04,剣士の紋章
間一髪だった。俺は右手の甲に浮き出る『剣士の紋章』と、その紋章によって出現した光り輝く長剣を強く握る。
モンスターに追われていた人物、少女を見つけたときは既に狼とオルトロス(物語などに登場する二首の獣)に似たモンスターと、その取り巻きに囲まれていており、取り巻きの一匹が少女に襲いかかろうとしている所だった。
相手のステータスを確認することも忘れ、すぐさま『剣士の紋章』を発動させて剣を作った。襲いかかる狼の真横まで一気に加速し、剣を振り下ろす。『剣士の紋章』を発動させて剣を作る際、コストであるMPを払うのが面倒で、細かい調整をせずに所持MP700全てを一気に費した。そのためか、鉄も用意に斬れそうなぐらい切れ味抜群の剣を作りだすことが出き、振り下ろした剣が狼の首を容易に切り落とした。
切り口から血が吹き出し、辺り一面赤い海が広がる。俺の方にもその血が飛んできた。
血の海や自分から漂う鉄の臭が鼻孔を刺激し、吐きそうになったが意思を持ってそれに耐える。
剣には血は付いておらず、切れ味も落ちてはいないようだった。
包丁や木刀を持ったことはあったが、剣という物を今まで持ったことはおろか、動物の命も奪ったことが無かった。そんな俺の中には罪悪感が大半を占めていた。
だが今は心の奥底にその罪悪感を押し込め少女を守るように前に立つ。
剣を構え、前を向き、恐怖を殺し、ただ敵を倒すためだけに覚悟を決める。
取り巻きの狼達が声を張り上げ、仲間の仇と言わんばかりに突っ込んできた。
自身の速度と腕力を活かし、叩きつけるように剣を振るう。
手に加わる嫌な感触と共に狼の首が落ち、狼達は絶命した。
あっという間に四匹全てを倒し、残るはオルトロスのみとなる。
オルトロスは他の狼の二倍ぐらいの大きさだ。
黒い毛並みは禍々しいオーラを放っており、見ただけで『解析の紋章』など使わずともコイツだけは他の狼とは別格という事が分かる。
「グォォォオオオオオ!!」
オルトロスは雄叫びを上げ、突っ込んで来た。
背後の少女に攻撃が行かないよう牽制しつつ剣を叩き込むが全く傷が入らず、大きなダメージにはならない。
逆にオルトロスの攻撃は前足による踏みつけと鋭い牙による噛み付きだけだが、その一撃は木々をえぐり、地面を粉砕する。
今のステータスでは一撃はいるだけでも致命傷になりかねない。
「グォォォォォォオオオオオ!!」
回避し続ける俺に苛立ちを覚えたのか攻撃速度や破壊力が上がり回避しずらくなった。
「くっ……、だったら!」
回避をするのを止め、オルトロスに正面から突っ込む。
その瞬間にオルトロスの目の前に『盾の紋章』を発動させ、相手の視界を塞いだ。
いきなりの盾の出現にオルトロスは一瞬怯むが、すぐさま前足で潰しにかかった。
だが『盾の紋章』はMPが無いと触れただけで消滅してしまう。
ただ一瞬だけ自身の姿を隠せれば問題ない。
予想通りオルトロスの視界から一瞬俺の姿は消え、その間に空高く飛翔した。
ある程度飛翔し、上空にて右手の剣を両手で構えてオルトロスの片方の首に目掛けて急降下する。
「ハァァァァアアアア!!」
剣が風を切り裂き、突き進む。
「グォォォオオオオオオ」
上空から急降下して加速された一撃はオルトロスの首を片方切り落とすほどに至った。
貫通した剣の一撃は地面に小さなクレーターを作り地面に突き刺さったが、その剣を力任せに振り上げて切断された首の傷口を更に傷つける。
「これで止めだ!」
オルトロスのもう一つの頭まで飛び上がり眼球目掛けて剣を突き刺す。
オルトロスは傷口から大量の血液が飛び出し、大きく悲鳴のような叫び声を上げて前のめりに倒れた。
そしてこの時、初めての戦闘で心身共に疲労している俺は、この短期間でレベルが大幅に上昇していることにまだ気付いていなかった。
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名前:シルフィー
種族:天使族
性別:女
年齢:16
職業:紋章術師 Lv78
HP:450/28170
MP:0/48440
攻撃力:5634
魔法力:5634
防御力:3756
魔法防御力:3756
敏捷性:3130
運:15
魔法
『紋章作成』
紋章
『盾の紋章』『解析の紋章』『剣士の紋章』『槍士の紋章』
スキル
『飛行』『魔力操作』『耐熱』『耐寒』『恐怖無効』『飛行加速』『直感』
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