲は軽く目を伏せ、首を横に振る。


「馬鹿なこと、じゃないです」

「うん、俺も、その予測もしてみた」


 山東もまた、声を低くする。


「…あの、どうして、君等、そう思う訳? それにどうして、調理室に…」

「高村先生」

「だって南雲先生、こちらが説明しない限り、結局この二人は、同じことを繰り返すんじゃないですか?」


 ううん、と南雲は唇を歪め、腕を前で組んだ。


「どうして? 二人とも。遠野さん、それが判れば、ボイコットも止めるの?」

「それは、結果次第です」


 遠野はきっぱりと言う。


「このままこんなことを続けていると、遠野さん、あなたの心証はどんどん悪くなるわよ。おそらくあなたが第一に希望している、演劇に力を入れている大学への推薦はまず確実に取り消されると思うわ」


 高村はぎょっとして南雲の方を見た。そんなことをさらりとこんな所で言ってしまっていいのか。

 だが受ける遠野の方もまた、堂々としていた。


「ええ構いません。私にとって、あの子が最初の観客でした。あの子が居ないのだったら、舞台で演じる意味など、半分以上無くなりますから」


 そう、と南雲はふん、と鼻で息をつく。


「判ったわ。ともかく、あなた達に何があったのか、そしてこれからどうしたいのか、言ってみてちょうだいな」

「…ゴールデンウイークの最後の日のことです」


 あああの日か、と高村はふと、自分にとっても服の調達に忙しかった日のことを思い出す。


「私達は、もうあの期間を思う存分遊び倒しましたから、その日はそれぞれゆっくりしようと思って、会う約束はしていなかったんです。ところが、夜中に急に端末に電話が入ってきて―――」


 そこで遠野の言葉が詰まった。


「入っては、来たんです。ナンバーが彼女のものでした。だけど、会話でも、メールでもなく、外の音だけが入ってくる、って感じで。変だな、と思いながら、私、しばらく聞いていました。…すると、何か変な声が入ったんです」

「変な声?」

「『見ぃつけた』、って」


 かくれんぼか? と高村はふと考える。


「それからあの子の…かどうかは判らないんですが、ひいっ、って悲鳴の様な声と、がたん、と何か落ちる様な音がして…どうしたのか、と耳をぐっと当ててみたんですけど、音がして」

「切れてしまった?」


 南雲が問いかける。遠野はカップを両手で包む様にすると、大きくうなづく。


「たぶん。だからもう後は、聞こえなくなってしまって…」

「でも、それだけでも十分怪しいじゃないですか」


 山東は拳を握りしめ、震わせる。


「どう考えても、怪しいじゃないですか。それでいて、いきなり翌日居なくなった、なんて。しかも火曜日、こいつから俺、呼び出されて聞くと、あいつの家、引っ越したとか言われたらしくて」

「だから、急な…」

「だけど、あのうちはもうご両親とも定年退職して、悠々自適の生活を送られてたんですよ?」


 南雲の言い訳めいた口調に、即座に遠野は切り返した。


「私達三人とも、お互いの家によく行き来してました。だから多少は家庭の事情も知ってます。あの子よく言ってました。上のお兄さんもお姉さんも、皆もう独立してしまってるから、今住んでるあの家は、いつか自分がもらうのよ、って。そこからわざわざ引っ越すなんて、おかしいじゃないですか」

「…え、だって、日名さん…って五年生だろ?」


 高村は思わず計算してみる。


「あの子、末っ子なんです。しかも、上のきょうだいとは少し歳の離れた。それでご両親も彼女をずいぶんと可愛がっていたんです…だから、ちょっとわがままな所も多かったけど、だけどそこが私達には可愛くて…ねえ!」

