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銀翼の紋章術師(エンブレムマスター)  作者: 森羅 紫
第一章 紋章術師
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05,命の重さ

 初めてこの手で生き物を殺した。

 生まれてこのかた血生臭いことが無縁だったので、このことは少なからずショックを受けた。

 ワンピースは白から返り血で真っ赤になり、身体に張り付く血の臭いは吐き気を覚えるものだった。

 最初この世界は少しばかりゲームだと思っていた所があったが、ここまで現実的(リアル)だとゲームの中ではなく、ゲームを通じて異世界に飛ばされたと考える方が当たっている気がする。


「着替えないしどうするか……。後で洗うしかないか」


 そう考えていると服に付いた血は徐々に消えていき、最後には汚れ一つ無くなってしまった。

 もしかしたら、この服には自動で汚れを消す能力が有る魔法の服なのかもしれない。

 右手に握る剣を手放し、それに伴い甲に出ていた『剣士の紋章(ソード・エンブレム)』が消滅する。


「いつかはこんな事にも慣れてしまうのかな……」


 モンスターが存在する世界では、生きるために命のやり取りをすることはラノベの定番だが実際に自分が行う場合は少し辛い。

 だが普通はこんな殺し合いに慣れてしまう自分に恐怖を覚えるものだが、何故かそういった感情が出てこない事に驚いた。

 

「俺ってこんなに冷たい奴だっけ?……そうだあの子は!」


 心の中で悔やむ事を後にし、守った少女の方に振り向く。

 少女はオルトロスとの戦いをずっと見ていたようで振り向いた際に目が合った。

 森の民とでも言えそうな服とアニメでよくありがちな黄緑色の短髪と瞳。

 元の世界の基準だと同い年ぐらいの容姿だが、俺の知っている女性の中では一番の美少女で、その耳は普通の人間より細長かった。

 ファンタジー世界で定番のエルフだろうか。やはり異世界と言うからには人外の種族もいるのだろう。そこには少し感動した。

 エルフの少女も何故かずっとこちらを見ていた。確か『天使族』は絶滅したと言われてるから珍しいのだろう。


「大丈夫ですか?立てますか?」


 そう言って右手を少女の前に差し出す。

 少女は少し考える素振りをし、その手を取って立ち上がってこう言った。


「●▼✖▲●✖✖▲」


 全く理解できない言葉だった。


「マジかよ、そういうの異世界に来て自然と身に付いているものだろ普通……」


 異世界に来て初めての人物だというのに言語が全く理解できないという事態に悩まされた。

 だが、お互いこのままここに居るわけ訳にも行かない。

 何となくだが、血の臭いを嗅ぎつけてもっと強いモンスターが来そうな気がしたからだ。


「仕方ない、ちょっと失礼しますね」


 一言謝ってエルフの少女に近づき、肩に近い背中の部分と太股辺りに手を回して持ち上げ、飛翔した。

 場所は空中だが、所謂お姫様抱っこというやつだ。

 エルフの少女は意外と軽く、あまり重さを感じなかった。

 本人は驚いて何か言っていたが、言語が分からないのでスルーする。

 それに、こうしなくては飛んで運べないので仕方ないのだ。


「あの泉に向かうか」


 泉にある精霊神殿からはMP回復や傷を治す事も出来る《精霊水》が出ているので、そこで怪我を治しながら色々考えようと思う。

 取り敢えず安全確保のため精霊神殿に向かった。







 飛行中、意外とエルフの少女は大人しかった。

 いきなりお姫様抱っこされたのだから、もっと暴れるかと思っていた。

 泉に着き、ゆっくりと少女を下ろす。

 下ろされた少女は辺りを見渡し、何かを言っているが俺にはさっぱり分からない。

 見た所、左腕を怪我しているようで右手で押さえていた。

 

