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Crystal Deep   作者: アディ・ロルフ
第二部 Crystal Shards
6/12

1 Hide and Seek

 家を揺るがすような勢いで階下に急いだ。新たな目的が見つかった。私の親友でルームメイト、ポーションマスターのリーが金色の頭をキッチンから覗かせた。何事かと私のことを見つめながら。

「で、火事はどこなの?」

「まだどこも。また今度貴族がやってきたら消防士たちが必要になるわよ!」

と私は怒りで叫んでいた。


 リーは後ずさった。

「昨日の件なら、それほど悪い状況でもなかったじゃない」

「昨日のことじゃない!私に権力があったからあの人たちは”私の幸せの為”にって振りをしてきてた。でもそうじゃなかった。自分たちの為だけに私から全てを奪っていったのよ!」

「ちょっと座って落ち着きなよ」

「そんな時間はないの!森に戻って探してこないと」

「探してくる?」

「人というか半分人というか……気にしないで。 止めても無駄だから」

「”金”を探しているの?」


 私は自分の足を止めて、リーを見やった。あの奇妙な夢から覚めてまだそれほど経っていない。誰を信じていいのかわからない。貴族たちは”素晴らしい”国を作るために、私の大切な人オーラムを奪った。たった一人だけ生存する半竜人。私と国の未来を守るために捕らえられ、クリスタルハートの中に記憶としてしか留まっていない。


 貴族たちはオーラムと私が自分たちの権力を脅かす存在として感じていた。おそらく彼らは誰もオーラムのことを覚えていないように記憶の操作をしたはずだ。リーは何かを知っているようだ。

「皆……?」

「何かもっと具体的なものを探してるんだと思うんだけど?」

「元素記号で金(AU)はオーラムっていうのを知ってるんでしょ?」

「オーラム、とうとうやったのね!」

「ずっと知ってたんだ?」

「覚えてないの?あの夜、私がオーラムのことを聞いても何のことかわからない風だったから何か起こったんだと思ってたのよ。ほら、こっちに来て」

リーがキッチンに戻っていくあとを私はついっていった。

「ずっと知ってたのね!」

「そうよ。だからそう言ってるじゃない」

リーはポーションを移動させながらそう言った。

「じゃあ、どうして言ってくれなかったのよ?」

「過去の経験からドラゴンの計画は邪魔するべからず、よ」

「は?」

また謎かけ。

「何でもないったら!」

リーは私に引き裂かれた布の入った瓶を私に投げてきた。なんとか受け止めたけれども、次々に他の瓶も投げてよこすからそれらは受け止めきれず大釜の中に落ちていった。リーは肩をすくめただけで、布が入った瓶をみるとホッとしたようだった。

「それだけは失くさないでよ!」

「瓶を投げなきゃいいじゃないの」

リーはまた瓶を大釜の中に放り込み、私はうめいた。大釜から煙がポフっと立ち上った。ほんと彼女は手に負えない……


 「でもさ、貴族たちは記憶操作したんじゃないの?」

リーはポーションの調合をしながら、私に向かって身振りで瓶を渡すよう示した。持っていた瓶を慎重に彼女に渡した。その瓶の蓋を開け、布を取り出しさらに小さく裂いてる。その布が大釜の中のどろっとした青いポーションの中に消えていった。

「くるわよ!」

リーが部屋から走り出しながら叫んだ。


 私はうめき声をあげながらリーの後に続いた。ポーションから金切り音が出ると同時にガラスが砕けるのが聞こえたときには壁の後ろになんとか避難できた。その音に飛び上がってしまったが、リーは既にキッチンに戻り始めていた。

「ほら、さっさと荷物の準備を始めて!キャンプの準備よ。でもテントはいらないから」

「ちょっと待ってよ!」

リーは動きを止めると私をみつめた。

「もうこんな謎解きみたいなやりかたうんざりよ! ちゃんと答えてよ!」

リーは私の方に近づいてきた。

「私に解除できない記憶操作を貴族たちが本当にできると思う?」

「オーラムの計画って?」

「それに関してはさっぱりね。あなたの記憶をブロックしているものは私には解除できなかった。でもそれってちゃんとした理由があるんだと思うわ。ほら、早く準備始めてきて。オーラム救出にはちゃんと準備しとかないといけないでしょ」 

リーがやっと筋の通ったことを言った。自室に戻るとクローゼットを漁った。ハイキングブーツを探していると、何かがいっぱいに詰まった袋が目に留まった。その袋を取り出してみると、意外と軽量だった。中身はキャンプするには必要なものが入っていた。というか逃げ出す準備だったのか?深く考えるのはやめよう。


 ナイトガウンを脱ぎ、ジーンズと黒いシャツを身につける。外套をはおり、みつけたハイキングブーツを履く。見つけ出した袋をつかんで階下へと急ぐ。リーは階段そばで待っていた。彼女は私に黄色い粉が詰まったフラスコを手渡してくれた。

「これをもってこれでもかってくらい森の奥に行くのよ。夜は安全な場所をみつけて休んで。で、翌朝にこのフラスコを開けて、粉が舞い始めたらその後を追って。戻すときはただ戻れと言うだけでいいから」

私は頷き、フラスコを袋に入れた。リーは他にもいくつかのフラスコを渡してくれた。飲料水にできるものや、料理しなくても肉を食べられるようにするものなど生き延びていけるようにお助けアイテムだった。それらも袋に入れ、玄関に向かった。リーはそのあとをついてきた。


 「気をつけて。きっと見つけられるわ」

私はもう一度頷き、リーを抱きしめた。

「ありがとう」

「前、私がオーラムのことで言ったことを撤回するわ。彼、本当にあなたのことを愛してるから」

「帰ってきたら、貴族たちに説明してもらわないことが沢山あるわね」

リーは私から離れると両手を私の肩に置いた。

「帰ってきたらあなたはちゃんとお城のいるべきところにいくのよ。あなた以外が王位についているのは我慢ならないから。わかった?」

私は唇をかみ締め、少しの間のあと頷いた。

「がんばって」

「すぐに戻るわ」

私は家を出た。とっても危険なかくれんぼに参加する為に。

 



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