「ああ」


 山東も大きくうなづく。


「俺も遠野も、日名が本当に本当に大好きだったんだ。日名も日名で、俺も遠野も同じ様に大好きだ、と言ってた」


 それはまた不思議な関係である。

 はあ、と興奮した気持ちを治めようと、遠野は自分の分のコーヒーに手を伸ばした。ブレンドにミルクだけで、砂糖は入れない。山東はブラックのままだった。

 何となく、ここに日名という女生徒が居たら、彼女はミルクも砂糖もたっぷり入れる様に高村には思えた。


「…それで、もしかして、校内の何処かに彼女の端末が落ちていないか、と思ったの?」


 南雲は問いかける。遠野は黙ってうなづいた。


「私もこいつも、学校の中のことは、熟知しています。特にこいつは、隅から隅まで把握してました。だから、私、あの時のことを、自分の覚えている限り、こいつに話したんです」


 そう言いながら、遠野は隣に座る山東の肩をぽん、と叩く。


「それで? それが調理室だった、ということか?」

「調理室…とも限らないんですが、普通教室ではない、と思ったんです。『見つけた』と夜の教室で言える場所。月明かりや常夜灯でも、普通教室はあまりに机と椅子ばかりですっきりしていて、隠れる所など何も無い。としたら、特別教室のどれか、と思ったんです」

「そこでまず、という訳?」

「ええ、一階ですから」


 なるほど、と南雲は軽く目を伏せ、低い声でつぶやいた。


「…ともかく、今日のことは、学校側には何も言わないから、今後、この様なことは二度としないでちょうだい」

「南雲先生」


 珍しい、と高村はふと思った。このひとがこういうことで見逃す、ということが何となく彼には不思議に思えた。

 南雲は続けた。


「とにかく遠野さん、あなたのここ数日の行動は本当に目に余っているのよ。ただでさえ、あなた達三人は、学校で目立っていたのよ。他の生徒に、良くも悪くも影響を与えてしまうの」

「それは」

「無論、そのくらいの個性も能力もある人物を育成できた、ということは、我々教師としても嬉しい限りだわ。でも、影響が強い、というのは、プラスにもマイナスにもなりうるの。実際、今年になってからの日名さんは、それがマイナスに傾いていたし、月曜日からの遠野さん、あなたもかなり、そうやって周囲を巻き込んでいたのよ」