「取り敢えず傷の手当てと……」


 お互い言葉が分からないので俺は神殿に近づき、そこから湧き出ている《精霊水》を飲んで安全性を見せてから少女も飲むように手でジェスチャーをする。

 少女も分かってくれたようで神殿に近づき、右手で水を掬ってゆっくりと口に含んだ。

 すると少女の身体がほんのり光り、とてもリラックスしたような表情を見せた。

 怪我をした左腕の痛みが無くなったことに驚いたのか、また分からない言語を呟いている。


「やっぱ言語が理解できないと辛いな……。言語を理解する紋章ってのは無いのかな?」


 すぐさま祈るように手を合わせ、言語を理解したいと祈る。


《……術者の祈りを確認。特殊魔法(ユニークマジック)紋章作成(エンブレム・クリエイト)』発動検索。検索内容『言語を理解する』………………………完了。最も近い紋章エンブレムはありませんでした。自動再検索。検索内容『何かの過程で言語を理解出来る』……………完了。最も近い紋章(エンブレムを提示。紋章名『擬態の紋章(ミミック・エンブレム)』。取得条件『術者のレベルが七十以上』『自分以外の種族の皮膚に直接触れる』。条件を満たしているので取得を開始し………………………完了》


 聞き捨てない事が聞こえた。


「取得条件がレベル七十以上!?」


 すぐさま自分のステータスを確認する。




____________________

名前:シルフィー

種族:天使族

性別:女

年齢:16

職業:紋章術師 Lv78

HP:28170/28170

MP:48440/48440


攻撃力:5634

魔法力:5634

防御力:3756

魔法防御力:3756

敏捷性:3130

運:15



魔法

紋章作成(エンブレム・クリエイト)


紋章

盾の紋章(シールド・エンブレム)』『解析の紋章(アナライズ・エンブレム)』『剣士の紋章(ソード・エンブレム)』『槍士の紋章(ランス・エンブレム)』『擬態の紋章(ミミック・エンブレム)


スキル

『飛行』『魔力操作』『耐熱』『耐寒』『恐怖無効』『飛行加速』『直感』

____________________ 




「うわー……チートだわ~」


 それしか言うことが無かった。いくら何でも高すぎだる。まあ高いことに越したことはないが、俺が知っているゲームでも同レベルで今のステータスの半分ぐらいのものだ。

 このステータスを見て、改めて自分の種族が馬鹿げている事が良く分かる数値だった。

 そして新たに入手した紋章『擬態の紋章(ミミック・エンブレム)』の説明を見る。



____________________

擬態の紋章ミミック・エンブレム》 使用MP ?

 術者の身体を直接皮膚に触れたことのある種族の姿に変える。

 使用MPは術者の最大MPの三割が消費される。

 MPが三割無い場合、術は成功しない。


 この紋章には以下のメリットとデメリットがある。 

 ・変化した種族の言語が理解でき、話すことができる。

 ・変化した種族の文字を理解でき、書く事ができる。

 ・変化した種族の固有能力を制限付きで使用できる。

 ・変化する前の種族の言葉が理解できず、話すことが出来ない。

 ・変化する前の種族の文字を理解することが出来ず、書く事ができない。

 ・変化する前の種族の固有能力が使用できない。

 ・元の姿に戻る際に更にMPが三割消費される。

____________________




「他の紋章よりデメリットが大きいが、まあいいか」


 直接皮膚に触れるのは先程少女を立ち上がらせるのに触れているため条件は成立している。

 MPの方も《精霊水》で全快しているので問題ない。

 早速『擬態の紋章ミミック・エンブレム』を使用した。

 すると自身の頭上と足元に黄色い紋章が出現し、頭上の紋章から光の粒がいくつも降ってきて身体に通過し、足元の紋章に当たって消える。

 いくつかの光が身体を通過すると背中に生えていた翼は消え、耳が長くなった。

 二つの紋章が消えた時には、そこにもう一人のエルフが出現した。





前回のステータスと見比べてください。『精霊水』は少し飲んだだけで、シルフィーの馬鹿多いHPとMPが一瞬で全快するぐらいすごい水です(;゜Д゜)!

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