06,擬態の紋章
『擬態の紋章』によって『天使族』からエルフに変わった俺は、自分の身体を触って何処が変化したのかを確かめる。
背や体型は変わっておらず、他に変わった所と言えば背中にあった翼が無くなって耳が伸びていたぐらいだった。
その後、変わったであろうステータスを確認した。
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名前:シルフィー
種族:長耳族 (擬態)
性別:女
年齢:16
職業:紋章術師 Lv78
HP:28170/28170
MP:33908/48440
攻撃力:5634
魔法力:5634
防御力:3756
魔法防御力:3756
敏捷性:3130
運:15
魔法
『紋章作成』『×精霊魔法(使用不可)』
紋章
『盾の紋章』『解析の紋章』『剣士の紋章』『槍士の紋章』『擬態の紋章』
スキル
『×飛行』『魔力操作』『×耐熱』『×耐寒』『恐怖無効』『×飛行加速』『直感』『長耳語』『精霊語』『隠密』『森の加護(制限)』
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『擬態の紋章』を使用後、変わった種族の名前がエルフではなく『長耳族』という種族だった。
MPはテキスト通り最大の三割消費され、一部スキルが使用出来なくなっていた。
他には新しい魔法の『精霊魔法』とスキル『長耳語』『精霊語』『隠密』『森の加護』の四つを入手し、『森の加護』だけに制限が掛かっていた。
『精霊魔法』は残念ながら職業である紋章術師の効果によって使用出来なくなっていたが、その効果は知ることは出来た。
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《精霊魔法》 使用MP ?
精霊族と契約することで扱える魔法。
契約した精霊族にMPを与えることで、精霊族が気分によって力を与えてくれる。
精霊族は四種類存在し、『地のノーム』『水のウンディーネ』『風のシルフ』『火のサラマンダー』と呼ばれている。
この魔法は主に『獣人族』『人魚族』『長耳族』『小人族』の四種族が覚えているが、精霊族との相性が良くなければ使用できず、過去には精霊族と一度も契約できずに一生を終えた者もいたという。
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エルフに似た種族である『長耳族』がいた時点で何となく分かっていたが、やはり『長耳族』以外にもファンタジー的な種族がいるらしい。いつか会うのが楽しみだ。
紋章を使ったりステータスを確認したりとしていると水を飲んでいたはずの『長耳族』の少女が俺を見て驚いていた。
「げ、幻惑魔法?いやでも魔法使ったような感じはしなかったし、あなた何……いや、言葉が分からないんだったね。どうしようかしら……」
先程とは違い『擬態の紋章』の効果によって『長耳族』の言葉が分かるようになっていた俺は、最初に何を言おうか迷ったが取り敢えず彼女に自己紹介をすることにした。
「はじめまして、俺は千…じゃなかった。シルフィーといいます」
いきなりの『長耳語』に少女は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。
先程まで全く言葉が通じ合えなかったのに、いきなり出来るようになっていれば誰でも驚くだろう。
「エルフォ語!?先まで全然伝わらなかったし、違う言語喋っていたのに何で?………ああ、ごめんなさい。命の恩人に失礼だったわね。私はリリアーヌ、皆はリリって呼んでるわ。先はありがとう、御蔭で命拾いしたわ」
『長耳族』のの少女はリリアーヌというらしい。
とてもファンタジー的な名前だ。
「あの一つ聞きたいのだけど、この水は《精霊水》で合っていますか?」
「えーと……確かにこの水は《精霊水》という名前ですけど、何でリリアーヌさんはこんな危険な所に一人でいたんですか?」
「さん付けはいらないし、リリでいいわ。それは私の妹が病気で寝込んでて薬が必要だったの。だけどその薬を買うお金が無くて代わりにこの水を汲みに来たというわけ」
そう言いって服のポケットから小さな瓶を取り出し、《精霊水》を汲み始める。
小瓶はすぐにいっぱいになり、コルクのような物で蓋をしてポケットにしまう。
「改めて、ありがとうシルフィー。あなたの助けが無かったら私は死んでいたわ。何かお礼がしたいのだけど……」
リリは自分が今持っているものを確認したが、お礼の代わりになりそうな物が無く困惑していた。
「だったら、俺もついて行っていいかな?今日は野宿する予定だったから代わりにリリの家に泊めてもらうということで………どう?」
「そんなことでいいなら全然構いません!」
交渉が成立した。
今日は野宿しなくても済みそうだ。
「それでは行きましょう。妹さんにも早く届けてあげなくてはいけませんしね」
俺は、またしてもリリをお姫様抱っこのように抱え上げる。
それに対しリリは「え!それは皆に見られたら恥ずか……」と言いかけていたが既にMPを三割消費して『擬態の紋章』を解除し、元の《天使族》の姿に戻っていたため続きの言葉が分からなかった。
「行くよ!」
翼を羽ばたかせて空高く飛び上がる。
リリにどちらの方角かを聞こうと違う言語で話し、それを何となく理解してくれたリリは家がある方角を指差してくれた。
そして俺はリリの差した方角に向かって飛行した。
今気づいたのだが、助けるので精一杯だったせいか結局何も食べてなかった。
リリの家に着いたら何か食べ物を恵んで貰おうと考えながら、指差した方角へ一直線に飛んでいった。