「だけど、それは巻き込まれる方も」

「自分にそれだけの影響力がある、ということを自覚しないのは、あなたの問題だわ」


 ずばり、と南雲は言い放つ。


「それは時に置いては、影響を与えられるばかりの一般生徒より、時にはたちが悪い、と私達教師の側としては、見てしまうこともあるのよ」


 遠野は黙って首を横に振る。


「…南雲先生の言われることは、私には理解できません」

「あなたは頭のいい生徒でしょう?」

「頭の問題じゃない。気持ちの問題だ!」


 今度は山東が、大きく両手の拳をテーブルに叩き付けた。

 あ、という高村の視線とともに、コーヒーカップがゆっくりと床に落下して行った。かしゃん、と幾つかの音が響き、周囲のざわめきが一瞬止まる。

 お客様、と店員が慌てて飛んで来た。ふう、と南雲はため息をつく。


「…そろそろ引き上げ時ね。ここの支払いは私がしておくわ。遠野さんは私が自宅まで送るから。山東君、君も彼女にあまり悪い影響を与えないでちょうだい」

「俺は…!」

「あなたは、優秀な生徒会長だったじゃないの」


 山東はぐっ、と言葉と歯を噛みしめた。

 行くわよ、と南雲は遠野の手を引き、さっさと店の支払いを済ませ、出て行った。

 それを見送ると、山東はすぐに腰をかがめ、自分が落としてしまったカップの破片を、迷わずつまみ上げ、拾っていた。


「お客様、それは我々が…」

「誰がやったって、こういうことは早く済ませた方がいいだろ? それに俺のせいだし。俺これ拾ってしまうから、あなた床を早く拭いてしまった方がいいよ」


 ウェイトレスもバイトらしく、その口調に、はい、と従ってしまった。

 高村も破片を拾おうとかがむ。


「高村…先生だっけ、あんた」


 ちら、と山東は高村の顔を見る。


「あー…実習生だけどね。だからまだ、大学の三年だな」

「じゃあ先輩ってとこか。いいですよ、高村さんあんたは。俺のしでかしたことだし」

「いや、今、君も言っただろ、誰がやったって、って」

「そう言えば、そうですね」


 ははは、と山東は笑った。明るい笑い。迷いの無い行動。歳は二つ下だが、明らかに自分より器が大きい男だ、と高村は思った。確かに「伝説の生徒会長」にはふさわしい気がした。


「よし、この位でいいかな」


 一カ所に破片を集めると、後はよろしく、とテーブルと椅子の位置をある程度直し、行きましょう、と山東は言った。


「そう言えば、メシでもどうですか?」


 駅方面の牛丼屋の前で、山東はふと立ち止まった。


「コーヒーじゃ、腹はふくれないですよ」

「ああ確かに。それに、学生には」

「安いのが一番ですって」


 ははは、と山東は笑った。

 確かにいい奴だなあ、と高村は思う。彼はもう少しこの山東という男と話してみたくなった。

 同じように生徒会の役員をやっているという垣内に、あまりいい印象を持てなかったこともある。比べてみたい、という程ではないが、どう違うだろう、という疑問は確かにあった。

 店内に入ると、案の定、山東は大盛りを注文した。その一方で、しょうがをどうぞ、納豆はとりますか、とずいぶんとマメな性格も伺わせる。


「やー、やっぱり俺はこういう所、好きですよ。学食もいいですが」

「そう言えば、森岡先生に聞いたけど、山東君、体育系の大学に行ってるんだって?」


 ぱちん、と箸を割りながら、高村は問いかけた。ええ、と目を大きく広げ、口に物を入れたまま、山東はうなづいた。


「中等の卒業適性では、何処の大学でもOKだったんで、じゃあいっそ、今まで部活で楽しかったことを、今度は真面目に取り組んでみようか、と思いまして」

「ふうん」


 そういう考え方もあるのか、と高村は思った。


「じゃあ特に、なりたいものとかは?」

「そうですねえ」


 ううん、と彼は箸を口にくわえ、軽く視線を天井に移す。


「まあ体育系を出たなら、スポーツ選手か、スポーツ系企業か、そうでなければ教師ですけど、正直、俺は、人間とどんどん関わっていけるものなら、何だっていいんですよ」

「それはまた、ずいぶんと曖昧だ」

「ううん…何って言うか、俺、こういう言い方すると、すごい皮肉に聞こえるかもしれないけれど、結構、何でもできちゃったんですよね」

「何でも」

「まあだいたい、学校で習うものって奴ですよ。あ、そういえば、俺、料理とか被服だって、結構いけましたよ」

「そ、それは…」


 意外だ、と気持ちが露骨に表情に出たらしく、山東はまたははは、と笑った。


「だからまあ、選択肢は、俺にはたくさんあったんです。うーん、やっぱり何か自慢している様に聞こえますかね」

「や、そんなことないよ」


 実際、他の奴が言うならともかく、この目の前の男の口調では、皮肉は感じられなかった。あまりにもあっけらかんとしているのだ。


「そうですか。なら良かった」


 そして本気でほっとしているあたり、やはり何処か好感が持てた。


「まあ俺、やれることは何でも楽しもう、と思ってきたんですよ。中等ではずっとそうやってきて…誰も立候補なんかしないから、生徒会に出てみて…これまた面白かったから、色々校内を良くできないかな、と学校のことを、あれこれ調べてみて」

「あ、それで、あの購買の分室も作ったんだ」

「そうそう、よくご存じですねっ」


 うんうん、と嬉しそうに山東はうなづいた。


「あれは苦労したんですよ! 業者はそこまで商品を毎度運ぶのが面倒だ、って言うし、学校側は、確かに五年七組と八組の間の小部屋は空き教室だけど、そこは時々先生達の控え室にすることもあるんだし、って主張するし」


