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――両掌相打って音声あり、隻手に何の音声かある。
面倒がらずに、まあ聞いてくれ。俺だって、新入りが入るたびに同じことを言うのは嫌なんだが、これも規則だ。
確認だ。ここのシステムは知っているのか?
ああ、そうだ。もちろん知っているな。分かってるよ、一応の確認だ。一度入ったら二度と自由には出られない場所だ。入る前、契約の段階で穴が開くほどシステムは確認しているに決まっているよな。
一応、ルールブックのアプリが入った携帯端末を支給している。システムの確認がしたかったらそのアプリで確認してくれ。ほら、こいつだ。これと、あんたに既に手術で埋め込まれているIDコアでこの中での生活は全て事足りるはずだ。
ああ、携帯端末は常にチェックしておいてくれ。システムの変更点や最新情報、重要伝達事項が配信される。
紛失、破損の場合は最寄の役所に申請すればすぐに代わりが支給される。
こんなところか。
さあ、わざわざ望んでこの門をくぐるんだ。これ以上の説明も不要だろう。なあに、外では色々言われているようだが、ある種の人間にとってこの向こうは楽園だ。あんたにとってもそうであることを祈るよ。
うまくやれば、いい女が抱けてうまい飯が食えてリゾートだって楽しめる。
世界最先端の医療が大部分無料だし、犯罪行為だって存在しない。
最高だろう?
もしくは、そんなものには興味がないタイプかな。あんた、そっちにも見えるな。そのタイプのお仲間も沢山いる。心配するこたないさ。
それでは、ようこそ。
世界で最も平和な場所、パクサルムへ。