生きている幽霊 ♯
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後日、わたしの元に一枚のCDが届いた。中身は『E―POPS』の新曲だ。CDには一通の手紙が添えられていた。
『律香さん、お元気ですか。私は元気です。何故元気かというと、私達『E―POPS』が新人バンドオーディションに合格したからです! 明日から正式なバンドとして活動を開始します! 今度、大きな会場でライブをやるので見に来て下さいね! 明美より』
手紙でも元気な子だな。わたしは自然と笑顔になっていた。新しい曲は、自然と優しい気分になれるような温かい曲だった。わたしが本当に明美達の曲を買う日も近いかもしれない。
わたしが自分の部屋で曲を聴いていると、姉さんが仕事から帰ってきた。
「おかえり」
姉さんはいつもより険しい顔をしていた。わたしはラジカセの電源をオフにした。
「報酬金は貰えた?」
「いや、一銭も貰えなかった」
姉さんの表情はあくまで冷静だった。
「どうして?」
「依頼主の李 飯餡は死んだ」
わたしは変な殺気を感じた。わたしの第六感が敏感になる。
「李 飯餡は殺された……中華街の暗殺者に」
わたしは悟った。次の仕事は間違いなく命がけになるだろう、と。
次回、第二話『中華街の暗殺者』