 言いそうだよなあ、と高村は思った。


「でも業者は業者なんだから、売りたいのだったら、その位の労力は惜しむべきではないし、たまにしか使わない先生達と、毎日毎日苦労している老番クラスの連中とどっちが大切なんですか、って交渉できるごとに主張して」

「…確かに君の迫力だったら、通じるよなあ」

「や、駄目ですよ」


 山東は太い眉と口元をきゅ、と引き締めた。


「一年じゃ、駄目でした。たったそれだけのことにですよ? だから俺は、その翌年も立候補しました。そうしたら、今度は学校側から、今度の立候補は止した方がいいんじゃないか、って横槍が入りましたね」

「学校側が、君を生徒会長にさせたくなかった、ってこと?」

「そうです」


 山東は大きくうなづく。


「ま、それでも立候補する、と言った奴を止めることは、学校の規則上ではできないし、出てしまえば俺の勝ちです。だけど今度の戦いはもっと厳しくなるなあ、と覚悟はしてたんですよね。実際俺でも、多少くじけかけましたねえ」


 その時のことを思い出したのだろうか。ふと彼の目が遠くなる。


「で、その時に、日名や遠野が居てくれて、俺、すごく、励まされたんですよ」

「日名さんと…遠野さん?」

「ええ」

「…ちょっと立ち入ったことだけど…君らって、三人で、友達…」

「ええ、まあ」


 あっさりと彼は答える。


「本当に、三人で?」

「何か悪いですか?」


 悪くはない、と高村は思う。ただ、少し状況が理解しにくいだけで。


「そのちょっと沈んでしまった時期に、俺にハッパかけたのが、日名でした。遠野はもともと彼女の友達で。で、もともと遠野は日名のこと、好きだったんですよね」

「…女の子だけど」

「別に、いいんじゃないですか?」


 はあ、と高村はうなづく。やはり大物だ、と彼は思った。


「で、俺は日名を好きになって、日名もまたあれが、好きは好きでいいじゃない、というタイプだったから、皆で仲良くしようよ、ということで、俺達は三人で付き合い出したんですよ」


 こう口にするとちょっと照れますね、と山東は赤くなりながら、頭をかいた。なるほど、と高村はうなづくしかなかった。すっかり箸は止まっていた。


「…ああそう言えば、生徒会の役員で、垣内君って知ってる?」

「ああ、垣内ですか。そう、奴も二年続けて生徒会やってるんですね。…あいつは今年はやらないと思ったのになあ。去年は会計でしたが、有能な奴でしたね」

「やっぱり」


 高村の脳裏を、見事な会釈がよぎった。


「知ってるんですか?」

「や、よく化学準備室に来るから」

「あー、南雲さんのところに」


 納得した、と言うように彼はうなづいた。


「生徒会は南雲さんの配下にありますからねえ。でも俺は、正直、南雲さんはそう好きじゃないんですよ」


 え、と思わず高村は問い返した。


「同じ化学だったら、俺は森岡さんの方がいいです」

「またそれは、どうして」

「うーん、高村さんにあんまり先入観を持たせてしまうのも何だけどなあ…」

「いいよ、別に」


 正直、ここで聞いておけば、自分があの二人の態度に対する違和感の様なものの正体に近づける様に思えるのだ。


「そうですねえ。何っか、南雲さんは、確かに熱心に関わってくれるんですがね、結局はこっちの行動を規制しようとしている様に見えるんですよ、俺には」

「規制?」

「さっきもそうだったでしょ」


 ぽり、と山東はたくあんを噛む。


「森岡さんはそういうとこで、何だかんだ言って、俺達の自主性って奴を大事にしてくれたんですよ。学校側はそれは『ほったらかし』だとか、『無責任』とか言うけど…俺にはあのひとは合ってましたよ」


