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パクサルム【未完】  作者: 片里鴎(カタザト)
オールド・カフェ
9/20

 第三次世界大戦は、奇妙なことにある種の切迫感から始まった。


 わずか三年の間に連続して四つの基礎技術の革命が起こったことがその始まりだった。世の常として、それは平和利用のために応用が検討されると同時に、軍事への応用も検討された。相性がよかったのか、新しい技術は更に新しい技術へと連鎖していき、結果として恐るべき新兵器が続々と開発されることとなる。

 その兵器の情報が国家間で共有されていくにつれて、どの国家にも不思議な切迫感が現れる。それは、もうじき戦争が成り立たなくなるのではないかという切迫感だった。

 新たなる兵器は、これまでの兵器とあまりにも違いすぎた。数千発のミサイルを99%無効化する防御システム。外見をそのままに、人間に戦車並みの戦力を与えることができる生体改造技術。人間一人で持ち運べるサイズながら小規模の都市を一つ、完全に機能停止させられるほどの威力を持つフォークス粒子兵器。


 辛うじて今ならば、これまでの形の戦争は成り立つ。

 だが、これらの技術が拡散し、そして更に性能の高い兵器が登場してしまえば、その時には、もう戦争自体が成り立たないのではないか。


 国々はそう考え、これまで外交の手段の一つとして確かに存在した「戦争」という手段が奪われることに恐怖した。


 その前に、現在抱えている問題を戦争によって解決しようと、時期を同じくしていくつかの戦争が起こった。

 戦争と戦争は融合し、あるいは他の国を巻き込み、戦争とも言えぬ内戦やテロを引き起こしていった。

 こうして起こった第三次世界大戦は影響という意味では世界中全ての国を例外なく巻き込み、拡大していった。新兵器が投入され、皮肉なことにこの戦争を通じて技術は世界に拡散していき、歪な形で進化していった。

 どの国にも、誰にも手が付けられなくなるほど巨大になっていった戦争という化け物は、そうして世界を終わらせた。


 全人類の40%を死滅させ、17の国を滅ぼして、戦争は終結した。

 滅ぶのを免れた国のうちにも、国土の半分を失った国、国民の半数を失った国など、ほとんど国としての機能を果たせなくなった国も多く、世界の秩序は壊れた。

 混乱状態の世界では内戦とテロと犯罪が渦巻き、それを行う側にも止める側にも過剰な力を持つ兵器が供給されていた。


 その未曾有の混乱の中、ついに新しい秩序が制定される。

 勢力を拡大していた八つの巨大民間軍事会社と、五十一の秩序維持を目的とした武装集団、そして第三次世界大戦で新兵器をばらまいた三つの多国籍兵器開発製造企業。

 彼らは新世界秩序の構築を旗印に手を結び、公安企業「リパブリック」を設立。わずか一年で、圧倒的な戦力を盾に世界の混乱を押さえ込み、かろうじて機能している国々と連携し、世界の再生を始める。


 第三次世界大戦終結から十五年。

 世界は新しい秩序の元に、再生を果たしている。

 歪みを抱えたまま。

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