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橋を渡るとそこは・・・

短いですがきりがよかったので投稿

「お疲れさまです」


「お疲れ〜」と声をかけられながら仕事場の職員室を後にする。

 ここは、某県某市にある学校の中でも山の方にある学校で、生徒数もそれなりに少ない市立の中学校。それでも各学年1クラスずつ20〜30人いるのでまだいい方だろう。近場の小学校は複式学級も多いのだから。


「先生は今週は実家の方へ?」


 そう声をかけてきたのはこの学校の校長先生だ。今年で社会にでて2年目の自分に何かと目にかけてくれてる先生の1人である。


「そのつもりです。せっかくの連休なのでむこうでゆっくりしてきます」

「それがいい。ご両親も子供の顔が見れて嬉しいと思います」

「だといいのですが」


 軽く校長と会話した後別れる。校舎を出て職員用の駐車スペースに停めてある自分の車へと向かい、そのまま乗り込んだ。

 兄が使わなくなった黒い軽自動車を譲り受けて使っているのだが、そろそろ新しいのに変えないといけないか?と思いつつもズルズル使い続けている車だ。ところどころ汚れが目立ち始めているので、連休中に洗車とワックスでもかける事にしよう。


 エンジンをかけて、生徒や先生が通らないか注意しながら学校を後にして一度アパートへと戻る。着替えや洗濯物といった衣類を運び出して車に載せれば帰省準備は完了だ。細々としたものは朝のうちから積まれているのだから早くおわる。


 車に乗り込もうとしたときに携帯に着信がきた。確認するとどうやら母親のようだ。


「もしもし、母さんどうかしたの?」

「いやね、今週は連休があるじゃない?帰ってくるって言ってたけど今日と明日どっちかと思ってね」

「今日のいまから帰るよ」

「じゃあ晩御飯の用意してるから、気をつけて帰ってきてね?」

「わかってるよ。…じゃあまた後でね」


 通話を終了して、忘れ物がない事を再度確認してから実家へ向かう事にする。


「ありがとうございました!」


 ガソリンが心もとなかったので近場のガソリンスタンドで入れにいったのだが気づけばあたりはすっかり薄暗くなり始めている。これから山に入りトンネルを通ってダムの橋を渡る頃には日も山に隠れてしまう事だろう。

 せっかくの連休を、事故を起こして減らしたくはないので、ライトをつけて安全運転で行く事にする。メーターが制限速度より少しオーバーしていても安全運転である。


 薄暗い道を1人進む。山を越えるこの道は途中に民家がほぼないので、あり程度進むと人工の明かりがほとんど見えない山道になる。

 ダムを越えるとまた少し民家があるので街灯や家の明かりがあるのだが、ダムの近くには住んでいる人がいないからか、使う人が少ないからか外灯もないのだ。唯一と言っていい明るい場所は、ダムにかかった橋である。どんなに暗くてもその橋だけは明かりがあるので、少し離れたところから見ると橋だけが空中に浮かんでいるようにも見える。


 そしてその橋を今日も帰省のために渡る。


 始めて暗い中で見たこの橋は、四角い形状から暗闇に浮かぶ鳥居にようにも見えて感動したものだ。そんな感動も、何度もみてしまったいまでは感じ無くなってしまったものだが。


「っ?!」


 後少しで橋を渡り切るといったところで、突如目の前が光に包まれる。


 あまりの眩しさ目を開けていられない。堪らずブレーキをかけて車を減速させる。この橋を渡るとすぐにカーブがあるので目の開けられないいまの状態では危険だからだ。


「トラックか?さっさとハイ(車のヘッドライトを遠くまで照らせる状態)をやめろよな!」


 急ブレーキをしたために体が前に倒れそうになるのを腕と足(ブレーキを踏んでいる)で倒れてしまわないよう踏ん張る。目が開けられないほどの光量を出しているであろう存在に恨み事を言う。しかし、それも1秒2秒と経つと不信感がで始める。なぜなら相手は車であるはずなのに、いまだに瞼を閉じていても感じる目を刺すような光がそこにはあるのだ。

 車ならとっくに通り過ぎているであろうその光の正体がなんなのかを確かめるために、目を開けようと瞼に力を込めたとき、やっと光が無くなった。


「目の前で停まって光あて続けたとでも言うのかねぇ…」


 愚痴愚痴と文句が口から出るが、それも仕方あるまい。こちらは危うく事故を起こしかけたのだから。しかし、それらの言葉も目の前の状況を頭が理解するごとに減っていく。


 なぜなら目の前には、通い慣れたダム橋のアスファルトの道ではなく、明るい太陽に照らされた土でできた車輪の跡なのか、幅の短い跡が幾本も通ったボコボコとして走り辛そうな跡のある土の道が目の前に続いていたのだから…

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