 うん、と高村も大きくうなづく。


「…オレも正直、森岡先生の方が好感持てるよ」

「でしょう?」


 ぐい、と山東は嬉しそうな顔を寄せてきた。


「何っか、あのひとは、あまり表情も変わらないし、何考えてるのか判らないって感じはありますけど、南雲さんより信用できるような気がするんですよね」


 確かに、と高村は思った。

 少なくとも南雲の、あの正しいには違いないだろうが、何処か首を傾げたくなるようなお題目より、曖昧で、厳しいのか甘いのか良く判らない森岡のつぶやきの方が、信用できるような気がするのだ。


「ああそういえば、あのひと今、一人暮らしなんですよね」

「え?」

「離婚した時、奥さんが子供連れてって、何でも、それっきりだそうです」

「へえ…じゃあ自分で弁当作っているのか…大変だなあ…」


 そう言えば、子供が居る、とは何となく聞いたことがある、と高村は思った。…そうだ、屋上の話だ。


「そう言えば、山東君、君は『立入禁止』のロープがあったら屋上には入らない方?」


 どういう意味ですか、と山東は首を傾げた。高村は先日の話を軽く説明した。


「…ああ。俺は立入禁止があろうが無かろうが、とりあえず一度は乗り越える方ですねえ」

「あろうが無かろうが?」

「参考意見にはする、ということです。自分の目で危険かどうか確かめて、…もちろん、屋上みたいなとこは、すごくすごーく、気を付けてからですけどね。それから判断したいなあ、と思います。やっぱり一番信用できるのは、自分の目ですから」

「自分の目、ね」


 高村はコップの水を一気にあおった。


「オレは自分の目が、いまいち信用できないんだ」


 高村は、ある一つの記憶を呼び起こしていた。



 それは六年前のゴールデンウイークだった。

 高村は理系寄りの中等学校の、後期部に進んだばかりだった。


「全く…オレのバカバカ」


 そうつぶやきながら、彼はこの三月まで学んでいた校舎へと忍び込んでいた。

 この年、彼はそれまでの前期部から、後期部へと進級していた。そして進級に伴い、校舎も移動した。

 しかし、三年間を過ごした学校から次の場所へ行く時には、結構な荷物が出てくるものだ。彼は結構な量の私物を、前期部の特別教室だの、軽音楽の部室に置きっぱなしにしていた。

 ちなみに、その時彼が探していたのは、アコースティックギターのケースだった。中身は自宅にあった。

 春休み前、進級のお祭り騒ぎをした時に、楽器だけ抱えて友人達と騒いで帰ってきた。ただその時、ケースを部室に置き忘れてしまったのだ。

 中身があれば、ケースはどうでもいいじゃないか、下級生に頼んで持ってきてもらえばいいじゃないか、と言うかもしれない。

 だがしかし、そのケースには、煙草だのエロ本だの、正直、見つかって欲しくないものを隠していたのだ。そして中には、名前もしっかり書かれていた。

 そんなものなのに、だ。

 高村はその存在を五月になるまですっかり忘れていたのだ。思い出した時には、既に学校はゴールデンウイークで休暇中だった。

 思い立ったが吉日、彼はその晩、自転車を漕いで、慣れた道を走った。後ろにケースを積むためのロープも用意していた。

 そうっと校舎の裏手まで自転車を運び入れ、記憶にある、鍵の壊れた窓から彼は忍び込み、彼は部室からケースを運び出すことに成功した。

 ただ、再び窓から出た時、彼はちっ、と舌打ちをした。道中、雲行きが怪しい、と思っていたが、雨が降り出していたのだ。

 彼は仕方なく、しばらく待っていれば止むだろう、と校舎の、二階が通路になっている部分で雨宿りをすることにした。

 だが、なかなか雨の止む気配は無かった。

 むしろ、どんどん雨足を増している様だった。遠くで雷の音までしていた。通り過ぎるのを待っていては、日付が変わってしまいそうだ、と彼は思った。

 仕方ない、とケースをくくりつけた自転車を引いて、高村は歩き出した。しかし、周囲は玉砂利なので、自転車に乗ることもできず、足も取られて歩きにくかった。

 もう少し雨宿りしていようか、と苛立ちかけた彼が引き返そうとした時だった。


 ぎゃああああ。


 すさまじい声が、彼の耳に飛び込んできた。何事だ、と思ったが、彼の足はそこからびくりとも動こうとはしなかった。

 やめてやめて、いやあ、何すんの、と声は続いた。

 女の声だった。それも二つの違った声だった。

 女生徒が襲われているのかもしれない、と彼は思った。いや、それ以外の何物でもなかった。

 だが二人が襲われているとしたら、相手も複数だろう。下手にそこに飛び込んだら、自分までやられてしまうかもしれない。

 そんな無意識の計算が、彼の足をそこに縫いつけていた。

 雨宿りも、帰ることもできず、彼はしばらく、そこに立ちすくんでいた。ぼぼぼぼ、とギターのケースに雨が降り注ぐ音が、奇妙に耳にうるさかった。

 どのくらい経った時だろう。何度か続いた叫び声はいつの間にか消えていた。

 ぽたぽたと頭から水を滴らせながら、彼はもう大丈夫だろう、と先程の所へ行こうとした。ただ何が「大丈夫」なのか、自分の中で説明はできなかった。

 だが。

 彼はちら、と二階通路の下をのぞき込むと、うっ、と息を呑み、のけぞった。

 少女が二人、玉砂利の上に、足を投げ出して座り込んでいた。先程の二種類の声の持ち主だろう、と彼は思った。

 だがそれだけではなかった。遠目で良くは判らないが、二人の頭のすぐ上のコンクリートの壁に、どす黒い染みがあった。


 何だあれは。


 高村はしばらく、その染みを呆然として見ていた。

 よく見ると、染みはあちこちに飛び散っていた。まるで、何かを強くぶつけて弾かせた時の様に―――

 弾かせた。

 彼はそのままゆっくりと、頭をがっくりと前に落とした少女達の方へと視線をやった。少女達は、ぴくりとも動かなかった。


 何だこれは。


 高村はその時ようやく、自分の中でその疑問が湧くのを感じた。

 悲鳴。逃げている様な少女達。そしてこの壁。


 それって。


 ざあああ、と雨の音が、急に彼の耳に強く響きだした。

 ぺたん、とざらつく校舎の壁に背をつけた。腕をつけた。

 そのままずるずると、座り込んだ。腕が壁に擦れて痛かったが、それどころではなかった。


 何なんだ何なんだ何なんだ。


 死体なんだろうか。死体にされてしまったのだろうか。


 少女達は、誰かに、殺されたんだろうか。


 高村は今度こそ、本当になかなか動けない自分に気付いた。震えが止まらなかった。

 あんな風に、壁に叩き付けて殺す様な奴なら、自分などひとたまりもないだろう。

 ようやく自転車に手を掛け、彼はその場から走り去ろうとした。とにかく、すぐに逃げたかった。だけど上手く、身体が動かなかった。

 と、その時だった。


「…落ち着け、落ち着けよ!」


 子供の声が、聞こえた。少なくとも、自分よりずいぶん年下の、声変わりする前の、少年の声だった。


「やーだー、はなしてよー」


 また、もう一人、少女が。

 そう思った時、高村の足に、急に力が入った。彼は歯を食いしばり、ゆっくりと立ち上がった。

 そしてそっと、本当にそうっと、中の様子を伺ってみた。

 すると、本当に少年と少女が、そこには居た。

 雨の中、踊る様に暴れる少女の両手を、少年は力を振り絞って掴んでいた。少年は少女を抑えるのに精一杯で、高村が見ていることには全く気付いていない様だった。


「あんたなんかー、ひとりじゃなんもできないくせにー。あたしのしごとだよ、これはあ」

「***!」


 ぴく、とその声に、少女の動きは止まる。

 名前を呼んだのかもしれなかった。ただそれは、彼にとっては耳慣れない音のものだった。

 そして次の瞬間。

 少年は、ポケットから何か取り出すと、口に含み、さして背丈も変わらない少女を抱きしめ、強く口づけた。

 長い時間だった。

 少なくとも高村にはそう思えた。

 やがて少年は、少女をゆっくりと離した。既に少女からは暴れようとする様子は見られなかった。

 少女は背後に座る二つの身体を見、次に自分の手を見た。少年は、大きくうなづいた。


「…嘘…」


 少女はその場にゆっくりとひざをついた。少年もまたかがみ込み、少女をゆっくりと抱きしめた。

 やがて少女は、少年の胸に勢い良く顔を埋めると、うめく様な声を立てて泣き出した。

 その拍子に、少年のポケットから、何かが転がり落ちた。

 小さなびんだった。赤いびんだった。


 気がついた時、高村は家の前に居た。既に鍵が閉まっている扉をがんがん、と叩いていたのだ。

 母親はこんな時間に、と叱ろうとした様だが、彼の尋常でない様子に、何も言うことができなかったらしい。

 そしてその晩は、なかなか寝付けなかった。

 いつまで経っても、あのびんの赤が、目に焼き付いて、離れなかった。


 翌日、高村は放課後になってから、前期部へと寄って行った。

 彼はまっすぐ、あの二階通路の下へ向かった。だがそこには、何も無かった。元はケーキのクリームの様に白かっただろう、一様に薄汚れた壁があるだけだった。

 そんな馬鹿な、と彼は思った。

 二階通路は数ヶ所あったので、他のものも調べてみた。だが何処も同じだった。そこには何も無かった。何かが起こった、という痕跡一つ無かった。

 夢だったのだろうか。

 だが、夢であるというなら、彼はその確実な保証が欲しかった。


「あれえ、高村先輩、どうしたのー?」


 声に振り向くと、軽音楽部の後輩が数名、ふらりと外に出て来ていた。


「よお、…や、別に」

「変なの」


 さっぱりきっぱりした後輩は、そのまま去って行こうとした。ちょっと待て、と高村は慌てて彼等を呼び止めた。


「何ですかあ、一体」

「先輩、後期部行って、やせましたあ? 何か顔色悪いっすよぉ」

「…そ、そうか? あの…な、お前ら、どっかのクラスで、女子二人、死んだ、とか、いなくなった、とか…聞かないか?」


 内心の動揺を隠して、高村は後輩達に問いかけた。


「死んだ?」

「いなくなった?」


 何だそりゃ、と後輩達は顔を見合わせた。やがてそのうちの一人がああ、と眉をつり上げた。


「そういえば、うちのクラスの女子が一人、急に転校になったって聞きましたよー」

「転校だったら、そう言えば、うちの隣でもあったよなあ」


 そうそう、転校なら、と彼らはうなづきあった。


「そっか…あったのか」

「何ですか高村さん一体、唐突に」

「や、…何でもない」


 変なの、と今度こそ後輩達は、さっぱりきっぱりと彼らの先輩の元から去って行った。

 聞くんじゃなかった、と高村は思った。これで、夢ではない確率が高まってしまった。

 彼はその後、何度も何度も、同じ場所を繰り返し繰り返し、染みの一つでもないか、と見渡してみたが、そんなものは何処にもなかった。

 ただ。


「…あれ?」


 最初に調べた場所にあった、玉砂利の一つが。


「…白い…石だよな?」


 時々混じっている、白い石の一つが、ひっくり返った拍子に、どす黒く汚れていたのに気付いた。

 彼は慌ててそれを拾い上げ、近くの水道で軽く濡らしてみた。

 赤みが、混じっていた。

 彼はその石を洗い、玉砂利の中に投げ込んだ。一度投げ込んでしまえばそう簡単に見つからない。そのまま埋もれてしまえ、と彼は思った。

 そしてそのまま彼は、家へ駆け戻った。まだ明るいうちから、ベッドに飛び込んだ。眠ろうとした。あれは夢だ。夢なんだ。そう思おうと、した。

 だがなかなか、眠ることはできなかった。

 眠れないまま、ふと手を見ると、石を洗った時の赤い染みが、手のひらのすじに入り込んで残っていた。

 彼は慌てて飛び起きて、手を洗った。いつまでも、洗った。

 取りに行ったギターケースは、ばらばらに分解して袋に詰め、燃えないゴミの日に出してしまった。記憶はケースと共に、ゴミの袋を閉めた時に閉じこめたはずだったのだ。

 なのに。



「…そんなことが、あったんですか?」


 長い長い、高村の話をじっと聞いた後、山東は目を大きく見開いた。


「判らない」


 高村はコップの水をくっ、と飲み干した。


「今となっては、あれが夢だったのか本当だったのか、オレにはさっぱり判らないんだ。それが今度の君等の友達の居なくなったのと関係あるのかどうかも、さっぱり判らない。ただ、君等の話を聞いてるうちに、…何か、思い出してしまったんだ」

「日名の話から思い出されるというのも何ですが…でも、突然の『転校』は、俺が中等に居た時も、確かにありましたね。一年に一度程度は…」


 考えてみれば、と山東は唇を噛んだ。


「うん。だから、オレも正直、自分の見たものは夢か幻覚じゃないか、と思ってる。いや、思おうとしてきたんだ。思いたかったんだ」


 それ以来、自分の見るもの、決めることに、何処か自信を無くしていたことも事実だった。


「でも仕方ないですよ、高村さん。そんなこと…俺だって、そんなもの、見たら、自分の目も記憶も、疑ってしまいます」

「君がそう言ってくれるんなら、ちょっと気が楽になるけど」

「俺程度で、いいんですかね、高村さん」

「充分」


 実際、そうだった。存在そのものが、何処か安心させてくれる人物、というのは、確かに居るのだ。


 またお会いしたいです、という山東と携帯のナンバーを交換し、高村はその日、部屋に戻った。



「おはようございます…一体どうしたんですか?」


 先手必勝、と週明けの月曜日、高村は職員室に入るなり、何かを折り畳んでいる島村に問いかけた。明らかに職員室の様子がおかしかったのだ。

 ざわついているだけではない。何しろあの教頭が慌ててあちこちを駆け回っている。そして、ここに来てから何故か一度も見たことが無い校長が、職員室にやって来ていた。


「おお、おはよー高村先生。いやぁね。嫌ぁなことが、起きた様なんだよ」

「嫌ぁなこと?」

「今、校長室に、遠野の両親が乗り込んで来てるんだ」


 肩をすくめ、こそっ、と島村は高村に囁いた。まるで島村は、その様子を楽しんでいる様だった。


「遠野…ってあの遠野ですか?」

「それしかいないね。あの名前は」

「でも嫌ぁなことって」

「だから、普通だったら、とうの昔に引っ越しているはずのご両親が、乗り込んできてしまってるんだよ」


 は?

 どうも島村の話は要領を得なかった。


「つまりなあ」

「島村先生!」


 背後から、南雲が腰に手を当てて、鋭く声をかけた。


「また、変なことを高村先生に吹き込んでいるんじゃないでしょうね」

「別に変なことは言ってませんがね。まあ、南雲さんが怖いから止しておきましょ。はいはい」


 不真面目だわ、と南雲はいつも以上に眉間をこわばらせ、自分の席へと向かった。

 高村が遠野の「転校」を知らされたのは、その日の昼だった。

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